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ふたりで仲良く
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ヨニは森へ行ってしまった。
とても呆気なく。
ノエに同行してもらい、ヨニを送るためにヘルッタも森を訪れた。
もっと恐ろしい場所なんだと想像していたのに恐ろしさのかけらもない場所で、ヘルッタは驚きにただ呆然とするばかりだった。
見たことのないほど大きな木々に、見たことのないほど青々と繁った草。これから冬へ向かう季節だというのに、氷原ではあり得ないほどの暖かさ。
ヘルッタには、暖かいを通り越して暑いとすら感じられるほどで……さらに驚いたのは、地面から湧き出る温かい水だ。
エルナンに連れられてあれこれとここのことを説明されているヨニを、ヘルッタはじっと眺めている。
「森って、こんなところだったんだ……」
妖精たちは皆親切で、子供を取り替えて食べてしまうなんてただの御伽噺だった。森は、“女王”の治める氷原よりもずっと優しい場所だった。
ヨニは、妖精の子になってずっと森で暮らしたほうが幸せなんじゃないか。ヘルッタは、ついそんなことを考えてノエにぎゅっと抱き着いてしまう。
「ヘルッタ?」
不安そうに見上げるヘルッタを、ノエが優しく抱き寄せた。
「ほら、森妖精は怖くないだろう?」
こくんと頷くヘルッタの背を、ノエは優しく撫でる。
「ここならヨニの身体にあまり負担なく暮らせそうだ。あとは、ゆっくり体力を付けながら大人になれば、ヨニが病気にかかることもなくなっていくよ」
「うん」
「ヨニなら、きっと強くもなれる。賢い子だからね」
「うん」
抱き着いたままのヘルッタにノエは少し背を屈めた。
「大丈夫だよ、ヘルッタ。僕が付いてる。ヨニにもまたすぐに会える。だから、寂しくないよ」
ノエは、パッと顔を上げたヘルッタの額にキスをして、大丈夫だと繰り返す。
「――うん」
ノエはやっぱり大人だ。
ただ頷くだけのヘルッタを抱き上げて、肩に顔を伏せさせる。
「来年には、“都”からもう少し神官を派遣してもらえるから、僕が教会を空けても大丈夫になるんだ」
「うん」
「だから、いつでもヘルッタの会いたい時に会いに来よう」
甘えるようにしがみつくヘルッタの背をよしよしと宥めながら、ノエは走り寄るヨニを振り返った。
“森の祭司”が作った森の道を通れば、町から森へ行くのも森から町へ帰るのも、ほんの半日程度というところだった。
魔術師の魔術とどう違うのか――ヘルッタにはよくわからなかったけれど、これなら確かに行き来も簡単だ。
簡単だけど、ヘルッタがひとりで訪ねるにはやはり遠すぎる。
施療院に帰り着いたのは、もうずいぶん遅くなってからだった。
あらかじめ届けていなければ、町の門をくぐるなんてとてもできないくらい、夜も更けていた。
暗い部屋に灯をともして、部屋着に替えて湯を沸かしてお茶を入れて、ようやく人心地ついたところで、ノエはヘルッタに手を延べた。
「ヘルッタ、おいで」
「ノエ」
その手に誘われるように、ヘルッタはノエにしがみつく。ヨニがここを出ると決まってからずっと三人で寝ていたけれど、今日からはまたふたりだ。
ヘルッタを抱えるようにして、ノエはベッドの端に腰を下ろした。それから傍らの小さなテーブルに置いたお茶のカップを取り、ヘルッタの前に差し出す。
「熱いから、気をつけて」
こくんと頷いて、ヘルッタはカップを受けとった。
木をくり抜いて削ったカップは、この町でよく使われている品だ。カップを通して伝わる熱で、手のひらから指先までがじんわりと温かい。
ふうふうと息を吹きかけてゆっくりひと口飲み込むと、お腹の中もじんわりと暖かくなった。ほ、と息を吐いて、ヘルッタはもうひと口飲み込む。
そうか、ヘルッタは一度だけでなく二度、家族と離れることになったんだと、ここに来てノエはようやく思い至った。
「あのね、ノエ」
「うん?」
寄りかかって身体を預けるヘルッタを、ノエは腕の中にすっぽりと抱え込み、耳を寄せる。
「ノエはずっとここにいるんだよね」
「そうだよ」
頭を凭せて甘えるヘルッタを優しく抱き締めて、ノエへと顔を向けさせた。赤い染料で模様を描いた額にそっとキスを落として、にっこりと笑う。
「ヘルッタは僕の奥さんになるんだろう? なら、ずっと一緒だよ。それこそ、死ぬまで一緒だ。末長く、ね」
「うん――うん、ノエ」
ヘルッタは身体を捻って抱きついた。ノエは手のカップを慌てて取り上げて、テーブルに置くと、もう一度しっかりと抱き締め返す。
ねだるように顔を上げられて、ノエはヘルッタの唇にキスを落とした。
甘やかすように、何度も何度も優しく啄ばむうちに、キスはだんだんと深さを増していく。
「ノエ」
とうとう、ノエはヘルッタを抱えたまま仰向けにベッドに倒れ込んだ。ノエのお腹に乗せられたヘルッタは、楽しげに顔を擦り寄せる。
「あのね、ノエ」
「なに?」
内緒話のように囁くヘルッタをノエが引き寄せる。
「私、ノエが大好き」
ノエは軽く目を見開いて、それから破顔する。
「僕もだよ、ヘルッタ」
「ほんとう?」
「ほんとうだ」
うふふと笑って、ヘルッタはノエの首にしがみつき、それからちゅうっと音を立ててキスをした。
「あのね、レン様がね」
「うん?」
「もう少ししたら、私はうんときれいに育つだろうって言ったの。だから、楽しみにしててね」
「そうか」
「今よりもっと胸も腰もたっぷりになって、うんときれいになって、ノエの息子もたくさん産むからね」
「わかった、楽しみにしているよ」
くすりと笑って、ノエはキスを返した。
身体を起こして、「だから大丈夫」とヘルッタを抱き締める。
「ノエ?」
「さっきも言ったろう? 僕はヘルッタとずっと一緒だよ」
「うん、ノエ」
ノエはくるりと身体を入れ替える。そのままヘルッタを横たえ、覆い被さって、ノエは何度もキスを繰り返す。
くすぐったそうに首を竦めるヘルッタが「ノエ、大好き」と腕を伸ばすと、ノエの顔には、急にどこか逡巡するような苦笑が浮かんだ。
「――困った」
「どうしたの、ノエ」
何か困るようなことでもあったろうか。ヘルッタが心配そうに首を傾げる。
ノエはじっとヘルッタを見下ろしている。
「僕の大人としての良識と常識が自重しろと言っているのに、どうにも自重できそうにないんだ」
「じちょう?」
「ヘルッタは成人までまだ一年と少し残っているし、身体も成長し切っていないだろう? だから慎めと僕の理性は言うんだけど……」
「ノエ、難しく言われてもよくわからないよ」
「うん、そうだね」
ノエはキスをする。深く、深く……息を吐くのも追い付かず、溺れるというのはこんな感じだろうかと、ヘルッタはぼんやりと考える。
不意に離れたノエの唇が、滑るようにヘルッタの首筋を移動した。ちゅ、と音を立てて吸われた場所が、ちりっと痛んだ。
部屋着の前は、いつの間にかはだけられていた。
「んっ、ノエ……」
じわじわと湧き上がる気持ち良さに、ヘルッタは身悶える。ノエの手と唇が身体じゅうに優しく触れる。
ひくんと身体が跳ねて、ヘルッタは小さく声を漏らした。脚の間の秘めた場所は、まだ触れられてもいないのにとろりと蕩けて蜜を滲ませている。
きゅっと抱き寄せようとするヘルッタを制して、ノエは自分の衣服も緩める。ヘルッタよりもずっと濃い、褐色に近い色の肌が露わになる。
北方ではほとんど見ない色の肌だ。
その色を見てほっとするようになったのは、いつからだろう。
「どうした?」
「ん……私、ノエの妻になってよかったなって考えてたの。ノエは?」
「僕も、ヘルッタが妻でよかったと思っているよ」
ヘルッタが、幸せだと呟いてへらりと笑う。
北へ来たばかりの頃、イェルハルドに向かって妻はまだ幼いのだから自重しろと偉そうに述べたはずなのに、これではノエも同じではないか。
けれど、身体を這い回るノエの手は止まらない。ヘルッタの熱もどんどん高まり、疼きに変わっていく。
ノエが欲しい。
ヘルッタは、衝動のままに手を伸ばしてノエに触れた。ヘルッタとは違う平らな身体をするりと撫でながら、下へと滑らせる。
「く、ヘルッタ」
触れたそこは、すでに固く勃ち上がっていた。びくりと引いた腰を追いかけて、ヘルッタの手がそれを撫でる。
「ヘルッタ……っ」
「私、ちゃんといい妻になれるようにって、教わったから」
きゅっと握られ、扱くように動かされて、ノエの腰が揺れてしまう。
「夫を悦ばせるのは、妻の役目だもの」
「ヘルッタ、そういうのは、いいから……」
たまらず手を取ったノエに、ヘルッタが頬を膨らませる。
「私、ちゃんと気持ちよくできるよ?」
「うん。わかった。でも、そういうのは婚儀が終わってからにしよう。それに、婚儀までは“子供ができないやり方”だけのつもりだからね」
「でも、私、早く息子が産みたい」
ノエは、はあ、と気を落ち着かせるように息を吐く。
「ヘルッタ。僕はヘルッタが大切で、だからヘルッタの身体が心配なんだ」
「でも、もう私だってちゃんと大人だし……町の年齢にはなってないけど、ちゃんと月の血篭りもあって、子供も産めるようになってるもの」
「君はまだ成長期で、これからもっともっと大人になる。
――考えてごらん? どんな体格の母親でも、生まれてくる子供の大きさはそれほど変わらないんだ。なら、身体が大きい方が負担も軽くなるだろう?」
「ん……」
「君はまだこれから背も伸びるし、それに胸も腰もこれからたっぷりになるんだ。それから産んだって遅くはないよ」
納得したような騙されたような、そんな不思議な心持ちで、ヘルッタはじっとノエを見つめた。
「それにね、ヘルッタ」
「――んっ」
ノエの手が、ヘルッタの敏感な場所を擽った。背を走る快感に、ヘルッタの肌がたちまち朱に染まる。
「子供ができたら忙しくなってしまうだろう? もうしばらく、ふたりだけで一緒にゆっくりできてもいいと思うんだ」
「んっ、でも、なかなか子供を産まない妻は……」
「ここは町だよ、ヘルッタ。町なら、婚儀から何年もたって子供が産まれるなんて普通だ。遅いからって文句を言う人なんて、誰もいない」
「そうなの?」
驚いて紅潮した顔を上げると、ノエはくすくす笑いながら頷いた。
「それに、夫の願いを叶えるのも妻の役目だろう? 僕が、しばらくはふたりきりを楽しみたいと言ってるのに、叶えてくれないつもりかい?」
「わか……あっ」
ぞくんと、息苦しくなるほどの気持ちよさに身体が大きく震える。いつのまにか、ヘルッタの濡れそぼった秘裂に、ノエの雄が強く押し付けられていた。
「あっ、ノエ、あっ」
押し付けたノエの太竿が、ヘルッタの潤んだところを捏ね回すように擦り上げる。ヘルッタは息を荒げてひくひくと震えた。
気持ちよくて、意識がノエのそれにばかり向かってしまう。
気持ちよさに頭がぼんやりして、ノエの身体にしがみ付いて、あ、あ、と短く声を上げることしかできない。
汗を浮かべたノエがヘルッタを覗き込んでいる。
ノエのくびれがヘルッタの敏感な芽を引っ掛けて、痺れるような快楽を次から次へと生み出していく。
ノエが急に身を屈めて、ヘルッタの膨らみかけた胸の小さな頂きにキスをした。舌で転がすように舐めて、吸って……同時に、指先が疼く芽を強く摘む。
「あ、あっ……あっ、ノエ、ノエ……っ!」
大きく跳ねるヘルッタを、ノエは押さえ込む。脚をしっかり閉じさせて、挟んだ自身をヘルッタに擦り付けながら、強く腰を打ち付けた。
嬌声を上げるヘルッタの顔に、ぽたりとノエの汗が滴り落ちる。
「は、ヘルッタ……っ」
ノエはヘルッタの両腿をしっかりと抱え込んだ。
堪えるように歯を食いしばって、何度も何度も腰を打ち付けて……小さく声を漏らして急に動きを止めた。
ヘルッタの上に、ノエの熱が迸る。
「――なんだか、もったいない」
「もったいない?」
倒れこんで覆い被さったまま、ノエは深呼吸を繰り返して息を整えている。
ヘルッタが、腹の上に散ったままの白濁を、指先でちょいと掬い取った。
「だって、せっかくのノエの子種なのに」
ヘルッタは指先の白い粘液を見つめながら、唇を尖らせた。これを中に貰えばすぐに息子を産めるのに、とでも言いたげだ。
いかに説得されたところで、“谷”で培った価値観を変えるには、やはり時間がかかるのだ。
「ヘルッタがちゃんと育ったら、いくらでも好きなだけあげるよ」
「うん」
「だから、今は、ふたりだけで仲良くしよう」
「うん」
ノエが望んでいるのだとわかってはいても、やっぱりどこか不満げなヘルッタを抱き上げて、ノエは浴室へと向かった。
とても呆気なく。
ノエに同行してもらい、ヨニを送るためにヘルッタも森を訪れた。
もっと恐ろしい場所なんだと想像していたのに恐ろしさのかけらもない場所で、ヘルッタは驚きにただ呆然とするばかりだった。
見たことのないほど大きな木々に、見たことのないほど青々と繁った草。これから冬へ向かう季節だというのに、氷原ではあり得ないほどの暖かさ。
ヘルッタには、暖かいを通り越して暑いとすら感じられるほどで……さらに驚いたのは、地面から湧き出る温かい水だ。
エルナンに連れられてあれこれとここのことを説明されているヨニを、ヘルッタはじっと眺めている。
「森って、こんなところだったんだ……」
妖精たちは皆親切で、子供を取り替えて食べてしまうなんてただの御伽噺だった。森は、“女王”の治める氷原よりもずっと優しい場所だった。
ヨニは、妖精の子になってずっと森で暮らしたほうが幸せなんじゃないか。ヘルッタは、ついそんなことを考えてノエにぎゅっと抱き着いてしまう。
「ヘルッタ?」
不安そうに見上げるヘルッタを、ノエが優しく抱き寄せた。
「ほら、森妖精は怖くないだろう?」
こくんと頷くヘルッタの背を、ノエは優しく撫でる。
「ここならヨニの身体にあまり負担なく暮らせそうだ。あとは、ゆっくり体力を付けながら大人になれば、ヨニが病気にかかることもなくなっていくよ」
「うん」
「ヨニなら、きっと強くもなれる。賢い子だからね」
「うん」
抱き着いたままのヘルッタにノエは少し背を屈めた。
「大丈夫だよ、ヘルッタ。僕が付いてる。ヨニにもまたすぐに会える。だから、寂しくないよ」
ノエは、パッと顔を上げたヘルッタの額にキスをして、大丈夫だと繰り返す。
「――うん」
ノエはやっぱり大人だ。
ただ頷くだけのヘルッタを抱き上げて、肩に顔を伏せさせる。
「来年には、“都”からもう少し神官を派遣してもらえるから、僕が教会を空けても大丈夫になるんだ」
「うん」
「だから、いつでもヘルッタの会いたい時に会いに来よう」
甘えるようにしがみつくヘルッタの背をよしよしと宥めながら、ノエは走り寄るヨニを振り返った。
“森の祭司”が作った森の道を通れば、町から森へ行くのも森から町へ帰るのも、ほんの半日程度というところだった。
魔術師の魔術とどう違うのか――ヘルッタにはよくわからなかったけれど、これなら確かに行き来も簡単だ。
簡単だけど、ヘルッタがひとりで訪ねるにはやはり遠すぎる。
施療院に帰り着いたのは、もうずいぶん遅くなってからだった。
あらかじめ届けていなければ、町の門をくぐるなんてとてもできないくらい、夜も更けていた。
暗い部屋に灯をともして、部屋着に替えて湯を沸かしてお茶を入れて、ようやく人心地ついたところで、ノエはヘルッタに手を延べた。
「ヘルッタ、おいで」
「ノエ」
その手に誘われるように、ヘルッタはノエにしがみつく。ヨニがここを出ると決まってからずっと三人で寝ていたけれど、今日からはまたふたりだ。
ヘルッタを抱えるようにして、ノエはベッドの端に腰を下ろした。それから傍らの小さなテーブルに置いたお茶のカップを取り、ヘルッタの前に差し出す。
「熱いから、気をつけて」
こくんと頷いて、ヘルッタはカップを受けとった。
木をくり抜いて削ったカップは、この町でよく使われている品だ。カップを通して伝わる熱で、手のひらから指先までがじんわりと温かい。
ふうふうと息を吹きかけてゆっくりひと口飲み込むと、お腹の中もじんわりと暖かくなった。ほ、と息を吐いて、ヘルッタはもうひと口飲み込む。
そうか、ヘルッタは一度だけでなく二度、家族と離れることになったんだと、ここに来てノエはようやく思い至った。
「あのね、ノエ」
「うん?」
寄りかかって身体を預けるヘルッタを、ノエは腕の中にすっぽりと抱え込み、耳を寄せる。
「ノエはずっとここにいるんだよね」
「そうだよ」
頭を凭せて甘えるヘルッタを優しく抱き締めて、ノエへと顔を向けさせた。赤い染料で模様を描いた額にそっとキスを落として、にっこりと笑う。
「ヘルッタは僕の奥さんになるんだろう? なら、ずっと一緒だよ。それこそ、死ぬまで一緒だ。末長く、ね」
「うん――うん、ノエ」
ヘルッタは身体を捻って抱きついた。ノエは手のカップを慌てて取り上げて、テーブルに置くと、もう一度しっかりと抱き締め返す。
ねだるように顔を上げられて、ノエはヘルッタの唇にキスを落とした。
甘やかすように、何度も何度も優しく啄ばむうちに、キスはだんだんと深さを増していく。
「ノエ」
とうとう、ノエはヘルッタを抱えたまま仰向けにベッドに倒れ込んだ。ノエのお腹に乗せられたヘルッタは、楽しげに顔を擦り寄せる。
「あのね、ノエ」
「なに?」
内緒話のように囁くヘルッタをノエが引き寄せる。
「私、ノエが大好き」
ノエは軽く目を見開いて、それから破顔する。
「僕もだよ、ヘルッタ」
「ほんとう?」
「ほんとうだ」
うふふと笑って、ヘルッタはノエの首にしがみつき、それからちゅうっと音を立ててキスをした。
「あのね、レン様がね」
「うん?」
「もう少ししたら、私はうんときれいに育つだろうって言ったの。だから、楽しみにしててね」
「そうか」
「今よりもっと胸も腰もたっぷりになって、うんときれいになって、ノエの息子もたくさん産むからね」
「わかった、楽しみにしているよ」
くすりと笑って、ノエはキスを返した。
身体を起こして、「だから大丈夫」とヘルッタを抱き締める。
「ノエ?」
「さっきも言ったろう? 僕はヘルッタとずっと一緒だよ」
「うん、ノエ」
ノエはくるりと身体を入れ替える。そのままヘルッタを横たえ、覆い被さって、ノエは何度もキスを繰り返す。
くすぐったそうに首を竦めるヘルッタが「ノエ、大好き」と腕を伸ばすと、ノエの顔には、急にどこか逡巡するような苦笑が浮かんだ。
「――困った」
「どうしたの、ノエ」
何か困るようなことでもあったろうか。ヘルッタが心配そうに首を傾げる。
ノエはじっとヘルッタを見下ろしている。
「僕の大人としての良識と常識が自重しろと言っているのに、どうにも自重できそうにないんだ」
「じちょう?」
「ヘルッタは成人までまだ一年と少し残っているし、身体も成長し切っていないだろう? だから慎めと僕の理性は言うんだけど……」
「ノエ、難しく言われてもよくわからないよ」
「うん、そうだね」
ノエはキスをする。深く、深く……息を吐くのも追い付かず、溺れるというのはこんな感じだろうかと、ヘルッタはぼんやりと考える。
不意に離れたノエの唇が、滑るようにヘルッタの首筋を移動した。ちゅ、と音を立てて吸われた場所が、ちりっと痛んだ。
部屋着の前は、いつの間にかはだけられていた。
「んっ、ノエ……」
じわじわと湧き上がる気持ち良さに、ヘルッタは身悶える。ノエの手と唇が身体じゅうに優しく触れる。
ひくんと身体が跳ねて、ヘルッタは小さく声を漏らした。脚の間の秘めた場所は、まだ触れられてもいないのにとろりと蕩けて蜜を滲ませている。
きゅっと抱き寄せようとするヘルッタを制して、ノエは自分の衣服も緩める。ヘルッタよりもずっと濃い、褐色に近い色の肌が露わになる。
北方ではほとんど見ない色の肌だ。
その色を見てほっとするようになったのは、いつからだろう。
「どうした?」
「ん……私、ノエの妻になってよかったなって考えてたの。ノエは?」
「僕も、ヘルッタが妻でよかったと思っているよ」
ヘルッタが、幸せだと呟いてへらりと笑う。
北へ来たばかりの頃、イェルハルドに向かって妻はまだ幼いのだから自重しろと偉そうに述べたはずなのに、これではノエも同じではないか。
けれど、身体を這い回るノエの手は止まらない。ヘルッタの熱もどんどん高まり、疼きに変わっていく。
ノエが欲しい。
ヘルッタは、衝動のままに手を伸ばしてノエに触れた。ヘルッタとは違う平らな身体をするりと撫でながら、下へと滑らせる。
「く、ヘルッタ」
触れたそこは、すでに固く勃ち上がっていた。びくりと引いた腰を追いかけて、ヘルッタの手がそれを撫でる。
「ヘルッタ……っ」
「私、ちゃんといい妻になれるようにって、教わったから」
きゅっと握られ、扱くように動かされて、ノエの腰が揺れてしまう。
「夫を悦ばせるのは、妻の役目だもの」
「ヘルッタ、そういうのは、いいから……」
たまらず手を取ったノエに、ヘルッタが頬を膨らませる。
「私、ちゃんと気持ちよくできるよ?」
「うん。わかった。でも、そういうのは婚儀が終わってからにしよう。それに、婚儀までは“子供ができないやり方”だけのつもりだからね」
「でも、私、早く息子が産みたい」
ノエは、はあ、と気を落ち着かせるように息を吐く。
「ヘルッタ。僕はヘルッタが大切で、だからヘルッタの身体が心配なんだ」
「でも、もう私だってちゃんと大人だし……町の年齢にはなってないけど、ちゃんと月の血篭りもあって、子供も産めるようになってるもの」
「君はまだ成長期で、これからもっともっと大人になる。
――考えてごらん? どんな体格の母親でも、生まれてくる子供の大きさはそれほど変わらないんだ。なら、身体が大きい方が負担も軽くなるだろう?」
「ん……」
「君はまだこれから背も伸びるし、それに胸も腰もこれからたっぷりになるんだ。それから産んだって遅くはないよ」
納得したような騙されたような、そんな不思議な心持ちで、ヘルッタはじっとノエを見つめた。
「それにね、ヘルッタ」
「――んっ」
ノエの手が、ヘルッタの敏感な場所を擽った。背を走る快感に、ヘルッタの肌がたちまち朱に染まる。
「子供ができたら忙しくなってしまうだろう? もうしばらく、ふたりだけで一緒にゆっくりできてもいいと思うんだ」
「んっ、でも、なかなか子供を産まない妻は……」
「ここは町だよ、ヘルッタ。町なら、婚儀から何年もたって子供が産まれるなんて普通だ。遅いからって文句を言う人なんて、誰もいない」
「そうなの?」
驚いて紅潮した顔を上げると、ノエはくすくす笑いながら頷いた。
「それに、夫の願いを叶えるのも妻の役目だろう? 僕が、しばらくはふたりきりを楽しみたいと言ってるのに、叶えてくれないつもりかい?」
「わか……あっ」
ぞくんと、息苦しくなるほどの気持ちよさに身体が大きく震える。いつのまにか、ヘルッタの濡れそぼった秘裂に、ノエの雄が強く押し付けられていた。
「あっ、ノエ、あっ」
押し付けたノエの太竿が、ヘルッタの潤んだところを捏ね回すように擦り上げる。ヘルッタは息を荒げてひくひくと震えた。
気持ちよくて、意識がノエのそれにばかり向かってしまう。
気持ちよさに頭がぼんやりして、ノエの身体にしがみ付いて、あ、あ、と短く声を上げることしかできない。
汗を浮かべたノエがヘルッタを覗き込んでいる。
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ノエが急に身を屈めて、ヘルッタの膨らみかけた胸の小さな頂きにキスをした。舌で転がすように舐めて、吸って……同時に、指先が疼く芽を強く摘む。
「あ、あっ……あっ、ノエ、ノエ……っ!」
大きく跳ねるヘルッタを、ノエは押さえ込む。脚をしっかり閉じさせて、挟んだ自身をヘルッタに擦り付けながら、強く腰を打ち付けた。
嬌声を上げるヘルッタの顔に、ぽたりとノエの汗が滴り落ちる。
「は、ヘルッタ……っ」
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堪えるように歯を食いしばって、何度も何度も腰を打ち付けて……小さく声を漏らして急に動きを止めた。
ヘルッタの上に、ノエの熱が迸る。
「――なんだか、もったいない」
「もったいない?」
倒れこんで覆い被さったまま、ノエは深呼吸を繰り返して息を整えている。
ヘルッタが、腹の上に散ったままの白濁を、指先でちょいと掬い取った。
「だって、せっかくのノエの子種なのに」
ヘルッタは指先の白い粘液を見つめながら、唇を尖らせた。これを中に貰えばすぐに息子を産めるのに、とでも言いたげだ。
いかに説得されたところで、“谷”で培った価値観を変えるには、やはり時間がかかるのだ。
「ヘルッタがちゃんと育ったら、いくらでも好きなだけあげるよ」
「うん」
「だから、今は、ふたりだけで仲良くしよう」
「うん」
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