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少女の日常
早起きは何とかの得
しおりを挟む「あ、鶯が鳴きましたよ。鶯は春を告げる鳥といいますね。」
櫛の付喪神「梳」
祖母からもらった柘植の櫛。
祖母もまたその祖母に貰ったという。
いつからから使われているのかは分からないが、少なくとも100年は経っているのにいまでも綺麗な状態であることからとても大切に使われてきたのがわかる。
物腰が上品で、男の人なのにすごく美人で、サラサラの髪からは椿のいい香りがする。
たくさんの神様の中でも特に面倒見がよく、こうして毎日髪をすきに来てくれるのだ。
「陽凪様、あちらを見てくださいませ。」
不意に梳が外を指さす。
蕾の膨らみ始めた庭の桜の木に、薄い緑の小鳥が一羽とまっていた。
「…あれが鶯?」
確か緑系統の色でうぐいす色というのがあった。
鳥の色が由来なんだと感心していると、いいえ、と梳が首を横にふる。
「あれはメジロです。色はたしかにうぐいす色ですが、鳴き声をよく聞いてみてください」
「…?たしかにホーホケキョじゃない」
「はい。メジロの由来は目の周りが白いことにありまして……」
子鳥のさえずりと春風、そして木漏れ日のような柔らかい微笑みを浮かべた梳の勉強会。
早く起きるのも悪くない、と心の中で密かに微笑んだが、その後朝食の用意ができるまで正座のまま聞き続けることになるとは思いもしない陽凪だった。
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