3 / 32
灰色の世界の天上の青
02.怖いのが来る
しおりを挟む
ヴィエナはオーウェン付の司祭見習いとして教会の下働きをすることになった。
──とはいっても、ほとんど旅暮らしで過ごしてきたため読み書きすらままならず、もっぱらオーウェンから基本的な教養や常識を教わるばかりだが。
優しい司祭様の下でよかったね……と教会の下働きの人たちや訪れる信者には言われるが、ヴィエナはとんでもないと思う。
確かに、外面はいい。いつでも笑みを絶やさないし、丁寧な物腰で対応するし、ヴィエナ以外の誰にでも丁寧な態度を崩さない。おまけに、それでいて剣の腕も確かだし、評判がいいのもむべなるかなというところだろう。
だが、自室に戻ったりで他の人の目がなくなると、とたんに顔が怖くなるのだ。
皆、このオーウェンの外面に騙されてるだけなのに、気づいてない。外面のいい笑顔と、あまりごつく見えない外見に騙されてるだけだ。
ヴィエナはこれ以上オーウェンを怒らせないようにとひたすら静かに目立たないように、ものすごく注意を払ってがんばってるのに、誰もそんなことに気づいてない。
オーウェン自身もだ。
読み書きその他を教えている間もずっと、ヴィエナがどれだけオーウェンを怒らせないようにしてるのか、まるでわかっていない。
「字とか読めなくても、今まで困らなかったのに」
思わず溢れた言葉に、オーウェンが渋面を作る。
「困らないのは今だけだろう。おまけに簡単な足し算すらできなくて、この先どうするつもりだったのだ」
「計算なんて、使ったことないのに」
恨みがましくちょっと不満を口に出すと、オーウェンの目が細く眇められた。
「……使わなかったのではないだろう。できないから、これまで騙されても気付けなかっただけじゃないのか?」
咎められるように言われて、ヴィエナもつい口を尖らせる。
そろそろ限界だ。
何日も何日も、この怖い司祭がつききりでいい加減疲れてしまった。
どうして自分はここでこんなことをしているのだろう。
最初からこのつもりで、オーウェンは自分を買ったんだろうか。
「ねえ。私、このままずっとここにいなきゃいけないの?」
「そうだ」
即答されて、ヴィエナは思わず俯いてしまう。
「ずっとっていつまで? 一生?」
「それはわからない。今後と、お前の身元次第だな」
独り言のような問いに、渋面のままのオーウェンが答える。
――正直なところ、オーウェンにもわからないのだ。
あれから神の助言を得ようと占術を使ってみたものの、神は黙して語らなかった。
占術が失敗したというよりも、あれは神以外の大きな力が妨げているようで……何か己のことを知られたくない存在が関わっているようにも思えたのだ。
ならば、ますます彼女から目を放すわけにはいかない。
文句を言いながらもチョークで石板にいくつも文字をなぞっている様子を見る限り、ヴィエナはただの女の子にしか見えない。
いったい、彼女の何が問題なのか。
あの夜に話したヴィエナの何かがもう一度現れてくれれば、もう少し何かわかりそうなのだが、とオーウェンは溜息を吐く。
眉間に皺を寄せて顔を上げたヴィエナが、じっとオーウェンを見た。
「なんだ?」
「溜息吐いた」
「わからないことが多すぎると思っただけだ」
「あたりまえじゃない。世界は広いんだよ。そういう変なことばっかり考えてるから、司祭様は怖い顔になるんだ」
オーウェンは心外だとでもいうかのようにヴィエナを見返す。
「怖い?」
「怖いよ。礼拝堂とか、外じゃやたら愛想振りまいてるのに、他の人がいなくなると怖い顔するし、怒ってばかりになるし」
石板に目を落とし、さらにぶつぶつと……ずっと眉間に皺ができっぱなしだとか、低い声で脅すみたいに話すとか、ひとつひとつヴィエナが数え上げる。
まったくの無意識だった。
オーウェンの表情が少し決まり悪そうなものに変わる。
「――それは、悪かったな」
「え、じゃあ、怒ってたんじゃないの?」
ぱっと顔を上げるヴィエナに、オーウェンは少々面食らったように頷いた。
「違う。別に怒っていたわけではないが……単なる私の修行不足だ」
「ずっと怒られてるんだと思ってた。そうじゃないならいいや」
幾分かほっとしたような声で、ヴィエナの肩が下がった。その様子に、オーウェンは初めて、彼女がずっと緊張したままだったことに気づく。
「すまないことをしたな」
首を振るヴィエナの頭にぽんと手を置くと、驚いた顔でオーウェンを見上げた。
「私が怒られてたんじゃないなら、いい」
ガリガリと石板を引っ掻くように文字をなぞり始めながら、ヴィエナは頷いた。
* * *
「う……っ、やあ……っ」
「どうした、ヴィエナ」
夜も更けた頃、続き間から微かに悲鳴が上がった。ただならない声に、オーウェンがノックもそこそこに部屋へと飛び込む。ベッドの上では、毛布に包まったヴィエナが身体を丸め、ガタガタと震えながら眠っていた。
「ヴィエナ!」
強く揺すられて、ヴィエナがパッと目を開けた。
「あ、あ……怖い、火が、黒い、焼けた手が、捕まえに来る……助け……」
真っ青な顔で震える手を伸ばして、オーウェンにぎゅうと縋り付く。
「た、助けて……か、神さま、助けて……ま、真っ暗な中から、手が、来るの、怖い……怖いよ、助けて」
「大丈夫だ。ここに悪しきものは入れない。お前は護られている。ただの夢だ」
「やだ、怖いよ……怖い……」
ヴィエナの頭を抱えるように抱き込んで、オーウェンは落ち着かせるように背を撫でる。ゆっくりと撫でながら、低く聖句を唱える。
「……“戦いと勝利の神の猛き御名にかけて、お前を脅かすものは去った。ここに恐れは無く、憂いもなく、猛き戦神の輝ける剣がお前の安寧を護る”」
いくらか震えが治まったことを確認して、オーウェンは言い聞かせるように、ヴィエナの耳元にゆっくりと囁いた。
「大丈夫だ。ここには戦神の加護がある。お前を損なうものは何もない。私もここに付いているよ。大丈夫。もう悪夢も来ない」
オーウェンは片手にヴィエナを抱き上げ、立ち上がった。戸棚から聖水の小瓶を取り出し、中身を周囲に振りまくと、聖印を掲げて聖句を唱える。
「“戦いと勝利の神の猛き御名にかけて、神の御手にありし輝ける剣にかけて、この場に聖なる護りを賜らん。神の威光により悪しきものを退けよ。善きものへの守護を授けよ”」
それからもう一度ヴィエナをベッドへと下ろす。
「魔除けの結界もある。悪しきものは決して入れない。もう怖くない。大丈夫」
「し、司祭様、置いてっちゃ、やだ……」
「わかった、今夜はお前についていよう」
オーウェンはベッドに腰掛けて、震えながら必死にしがみつくヴィエナの頭をゆっくりと撫でた。
朝まで離れそうにない様子に苦笑して、それから先刻のヴィエナの言葉を考える。ただの悪い夢と断じるのは簡単だが、あまりのヴィエナの怯えように、そうすることは躊躇躊躇われた。
ヴィエナを捕まえに来る、“暗闇から伸ばされた火で焼かれた黒い手”。これは何を象徴しているのか。
義弟なら、何か思いつくことがあるかもしれない。こういう、何かの象徴というのは伝承によく詠われるものだし、伝承に関する知識なら詩人である義弟の右に出るものはない。
明日にでも訪ねて、何か思い当たることはないかと訊いてみよう。
* * *
翌朝、礼拝を終えた後、オーウェンとヴィエナは連れ立って、町のひとたちが“竜屋敷”と呼ぶ邸宅の前に立っていた。
ここには竜と、司祭の妹が住んでいるという。なら、司祭の妹は竜なんだろうか。
ヴィエナはそんなことをぼんやりと考えながら、扉を叩くオーウェンを眺めていると、すぐに中からばたばたと足音がして扉が開いた。
「誰……兄上だ!」
「おお、エルヴィラ、久しぶりのお前もかわいいな」
「……ふぁ?」
扉から顔を出すなり、どう見ても異種族の妊婦がオーウェンに抱きついた。オーウェンも、それをしっかり抱き留めて、かわいいかわいいと頭を撫でまわしている。
ヴィエナは目を剥いたまま、しばし呆気に取られてしまう。
「し、司祭、様」
「おおそうだ」
ヴィエナの呼び掛けにようやく気付いたというように、オーウェンが振り返る。抱き締めた腕はそのままだ。
「エルヴィラ、紹介しよう。今、私が預かっている見習いのヴィエナだ。ヴィエナ、私の妹のエルヴィラだ。かわいいだろう」
「え、あ、うん……」
でれっでれな顔で妹だという相手を撫で回すこのひとはいったい何者だろう。いつもの司祭様はどこへ消えたのだ。
教会のひとや信者は、こんな司祭様を知ってるんだろうか。
それに、妹って嘘なんじゃないだろうか。
いい歳した大人が、いくら妹だからってこんな風に抱きつくものだろうか。それに、どう見たって司祭様は人間でこのひとは悪魔混じりだ。兄妹に見えない。
本当は司祭様の愛人なのをごまかすのに、ここに住まわせてるんだろうか……あ、そうか。司祭様は胸が大きいのが好みで、だから私じゃダメだったんだ。
そんなことを考えながらどうにか返答を返すヴィエナに、エルヴィラはにこにこと「小さくてかわいい子だな!」と手を伸ばし、ぶんぶんと握手をした。
「それで、兄上、今日はどうしたんだ?」
ようやく離れてエルヴィラが首を傾げると、オーウェンが頷いた。
「我が義弟を見込んで、少し尋ねたいことがあってね。彼は在宅かい?」
「ああ、ミケなら奥で何か書き散らしながら唸ってるぞ。そろそろひと息入れなきゃいけない頃合いだから、ちょうどいい」
さ、入ってくれと中に招き入れられて、ヴィエナはオーウェンの後について、奥の部屋へと入っていった。
──とはいっても、ほとんど旅暮らしで過ごしてきたため読み書きすらままならず、もっぱらオーウェンから基本的な教養や常識を教わるばかりだが。
優しい司祭様の下でよかったね……と教会の下働きの人たちや訪れる信者には言われるが、ヴィエナはとんでもないと思う。
確かに、外面はいい。いつでも笑みを絶やさないし、丁寧な物腰で対応するし、ヴィエナ以外の誰にでも丁寧な態度を崩さない。おまけに、それでいて剣の腕も確かだし、評判がいいのもむべなるかなというところだろう。
だが、自室に戻ったりで他の人の目がなくなると、とたんに顔が怖くなるのだ。
皆、このオーウェンの外面に騙されてるだけなのに、気づいてない。外面のいい笑顔と、あまりごつく見えない外見に騙されてるだけだ。
ヴィエナはこれ以上オーウェンを怒らせないようにとひたすら静かに目立たないように、ものすごく注意を払ってがんばってるのに、誰もそんなことに気づいてない。
オーウェン自身もだ。
読み書きその他を教えている間もずっと、ヴィエナがどれだけオーウェンを怒らせないようにしてるのか、まるでわかっていない。
「字とか読めなくても、今まで困らなかったのに」
思わず溢れた言葉に、オーウェンが渋面を作る。
「困らないのは今だけだろう。おまけに簡単な足し算すらできなくて、この先どうするつもりだったのだ」
「計算なんて、使ったことないのに」
恨みがましくちょっと不満を口に出すと、オーウェンの目が細く眇められた。
「……使わなかったのではないだろう。できないから、これまで騙されても気付けなかっただけじゃないのか?」
咎められるように言われて、ヴィエナもつい口を尖らせる。
そろそろ限界だ。
何日も何日も、この怖い司祭がつききりでいい加減疲れてしまった。
どうして自分はここでこんなことをしているのだろう。
最初からこのつもりで、オーウェンは自分を買ったんだろうか。
「ねえ。私、このままずっとここにいなきゃいけないの?」
「そうだ」
即答されて、ヴィエナは思わず俯いてしまう。
「ずっとっていつまで? 一生?」
「それはわからない。今後と、お前の身元次第だな」
独り言のような問いに、渋面のままのオーウェンが答える。
――正直なところ、オーウェンにもわからないのだ。
あれから神の助言を得ようと占術を使ってみたものの、神は黙して語らなかった。
占術が失敗したというよりも、あれは神以外の大きな力が妨げているようで……何か己のことを知られたくない存在が関わっているようにも思えたのだ。
ならば、ますます彼女から目を放すわけにはいかない。
文句を言いながらもチョークで石板にいくつも文字をなぞっている様子を見る限り、ヴィエナはただの女の子にしか見えない。
いったい、彼女の何が問題なのか。
あの夜に話したヴィエナの何かがもう一度現れてくれれば、もう少し何かわかりそうなのだが、とオーウェンは溜息を吐く。
眉間に皺を寄せて顔を上げたヴィエナが、じっとオーウェンを見た。
「なんだ?」
「溜息吐いた」
「わからないことが多すぎると思っただけだ」
「あたりまえじゃない。世界は広いんだよ。そういう変なことばっかり考えてるから、司祭様は怖い顔になるんだ」
オーウェンは心外だとでもいうかのようにヴィエナを見返す。
「怖い?」
「怖いよ。礼拝堂とか、外じゃやたら愛想振りまいてるのに、他の人がいなくなると怖い顔するし、怒ってばかりになるし」
石板に目を落とし、さらにぶつぶつと……ずっと眉間に皺ができっぱなしだとか、低い声で脅すみたいに話すとか、ひとつひとつヴィエナが数え上げる。
まったくの無意識だった。
オーウェンの表情が少し決まり悪そうなものに変わる。
「――それは、悪かったな」
「え、じゃあ、怒ってたんじゃないの?」
ぱっと顔を上げるヴィエナに、オーウェンは少々面食らったように頷いた。
「違う。別に怒っていたわけではないが……単なる私の修行不足だ」
「ずっと怒られてるんだと思ってた。そうじゃないならいいや」
幾分かほっとしたような声で、ヴィエナの肩が下がった。その様子に、オーウェンは初めて、彼女がずっと緊張したままだったことに気づく。
「すまないことをしたな」
首を振るヴィエナの頭にぽんと手を置くと、驚いた顔でオーウェンを見上げた。
「私が怒られてたんじゃないなら、いい」
ガリガリと石板を引っ掻くように文字をなぞり始めながら、ヴィエナは頷いた。
* * *
「う……っ、やあ……っ」
「どうした、ヴィエナ」
夜も更けた頃、続き間から微かに悲鳴が上がった。ただならない声に、オーウェンがノックもそこそこに部屋へと飛び込む。ベッドの上では、毛布に包まったヴィエナが身体を丸め、ガタガタと震えながら眠っていた。
「ヴィエナ!」
強く揺すられて、ヴィエナがパッと目を開けた。
「あ、あ……怖い、火が、黒い、焼けた手が、捕まえに来る……助け……」
真っ青な顔で震える手を伸ばして、オーウェンにぎゅうと縋り付く。
「た、助けて……か、神さま、助けて……ま、真っ暗な中から、手が、来るの、怖い……怖いよ、助けて」
「大丈夫だ。ここに悪しきものは入れない。お前は護られている。ただの夢だ」
「やだ、怖いよ……怖い……」
ヴィエナの頭を抱えるように抱き込んで、オーウェンは落ち着かせるように背を撫でる。ゆっくりと撫でながら、低く聖句を唱える。
「……“戦いと勝利の神の猛き御名にかけて、お前を脅かすものは去った。ここに恐れは無く、憂いもなく、猛き戦神の輝ける剣がお前の安寧を護る”」
いくらか震えが治まったことを確認して、オーウェンは言い聞かせるように、ヴィエナの耳元にゆっくりと囁いた。
「大丈夫だ。ここには戦神の加護がある。お前を損なうものは何もない。私もここに付いているよ。大丈夫。もう悪夢も来ない」
オーウェンは片手にヴィエナを抱き上げ、立ち上がった。戸棚から聖水の小瓶を取り出し、中身を周囲に振りまくと、聖印を掲げて聖句を唱える。
「“戦いと勝利の神の猛き御名にかけて、神の御手にありし輝ける剣にかけて、この場に聖なる護りを賜らん。神の威光により悪しきものを退けよ。善きものへの守護を授けよ”」
それからもう一度ヴィエナをベッドへと下ろす。
「魔除けの結界もある。悪しきものは決して入れない。もう怖くない。大丈夫」
「し、司祭様、置いてっちゃ、やだ……」
「わかった、今夜はお前についていよう」
オーウェンはベッドに腰掛けて、震えながら必死にしがみつくヴィエナの頭をゆっくりと撫でた。
朝まで離れそうにない様子に苦笑して、それから先刻のヴィエナの言葉を考える。ただの悪い夢と断じるのは簡単だが、あまりのヴィエナの怯えように、そうすることは躊躇躊躇われた。
ヴィエナを捕まえに来る、“暗闇から伸ばされた火で焼かれた黒い手”。これは何を象徴しているのか。
義弟なら、何か思いつくことがあるかもしれない。こういう、何かの象徴というのは伝承によく詠われるものだし、伝承に関する知識なら詩人である義弟の右に出るものはない。
明日にでも訪ねて、何か思い当たることはないかと訊いてみよう。
* * *
翌朝、礼拝を終えた後、オーウェンとヴィエナは連れ立って、町のひとたちが“竜屋敷”と呼ぶ邸宅の前に立っていた。
ここには竜と、司祭の妹が住んでいるという。なら、司祭の妹は竜なんだろうか。
ヴィエナはそんなことをぼんやりと考えながら、扉を叩くオーウェンを眺めていると、すぐに中からばたばたと足音がして扉が開いた。
「誰……兄上だ!」
「おお、エルヴィラ、久しぶりのお前もかわいいな」
「……ふぁ?」
扉から顔を出すなり、どう見ても異種族の妊婦がオーウェンに抱きついた。オーウェンも、それをしっかり抱き留めて、かわいいかわいいと頭を撫でまわしている。
ヴィエナは目を剥いたまま、しばし呆気に取られてしまう。
「し、司祭、様」
「おおそうだ」
ヴィエナの呼び掛けにようやく気付いたというように、オーウェンが振り返る。抱き締めた腕はそのままだ。
「エルヴィラ、紹介しよう。今、私が預かっている見習いのヴィエナだ。ヴィエナ、私の妹のエルヴィラだ。かわいいだろう」
「え、あ、うん……」
でれっでれな顔で妹だという相手を撫で回すこのひとはいったい何者だろう。いつもの司祭様はどこへ消えたのだ。
教会のひとや信者は、こんな司祭様を知ってるんだろうか。
それに、妹って嘘なんじゃないだろうか。
いい歳した大人が、いくら妹だからってこんな風に抱きつくものだろうか。それに、どう見たって司祭様は人間でこのひとは悪魔混じりだ。兄妹に見えない。
本当は司祭様の愛人なのをごまかすのに、ここに住まわせてるんだろうか……あ、そうか。司祭様は胸が大きいのが好みで、だから私じゃダメだったんだ。
そんなことを考えながらどうにか返答を返すヴィエナに、エルヴィラはにこにこと「小さくてかわいい子だな!」と手を伸ばし、ぶんぶんと握手をした。
「それで、兄上、今日はどうしたんだ?」
ようやく離れてエルヴィラが首を傾げると、オーウェンが頷いた。
「我が義弟を見込んで、少し尋ねたいことがあってね。彼は在宅かい?」
「ああ、ミケなら奥で何か書き散らしながら唸ってるぞ。そろそろひと息入れなきゃいけない頃合いだから、ちょうどいい」
さ、入ってくれと中に招き入れられて、ヴィエナはオーウェンの後について、奥の部屋へと入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる