126 / 293
第五章 夢の終わり
11.
しおりを挟む
僕にはもうわかっていた。
このままでは、今度はおじさんが居場所をなくしてしまう。僕がこの場にとどまり続ければ、笑香も勇人も、おばさんさえもそばにいる僕に頼ってしまう。それはおじさんのプライドを傷つけ、治る病気もきっと治らなくなるだろう。
僕にはまだその力が無い。
僕がここで生活できるのは、僕がどんなに嫌っていても僕の父親が学費を払い、暮らしていくのに必要な金を毎月渡してくれるからだ。しょせん高校生の僕には働くおじさんの代わりなどできない。今はおじさんが病気と対峙し、自分の家族と協力して、自分の居場所を作りながらも家族を養うほかはないのだ。
そう。──今の所は。
笑香はしゃくり上げていた。昨日と同じ、電話越しに聞いたすすり泣き。その泣き声を聞きながら、僕はすでに決意していた。
だから。
「僕達がまだ高校生で、おじさんが僕達のことを心配してくださるのはわかります。だから、僕は長野へ帰ります。──でも僕は絶対に笑香と別れません。父の所できちんと学校を卒業した上で、またあらためてここにもどって来ようと思います。それまでは父と一緒に住んで、時々は笑香に会いに来ます。……それでいいでしょうか?」
苦り切ったようなおじさんの顔に、明らかな安堵がわき上がる。
おじさんの思惑はわかっていた。何を言っても、まだ二人とも高校生だ。僕達二人を引き離しさえすれば、それぞれ別れた学校で新しい相手を見つけるだろう。僕達の軽い口約束など時間が解決してくれる。
僕は、ふっと目だけで笑った。
だが僕には切り札がある。笑香とともに契りを交わした、今、目の前にいるおじさんへの切り札が。
誰になんと言われようとも、僕は絶対に笑香から離れるつもりはなかった。このおじさんへの切り札とともに、勇人が卒業するまでの四年間、笑香の心をつなぎとめて見せる。
一瞬見せた不敵な笑みに、おじさんが不審そうな顔をした。僕はゆっくりと席を立ち、泣きじゃくる笑香に向かって言った。
「──笑香。僕達はまだ高校生だけど、昔みたいに何もできない子供じゃない。君が呼べば、すぐ会いに来るよ」
笑香にそう伝えながら、僕は僕自身がまだ冷静なことが不思議だった。
そうだ。かりそめとはいえ、僕が自ら笑香に別れを告げているのに。
僕は静かに振り返り、おじさんに苦笑して見せた。
「少し笑香との時間をください。僕の家で話して来ます」
おじさんは笑ってうなずいた。
このままでは、今度はおじさんが居場所をなくしてしまう。僕がこの場にとどまり続ければ、笑香も勇人も、おばさんさえもそばにいる僕に頼ってしまう。それはおじさんのプライドを傷つけ、治る病気もきっと治らなくなるだろう。
僕にはまだその力が無い。
僕がここで生活できるのは、僕がどんなに嫌っていても僕の父親が学費を払い、暮らしていくのに必要な金を毎月渡してくれるからだ。しょせん高校生の僕には働くおじさんの代わりなどできない。今はおじさんが病気と対峙し、自分の家族と協力して、自分の居場所を作りながらも家族を養うほかはないのだ。
そう。──今の所は。
笑香はしゃくり上げていた。昨日と同じ、電話越しに聞いたすすり泣き。その泣き声を聞きながら、僕はすでに決意していた。
だから。
「僕達がまだ高校生で、おじさんが僕達のことを心配してくださるのはわかります。だから、僕は長野へ帰ります。──でも僕は絶対に笑香と別れません。父の所できちんと学校を卒業した上で、またあらためてここにもどって来ようと思います。それまでは父と一緒に住んで、時々は笑香に会いに来ます。……それでいいでしょうか?」
苦り切ったようなおじさんの顔に、明らかな安堵がわき上がる。
おじさんの思惑はわかっていた。何を言っても、まだ二人とも高校生だ。僕達二人を引き離しさえすれば、それぞれ別れた学校で新しい相手を見つけるだろう。僕達の軽い口約束など時間が解決してくれる。
僕は、ふっと目だけで笑った。
だが僕には切り札がある。笑香とともに契りを交わした、今、目の前にいるおじさんへの切り札が。
誰になんと言われようとも、僕は絶対に笑香から離れるつもりはなかった。このおじさんへの切り札とともに、勇人が卒業するまでの四年間、笑香の心をつなぎとめて見せる。
一瞬見せた不敵な笑みに、おじさんが不審そうな顔をした。僕はゆっくりと席を立ち、泣きじゃくる笑香に向かって言った。
「──笑香。僕達はまだ高校生だけど、昔みたいに何もできない子供じゃない。君が呼べば、すぐ会いに来るよ」
笑香にそう伝えながら、僕は僕自身がまだ冷静なことが不思議だった。
そうだ。かりそめとはいえ、僕が自ら笑香に別れを告げているのに。
僕は静かに振り返り、おじさんに苦笑して見せた。
「少し笑香との時間をください。僕の家で話して来ます」
おじさんは笑ってうなずいた。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる