神託の乙女になりました

ぎんげつ

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三日目 ー1

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 翌朝は、思ったとおり顔はぱんぱんにむくみ瞼は腫れ上がり……イリヴァーラに「ちょっと酷いわね」といきなり呆れられてしまうくらいだった。

「冷やして治めるにも時間がかかるし、どうしようかしら。またマント被って抱えて歩くわけにもいかないし」

 思案顔のイリヴァーラに、なんとなく小さくなってぺこりと頭を下げてしまう。

「原因に責任取って貰いましょう」

 原因? と首を傾げる私にイリヴァーラはにっこり笑うと、「そうね、それがいいわ。あなたはシーツを被ったままここで待っててちょうだい」と部屋を出て行った。

「ルカ、怪我をしてたのかい!?」

 ──と思ったら、すぐにばたばたとカイルが飛び込んできた。
 慌てた彼にシーツをめくられそうになって、必死で押さえる。こんなみっともない顔は見られたくない。

「カイル、つべこべ言わずそのままルカに“癒し”をやって。シーツはめくるの禁止よ。かすり傷を治す程度でいいわ」

 カイルの後ろからイリヴァーラが入ってきたようだ。
 原因て、つまりカイルのことなのか。
 彼はどうも納得がいかない風に「どういうことなんだ」と呟いてから私に手を当てて、祈りの言葉のようなものを呟いた。当てられた手からふんわりと暖かいものが伝わってきて、瞼のひりひりした痛みがすうっと引いていく。
 イリヴァーラがシーツを覗き込んで私の顔を確かめ、「よし、もう大丈夫ね」と微笑んだ。

「じゃ、カイルはもう用済みよ。身支度をするから出ててちょうだい」
「説明もないのか?」

 うるさいわねとぐいぐいとまた戸口に押しやられたカイルは、「いったい何だったんだ」と言いながら、また外へと追い出されてしまった。

「少しは解消できたのかしら?
 ナイアラはあれで話をするのがうまい子だから、あなたの気持ちが晴れるといいんだけど。
 さ、さっさと身支度しましょう」

 そう言ってイリヴァーラは今日も私の着替えを手伝いながら、「それにしても」と溜息を吐いた。

「カイルには困ったものだわ。なんでもかんでも神に結びつけなきゃいけないのも、限度があるでしょうに」

 ぶつぶつと言いながら、どんどん服の紐を結んでいく。

「あれでも悪気は皆無だし、朴念仁なだけなのよ。勘弁してあげてね。
 間違いなく、あなたのこと一番気にかけているのはカイルだから。使命は抜きにしてね」

 そうだといいんだけれど、と思うより前に、カイルは皆に好かれているんだなと感じる。

 小さく溜息を吐いて、皆が“使命だけじゃない”という言葉が本当だったらいいな、と考えて、ああ、自分は結構カイルのことが好きなのかと、やっと思い至った。
 会ってからたったの丸2日。やっと3日目に入ろうというところなのに……こんなに自分が惚れっぽかったことはないし、もしかして吊橋効果ってやつなのだろうか。
 危険な目には、十分すぎるくらい遭ってるからなあ。

 ぼんやりとそんなことを考えているうちに身支度が整い、食堂に下りた。

 昨日決めたように、聞き取りの魔法が掛かってるのは私とカイルだけだ。
 よく考えてみたら、それもイリヴァーラが主にカイルに気を遣った結果だったのだろう。

「女子トーク、したいな」
「ん?」

 ふと思いついて口に出して、いいかもしれないと思えてきた。今日は“深淵の都”という大都市に到着するし、しばらくはそこに滞在する予定だ。ナイアラとイリヴァーラと、女の子だけ3人で話をする機会を作れるだろう。

「カイル、イリヴァーラとナイアラに、都に着いたら、女の子だけ3人でゆっくり話をしようって伝えて」

 カイルは目をぱちくりと瞬かせて、戸惑いながらふたりに伝えてくれた。
 イリヴァーラは「あら、面白そうね」と笑い、ナイアラも「いいねえー」と目を細める。ふたりとは、もっと仲良くなれるんじゃないかと思えた。
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