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12.得も言われぬような
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「エヴ」
囁いて軽く口付けるわたしに、エヴは大きく目を瞠った。それから、渾身の力でぎゅうと抱き縋る。思えば、こんなふうにわたしからエヴにキスをしたことなど、いちどたりとも無かったのだ。
「ケリー……」
とろりと目を伏せたエヴが、吐息混じりにわたしを呼んだ。
「ケリー」
今度はエヴがわたしにキスをする。そっと、確かめるように。
「本当に、僕のそばに? ずっと?」
「ああ……約束する、エヴ。けどね、どちらかといえば、君のほうこそこんなおばさんは嫌だと言い出すんじゃないかって、とても怖いよ」
「そんなこと、言うはずがありません」
まるで、絶対に離さないとでもいうかのように抱き締めるエヴの腕は、かすかに震えていた。わたしはくすりと笑う。
「最初にケリーが僕を見つけたあの日からずっと、ケリーは僕にとって特別なんです。そんなこと、絶対言うはずがない」
何度もキスを繰り返しながら、エヴは囁いた。
「特別?」
「あの日、ケリーがはじめて僕を見て、名前を呼んでくれました。ケリーだけが僕を僕としてくれたんです」
それはやっぱり、最初に優しくしたのがたまたまわたしだけだったからではないのか。ちらりとそう考えて、けれど、陶然とわたしを見つめるエヴの目に、もう何も言えなくなってしまう。
「ケリー」
唇を重ねると、エヴの舌が入り込んできた。
口内をゆっくりと舌先でなぞりながら、エヴの手が背中を辿る。ぷつり、ぷつりとドレスを留めるボタンを外し、紐を解いていく。
頬にキスをして、首にキスをして……ドレスをずらしながら顔を下ろし、エヴはわたしの肌を啄ばんでいく。
もういい歳だし、ずっと部屋にこもってろくに動かなかった身体はあちこち緩んでいるはずだ。なのに、エヴはまるで高価で美しい宝飾品でも前にしたかのような表情で、じっと見つめるのだ。
とうとうドレスをすべて取り払い、あられもなく下着のみになったわたしを、エヴはベッドに横たえた。自分も部屋着を脱ぎ去り、少し痩せてしまった身体をさらけ出す。
「ケリー、愛してます」
泣きそうな顔で、エヴが囁いた。この子はこうして行き場のないものをずっと抱えて、ここまで来てしまったのか。
わたしはエヴの頬をするりと撫でる。
「エヴ、わたしはひとつ訂正しなきゃいけない」
「ケリー?」
エヴが不安そうに、怪訝そうに首を傾げる。
「たぶんね、エヴ。わたしは君のことが好きだよ」
「ケリー……?」
「わたしもたいがいだな……ことここに及んでもまだ、自分のことがよくわからないなんて。でもね、エヴ。わたしは、君のことが好きだと思うんだ」
エヴは息を呑み、大きく目を見開いた。
ぽたりと、わたしの上に雫が落ちる。
「そんな……」
「歯切れが悪くてすまない。自分でももやもやしていてはっきりしないんだ。でも、そういうことなんだと思う」
わたしは手を伸ばし、そっとエヴの目を指で拭う。
「なんだか思春期の子供みたいだ。わたしもいい歳だというのに」
苦笑するわたしにエヴはふるふると頭を振ると、胸に顔を埋めた。
「ケリー……愛してます、ケリー」
少し癖のある金の髪を梳くように撫でて、わたしはエヴの顔を引き寄せた。両手で頬を挟み、ケリーとわたしを呼ぶエヴの唇を塞ぐ。
今まではただ耳を塞ぎ聞かなかったことにして拒否するばかりだったエヴの言葉を、今日は素直に受け取れる。わたしはなんて臆病だったのだろうか。
少し乾いてかさつくエヴの手のひらが、わたしの身体を滑る。何度も何度もキスを繰り返すうちに、じわじわと息が上がっていく。
は、と息を吐いて、また舌を絡める。
「エヴ」
視線が交わり、わたしは、ふっと笑みを浮かべる。
「君とこうしているのは、悪くない」
エヴも小さく笑む。その顔を見て、込み上げてくるものを感じて……。
「いや、違うな。悪くないどころじゃない」
ちゅ、と音を立ててエヴの唇を啄む。
「なんだか幸福感が湧いてくるんだ。わたしは、“たぶん”じゃなくて、たしかに君に惚れてるってことなんだろう」
たちまちエヴの顔が蕩けるように笑み崩れた。「ケリー」と呟いて、荒々しくわたしの唇にむしゃぶりつく。
焦れたように下着を取り払い、幾度か指を滑らせて潤いを確かめると、余裕を無くしたように性急に割り入った。
中を擦られる心地よさに、ん、とわたしの喉から小さく声が漏れる。
「エヴ、焦りすぎだ」
「だって、ケリー。早く、ひとつになりたくて」
エヴはそう掠れ声で応えると、動かずにじっと、両腕でしっかりとわたしを抱き締めていた。まるで、このままこうしていれば、ふたり融け合ってひとつになるとでも思っているかのように。
「ケリー、愛してます」
エヴはわたしの耳に何度も囁く。
その度に、つまらない思い込みと意地で以前は押し込めていた気持ちがふわふわと湧き上がってくるのを感じて、なんだかこそばゆくなる。
「あの、金貨」
「ケリー?」
「君と引き換えに渡された金貨。ひとつも使ってない……使えなかった」
ほんのりと眉尻を下げて見上げるわたしを、エヴがじっと見返す。
「君のためだからと言い訳をしながら、売るみたいに君を引き渡したことを、わたしはずっと後悔していたんだ」
「ケリー、そんなこと……」
「だから、部屋の片隅に押しやったまま、箱を開けることもできなかった。
金貨を見れば、きっと思い出してしまう。
わたしは君を売ったひどい人間で、君が思うような者ではなくて……君に恨まれていることを思い出してしまうから」
戸惑うエヴに、わたしは小さく笑う。
「あの町で、お師匠さんが亡くなってからずっとわたしはひとりだったから、君を拾ってずっと浮かれてたんだ。君と一緒の生活は楽しかったし、その……夜を共にするのも嫌じゃなかった。むしろ、ひとりじゃないと感じられることが嬉しかった……と思う」
「ケリー」
エヴが愛おしげに目を細め、わたしにキスをする。内に入ったエヴがわずかに擦れて、小さく吐息が漏れる。
「ただ、君はいつかいなくなるし、所詮これはいっときのものでしかないと思ってた。だから、君を迎えに来たと言われてすぐ、これで君との暮らしはもう終わりなんだなと考えてしまった。
……あの時、わたしは恐れずに君の意思を聞くべきだったんだな」
「もう、いいんです」
エヴの手がわたしの顔を撫でる。何度も何度も頬を擦り、唇で触れる。小さく奥を突かれて、わたしの内がエヴを締め付ける。
「……僕は生まれた時からずっと、いないものとされてきました」
「いない?」
思わず目を瞠ると、エヴはわずかに目を伏せた。
「殺せば、悪魔憑きがいたことが知れて外聞が悪いから、殺さない。けれど、色違いの紅い右目には悪魔が憑いてるのは間違いない。だから表に出してはいけないし、誰かと交わってもいけない。
僕はずっと、小さな別館に閉じ込められて忘れられていたんです」
「そんな……そんなの、迷信じゃないか。本当に悪魔がというなら、どうして教会の手を借りないんだ。そうすれば、すぐに違うとわかったのに」
公爵家の嫡子として大切に育てられたのではなかったのか。エヴは聡明な子供で、迎えに来たものの口ぶりではそんなことを感じさせなかったのに。
「それも外聞が悪かったんでしょうね。僕みたいに変な目の子供が公爵家に産まれたこと自体、恥ずべきことだったんです」
エヴは笑むように目を細める。
「だから、いないものなら本当にいなくなっても構わないだろうと、15になった日にここを出ました。外のことはあまり知らなかったけれど、書物で読んだことをもとに、慎重に行動すればどうにかなるのではないかと期待して」
「無茶なことを考えて……ひと買いに捕まらなくて良かったな」
「そうですね。僕は運が良かったんだと思います」
またキスをする。
キスをするたび、わたしの内はエヴを抱き締めるように締め付ける。
「最低限の教育だけはされていたので、魔術師なら悪魔憑きでも弟子にしてくれるのではと、あちこち訪ねてみたりもしました。けれど、どこでも断られて、僕の目が気味悪いと雇うものも現れず……とうとう食い詰めて途方に暮れていた時に、あなたが僕を見つけてくれたんです。
……僕を見つけてくれたのがあなたで、本当に良かった」
また、エヴは蕩けそうに笑む。
「それはやっぱり、たまたまわたしだったってだけなんじゃ……っ、ん」
強く内を突き上げられて、わたしの言葉が止まる。
「いえ。ケリーだから……あなた以外の誰でもなく、あなただったからです。
ケリー、愛してます」
「エヴ、っ、あっ」
掻き回すように、強く抉るように腰を動かされて、わたしの頭の中はすぐにどろどろに蕩けてしまった。
あ、と短く声を上げて縋るように腕を回すと、エヴは「愛してます」と繰り返してわたしの唇を塞ぐ。口内をじっくり確かめるように舌を這わせ、両の手で余すところなく身体を探り、奥を穿つ。
「エヴ、エヴ……あっ」
「ケリー。愛してます、ケリー」
は、は、と息を弾ませるエヴを、わたしは抱き締める。肌を湿らせる汗と、どくどく脈打つ鼓動を感じて、ほう、と吐息を漏らす。
乳房を捏ねられ、先端を転がされ、キスをされながら奥を突かれて、得も言われぬ喜びに身体が熱くなる。
「エヴ……っ」
ああ、と声を上げて悶えるわたしを、エヴが愛おしげに見つめる。
目を細め、「愛してます」を繰り返すエヴに、わたしはキスを返す。
わたしの心の中には、言い訳めいた言葉ばかりがあれこれと浮かんで消えて……結局のところ、わたしがエヴを拒みきれなかったのは、わたしがエヴに溺れていたからなのに。10も歳下の、寂しがりの少年に。
「エヴ、わたしも君のことが好きだよ」
エヴは幸福そうに微笑んで、わたしに口付ける。
アルマス様とカタリーナ様がふたたびエヴを訪ねてきたのは、それから5日後のことだった。
囁いて軽く口付けるわたしに、エヴは大きく目を瞠った。それから、渾身の力でぎゅうと抱き縋る。思えば、こんなふうにわたしからエヴにキスをしたことなど、いちどたりとも無かったのだ。
「ケリー……」
とろりと目を伏せたエヴが、吐息混じりにわたしを呼んだ。
「ケリー」
今度はエヴがわたしにキスをする。そっと、確かめるように。
「本当に、僕のそばに? ずっと?」
「ああ……約束する、エヴ。けどね、どちらかといえば、君のほうこそこんなおばさんは嫌だと言い出すんじゃないかって、とても怖いよ」
「そんなこと、言うはずがありません」
まるで、絶対に離さないとでもいうかのように抱き締めるエヴの腕は、かすかに震えていた。わたしはくすりと笑う。
「最初にケリーが僕を見つけたあの日からずっと、ケリーは僕にとって特別なんです。そんなこと、絶対言うはずがない」
何度もキスを繰り返しながら、エヴは囁いた。
「特別?」
「あの日、ケリーがはじめて僕を見て、名前を呼んでくれました。ケリーだけが僕を僕としてくれたんです」
それはやっぱり、最初に優しくしたのがたまたまわたしだけだったからではないのか。ちらりとそう考えて、けれど、陶然とわたしを見つめるエヴの目に、もう何も言えなくなってしまう。
「ケリー」
唇を重ねると、エヴの舌が入り込んできた。
口内をゆっくりと舌先でなぞりながら、エヴの手が背中を辿る。ぷつり、ぷつりとドレスを留めるボタンを外し、紐を解いていく。
頬にキスをして、首にキスをして……ドレスをずらしながら顔を下ろし、エヴはわたしの肌を啄ばんでいく。
もういい歳だし、ずっと部屋にこもってろくに動かなかった身体はあちこち緩んでいるはずだ。なのに、エヴはまるで高価で美しい宝飾品でも前にしたかのような表情で、じっと見つめるのだ。
とうとうドレスをすべて取り払い、あられもなく下着のみになったわたしを、エヴはベッドに横たえた。自分も部屋着を脱ぎ去り、少し痩せてしまった身体をさらけ出す。
「ケリー、愛してます」
泣きそうな顔で、エヴが囁いた。この子はこうして行き場のないものをずっと抱えて、ここまで来てしまったのか。
わたしはエヴの頬をするりと撫でる。
「エヴ、わたしはひとつ訂正しなきゃいけない」
「ケリー?」
エヴが不安そうに、怪訝そうに首を傾げる。
「たぶんね、エヴ。わたしは君のことが好きだよ」
「ケリー……?」
「わたしもたいがいだな……ことここに及んでもまだ、自分のことがよくわからないなんて。でもね、エヴ。わたしは、君のことが好きだと思うんだ」
エヴは息を呑み、大きく目を見開いた。
ぽたりと、わたしの上に雫が落ちる。
「そんな……」
「歯切れが悪くてすまない。自分でももやもやしていてはっきりしないんだ。でも、そういうことなんだと思う」
わたしは手を伸ばし、そっとエヴの目を指で拭う。
「なんだか思春期の子供みたいだ。わたしもいい歳だというのに」
苦笑するわたしにエヴはふるふると頭を振ると、胸に顔を埋めた。
「ケリー……愛してます、ケリー」
少し癖のある金の髪を梳くように撫でて、わたしはエヴの顔を引き寄せた。両手で頬を挟み、ケリーとわたしを呼ぶエヴの唇を塞ぐ。
今まではただ耳を塞ぎ聞かなかったことにして拒否するばかりだったエヴの言葉を、今日は素直に受け取れる。わたしはなんて臆病だったのだろうか。
少し乾いてかさつくエヴの手のひらが、わたしの身体を滑る。何度も何度もキスを繰り返すうちに、じわじわと息が上がっていく。
は、と息を吐いて、また舌を絡める。
「エヴ」
視線が交わり、わたしは、ふっと笑みを浮かべる。
「君とこうしているのは、悪くない」
エヴも小さく笑む。その顔を見て、込み上げてくるものを感じて……。
「いや、違うな。悪くないどころじゃない」
ちゅ、と音を立ててエヴの唇を啄む。
「なんだか幸福感が湧いてくるんだ。わたしは、“たぶん”じゃなくて、たしかに君に惚れてるってことなんだろう」
たちまちエヴの顔が蕩けるように笑み崩れた。「ケリー」と呟いて、荒々しくわたしの唇にむしゃぶりつく。
焦れたように下着を取り払い、幾度か指を滑らせて潤いを確かめると、余裕を無くしたように性急に割り入った。
中を擦られる心地よさに、ん、とわたしの喉から小さく声が漏れる。
「エヴ、焦りすぎだ」
「だって、ケリー。早く、ひとつになりたくて」
エヴはそう掠れ声で応えると、動かずにじっと、両腕でしっかりとわたしを抱き締めていた。まるで、このままこうしていれば、ふたり融け合ってひとつになるとでも思っているかのように。
「ケリー、愛してます」
エヴはわたしの耳に何度も囁く。
その度に、つまらない思い込みと意地で以前は押し込めていた気持ちがふわふわと湧き上がってくるのを感じて、なんだかこそばゆくなる。
「あの、金貨」
「ケリー?」
「君と引き換えに渡された金貨。ひとつも使ってない……使えなかった」
ほんのりと眉尻を下げて見上げるわたしを、エヴがじっと見返す。
「君のためだからと言い訳をしながら、売るみたいに君を引き渡したことを、わたしはずっと後悔していたんだ」
「ケリー、そんなこと……」
「だから、部屋の片隅に押しやったまま、箱を開けることもできなかった。
金貨を見れば、きっと思い出してしまう。
わたしは君を売ったひどい人間で、君が思うような者ではなくて……君に恨まれていることを思い出してしまうから」
戸惑うエヴに、わたしは小さく笑う。
「あの町で、お師匠さんが亡くなってからずっとわたしはひとりだったから、君を拾ってずっと浮かれてたんだ。君と一緒の生活は楽しかったし、その……夜を共にするのも嫌じゃなかった。むしろ、ひとりじゃないと感じられることが嬉しかった……と思う」
「ケリー」
エヴが愛おしげに目を細め、わたしにキスをする。内に入ったエヴがわずかに擦れて、小さく吐息が漏れる。
「ただ、君はいつかいなくなるし、所詮これはいっときのものでしかないと思ってた。だから、君を迎えに来たと言われてすぐ、これで君との暮らしはもう終わりなんだなと考えてしまった。
……あの時、わたしは恐れずに君の意思を聞くべきだったんだな」
「もう、いいんです」
エヴの手がわたしの顔を撫でる。何度も何度も頬を擦り、唇で触れる。小さく奥を突かれて、わたしの内がエヴを締め付ける。
「……僕は生まれた時からずっと、いないものとされてきました」
「いない?」
思わず目を瞠ると、エヴはわずかに目を伏せた。
「殺せば、悪魔憑きがいたことが知れて外聞が悪いから、殺さない。けれど、色違いの紅い右目には悪魔が憑いてるのは間違いない。だから表に出してはいけないし、誰かと交わってもいけない。
僕はずっと、小さな別館に閉じ込められて忘れられていたんです」
「そんな……そんなの、迷信じゃないか。本当に悪魔がというなら、どうして教会の手を借りないんだ。そうすれば、すぐに違うとわかったのに」
公爵家の嫡子として大切に育てられたのではなかったのか。エヴは聡明な子供で、迎えに来たものの口ぶりではそんなことを感じさせなかったのに。
「それも外聞が悪かったんでしょうね。僕みたいに変な目の子供が公爵家に産まれたこと自体、恥ずべきことだったんです」
エヴは笑むように目を細める。
「だから、いないものなら本当にいなくなっても構わないだろうと、15になった日にここを出ました。外のことはあまり知らなかったけれど、書物で読んだことをもとに、慎重に行動すればどうにかなるのではないかと期待して」
「無茶なことを考えて……ひと買いに捕まらなくて良かったな」
「そうですね。僕は運が良かったんだと思います」
またキスをする。
キスをするたび、わたしの内はエヴを抱き締めるように締め付ける。
「最低限の教育だけはされていたので、魔術師なら悪魔憑きでも弟子にしてくれるのではと、あちこち訪ねてみたりもしました。けれど、どこでも断られて、僕の目が気味悪いと雇うものも現れず……とうとう食い詰めて途方に暮れていた時に、あなたが僕を見つけてくれたんです。
……僕を見つけてくれたのがあなたで、本当に良かった」
また、エヴは蕩けそうに笑む。
「それはやっぱり、たまたまわたしだったってだけなんじゃ……っ、ん」
強く内を突き上げられて、わたしの言葉が止まる。
「いえ。ケリーだから……あなた以外の誰でもなく、あなただったからです。
ケリー、愛してます」
「エヴ、っ、あっ」
掻き回すように、強く抉るように腰を動かされて、わたしの頭の中はすぐにどろどろに蕩けてしまった。
あ、と短く声を上げて縋るように腕を回すと、エヴは「愛してます」と繰り返してわたしの唇を塞ぐ。口内をじっくり確かめるように舌を這わせ、両の手で余すところなく身体を探り、奥を穿つ。
「エヴ、エヴ……あっ」
「ケリー。愛してます、ケリー」
は、は、と息を弾ませるエヴを、わたしは抱き締める。肌を湿らせる汗と、どくどく脈打つ鼓動を感じて、ほう、と吐息を漏らす。
乳房を捏ねられ、先端を転がされ、キスをされながら奥を突かれて、得も言われぬ喜びに身体が熱くなる。
「エヴ……っ」
ああ、と声を上げて悶えるわたしを、エヴが愛おしげに見つめる。
目を細め、「愛してます」を繰り返すエヴに、わたしはキスを返す。
わたしの心の中には、言い訳めいた言葉ばかりがあれこれと浮かんで消えて……結局のところ、わたしがエヴを拒みきれなかったのは、わたしがエヴに溺れていたからなのに。10も歳下の、寂しがりの少年に。
「エヴ、わたしも君のことが好きだよ」
エヴは幸福そうに微笑んで、わたしに口付ける。
アルマス様とカタリーナ様がふたたびエヴを訪ねてきたのは、それから5日後のことだった。
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