【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第四章 文化祭

21.

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 僕は白い天井を見上げた。

「──笑香は?」

 僕がもう一度たずねると、おばさんはどこか痛ましそうなまなざしを向けて僕を見た。

「かすり傷ですんだわ。今、うちにいるの。先生に言われたのよ、しばらく自宅で休養しなさいって」

 体のいい自宅謹慎か。

「とにかくあなたは何も考えないで休みなさい。まず自分の怪我を治さないと」
「僕の怪我はどうなってるんですか」
「くわしいことはわからないけど、肋骨が何本か折れているみたい」

 僕は思わずため息を漏らした。一回呼吸をするごとに、背中の鈍痛に響くような気がするのはそのせいか。

「それから……あの……」

 おばさんが言いづらそうに視線を落とす。
 僕は眉間にしわをよせた。あのおばさんが、きちんと僕の顔を見ないなんて。

「笑香が着ていた、あなたの服なんだけど。ごめんなさいね、証拠物件になるのであなたに返せないそうなの。新しいものを買って返すわね」

 僕は苦い笑みを浮かべた。

「いいえ。気にしないでください」

 ナイフで切り裂かれた僕の服。それに気がついた時、おじさんはどう思ったのだろうか。

「僕が着ていたジャージはありますか?」

 物憂い気分でそう問いかけると、ベッドの脇にある備えつけの棚から、おばさんが洗濯済みらしいジャージの上下を出してくれた。
 僕は言った。

「そのポケットの中に、笑香が落としたクマのマスコットがあります。……笑香に返してやってください」

 そのマスコットのおかげで、僕は笑香の危険に気づくことができたのだ。
 病室の外があわただしくなる。担当医が到着したようだ。

「水嶋さんにも連絡するわ。今、家に荷物を取りに行ってるの。昨日はずっと史郎君のそばにつきそってたのよ」

 最後に添えられた一言に、僕は唇を真一文字に結んだ。

   *

 高校の入学以来、顔を合わせることが無かった自身の父親との邂逅は、僕にとっては不快以外の何物でもない時間だった。

「──ずいぶん背が伸びたな」

 備えつけられた椅子に腰かけ、父親は感嘆の声を上げた。ベッドに横になったまま視線も合わせない息子の姿に、ふち無し眼鏡の奥の瞳が寂しげな色を浮かべている。

「一人で四人相手したって? 笑香ちゃんを助けるために」

 僕は無言で目を閉じた。父親から聞く笑香の名前に、心にわだかまっている黒い感情がかき乱される。

「はじめ、まったく連絡に気がつかなくてね。柿崎さんには本当に迷惑をかけた。そうしたら直接会社に笑香ちゃんが電話をくれて……。助かったよ。そうでなければきっとまだ会議を続けていた」

 笑香が、会社に電話? 僕が目を開けると、父親は言った。

「笑香ちゃんにも教えていたんだ。私とやり取りをした時に、ついでに直通の番号を。電話を受けた湯浅ゆあさがびっくりしていたよ。今の高校生はしっかりしてるんですねって、笑香ちゃんのことをほめていた」
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