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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人
96.初恋と卵焼き、再び 20
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シャワーを浴びて部屋にもどると、史郎はベッドに入ったままでスマホの画面を見つめていた。
「……次、どうぞ」
視線をそらして笑香が告げると悠然と体を起こし、スマホを机の上に置く。
「桜田。君に和菓子屋を教えてやれって。わざわざ地図までつけてくれたよ」
視線を上げて微笑む彼に、笑香はうれしさを笑顔に変えた。昨日家族へのお土産用に冷凍物のおやきは買った(正確に言えば、史郎に買わせた)ものの、仲見世通りで食べそこねた出来立ても味わってみたかったのだ。
「駅に行く前に店によって、持って帰ればちょうどいいだろ。どうせ駅でも色々買うんだろ?」
いつも通りの史郎の口調に、笑香は先ほど感じた切なさを再度胸の奥に覚えた。だが、裸のままの史郎に再び抱きよせられそうになり、あわてて両手を前へと出してその動きを押しとどめる。
「もっ、もうだめ! シャワー浴びて‼」
昨夜や一昨日の時と同様、笑香と一緒に浴室内に入って来ようとした彼を、やっとの思いで説得したのだ。残念そうな面持ちで史郎は笑香を見つめたが、何とか大人しく出て行った。
笑香は安堵のため息をついた。そして自身も部屋を出て、キッチンへと足を向ける。
今朝はさすがに自分の方が朝食を作るつもりだったのだ。昨夜史郎と料理をしたおかげで、必要な材料や調理器具がどこにあるのかはわかっていた。また使う道具の位置も以前と同様の配置だったため、その点でも笑香は慣れていた。
とりあえずポットで湯を沸かし、食事の準備を整える。その時、ゆっくりと玄関に近いリビングのドアが開かれた。史郎かと思って顔を上げ、笑香は大きくまなじりを開いた。
仕立てのよさそうなダークグレーのスーツ姿の壮年男性。白髪交じりの前髪がきちんとなでつけられている。突如自分の前に現れた紳士然とした人物に、笑香は口まで開けてしまった。
「──ああ。おはよう。久しぶりだね」
ふち無し眼鏡の奥の瞳がおだやかな色で微笑んだ。笑香はぴょこんとお辞儀をした。
「お、お久しぶりです。お邪魔してます。すみません、勝手に……!」
声が上ずり、一気に動悸が激しくなる。
あわてた笑香の様相を見て、男性は口元をほころばせた。
「……次、どうぞ」
視線をそらして笑香が告げると悠然と体を起こし、スマホを机の上に置く。
「桜田。君に和菓子屋を教えてやれって。わざわざ地図までつけてくれたよ」
視線を上げて微笑む彼に、笑香はうれしさを笑顔に変えた。昨日家族へのお土産用に冷凍物のおやきは買った(正確に言えば、史郎に買わせた)ものの、仲見世通りで食べそこねた出来立ても味わってみたかったのだ。
「駅に行く前に店によって、持って帰ればちょうどいいだろ。どうせ駅でも色々買うんだろ?」
いつも通りの史郎の口調に、笑香は先ほど感じた切なさを再度胸の奥に覚えた。だが、裸のままの史郎に再び抱きよせられそうになり、あわてて両手を前へと出してその動きを押しとどめる。
「もっ、もうだめ! シャワー浴びて‼」
昨夜や一昨日の時と同様、笑香と一緒に浴室内に入って来ようとした彼を、やっとの思いで説得したのだ。残念そうな面持ちで史郎は笑香を見つめたが、何とか大人しく出て行った。
笑香は安堵のため息をついた。そして自身も部屋を出て、キッチンへと足を向ける。
今朝はさすがに自分の方が朝食を作るつもりだったのだ。昨夜史郎と料理をしたおかげで、必要な材料や調理器具がどこにあるのかはわかっていた。また使う道具の位置も以前と同様の配置だったため、その点でも笑香は慣れていた。
とりあえずポットで湯を沸かし、食事の準備を整える。その時、ゆっくりと玄関に近いリビングのドアが開かれた。史郎かと思って顔を上げ、笑香は大きくまなじりを開いた。
仕立てのよさそうなダークグレーのスーツ姿の壮年男性。白髪交じりの前髪がきちんとなでつけられている。突如自分の前に現れた紳士然とした人物に、笑香は口まで開けてしまった。
「──ああ。おはよう。久しぶりだね」
ふち無し眼鏡の奥の瞳がおだやかな色で微笑んだ。笑香はぴょこんとお辞儀をした。
「お、お久しぶりです。お邪魔してます。すみません、勝手に……!」
声が上ずり、一気に動悸が激しくなる。
あわてた笑香の様相を見て、男性は口元をほころばせた。
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