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困った子だね
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明かりは持たずに部屋を出た。
廊下は暗く、窓からほんのり射し込む月明かりだけが頼りだ。
階段はすぐそばだし、間取りも頭に入っている。暗いところも、手探りでなんとかなるだろう。
室内履きに、夜着の上に毛織のストールを引っ掛けただけで、ヘルッタはそっと歩き出す。小さな酒瓶と用意しておいたものを入れた袋を抱え、床板が鳴らないよう、足音を立てないよう、慎重に慎重に歩を進めて、ノエの部屋の前までやってくる。
扉に耳を当てて、中がしんと静まり返っていることを確認する。そっと把手を動かしてみると、鍵はかかっていなかった。
軽く押すだけで、キ……と、微かな音を立てて、扉が開く。
なんだか不用心だな、とだけ考えて、ヘルッタは扉の隙間からするりと部屋の中へと入った。
月光に透かしてじっと中を窺う。
部屋の作りは、ヘルッタのものとほぼ同じようだ。それなら、部屋の奥にベッドがあるだろう。
目を眇め、闇を透かし見て、置いてあるものに気をつけながら、ヘルッタは部屋の中を進み……。
「ノエ」
毛布に包まったまま熟睡しているノエを見つけてにんまりと笑った。
以前パルヴィがイェルハルドにしたことを聞いてはいたが、ノエを縛るのも同様に、羊より簡単なことだった。
きっと、一度寝たら起きないタイプなのだろう。何しろ、縛りつけている最中、これっぽっちも起きる気配がなく寝こけたままだったのだから。
少し拍子抜けしたけれど、万事つつがなく進んだほうがいいことに間違いはない。ヘルッタは仰向けになったノエの顔を覗き込む。
ノエが起きない以上、夫婦のキスはよくわからないままだ。だから、いつも部屋に送ってくれる時のように、おやすみなさいのキスのように、唇を合わせる。
自分からするのは、あの最初に掠めた時以来だ。
ノエがいつもしてくれる時のことを思い出しながら、ヘルッタはキスをする。少し斜めにずらしてしっかりと、ぴったりと触れ合うように。
ん、とノエが小さく声を漏らした。
まだ目を覚まされては困る。
蜜酒の瓶を傍らのテーブルに置いて、ヘルッタは、ノエが起きてしまう前にさっさと脱がせにかかる。
レンは、確か“既成事実”と言っていた。
町では、婚約の有無に関わらず結婚前に子作りをしたら、“既成事実”と呼んで結婚したことと同じ扱いになるのだという。
子作りは夫婦がするものだ。だから、夫婦がすることをしたから即ち夫婦と、たぶんそういうことなんだろう。
だったら、先に教えて欲しかった。
さっさとノエと子作りを済ませて、もう夫婦だと言い張ったのに。
夜着の紐を解き、ノエの前をはだける。
“谷”の男たちには全然及ばないけれど、それでも幾分か鍛えてはいるんだろう。思ったよりもしっかりと引き締まった、たくましい身体が現れた。
細いけど、決して筋肉がないわけじゃない。
ヘルッタは興味津々に、手のひらを滑らせる。
「全然違う」
本では見ていたし、診察中に患者の身体がちらりと見えたこともあった。
でも、暗いとはいえ、実物をこんなに間近で見るのは初めてだ。もちろん、こんな風にじっくり撫で回すことも初めてだ。
さらりとしていて滑らかで、しかも自分と全然違って柔らかくない。
もう片手を自分のお腹に当て、ノエのお腹と触り比べながら、男の身体とはこんなふうになっているのかとしみじみ感心する。
胸だって全然違う。
ほんのりと膨らんで柔らかくなった自分の胸と、平らで、全然柔らかくないノエの胸。男は子供に乳をやる必要がないから膨らまないと聞いた。
けれど……するりと撫でた手のひらに、ぽっちりと小さな粒が引っかかる。けれど、どうして男にも乳首があるんだろうか。
指先でくすぐるようにそこにふれると、ノエの身体がぴくりと震えた。
小さく呻くように、ノエが深く深く息を吐く。どことなく艶を帯びているようで、もやもやとはっきりしない気持ちが湧き上がってくる。なんとなく、お腹の底がむずむずするような落ち着かないような気持ちだ。
初めて感じる気持ちに、ヘルッタは小さく首を傾げる。
「うん」
ヘルッタは頷くと、ストールを置いて自分も夜着を脱ぎ捨てた。
ゆっくりと、踏んでしまわないよう気をつけながらノエのお腹の上を跨いで、伸し掛かるようにもう一度キスをして、「ノエ」と呼ぶ。
傍らの蜜酒を取ってきゅぽんと栓を抜くと、ひと口煽った。
これを飲めば、初めての女でも痛くなることはないし、万が一その気がなくても、すぐにその気になって子作りができる。
“谷”の呪術師謹製のそれはすぐに効果を表した。身体の奥から熱が湧き出して、さっきのもやもやがなんともいえない感覚に変わる。
息を吐き、ふるりと身体を震わせて、もうひと口を口に含んだ。未だに眠り続けるノエの顎を掴んで少し開かせ、しっかりとノエと唇を合わせる。
隙間から舌を差し込んで、含んだ酒がこぼれないように注ぎ入れて……ノエがごくりと飲み込んだことを確認して、にんまりと笑った。
ゆっくり手を伸ばした先には、さっきまでくたりとしていたノエの雄が熱を持ち始めていた。ふにゃりと柔らかかったものが、ヘルッタの手で触れているうちに、だんだんと固くまっすぐに起き上がってくる。
これならちゃんとできそうだ、と、ヘルッタは少し嬉しくなる。
「ノエ、まだ起きないの?」
くにくにと触りながら、ヘルッタは囁く。
これが十分に固くなったら自分の中に入れるのだ。そうすれば契りは交わされて、晴れてふたりは夫婦となる。
ノエが、小さくくぐもった、呻くような声を漏らした。
「ノエ、起きて」
契りを交わす時はちゃんと起きていてくれなきゃ困る。だから、肩を少し揺り動かしてヘルッタはノエを呼んだ。
ぴくりとノエの身体が震える。
はあっと吐息を漏らして、ノエの眉が軽く顰められて、また小さく唸って……ノエがうっすらと目を開けた。
「え……? っ、は」
目の前で微笑むヘルッタを見上げて、不思議そうにぼんやりと見つめる。
それからヘルッタの手に擦られ続けたいきり勃つものがびくんと揺れて、今度ははっきりと大きく目を見開いた。
「は、ヘルッ……くっ」
「ノエ、起きたね」
きゅっと握られぞくりとする快楽が湧き上がり、声を上げそうになったノエはとっさに口を噤む。
くちゅりと音がして、その部分にぬるりという感触が伝わる。
このへん? と呟きながら、ヘルッタが、掴んだノエの猛りの向きを、自分の股間に向けて調節していた。
先端が、今度ははっきりとヘルッタの秘裂をなぞる。またくちゅりと音が立ち、ノエがぴくりと身体を震わせる。
「く、何を、ヘルッタ」
「先に契ってもいいって聞いたの。そしたら、もう夫婦なんだよね」
ぬるりという感触にちゃんと濡れていることがわかり、ヘルッタは笑う。
ノエが触れているだけで、ぞくぞくする気持ち良さで腰が勝手に動き出しそうだ。いつまでもこうして触れていたい。けれど、それではいつまでも夫婦の契りが終わらないと思い直す。
はあ、と口をついて漏れた吐息が熱い。
「ま、待った。待て、落ち着くんだ」
「やだ。私、落ち着いてるもの。それに、私はもう大人なのよ。ちゃんと教えてもらったし、大丈夫」
ぎし、と軋む音と自由にならない手足にようやく縛られていると気付いて、ノエは焦る。縄の結び目はしっかりしていて、びくともしない。
その間に、ここかなと呟いて入り口にしっかりあてがうと、ヘルッタはゆっくりと腰を下ろして……。
「く、あっ、ヘルッタ!」
「ん……なんか、うまく……」
ぬるりと滑ってしまった。
さっき飲んだ蜜酒のおかげで、あとからあとから溢れてはいる。あてがったノエが欲しいと疼いて、ひくひくと中が蠢いている。
けれど。
「んっ……ん」
「ヘルッタ」
「んん……」
何度も入れようとするが、その度に滑ってノエの猛りが逃げてしまう。どうにか捉えたと思っても逃げてしまうから、入らない。
――解しも慣らしもしていないせいで、入口が狭すぎるのだ。
ぬるぬるぬるぬる。
滑るだけで、いっこうに入れることができない。焦りだけが募っていく。
「ヘルッタ……く、うっ」
中途半端な刺激に身体の中心に点った火は大きくなるばかりだ。悶えても悶えても、本当に欲しいものがもらえない。
「んん……あ、ノエ……っ」
とうとうぱたりと倒れ込んで、ヘルッタはノエにしがみつく。ヘルッタに腰を擦り付け続けられたノエは、ギシギシと縄を軋ませ身を捩らせる。
なんとか縄を緩めて外せないかと……けれど、やみくもに引っ張ったところでますます締まるだけだ。縄が解ける気配はない。
「ヘルッタ……ヘルッタ、こっちを見て」
「んっ、ノエ……」
のろのろと顔を上げたヘルッタの目には、涙がいっぱいに溜まっていた。思わず息を呑むノエの首にしがみつくように、ヘルッタが身体をずらす。
「もっと、上手にできるはずだったの。なのに、ちゃんとできないの」
「ヘルッタ」
は、は、と息を吐くヘルッタの目から、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。
「ノエの妻になりたいのに、上手にできないの」
「ヘルッタ……」
「私、これじゃノエの妻になれない」
ノエが小さく息を吐く。
首を伸ばして、「おいで」とキスをする。
「ノエ」
「ヘルッタ……縄を解いて」
「ノエ? でも……」
「縄を解くんだ、ヘルッタ」
少し強い調子の声にびくりと震えたヘルッタが見上げると、ノエはもう一度キスをして、「解くんだ」と囁いた。
ヘルッタは、おそるおそる手を伸ばして、綱の端を引っ張る。
たちまち縄が緩んで、ノエの手が自由になる。
「ノエ……」
「ヘルッタ、僕に何を飲ませた?」
さっきから不自然なくらいに熱を感じるのは、この、口の中に残る花のような香りの何かが原因だろう。
ヘルッタの肌が触れるだけで、声が漏れそうになるくらい気持ちいい。
「あの、あの……蜜酒……契りの夜に飲めば痛くならないし、それに、緊張しないで、ちゃんとできるからって、“谷”を出る時に、お母さんとお姉ちゃんが持たせてくれて、だから私……」
なるほどそれか、とノエはおもむろに身体を起こした。
目を閉じて、二、三祈りの聖句を呟いて無理やり気持ちを落ち着かせる。
ヘルッタを抱えたまま首に掛けた聖印を握り締め、祈りの聖句を唱え……たちまち身体を冒す熱が引いて、ノエはほっと息を吐いた。
短く息を切らしながら、ヘルッタが不安げに見ている。ゆらゆらと瞳を揺らしながら、じっとノエを見つめている。
その身体はほんのりと汗ばんでいて、皮膚がしっとりと吸い付くように張り付いてくる。成長途中の身体も、もう十分に柔らかい。
ヘルッタを抱えたまま、ノエは手を伸ばす。
するりと足首の拘束を解いて、そのままヘルッタを横たえる。
「ヘルッタ、苦しいかい?」
答えられず、きょろきょろと視線を泳がせると、ノエがキスをした。
その手が下に降りて、指先がヘルッタのぬかるみに軽く触れた。ノエの指がゆっくりとなぞるように動く。くちくちとかすかな水音が聞こえて、さっきよりもっとはっきりとした“気持ちいい”という感覚が湧き上がる。
ヘルッタは大きく目を見開いたまま、ふるふると首を振った。
ノエの顔がとても近くて、心臓がドキドキする。
軽く触れるだけじゃなく、もっとたくさん触って欲しくて、ノエの指に押し当てようと腰が浮いてしまう。
「――あっ」
急に強く指に押されて、ビリビリと痺れるような快感が背を走った。
ノエの指に、秘裂の前のほう……ヘルッタの敏感な肉芽をくるりと擦られて、身体が痙攣する。
「あ、あっ、ノエ……っ」
目を潤ませて、ぱくぱくと喘ぐヘルッタの唇をノエが塞ぐ。
舌を差し入れられて、ねっとりと絡みつかれて、内側の粘膜を擽られて、それがとても気持ち良くて、頭がぼうっとする。
ノエの琥珀色の目に覗き込まれて、魅入られたように視線が動かせない。
「どうしてこんなことをした?」
ひとしきり口内を蹂躙したノエがそっと唇を離し、抑えた口調で尋ねる。
その低い低い声に、ヘルッタはびくりと震えてしまう。
やっぱり怒っているのだろうか。
本当は結婚したくないけど、ヘルッタがしつこくねだるから断れずにいたところへ、こうして婚儀も行わないうちに契りを交わそうとしたから。
でも、ヘルッタはどうしても、どうしてもノエと結婚したかったのだ。
「だって」
ヘルッタはぶんぶんと思い切り頭を振る。
「だって、だって……私、ノエの妻になりたくて」
「どうして」
「私、ノエのこと好きだもの。ノエの妻になって、ノエの息子を産んで、ノエに喜んで欲しいの」
ヘルッタの潤んだ目からぽろりと涙がこぼれ、ノエは大きく溜息を吐く。
「――困った子だね」
「ん、っ」
再びノエに唇を塞がれて、ヘルッタは小さく声を漏らした。
廊下は暗く、窓からほんのり射し込む月明かりだけが頼りだ。
階段はすぐそばだし、間取りも頭に入っている。暗いところも、手探りでなんとかなるだろう。
室内履きに、夜着の上に毛織のストールを引っ掛けただけで、ヘルッタはそっと歩き出す。小さな酒瓶と用意しておいたものを入れた袋を抱え、床板が鳴らないよう、足音を立てないよう、慎重に慎重に歩を進めて、ノエの部屋の前までやってくる。
扉に耳を当てて、中がしんと静まり返っていることを確認する。そっと把手を動かしてみると、鍵はかかっていなかった。
軽く押すだけで、キ……と、微かな音を立てて、扉が開く。
なんだか不用心だな、とだけ考えて、ヘルッタは扉の隙間からするりと部屋の中へと入った。
月光に透かしてじっと中を窺う。
部屋の作りは、ヘルッタのものとほぼ同じようだ。それなら、部屋の奥にベッドがあるだろう。
目を眇め、闇を透かし見て、置いてあるものに気をつけながら、ヘルッタは部屋の中を進み……。
「ノエ」
毛布に包まったまま熟睡しているノエを見つけてにんまりと笑った。
以前パルヴィがイェルハルドにしたことを聞いてはいたが、ノエを縛るのも同様に、羊より簡単なことだった。
きっと、一度寝たら起きないタイプなのだろう。何しろ、縛りつけている最中、これっぽっちも起きる気配がなく寝こけたままだったのだから。
少し拍子抜けしたけれど、万事つつがなく進んだほうがいいことに間違いはない。ヘルッタは仰向けになったノエの顔を覗き込む。
ノエが起きない以上、夫婦のキスはよくわからないままだ。だから、いつも部屋に送ってくれる時のように、おやすみなさいのキスのように、唇を合わせる。
自分からするのは、あの最初に掠めた時以来だ。
ノエがいつもしてくれる時のことを思い出しながら、ヘルッタはキスをする。少し斜めにずらしてしっかりと、ぴったりと触れ合うように。
ん、とノエが小さく声を漏らした。
まだ目を覚まされては困る。
蜜酒の瓶を傍らのテーブルに置いて、ヘルッタは、ノエが起きてしまう前にさっさと脱がせにかかる。
レンは、確か“既成事実”と言っていた。
町では、婚約の有無に関わらず結婚前に子作りをしたら、“既成事実”と呼んで結婚したことと同じ扱いになるのだという。
子作りは夫婦がするものだ。だから、夫婦がすることをしたから即ち夫婦と、たぶんそういうことなんだろう。
だったら、先に教えて欲しかった。
さっさとノエと子作りを済ませて、もう夫婦だと言い張ったのに。
夜着の紐を解き、ノエの前をはだける。
“谷”の男たちには全然及ばないけれど、それでも幾分か鍛えてはいるんだろう。思ったよりもしっかりと引き締まった、たくましい身体が現れた。
細いけど、決して筋肉がないわけじゃない。
ヘルッタは興味津々に、手のひらを滑らせる。
「全然違う」
本では見ていたし、診察中に患者の身体がちらりと見えたこともあった。
でも、暗いとはいえ、実物をこんなに間近で見るのは初めてだ。もちろん、こんな風にじっくり撫で回すことも初めてだ。
さらりとしていて滑らかで、しかも自分と全然違って柔らかくない。
もう片手を自分のお腹に当て、ノエのお腹と触り比べながら、男の身体とはこんなふうになっているのかとしみじみ感心する。
胸だって全然違う。
ほんのりと膨らんで柔らかくなった自分の胸と、平らで、全然柔らかくないノエの胸。男は子供に乳をやる必要がないから膨らまないと聞いた。
けれど……するりと撫でた手のひらに、ぽっちりと小さな粒が引っかかる。けれど、どうして男にも乳首があるんだろうか。
指先でくすぐるようにそこにふれると、ノエの身体がぴくりと震えた。
小さく呻くように、ノエが深く深く息を吐く。どことなく艶を帯びているようで、もやもやとはっきりしない気持ちが湧き上がってくる。なんとなく、お腹の底がむずむずするような落ち着かないような気持ちだ。
初めて感じる気持ちに、ヘルッタは小さく首を傾げる。
「うん」
ヘルッタは頷くと、ストールを置いて自分も夜着を脱ぎ捨てた。
ゆっくりと、踏んでしまわないよう気をつけながらノエのお腹の上を跨いで、伸し掛かるようにもう一度キスをして、「ノエ」と呼ぶ。
傍らの蜜酒を取ってきゅぽんと栓を抜くと、ひと口煽った。
これを飲めば、初めての女でも痛くなることはないし、万が一その気がなくても、すぐにその気になって子作りができる。
“谷”の呪術師謹製のそれはすぐに効果を表した。身体の奥から熱が湧き出して、さっきのもやもやがなんともいえない感覚に変わる。
息を吐き、ふるりと身体を震わせて、もうひと口を口に含んだ。未だに眠り続けるノエの顎を掴んで少し開かせ、しっかりとノエと唇を合わせる。
隙間から舌を差し込んで、含んだ酒がこぼれないように注ぎ入れて……ノエがごくりと飲み込んだことを確認して、にんまりと笑った。
ゆっくり手を伸ばした先には、さっきまでくたりとしていたノエの雄が熱を持ち始めていた。ふにゃりと柔らかかったものが、ヘルッタの手で触れているうちに、だんだんと固くまっすぐに起き上がってくる。
これならちゃんとできそうだ、と、ヘルッタは少し嬉しくなる。
「ノエ、まだ起きないの?」
くにくにと触りながら、ヘルッタは囁く。
これが十分に固くなったら自分の中に入れるのだ。そうすれば契りは交わされて、晴れてふたりは夫婦となる。
ノエが、小さくくぐもった、呻くような声を漏らした。
「ノエ、起きて」
契りを交わす時はちゃんと起きていてくれなきゃ困る。だから、肩を少し揺り動かしてヘルッタはノエを呼んだ。
ぴくりとノエの身体が震える。
はあっと吐息を漏らして、ノエの眉が軽く顰められて、また小さく唸って……ノエがうっすらと目を開けた。
「え……? っ、は」
目の前で微笑むヘルッタを見上げて、不思議そうにぼんやりと見つめる。
それからヘルッタの手に擦られ続けたいきり勃つものがびくんと揺れて、今度ははっきりと大きく目を見開いた。
「は、ヘルッ……くっ」
「ノエ、起きたね」
きゅっと握られぞくりとする快楽が湧き上がり、声を上げそうになったノエはとっさに口を噤む。
くちゅりと音がして、その部分にぬるりという感触が伝わる。
このへん? と呟きながら、ヘルッタが、掴んだノエの猛りの向きを、自分の股間に向けて調節していた。
先端が、今度ははっきりとヘルッタの秘裂をなぞる。またくちゅりと音が立ち、ノエがぴくりと身体を震わせる。
「く、何を、ヘルッタ」
「先に契ってもいいって聞いたの。そしたら、もう夫婦なんだよね」
ぬるりという感触にちゃんと濡れていることがわかり、ヘルッタは笑う。
ノエが触れているだけで、ぞくぞくする気持ち良さで腰が勝手に動き出しそうだ。いつまでもこうして触れていたい。けれど、それではいつまでも夫婦の契りが終わらないと思い直す。
はあ、と口をついて漏れた吐息が熱い。
「ま、待った。待て、落ち着くんだ」
「やだ。私、落ち着いてるもの。それに、私はもう大人なのよ。ちゃんと教えてもらったし、大丈夫」
ぎし、と軋む音と自由にならない手足にようやく縛られていると気付いて、ノエは焦る。縄の結び目はしっかりしていて、びくともしない。
その間に、ここかなと呟いて入り口にしっかりあてがうと、ヘルッタはゆっくりと腰を下ろして……。
「く、あっ、ヘルッタ!」
「ん……なんか、うまく……」
ぬるりと滑ってしまった。
さっき飲んだ蜜酒のおかげで、あとからあとから溢れてはいる。あてがったノエが欲しいと疼いて、ひくひくと中が蠢いている。
けれど。
「んっ……ん」
「ヘルッタ」
「んん……」
何度も入れようとするが、その度に滑ってノエの猛りが逃げてしまう。どうにか捉えたと思っても逃げてしまうから、入らない。
――解しも慣らしもしていないせいで、入口が狭すぎるのだ。
ぬるぬるぬるぬる。
滑るだけで、いっこうに入れることができない。焦りだけが募っていく。
「ヘルッタ……く、うっ」
中途半端な刺激に身体の中心に点った火は大きくなるばかりだ。悶えても悶えても、本当に欲しいものがもらえない。
「んん……あ、ノエ……っ」
とうとうぱたりと倒れ込んで、ヘルッタはノエにしがみつく。ヘルッタに腰を擦り付け続けられたノエは、ギシギシと縄を軋ませ身を捩らせる。
なんとか縄を緩めて外せないかと……けれど、やみくもに引っ張ったところでますます締まるだけだ。縄が解ける気配はない。
「ヘルッタ……ヘルッタ、こっちを見て」
「んっ、ノエ……」
のろのろと顔を上げたヘルッタの目には、涙がいっぱいに溜まっていた。思わず息を呑むノエの首にしがみつくように、ヘルッタが身体をずらす。
「もっと、上手にできるはずだったの。なのに、ちゃんとできないの」
「ヘルッタ」
は、は、と息を吐くヘルッタの目から、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。
「ノエの妻になりたいのに、上手にできないの」
「ヘルッタ……」
「私、これじゃノエの妻になれない」
ノエが小さく息を吐く。
首を伸ばして、「おいで」とキスをする。
「ノエ」
「ヘルッタ……縄を解いて」
「ノエ? でも……」
「縄を解くんだ、ヘルッタ」
少し強い調子の声にびくりと震えたヘルッタが見上げると、ノエはもう一度キスをして、「解くんだ」と囁いた。
ヘルッタは、おそるおそる手を伸ばして、綱の端を引っ張る。
たちまち縄が緩んで、ノエの手が自由になる。
「ノエ……」
「ヘルッタ、僕に何を飲ませた?」
さっきから不自然なくらいに熱を感じるのは、この、口の中に残る花のような香りの何かが原因だろう。
ヘルッタの肌が触れるだけで、声が漏れそうになるくらい気持ちいい。
「あの、あの……蜜酒……契りの夜に飲めば痛くならないし、それに、緊張しないで、ちゃんとできるからって、“谷”を出る時に、お母さんとお姉ちゃんが持たせてくれて、だから私……」
なるほどそれか、とノエはおもむろに身体を起こした。
目を閉じて、二、三祈りの聖句を呟いて無理やり気持ちを落ち着かせる。
ヘルッタを抱えたまま首に掛けた聖印を握り締め、祈りの聖句を唱え……たちまち身体を冒す熱が引いて、ノエはほっと息を吐いた。
短く息を切らしながら、ヘルッタが不安げに見ている。ゆらゆらと瞳を揺らしながら、じっとノエを見つめている。
その身体はほんのりと汗ばんでいて、皮膚がしっとりと吸い付くように張り付いてくる。成長途中の身体も、もう十分に柔らかい。
ヘルッタを抱えたまま、ノエは手を伸ばす。
するりと足首の拘束を解いて、そのままヘルッタを横たえる。
「ヘルッタ、苦しいかい?」
答えられず、きょろきょろと視線を泳がせると、ノエがキスをした。
その手が下に降りて、指先がヘルッタのぬかるみに軽く触れた。ノエの指がゆっくりとなぞるように動く。くちくちとかすかな水音が聞こえて、さっきよりもっとはっきりとした“気持ちいい”という感覚が湧き上がる。
ヘルッタは大きく目を見開いたまま、ふるふると首を振った。
ノエの顔がとても近くて、心臓がドキドキする。
軽く触れるだけじゃなく、もっとたくさん触って欲しくて、ノエの指に押し当てようと腰が浮いてしまう。
「――あっ」
急に強く指に押されて、ビリビリと痺れるような快感が背を走った。
ノエの指に、秘裂の前のほう……ヘルッタの敏感な肉芽をくるりと擦られて、身体が痙攣する。
「あ、あっ、ノエ……っ」
目を潤ませて、ぱくぱくと喘ぐヘルッタの唇をノエが塞ぐ。
舌を差し入れられて、ねっとりと絡みつかれて、内側の粘膜を擽られて、それがとても気持ち良くて、頭がぼうっとする。
ノエの琥珀色の目に覗き込まれて、魅入られたように視線が動かせない。
「どうしてこんなことをした?」
ひとしきり口内を蹂躙したノエがそっと唇を離し、抑えた口調で尋ねる。
その低い低い声に、ヘルッタはびくりと震えてしまう。
やっぱり怒っているのだろうか。
本当は結婚したくないけど、ヘルッタがしつこくねだるから断れずにいたところへ、こうして婚儀も行わないうちに契りを交わそうとしたから。
でも、ヘルッタはどうしても、どうしてもノエと結婚したかったのだ。
「だって」
ヘルッタはぶんぶんと思い切り頭を振る。
「だって、だって……私、ノエの妻になりたくて」
「どうして」
「私、ノエのこと好きだもの。ノエの妻になって、ノエの息子を産んで、ノエに喜んで欲しいの」
ヘルッタの潤んだ目からぽろりと涙がこぼれ、ノエは大きく溜息を吐く。
「――困った子だね」
「ん、っ」
再びノエに唇を塞がれて、ヘルッタは小さく声を漏らした。
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