【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人

47.懐古八景 7

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 その後はなごやかに食事をすませ、後片付けを史郎と終えると(彼に気づかれないように、昨夜リビングに残したタオルやその他諸々を何とか処理して)、笑香は自室にもどった史郎に観光用の雑誌を見せた。

「場所、わかる? お寺と参道と……あと、お土産用にみんなで食べるお菓子が買いたいの。駅でも買えると思うんだけど……」

 出かけるための身支度を整え、腕時計をはめかけていた史郎は雑誌を認めて眉尻を上げた。

「こんなものまで買って来たのか? スマホで調べれば十分だろ?」
「スマホだとちょっと見づらいし、これならこれを見るだけで知りたいことがわかるから」

 笑香が史郎にそう伝えると、やれやれといった顔つきでさっと紙面に目を落とす。その後、鷹揚にうなずいて見せた。

「わかると思うよ。大体学校の近くだし」
「え、ほんと? それなら史郎君の学校も見たいな。どういうところか見てみたい」

 興味津々の笑香の様子に史郎は苦笑いして言った。

「部外者、特に女子は立ち入り禁止だよ。外から見るだけでいいなら……」

 素直に喜ぶ笑香を認め、史郎の苦笑が微笑になる。腕時計を確認した後、史郎が笑香をうながした。

「そろそろ出かける時間だぞ。何か準備しなくていいのか?」

 あわてて洗面所へ急ぐ笑香を、史郎は軽く肩をすくめて見送っていた。

     *

 その後、三十分はたっぷり使って笑香は身支度を整えた。再び部屋のドアを開けると、史郎はあきらめたような面持ちで残された雑誌をぱらぱらめくり、彼女を待つことに耐えていた。
  やっと支度ができた笑香にすわっていた椅子から立ち上がる。二人で史郎のマンションを出て、目的地へ行くバスに乗るために駅のバス停へ向かった。

 全国屈指の観光地である創建千四百年にもなる古刹は、史郎が住んでいるマンションから歩いて行ける距離にある。普段通りの笑香だったら、散歩がてら史郎と二人で歩いてもいいと思っただろう。だが今回は見かけを重視してヒールの高い靴を履いていたし、昨晩から引き続いた疲労が澱のように体に残っていて、あまり体力を使いたくなかった。

 それに今夜のこともある。笑香は史郎に気づかれないよう、小さくため息をついた。昨夜や今朝と同様に、史郎の歯牙にかかっている自分のあられもない姿を思い浮かべ、笑香はすでに悟りの境地でその想像を受け入れていた。

「そう言えば、昨日史郎君が言ってた『支倉さん』って誰?」

 観光客の列に並んでバスを待ちながら笑香は尋ねた。昨夜、史郎がふと漏らしていた初めて聞く名前の人物に、笑香は興味を引かれながらも今まで聞きそびれていたのだ。
 ただバスに乗るだけでこれかとうんざり顔をしていた史郎は、笑香の方へ視線を向けた。眼鏡の奥の双眸に懐かしそうな色を浮かべる。
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