【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人

106.初恋と卵焼き、再び 30

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 笑香の帰り支度の間に史郎は日常の家事を済ませた。増えた荷物を両手に抱え、二人でマンションを後にする。
  ずっしりと増したカートの重さに荷物持ちに文句を言われたが、笑香は耳がないような顔で街中の和菓子屋へと向かった。

 マンションと駅の中間にある小さな店舗の和菓子屋は、笑香と史郎以外にも観光客の姿があった。磨き込まれたケースに並ぶ多彩なおやきの数々に、笑香は両目を輝かせた。あれもこれもと指をさす笑香に史郎が隣でため息をついた。結局彼は裸眼のまま、出かける時も不自由を承知で眼鏡をかけることを拒否している。

「ちゃんと食べ切れる量にしろよ。君が三人前だとしても君の家族は何人だ?」

 皮肉交じりに釘を刺されて断腸の思いで数を絞る。愛想のよい店員にいくつか味見をさせてもらって、昨日食べ歩きをし損ねた不満がわずかながらも解消された。
 その後、駅ビル内に広がる土産物屋街へと足を向け、さらにあれこれと迷いつつ友人達へのお土産を買い足す。堪忍袋の緒が切れそうな荷物持ちの心情を思い、笑香は予定の時間が来るまで、駅のロッカーにふくれ上がった荷物を押し込むことにした。

     *

 笑香が雑誌で目をつけたカフェで軽食を取りながら、二人は笑香が帰る予定の新幹線を待っていた。

 明らかに寡黙になってしまった史郎の気持ちを気づかって、笑香はあれこれと話題を振った。だが、斜に構えたいつもの笑いで笑香を少しからかうだけで、どうやら彼は頭のすみでもっと重要そうな議題を吟味しているようだった。
 二人の間に沈黙が流れ、笑香はぎこちなく飲み物を手にした。ジュースのストローをくわえると、先ほどから胸に抱えていた不安が再び湧き上がって来る。

──まさか、とは思うけど。もし「家までついて行く」なんて言われたらどうしよう?

 笑香は眉間にしわをよせた。笑香の家に来る際に使う定期は持っているはずだし、彼の事だからやりかねない。
 その時さりげない調子を装い、史郎が笑香にたずねて来た。

「そう言えば。……ずっと聞き損ねてたけど、君のファーストキスの相手って誰?」

 笑香はぱちくりとまばたきした。そんな昔の話題など、笑香の頭の中からはすっかり抜け落ちてしまっていたのだ。
 史郎は改めて向き直り、笑香の顔をじっと見すえた。自分のことを棚に上げ、まるで笑香をとがめるような非難がましい目を向けて来る。

「僕はちゃんと君に話したんだ。君も言わなきゃフェアじゃないだろ?」

 しつこい彼氏の嫉妬深さに笑香はあきれ顔を作った。
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