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3.ミカちゃんと私
6.がっつりと、貪られる
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「律子さん」
「ん」
抱き起こされて薄く目を開けると、目の前にミカちゃんの顔があった。
驚く間もなく口を塞がれて、中にほんの少しぬるくなった水が流れ込んできた。一瞬で頭がはっきりして、思わずミカちゃんを凝視する。
「ちゃんと飲めましたね」
ミカちゃんがまたひと口水を含み、私に口移しで流し込む。
「なっ、なんで」
「疲れているようですから」
笑みを浮かべたミカちゃんが、傍らに置いた皿から取ったものを咥えた。
「え? ミカちゃん?」
まさか?
ミカちゃんは慌てる私に目を細めると、逃げられないようしっかりと抑え込んで、咥えたものを口移しに食べさせる。
舌で押し込まれたそれを、目を白黒させつつもしゃくしゃくと噛み砕いた。甘い果汁が口の中に広がるのに、味わうどころではない。
けれど結局、ごくりと飲み込むまでミカちゃんの口は離れず……私は必死に押し退けようとしたけれど、ミカちゃんはびくともしなかった。
「甘くて瑞々しい、美味しい梨ですよ」
「自分で、食べられるから、ね」
「遠慮なさらず。ほら、暴れないでください」
もがく私を片手であっさり押さえて、ミカちゃんはくすくす笑いながら次々食べさせていく。もちろんすべて口移しだ。しかも、時折、唇に牙をかすめさせてぺろりと舐めながら……ミカちゃんはこんなところでも器用さを発揮している。
カレヴィさんに比べたら筋肉があるように見えないし、力を入れているわけでもなさそうなのに、ミカちゃんに押さえられた私はぴくりとも動けない。
「まだ、約束の半分ですよ」
いったい何が半分かと考えて、もしやまだ飲みきっていないのかと焦る。
いったいどれだけ時間をかけようというのか。
もしかして、週末が終わるまでずっと?
ずっと、あの調子で飲まれるの?
ミカちゃんは赤く底光りする目に笑みを湛えて、じっと私を見つめる。
「大丈夫です。律子さんの体調を見ながらいただきますよ」
だから安心してくださいと、覆い被さるミカちゃんが私の首に顔を埋める。
「こうやって、少しずつ、いただきますからね」
これまでも散々やってきたように、また牙をかすらせた。
それだけで身体がカッと熱くなって、私は動けなくなってしまう。
「ね、律子さん」
ほんの少しだけ牙を埋めては、焦らすようにすぐに抜いて、じんわりと湧き出たものをそっと舐める。
ミカちゃんがしているのはそれだけなのに。
「は、ぅ、や」
「どうしましたか、律子さん」
喘ぐのが精一杯な私に、ミカちゃんはただ笑うだけなのだ。
「あ、やだ、ミカちゃん、や……」
「何が、嫌なのです?」
「あ……」
私は小さく頭を振ることしかできない。
「血をいただくだけですよ。他には何もしませんから」
ミカちゃんは、私の喉から身体の中心に沿って指を滑らせた。いや滑らせただけではなく、爪で、パジャマ代わりのTシャツをきれいに割いていった。
指の後を追って、ミカちゃんは唇……牙も滑らせていく。血がにじみはしないけど、赤くミミズ腫れのような一本の筋が残される。
「あ……ミカちゃん」
「こちらからも血をいただきますね。同じ場所ばかりから戴いて、痕になってしまってはいけませんし」
胸の中心、乳房のちょうど間に、ミカちゃんは軽く牙を押し当てる。
ぷつんと刺さる感触といっしょに、これまででいちばん強いぞくぞくする感覚が、私の背筋を駆け上がった。
「は、ミカ、ちゃん……なんで……なに……あっ」
「血を、いただいているだけです」
浮き出た赤い玉をミカちゃんがゆっくりと舐め取る。恍惚とした表情は、私の血は本当に甘いのだなと思えるほどだ。
押さえられていた手は、いつの間にか自由になっていた。なのに、私は跳ね除けるよりむしろ自分からミカちゃんに縋りついている。
「律子さん、そんなに力いっぱい抱き締められては、飲みにくいですよ」
ハッとして、すぐに手を離すけれど、牙がかすればまた悶えながらミカちゃんに縋り付いてしまう。
どうしましたかと訊かれても、言葉にならずただ頭を振るだけだった。
ただ、熱に侵された身体がひたすら熱くて、つい、何かに縋りたくなってしまう――それだけなのだ。
「首を振るだけではわかりませんよ……ああ、こんなに汗をかいて」
ミカちゃんはまたほんの少しだけ牙の先を埋める。
「……律子さん。この真下に律子さんの心臓がありますね」
浮き出た血を味わいながら、ミカちゃんは私に聞かせるように呟いた。
「わたしの……しん……ぞ……」
はあ、と喘ぐように息を吐いて、私はミカちゃんの呟きを復唱する。
「はい、心臓ですよ」
また、ミカちゃんが、牙を軽く浅く突き立てる。
「は」
びくりと浮き上がる私の背に、ミカちゃんは腕を回して抱き締める。こぼれてしまわないようにと、冷たいのに熱い舌が血を拭う。
「急に動いては、危ないではないですか」
ミカちゃんが笑う。
笑いながら、また私の血を舐める。本当ならすごく怖い光景のはずなのに、ミカちゃんの牙が皮膚の上を滑ると、思考が途切れてしまう。
「う……ぁ」
皮膚に付いた一本の線が赤く滲んだ。
ミカちゃんの舌がそれをなぞる。
私は、ただ息を吐くことしかできない。
息を荒げながら、私はミカちゃんにされるがままだ。悶えつつ、けれどじっとして、ミカちゃんの牙と舌の感触に、神経をひたすらに集中させて。
そんな私をじっと見つめて、ミカちゃんは楽しげに笑っている。牙をかすらせ、血を舐め取り……これは、いったいいつまで続くのだろう。
だんだんと時間の感覚もなくなってきた。
ただ、皮膚の上をちりちりと、けれどうっとりするような何かが走る感覚だけが続いていて……。
「あ……なん、で……」
熱で疼き続ける身体に、堪らず呟きが漏れたけれど、返ってくるのはミカちゃんのくすくす笑う声だけだった。
また、吐息がこぼれる。
「どう、なってるの……これ、なに……?」
「何か気になることでもありましたか」
ぶるりと身体が震える。
身体を起こしたミカちゃんが、耳朶に息を吹き掛けた。
「それとも、どこか辛いところが?」
「あっ」
ミカちゃんの牙が耳朶を齧る。
思わず縋り付いて身体を押し付けてしまった私の顔は、きっと真っ赤だ。
目も潤んでいるんだろう。
「ミカ、ちゃん」
「どうしましたか?」
返答を待たずにミカちゃんは私の口を塞いでしまった。
笑みを湛えた赤い目で私をじっと覗き込んで、舌を絡め引き入れて、牙で嬲り蹂躙する。今、ミカちゃんにあるのは、血への渇望だけなんだろうか?
“食われて気持ちいいとなりゃ、その刺激が癖になる”
カレヴィさんの言葉が頭を過ぎった。
「ミカちゃ……」
「今日は血をいただくだけ、ですよ」
きっぱりと釘を刺されて、私はなぜか失望してしまう。
「のむ、だけ」
「そう、飲むだけです」
飲むだけ……ただ、飲む、だけ。
ただ飲むだけで、こんなに。
だったら、それ以上だとどうなってしまうんだろう。
ぎゅうとしがみつく私の気持ちを読んだかのように、ミカちゃんが囁く。
「飲むだけですが、律子さんの望むものも得られるかもしれません」
ぼんやりとミカちゃんを見上げると、赤く輝く目が見つめ返した。
「こんなに汗をかいて……あとで流さなければいけませんね。
けれど、その前に、まずはこの熱さを冷ましましょうか」
ミカちゃんが私の首筋に顔を寄せた。
ぺろりと舐めたあとに鋭く尖ったふたつの牙が当てられる。
ようやく待ち望んだものが来るんだという歓喜で、身体が勝手に戦慄いた。は、は、と呼吸が浅く早くなり、動悸も大きく激しくなる。
くすりとミカちゃんが笑う気配がしたすぐ後に、ずぶりと牙が突き立てられて――。
「あ、あ……っ!」
脳天が焼ききれそうな熱さが身体の中心で爆発した。
目蓋の裏が真っ白になって、しがみついたままの手が、勝手にミカちゃんの背をがりがりと引っ掻く。
けれど、私を抱き締めて押さえるミカちゃんはびくともしない。
「あ、あ、ミカちゃん、こんなの……や、あ……あああ」
ぱくぱく喘いで酸素を求めながら、激しく脈打つ心臓の鼓動と身体を走る熱さに翻弄される。
ふっ、と視界が暗転して、私の身体から急に力が抜けた。
ようやく“食事”が終わったのだ。
深く息を吐いてぐったりと寄り掛かる私の首を、牙を抜いたミカちゃんが、最後にもう一度ぺろりと舐める。
それから、ぼんやりと惚ける私にキスをした。
ほんのりと、鉄錆の臭いがするキスを。
「シャワーを浴びましょう。お手伝いしますから、ね?」
朦朧とする頭で頷いて、私はかすかに顔を上げる。
「私、これから……どう、なっちゃうの?」
「大丈夫ですよ。だって、心など」
ミカちゃんがうっとりと笑う。
「身体の有り様に合わせて、後からちゃんとついてくるものなのですから」
「ついて、くるの?」
「だから、余計なことなど考えなくてもよろしいのです。邪魔なことも覚えている必要はないのです。
ねえ、律子さん?」
キスをするミカちゃんの目が、赤くきらりと光る。
疲れて怠くて眠くて、ゆっくり目を閉じてしまった私を抱き上げて、ミカちゃんは風呂場へと向かった。
ふ、と目を覚ますと、外はもう暗くなっていた。
起き抜けの頭で、あの後また寝ちゃったんだなと考える。結構寝てるはずなのに、身体はまだまだどんよりと怠くて、頭も重い。
「目が覚めましたか?」
隣の部屋からミカちゃんがひょいと顔を出した。ぼんやりと顔を向ける私に、くすりと笑ってすたすたと私の横にやってくる。
「お腹は空いていませんか? 何か食べられるのでしたら、食事を持ってきますよ」
「あ……食べ、たい」
まだどことなく夢うつつのままにそう答えると、ミカちゃんが身を乗り出して、私の耳元にぐいと口を寄せた。
「律子さん」
ミカちゃんの息が耳にかかって心臓が跳ねた。
なぜか、身体の奥がぞわりとする。
「ご馳走様でした」
耳朶を軽く食むミカちゃんの低い低い囁きに思わずごくりと喉を鳴らし……私はこくんと頷いた。
「ん」
抱き起こされて薄く目を開けると、目の前にミカちゃんの顔があった。
驚く間もなく口を塞がれて、中にほんの少しぬるくなった水が流れ込んできた。一瞬で頭がはっきりして、思わずミカちゃんを凝視する。
「ちゃんと飲めましたね」
ミカちゃんがまたひと口水を含み、私に口移しで流し込む。
「なっ、なんで」
「疲れているようですから」
笑みを浮かべたミカちゃんが、傍らに置いた皿から取ったものを咥えた。
「え? ミカちゃん?」
まさか?
ミカちゃんは慌てる私に目を細めると、逃げられないようしっかりと抑え込んで、咥えたものを口移しに食べさせる。
舌で押し込まれたそれを、目を白黒させつつもしゃくしゃくと噛み砕いた。甘い果汁が口の中に広がるのに、味わうどころではない。
けれど結局、ごくりと飲み込むまでミカちゃんの口は離れず……私は必死に押し退けようとしたけれど、ミカちゃんはびくともしなかった。
「甘くて瑞々しい、美味しい梨ですよ」
「自分で、食べられるから、ね」
「遠慮なさらず。ほら、暴れないでください」
もがく私を片手であっさり押さえて、ミカちゃんはくすくす笑いながら次々食べさせていく。もちろんすべて口移しだ。しかも、時折、唇に牙をかすめさせてぺろりと舐めながら……ミカちゃんはこんなところでも器用さを発揮している。
カレヴィさんに比べたら筋肉があるように見えないし、力を入れているわけでもなさそうなのに、ミカちゃんに押さえられた私はぴくりとも動けない。
「まだ、約束の半分ですよ」
いったい何が半分かと考えて、もしやまだ飲みきっていないのかと焦る。
いったいどれだけ時間をかけようというのか。
もしかして、週末が終わるまでずっと?
ずっと、あの調子で飲まれるの?
ミカちゃんは赤く底光りする目に笑みを湛えて、じっと私を見つめる。
「大丈夫です。律子さんの体調を見ながらいただきますよ」
だから安心してくださいと、覆い被さるミカちゃんが私の首に顔を埋める。
「こうやって、少しずつ、いただきますからね」
これまでも散々やってきたように、また牙をかすらせた。
それだけで身体がカッと熱くなって、私は動けなくなってしまう。
「ね、律子さん」
ほんの少しだけ牙を埋めては、焦らすようにすぐに抜いて、じんわりと湧き出たものをそっと舐める。
ミカちゃんがしているのはそれだけなのに。
「は、ぅ、や」
「どうしましたか、律子さん」
喘ぐのが精一杯な私に、ミカちゃんはただ笑うだけなのだ。
「あ、やだ、ミカちゃん、や……」
「何が、嫌なのです?」
「あ……」
私は小さく頭を振ることしかできない。
「血をいただくだけですよ。他には何もしませんから」
ミカちゃんは、私の喉から身体の中心に沿って指を滑らせた。いや滑らせただけではなく、爪で、パジャマ代わりのTシャツをきれいに割いていった。
指の後を追って、ミカちゃんは唇……牙も滑らせていく。血がにじみはしないけど、赤くミミズ腫れのような一本の筋が残される。
「あ……ミカちゃん」
「こちらからも血をいただきますね。同じ場所ばかりから戴いて、痕になってしまってはいけませんし」
胸の中心、乳房のちょうど間に、ミカちゃんは軽く牙を押し当てる。
ぷつんと刺さる感触といっしょに、これまででいちばん強いぞくぞくする感覚が、私の背筋を駆け上がった。
「は、ミカ、ちゃん……なんで……なに……あっ」
「血を、いただいているだけです」
浮き出た赤い玉をミカちゃんがゆっくりと舐め取る。恍惚とした表情は、私の血は本当に甘いのだなと思えるほどだ。
押さえられていた手は、いつの間にか自由になっていた。なのに、私は跳ね除けるよりむしろ自分からミカちゃんに縋りついている。
「律子さん、そんなに力いっぱい抱き締められては、飲みにくいですよ」
ハッとして、すぐに手を離すけれど、牙がかすればまた悶えながらミカちゃんに縋り付いてしまう。
どうしましたかと訊かれても、言葉にならずただ頭を振るだけだった。
ただ、熱に侵された身体がひたすら熱くて、つい、何かに縋りたくなってしまう――それだけなのだ。
「首を振るだけではわかりませんよ……ああ、こんなに汗をかいて」
ミカちゃんはまたほんの少しだけ牙の先を埋める。
「……律子さん。この真下に律子さんの心臓がありますね」
浮き出た血を味わいながら、ミカちゃんは私に聞かせるように呟いた。
「わたしの……しん……ぞ……」
はあ、と喘ぐように息を吐いて、私はミカちゃんの呟きを復唱する。
「はい、心臓ですよ」
また、ミカちゃんが、牙を軽く浅く突き立てる。
「は」
びくりと浮き上がる私の背に、ミカちゃんは腕を回して抱き締める。こぼれてしまわないようにと、冷たいのに熱い舌が血を拭う。
「急に動いては、危ないではないですか」
ミカちゃんが笑う。
笑いながら、また私の血を舐める。本当ならすごく怖い光景のはずなのに、ミカちゃんの牙が皮膚の上を滑ると、思考が途切れてしまう。
「う……ぁ」
皮膚に付いた一本の線が赤く滲んだ。
ミカちゃんの舌がそれをなぞる。
私は、ただ息を吐くことしかできない。
息を荒げながら、私はミカちゃんにされるがままだ。悶えつつ、けれどじっとして、ミカちゃんの牙と舌の感触に、神経をひたすらに集中させて。
そんな私をじっと見つめて、ミカちゃんは楽しげに笑っている。牙をかすらせ、血を舐め取り……これは、いったいいつまで続くのだろう。
だんだんと時間の感覚もなくなってきた。
ただ、皮膚の上をちりちりと、けれどうっとりするような何かが走る感覚だけが続いていて……。
「あ……なん、で……」
熱で疼き続ける身体に、堪らず呟きが漏れたけれど、返ってくるのはミカちゃんのくすくす笑う声だけだった。
また、吐息がこぼれる。
「どう、なってるの……これ、なに……?」
「何か気になることでもありましたか」
ぶるりと身体が震える。
身体を起こしたミカちゃんが、耳朶に息を吹き掛けた。
「それとも、どこか辛いところが?」
「あっ」
ミカちゃんの牙が耳朶を齧る。
思わず縋り付いて身体を押し付けてしまった私の顔は、きっと真っ赤だ。
目も潤んでいるんだろう。
「ミカ、ちゃん」
「どうしましたか?」
返答を待たずにミカちゃんは私の口を塞いでしまった。
笑みを湛えた赤い目で私をじっと覗き込んで、舌を絡め引き入れて、牙で嬲り蹂躙する。今、ミカちゃんにあるのは、血への渇望だけなんだろうか?
“食われて気持ちいいとなりゃ、その刺激が癖になる”
カレヴィさんの言葉が頭を過ぎった。
「ミカちゃ……」
「今日は血をいただくだけ、ですよ」
きっぱりと釘を刺されて、私はなぜか失望してしまう。
「のむ、だけ」
「そう、飲むだけです」
飲むだけ……ただ、飲む、だけ。
ただ飲むだけで、こんなに。
だったら、それ以上だとどうなってしまうんだろう。
ぎゅうとしがみつく私の気持ちを読んだかのように、ミカちゃんが囁く。
「飲むだけですが、律子さんの望むものも得られるかもしれません」
ぼんやりとミカちゃんを見上げると、赤く輝く目が見つめ返した。
「こんなに汗をかいて……あとで流さなければいけませんね。
けれど、その前に、まずはこの熱さを冷ましましょうか」
ミカちゃんが私の首筋に顔を寄せた。
ぺろりと舐めたあとに鋭く尖ったふたつの牙が当てられる。
ようやく待ち望んだものが来るんだという歓喜で、身体が勝手に戦慄いた。は、は、と呼吸が浅く早くなり、動悸も大きく激しくなる。
くすりとミカちゃんが笑う気配がしたすぐ後に、ずぶりと牙が突き立てられて――。
「あ、あ……っ!」
脳天が焼ききれそうな熱さが身体の中心で爆発した。
目蓋の裏が真っ白になって、しがみついたままの手が、勝手にミカちゃんの背をがりがりと引っ掻く。
けれど、私を抱き締めて押さえるミカちゃんはびくともしない。
「あ、あ、ミカちゃん、こんなの……や、あ……あああ」
ぱくぱく喘いで酸素を求めながら、激しく脈打つ心臓の鼓動と身体を走る熱さに翻弄される。
ふっ、と視界が暗転して、私の身体から急に力が抜けた。
ようやく“食事”が終わったのだ。
深く息を吐いてぐったりと寄り掛かる私の首を、牙を抜いたミカちゃんが、最後にもう一度ぺろりと舐める。
それから、ぼんやりと惚ける私にキスをした。
ほんのりと、鉄錆の臭いがするキスを。
「シャワーを浴びましょう。お手伝いしますから、ね?」
朦朧とする頭で頷いて、私はかすかに顔を上げる。
「私、これから……どう、なっちゃうの?」
「大丈夫ですよ。だって、心など」
ミカちゃんがうっとりと笑う。
「身体の有り様に合わせて、後からちゃんとついてくるものなのですから」
「ついて、くるの?」
「だから、余計なことなど考えなくてもよろしいのです。邪魔なことも覚えている必要はないのです。
ねえ、律子さん?」
キスをするミカちゃんの目が、赤くきらりと光る。
疲れて怠くて眠くて、ゆっくり目を閉じてしまった私を抱き上げて、ミカちゃんは風呂場へと向かった。
ふ、と目を覚ますと、外はもう暗くなっていた。
起き抜けの頭で、あの後また寝ちゃったんだなと考える。結構寝てるはずなのに、身体はまだまだどんよりと怠くて、頭も重い。
「目が覚めましたか?」
隣の部屋からミカちゃんがひょいと顔を出した。ぼんやりと顔を向ける私に、くすりと笑ってすたすたと私の横にやってくる。
「お腹は空いていませんか? 何か食べられるのでしたら、食事を持ってきますよ」
「あ……食べ、たい」
まだどことなく夢うつつのままにそう答えると、ミカちゃんが身を乗り出して、私の耳元にぐいと口を寄せた。
「律子さん」
ミカちゃんの息が耳にかかって心臓が跳ねた。
なぜか、身体の奥がぞわりとする。
「ご馳走様でした」
耳朶を軽く食むミカちゃんの低い低い囁きに思わずごくりと喉を鳴らし……私はこくんと頷いた。
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