【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第四章 文化祭

20.

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──意識はまだもどらないんですか。
──頭を打っているようなので、念のため精密検査をします。入院の準備をお願いします。

 遠くの方で、誰かの話し声が聞こえる。

──連絡は? 実の父親だろう。いくら仕事でも問題があるんじゃないのか。
──あなたにそれが言えるの? 家のことも子供達のことも、みんな私一人に任せて。

 僕はうめいた。

(お父さん)
(お母さん)

 僕のことで、ケンカしないで。
 一旦会話が止まる。

──笑香にもくわしい話を聞かないと。
──あなた、もうやめてちょうだい。

 悲痛なおばさんの声の響き。

──あの子……。笑香は前にも同じような目に遭ってるの。お願いだから、これ以上あの子を傷つけないで。

 その懇願の内容に、心臓が大きくはね上がった。
 笑香。笑香は……。
 どこかで嗅いだことのある匂いがした。熟柿臭い、身の危険を感じる匂い。ぐ、と喉の奥が鳴り、僕は熱いかたまりを吐き出した。
 胃の腑がつかみあげられるような痛み。後から後から、体の中の苦い液体が胃から口へと込み上げる。
 僕の周囲がさわがしくなった。意識は再び暗い闇の中に飲み込まれた。

   *

 まぶたの裏が明るく白い。
 始めに僕が理解したのは笑香のおばさんの声だった。

「今日もいい天気ですね」
「ええ。洗濯物がよく乾いて、助かります」

 僕はゆっくりとまぶたを開いた。ぼんやりとした視界の中におばさんの横顔が見える。

「……あ」

 口の中が渇ききっていて、舌を動かすことができない。

「史郎君!?」

 おばさんの大きな声。高い声がそれに答えた。

「意識、もどられました? 先生をお呼びします」

 僕はごくりと喉を鳴らして乾いた唇を動かした。

「……おばさん。笑香は……?」
「大丈夫。もう大丈夫よ」

 答えた声は湿っていて、僕はおばさんに迷惑をかけたことを知った。

「すみません、僕……」

 しゃがれ声でそう言いかけると、おばさんが大きく首を振る。

「何も言わなくていいの。あなたが謝ることなんてないわ。安心してちょうだい、笑香は無事よ。史郎君、本当にありがとう」

 僕は小さくため息をついた。一度目を閉じ、ぼやけた意識を取りもどそうと努力する。
 あれからどれくらいたったんだ? 
 僕は再び目を開けた。おばさんの後ろに白い壁と、白いカーテンの仕切りが見える。窓から入る日差しの中で、僕は自分が病院のベッドにいることを理解した。

「今日は何日ですか」

 僕の問いかけにおばさんは答えた。

「月曜日よ。あなた、丸二日意識がもどらなかったの。お医者さんの話では、怪我以外に過労もあるって。明日もう一度検査をするから、どれくらい入院するかは結果を見てからって言われたわ」
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