【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人

63.懐古八景 23

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 笑香は今度こそ史郎の腕に自身の腕をからませた。
 普段、笑香は彼氏であるはずの史郎と一緒にいる時も、何だか色々と照れてしまって甘えるしぐさを見せられない。そんな笑香が今日は自ら自分に甘えて来たことに、史郎が大きく目を見張る。
 笑香はくすりと笑って言った。

「私は史郎君にもらった手紙、大切にしまってあるんだけど。引っ越しの時、整理しながらちょっとだけ中を見てみたの。史郎君、けっこう字が下手だったんだね」
「……」

 自分が笑香にもらった手紙を大事にしまい込んだ手前、逆に自身が送った手紙を捨てろとも言い出せないらしく、史郎が渋い顔をする。

「もしよかったら交換する? 私が持ってる史郎君の手紙と、私が出したその手紙」

 笑い交じりに提案すると史郎はぶすっとした声で答えた。

「それだと、返って来た僕の手紙がそれで全部かわからないだろ。一通だけ君が残してたって僕にとっては致命的だ。圧倒的に不利じゃないか」

 そしてその口元を笑いの形に変えて言った。

「君が何かやらかした時、僕に一通ずつ手紙を返すっていうのはどうだ? ……例えば、宿題を期限内に終わらせることができなかったとか。それだったら案外早く全部返って来るかもな」

 まなじりに笑みを含ませて自分を見下ろす史郎の顔に、からかわれた笑香の方が今度はふくれっ面をする。
 二人は互いによりそいながら、古刹へともどる小道をたどった。

     *

 史郎が通っている学校は、先ほど二人が桜田と待ち合わせた公園のそばにあった。
 高いフェンスに囲まれた中に白を基調とした現代風の校舎が見える。ライトグリーンの屋根の色彩が青い空によく映えて、明るい印象の学校だった。大きな建物の合間からは立木の梢がのぞき見え、きらめくような若葉の色が季節を表してみずみずしい。
 新緑のまぶしさに目を細めつつ、笑香は感嘆の声を上げた。

「きれいな学校ね。やっぱり私立だけあって、うちの学校とは違うみたい」

 人影のない休日の校門には、歩行者用の門だけが掛け金をはずされて開いていた。校舎の裏にあるグラウンドへ続く、茶色いレンガ敷きの遊歩道が青い芝生におおわれている。遠くから聞こえる歓声に史郎は肩をすくめて言った。

「グラウンドにまだサッカー部の連中がいるから、ここまでにしておかないと。見つかるとまた桜田がうるさいからな」

 高いフェンスに近づくと、振り仰ぎながら言葉をつなげる。

「まさか、僕がここに通うことになるとは思わなかった」

 わずかに責任を感じた笑香は気づかれないようにうつむいた。苦笑交じりに史郎が言い足す。

「祖母がね。僕が大っ嫌いだった従兄弟を、ここに入れようとしてたんだ。ずいぶん勉強させてたみたいだけど、あいつは結局ここには入学できなかった。ざまあみろだな」
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