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停戦協定
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「で、これを全部受け取らないと、終わったことにはならないと」
目の前には、大きな目をいっぱいに開いて自分をじっと見つめる若い娘が五人並んでいた。その後ろで、丸太のような腕を持つ厳つい戦士を数人従えた使者が、しかつめらしい顔でイェルハルドに頷く。
北方の開拓村から始まったこの“霧氷の町”と、“凍れる地”とも呼ばれる北方氷土に古くから住む蛮族である“北爪谷の民”の争いは、半年の戦いを経て町側の勝利に終わった。
力と地の利ではもちろん蛮族側にあった。だが、町には魔術師もいたし、南の“凍らずの町”と戦神教会の助けもあったのだ。町を取り囲む高い壁もある。
だから、町の勝利自体は予想通りであったのだが……予想に反してかろうじての勝利であり、双方の痛み分けに近い決着でもあった。
それゆえに、今、この場……つまり、領主の屋敷の広間で、もうこんな争いなど起こらないようにと、いわば戦後処理の取り決めを行っているところだ。
それにしたってお互いの常識が違いすぎて、その常識をすり合わせてどうにか合意を取るだけで一仕事である。イェルハルドは頭が痛くてしかたない。
「その通り。“谷”の慣習では、“谷”の長の娘を町の長であるお前が受け取らねば、我らの間に約定が結ばれたことにはならない。ほかの娘の処遇はお前たちに任せよう。いずれも健康で若く、多産な家系のよい娘ばかりだ」
「選択の余地もない、ということか」
小さく呟いて、イェルハルドはどうしたものかと考える。ここはどうにも引くことはできないという使者の面持ちに、小さく溜息を吐く。
未だ独身だったからいいものの、自分が既に妻帯していたらどうするつもりだったのか。そういえば、氷原の蛮族たちの長は妻を幾人も持つものだったか。彼らが多妻である理由は、つまりこれだったのか。
しかも、どの娘も歳は十三か、十四か……いくらなんでも幼すぎる。
いかにこの辺境でも、十六を超えてようやく嫁ぐものなのだ。
ここが都なら、十八にならなければ成人とみなされないし、成人していない者に結婚は認められない。
「さらに言うなら、我らはお前が確かにパルヴィを受け取ったことを確認し、長に伝えねばならぬ」
「――え? 確かめる?」
「パルヴィは生娘だ。お前が受け取ったなら、証の血が流れるだろう」
イェルハルドはますます頭を抱える。
この“霧氷の町”だって、都に比べたら人々の意識はずっと遅れている。人々を縛る前時代的な迷信や慣習はまだまだ健在なのだ。イェルハルドはそれをどうにか払拭したいと苦労しているのに、蛮族たちといえばそれ以上で……そもそも、人をこうしてモノか何かのようにやり取りしている時点でおかしいのに、彼らはそれを疑問にも思っていない。
それでいいのかとちらりと見れば、パルヴィと呼ばれた長の娘は、しっかりと唇を引き結んだまま睨むように力を込めた視線でイェルハルドを見返した。
「参考までに確認するけど、もし、受け取ったという証がなかったらどうなる? パルヴィ以外の娘の処遇は任せると言ったけれど、それはどういう意味だ?」
「証がなければ、町の長たるお前にこの約定を守る意思がないのだと、我らが長は受け取るだろう。我らは戻った後、また戦の準備をするだけだ。
ほかの娘のことは言葉のとおりだ。お前が決めればいい。なんなら、お前の妻にしたって構わない」
やはり選択肢はほかに無いらしい。
イェルハルドはもう一度溜息を吐いて、「わかった」と頷いた。
「パルヴィはぼくの妻として迎えよう。受け取りについては……なるべく早く準備を整えることにする。ほかの娘も悪いようにしないと約束する。町の民として遇するよう、すぐに手配しよう」
蛮族の使者はようやくほっとしたように表情をわずかに緩めた。
このたびの戦いでは、お互い相当に消耗しているのだ。イェルハルドだって、このうえまた戦うことなど、絶対にごめんこうむる。
「この“霧氷の町”と、その領主たるイェルハルド・ユースダールは彼女たちを受け入れる。その、受け取った証を示すのは……」
イェルハルドはしばし考えを巡らせた。間を置きすぎてもまずいが、かといって家畜を引き取るのとはわけは違う。それなりの準備は必要だ。
「十日後ということにしようか」
使者が頷くのを確認して、イェルハルドは机上の羊皮紙に署名する。
さらに、紙に小さな切り込みを入れて折り曲げた箇所にしっかりと蝋を垂らし、イェルハルドの紋章が彫り込まれた大きな印を押しあてた。
「これが、君たちの賠償を確かに受け入れたという証書だ」
すぐに冷えて固まった蝋からそっと印を剥がすと、イェルハルドは羊皮紙を使者の目の前に突き付ける。その内容を確認して使者はゆっくりと頷いた。彼らは文字を解さないと聞いていたけれど、さすがに使者ともなればそうでもないのか。受け取った羊皮紙を丸めて書類入れへと仕舞い込む蛮族を眺めながら、イェルハルドも今度こそほっと息を吐いた。
* * *
何はともあれ、これで蛮族ともしばらくは争うこともないだろう。
その代わり、彼らに供出するために冬の蓄えを増やさなくてはならないが、こんな北の果てで生きていくなら争うよりも助け合うほうがいい。
そのための“確認の儀”も十日後に決めたのだ。イェルハルドとパルヴィの婚儀もその日に行うと決めて、ただちに手配もした。
準備期間として十日なんて、短いどころではないとわかっている。しかし、だからといって、半年も一年もかけるわけにはいかないのだ。蛮族は総じて気が短いし、時間を掛け過ぎた結果、受け取る気がないと判断されてしまったら本末転倒だろう。
パルヴィ以外の娘は、地母神教会預かりとすることに決めた。女性と子供の守護神でもある女神の教会なら安心だ。そこでゆっくりこの町の常識や諸々の教養を身につけ、町に馴染んでもらえばいい。
教会で学ぶ間に、彼女たちが結婚したいという相手と出会えれば僥倖だ。
「パルヴィ、だったね。ぼくはイェルハルド・ユースダール。この町の領主を務める魔術師だ。南の“凍らずの町”の領主であるユースダール家の三男でもある」
執務室の中にひとり残ったパルヴィを長椅子に座らせた。
イェルハルドもその向かいに座り、何から始めようと考えて……結局、たいしたものは何も浮かばなかった。
相変わらず口を真一文字に引き結んだままのパルヴィを前に、イェルハルドはどうしたものかと途方に暮れてしまう。
身長は自分の胸よりも下で、服の上からうかがえる肉付きから判断するに、まだほんの十三といったところか。多く見積もっても十五に届くかどうかだろう。成人と認めるまでにあと数年待たなければいけないはずだ。この幼い子供を伴侶として“受け取る”……つまるところ、妻として迎えて初夜を済ませなければならないなんて、そんな暴力を働けというのか。
「ええと、パルヴィ。君はいくつになるのかな」
「十三」
「十三、か」
予想どおりだった。予想どおりとはいえ、やはり絶句してしまう。
蛮族たちはこんなに幼い娘を嫁がせて平気なのか。まだ身体だって完全に成長しきってないのに、子供なんて産ませたら簡単に生命を落としてしまう。
「ぼくは二十五だ」
話は続かず、イェルハルドは溜息を漏らす
何を話すべきか……もう一度嘆息して、それから率直に告げる。
「パルヴィ、本来なら、君はまだこの町で成人と認められる年齢ではない。まだ、君は大人の庇護が必要な子供だと判断される歳だ」
パルヴィは、何を言い出すのかとでも言いたげに、胡乱な視線をイェルハルドに向ける。
「君たちが初潮を迎えた女性を、即、大人として扱うことは知っている。だが、ここは君たちの郷ではなく町だ」
「お前に私を受けとる気がないということか」
「そうじゃない」
むう、と口をへの字に曲げるパルヴィに、どう説明すべきか。イェルハルドとの常識が違い過ぎて、うまく説明できる気がしない。
「君をぼくの妻として迎えようというのは本当だ。だけど、ぼくの常識では君はまだ子供で、つまり、君が成人した後にそう望むのであれば、その時こそ、君を正式に妻にする。十日後の“証”は……まあ、なんとかするよ」
「まさか、まさか謀るつもりなのか」
「そんなつもりはない。ただ、ぼくは子供に無体を働きたくないだけだ。約定はちゃんと守る。ぼくの名誉にかけて」
魚のように口をぱくぱく喘がせて、パルヴィの眉が寄る。慌てて立ち上がり、服の生地をぎゅっと握り込む。
「まさか、私では、お前の妻が務まらないというのか。む、胸だって、腰だって、細く見えるだけで……母だって姉だって皆大きくなってるから、私だって心配ない! それに、私の母は息子も娘も三人ずつ産んでる。姉だって、嫁いで最初の年に息子を産んだ。だから、私だってそのくらい産めるし、閨のことだって心配ない」
「パルヴィ落ち着いて。そうじゃないんだ」
「私はお前の妻になるために来たんだ。家を守ることだってできる。布を織ることも家畜の世話もできるし、ちゃんと料理もできる」
イェルハルドはこめかみを指で擦りながらまた溜息を吐いた。
もう、何度溜息を吐いているかわからない。
ゆっくり立ち上がり、パルヴィのそばへ回ると、落ち着かせるように肩を叩く。
椅子へ座るように肩を押して促して、自分もその隣に腰を下ろす。
「パルヴィ、妻にしないわけじゃない。ただ、子供を産むのは命懸けの大仕事だろう。この町でもお産で亡くなる女性はいるんだ。おまけに、君の身体は完全に成長しきってないから、危険はもっと大きくなる。
だから閨のことは待とうと言ってるんだよ。できれば十八を過ぎるまでは」
「でも、でも、それじゃ、証が……」
「先は長いんだ。ゆっくり進めばいい。証のことも、なんとかしよう」
「でも、五年なんて……五年も子供を産めない女なんて役立たずなのに……」
「そんなことはない。普通にあることだし、この町にもそんな夫婦はいるけれど、誰も役に立たないなんて言わないよ」
「でも……」
パルヴィは固く唇を引き結び、眉間の皺をいっそう深くしてイェルハルドをじっと睨み続けた。
目の前には、大きな目をいっぱいに開いて自分をじっと見つめる若い娘が五人並んでいた。その後ろで、丸太のような腕を持つ厳つい戦士を数人従えた使者が、しかつめらしい顔でイェルハルドに頷く。
北方の開拓村から始まったこの“霧氷の町”と、“凍れる地”とも呼ばれる北方氷土に古くから住む蛮族である“北爪谷の民”の争いは、半年の戦いを経て町側の勝利に終わった。
力と地の利ではもちろん蛮族側にあった。だが、町には魔術師もいたし、南の“凍らずの町”と戦神教会の助けもあったのだ。町を取り囲む高い壁もある。
だから、町の勝利自体は予想通りであったのだが……予想に反してかろうじての勝利であり、双方の痛み分けに近い決着でもあった。
それゆえに、今、この場……つまり、領主の屋敷の広間で、もうこんな争いなど起こらないようにと、いわば戦後処理の取り決めを行っているところだ。
それにしたってお互いの常識が違いすぎて、その常識をすり合わせてどうにか合意を取るだけで一仕事である。イェルハルドは頭が痛くてしかたない。
「その通り。“谷”の慣習では、“谷”の長の娘を町の長であるお前が受け取らねば、我らの間に約定が結ばれたことにはならない。ほかの娘の処遇はお前たちに任せよう。いずれも健康で若く、多産な家系のよい娘ばかりだ」
「選択の余地もない、ということか」
小さく呟いて、イェルハルドはどうしたものかと考える。ここはどうにも引くことはできないという使者の面持ちに、小さく溜息を吐く。
未だ独身だったからいいものの、自分が既に妻帯していたらどうするつもりだったのか。そういえば、氷原の蛮族たちの長は妻を幾人も持つものだったか。彼らが多妻である理由は、つまりこれだったのか。
しかも、どの娘も歳は十三か、十四か……いくらなんでも幼すぎる。
いかにこの辺境でも、十六を超えてようやく嫁ぐものなのだ。
ここが都なら、十八にならなければ成人とみなされないし、成人していない者に結婚は認められない。
「さらに言うなら、我らはお前が確かにパルヴィを受け取ったことを確認し、長に伝えねばならぬ」
「――え? 確かめる?」
「パルヴィは生娘だ。お前が受け取ったなら、証の血が流れるだろう」
イェルハルドはますます頭を抱える。
この“霧氷の町”だって、都に比べたら人々の意識はずっと遅れている。人々を縛る前時代的な迷信や慣習はまだまだ健在なのだ。イェルハルドはそれをどうにか払拭したいと苦労しているのに、蛮族たちといえばそれ以上で……そもそも、人をこうしてモノか何かのようにやり取りしている時点でおかしいのに、彼らはそれを疑問にも思っていない。
それでいいのかとちらりと見れば、パルヴィと呼ばれた長の娘は、しっかりと唇を引き結んだまま睨むように力を込めた視線でイェルハルドを見返した。
「参考までに確認するけど、もし、受け取ったという証がなかったらどうなる? パルヴィ以外の娘の処遇は任せると言ったけれど、それはどういう意味だ?」
「証がなければ、町の長たるお前にこの約定を守る意思がないのだと、我らが長は受け取るだろう。我らは戻った後、また戦の準備をするだけだ。
ほかの娘のことは言葉のとおりだ。お前が決めればいい。なんなら、お前の妻にしたって構わない」
やはり選択肢はほかに無いらしい。
イェルハルドはもう一度溜息を吐いて、「わかった」と頷いた。
「パルヴィはぼくの妻として迎えよう。受け取りについては……なるべく早く準備を整えることにする。ほかの娘も悪いようにしないと約束する。町の民として遇するよう、すぐに手配しよう」
蛮族の使者はようやくほっとしたように表情をわずかに緩めた。
このたびの戦いでは、お互い相当に消耗しているのだ。イェルハルドだって、このうえまた戦うことなど、絶対にごめんこうむる。
「この“霧氷の町”と、その領主たるイェルハルド・ユースダールは彼女たちを受け入れる。その、受け取った証を示すのは……」
イェルハルドはしばし考えを巡らせた。間を置きすぎてもまずいが、かといって家畜を引き取るのとはわけは違う。それなりの準備は必要だ。
「十日後ということにしようか」
使者が頷くのを確認して、イェルハルドは机上の羊皮紙に署名する。
さらに、紙に小さな切り込みを入れて折り曲げた箇所にしっかりと蝋を垂らし、イェルハルドの紋章が彫り込まれた大きな印を押しあてた。
「これが、君たちの賠償を確かに受け入れたという証書だ」
すぐに冷えて固まった蝋からそっと印を剥がすと、イェルハルドは羊皮紙を使者の目の前に突き付ける。その内容を確認して使者はゆっくりと頷いた。彼らは文字を解さないと聞いていたけれど、さすがに使者ともなればそうでもないのか。受け取った羊皮紙を丸めて書類入れへと仕舞い込む蛮族を眺めながら、イェルハルドも今度こそほっと息を吐いた。
* * *
何はともあれ、これで蛮族ともしばらくは争うこともないだろう。
その代わり、彼らに供出するために冬の蓄えを増やさなくてはならないが、こんな北の果てで生きていくなら争うよりも助け合うほうがいい。
そのための“確認の儀”も十日後に決めたのだ。イェルハルドとパルヴィの婚儀もその日に行うと決めて、ただちに手配もした。
準備期間として十日なんて、短いどころではないとわかっている。しかし、だからといって、半年も一年もかけるわけにはいかないのだ。蛮族は総じて気が短いし、時間を掛け過ぎた結果、受け取る気がないと判断されてしまったら本末転倒だろう。
パルヴィ以外の娘は、地母神教会預かりとすることに決めた。女性と子供の守護神でもある女神の教会なら安心だ。そこでゆっくりこの町の常識や諸々の教養を身につけ、町に馴染んでもらえばいい。
教会で学ぶ間に、彼女たちが結婚したいという相手と出会えれば僥倖だ。
「パルヴィ、だったね。ぼくはイェルハルド・ユースダール。この町の領主を務める魔術師だ。南の“凍らずの町”の領主であるユースダール家の三男でもある」
執務室の中にひとり残ったパルヴィを長椅子に座らせた。
イェルハルドもその向かいに座り、何から始めようと考えて……結局、たいしたものは何も浮かばなかった。
相変わらず口を真一文字に引き結んだままのパルヴィを前に、イェルハルドはどうしたものかと途方に暮れてしまう。
身長は自分の胸よりも下で、服の上からうかがえる肉付きから判断するに、まだほんの十三といったところか。多く見積もっても十五に届くかどうかだろう。成人と認めるまでにあと数年待たなければいけないはずだ。この幼い子供を伴侶として“受け取る”……つまるところ、妻として迎えて初夜を済ませなければならないなんて、そんな暴力を働けというのか。
「ええと、パルヴィ。君はいくつになるのかな」
「十三」
「十三、か」
予想どおりだった。予想どおりとはいえ、やはり絶句してしまう。
蛮族たちはこんなに幼い娘を嫁がせて平気なのか。まだ身体だって完全に成長しきってないのに、子供なんて産ませたら簡単に生命を落としてしまう。
「ぼくは二十五だ」
話は続かず、イェルハルドは溜息を漏らす
何を話すべきか……もう一度嘆息して、それから率直に告げる。
「パルヴィ、本来なら、君はまだこの町で成人と認められる年齢ではない。まだ、君は大人の庇護が必要な子供だと判断される歳だ」
パルヴィは、何を言い出すのかとでも言いたげに、胡乱な視線をイェルハルドに向ける。
「君たちが初潮を迎えた女性を、即、大人として扱うことは知っている。だが、ここは君たちの郷ではなく町だ」
「お前に私を受けとる気がないということか」
「そうじゃない」
むう、と口をへの字に曲げるパルヴィに、どう説明すべきか。イェルハルドとの常識が違い過ぎて、うまく説明できる気がしない。
「君をぼくの妻として迎えようというのは本当だ。だけど、ぼくの常識では君はまだ子供で、つまり、君が成人した後にそう望むのであれば、その時こそ、君を正式に妻にする。十日後の“証”は……まあ、なんとかするよ」
「まさか、まさか謀るつもりなのか」
「そんなつもりはない。ただ、ぼくは子供に無体を働きたくないだけだ。約定はちゃんと守る。ぼくの名誉にかけて」
魚のように口をぱくぱく喘がせて、パルヴィの眉が寄る。慌てて立ち上がり、服の生地をぎゅっと握り込む。
「まさか、私では、お前の妻が務まらないというのか。む、胸だって、腰だって、細く見えるだけで……母だって姉だって皆大きくなってるから、私だって心配ない! それに、私の母は息子も娘も三人ずつ産んでる。姉だって、嫁いで最初の年に息子を産んだ。だから、私だってそのくらい産めるし、閨のことだって心配ない」
「パルヴィ落ち着いて。そうじゃないんだ」
「私はお前の妻になるために来たんだ。家を守ることだってできる。布を織ることも家畜の世話もできるし、ちゃんと料理もできる」
イェルハルドはこめかみを指で擦りながらまた溜息を吐いた。
もう、何度溜息を吐いているかわからない。
ゆっくり立ち上がり、パルヴィのそばへ回ると、落ち着かせるように肩を叩く。
椅子へ座るように肩を押して促して、自分もその隣に腰を下ろす。
「パルヴィ、妻にしないわけじゃない。ただ、子供を産むのは命懸けの大仕事だろう。この町でもお産で亡くなる女性はいるんだ。おまけに、君の身体は完全に成長しきってないから、危険はもっと大きくなる。
だから閨のことは待とうと言ってるんだよ。できれば十八を過ぎるまでは」
「でも、でも、それじゃ、証が……」
「先は長いんだ。ゆっくり進めばいい。証のことも、なんとかしよう」
「でも、五年なんて……五年も子供を産めない女なんて役立たずなのに……」
「そんなことはない。普通にあることだし、この町にもそんな夫婦はいるけれど、誰も役に立たないなんて言わないよ」
「でも……」
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