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聖女の町
でも、嫌じゃない
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宿に戻ると、エルヴィラはまだベッドの上でシーツに包まり転がっていた。
面倒臭すぎて、自分のほうが先に参りそうだとミーケルは考える。
「何があったか、聞いたよ」
ベッドの傍らでミーケルがそれだけを告げると、シーツの塊が震えた。
「君、ただの馬鹿じゃなかったんだね。本当の恋じゃないって言われたから“惚れ薬”飲むって、相当だよ? それだって本当じゃないってのに、何やってるの」
「うう……」
「ううじゃないよ。ほら、顔出してみな」
むりやりシーツを剥がしてみると、昨夜から洗ってない顔も、もつれた髪もぐちゃぐちゃのままだった。
「ああ、みっともない顔して」
呆れた声でそう言うと、やっぱりエルヴィラは怯えた顔でミーケルを見上げていた。
ふん、と鼻を鳴らして、ミーケルは傍らの水差しの水で布を濡らし、ごしごしとエルヴィラの顔を擦る。
擦りながら、ふと何かを思いついたようににいっと笑う。
「――“惚れ薬”の効果は絶対じゃないと、昨日話したよね」
いったい何を言い出すのだろうと、エルヴィラはこくりと不思議そうに頷いた。
「“解呪”なんかに頼らなくたって、無理やり効果を解く方法もあるにはあるんだ」
「え?」
ミーケルは目を細めて、じっとエルヴィラを見下ろす。
「魅了された相手の手で生命の危険にさらされれば一発だよ。当たり前だね。自分を殺そうとする相手を、好きでなんていられるわけがない」
そう言って、ミーケルはエルヴィラの首に手を伸ばした。喉を指で強く押すと、エルヴィラがげほっと咽せる。
「あとはまあ、生命の危険はなくても、とにかく嫌なことをし続けてやるのだっていい。
好意を向けることを疑問に思うくらい酷い目にあわされ続けて、対象を好きでいられるやつなんて普通いない」
ミーケルはエルヴィラの耳元に口を寄せて囁いた。
「生命を危険に曝すのは最終手段としてもさ、つまり、君が嫌だと思うことを僕がやり続ければ、三ヶ月なんて待たなくても薬の効果なんてすぐ消えるってことさ」
くっくっと笑いながら、ミーケルは続ける。
「君が嫌なことってなんだっけ?
あのキスはどう?
自分を好きでもないやつにされるなんて嫌だって言ってたよね。
それとも、犯して君の本当の初めてを奪ってあげようか。今度こそ、君のことを好きでもなんでもない相手に処女を奪われるのはどう?」
シーツごとベッドに押さえつけて、ミーケルは顔を近づけた。
「さ、どう? 君に耐えられるかな?」
目をいっぱいに見開いたまま、エルヴィラは動けない。声も出ない。
まるで“麻痺”の魔法にでもかかってしまったかのように、身動きひとつできない。
「ほら」
ミーケルはエルヴィラの口を塞いだ。ゆっくりと嬲るように舌を差し入れて、エルヴィラの口の中を犯していく。
「ん……っ」
くちゃくちゃと音を立てて舐られて、エルヴィラはぎゅっと目を瞑る。
結局、六回目もミーケルだった、と考える。
「以前、君は僕に汚されたって騒いだけど、そんなものじゃ済まないよ。君は僕に全部を穢されるんだからね」
少しだけ口を離して相変わらず笑んだままのミーケルが低く囁くと、固く瞑ったエルヴィラの目から涙が溢れる。
「……っふ」
「泣いたってだめだ。ここには君を助けるものはいない。逃げられないよ」
楽しそうに笑いながら、ミーケルは囁き続ける。
「そもそもさ、このまま僕のところにいて、まともな結婚相手が見つかるとか信じてた?
本当に、君ってお馬鹿さんだよね」
結婚相手……“地母神の町”やこの“聖女の町”であんなに世話を焼いてくれたのも、全部嘘だったというのだろうか。
自分は、その嘘を見抜けなかった、ただの調子に乗った間抜けで――。
怖いとか酷いとか、そういう気持ちよりも何よりも、ただひたすらエルヴィラは悲しかった。完全に信頼してたとは言わないけれど、それでもそこは信用はしてたんだと気付いて、もっと悲しくなった。
けれどここで泣いたりしたら、もっと嫌われる。
ぎゅっと歯を食いしばって、エルヴィラは必死で嗚咽を噛み殺す。
もう、何が最善で何をすればいいのか、何より自分はどうしたいのか、さっぱりわからなくて頭の中はぐちゃぐちゃだ。
何よりも、冷めきった、こんなこと完全に作業でしかないのだというミーケルの目が、悲しくて仕方ない。
「何を震えてるの。君、騎士のくせにこのくらい跳ね除けられないんだ? いつもみたいに、戦神の名を唱えて僕のこと叩きのめさないの?」
「う、だっ、て……」
何より嫌なのは、こうまでされて最初ほどどころか、あまり嫌だと感じてない自分自身だった。
ぺちゃ、ぴちゃ、と音を立てながら、ミーケルの顔が下に降りていく。
――初めてのキスは、好きになった人と、愛情と微笑みと一緒に。
それからふたりでだんだんと気持ちを育てていって、辿り着いた初めての夜は、一生を共にしたいと思う相手と、誓いと一緒に。
そう夢見ていたのに、何も叶わなかった。
全部エルヴィラが悪いのだろうか。
そんなに、エルヴィラは馬鹿で悪い人間だったんだろうか。
我慢していても、ひくひくと嗚咽が漏れる。
嫌じゃないのに、こんなのは嫌だ。
触られたいのに、こんな風に触られたくなんてない。
面倒臭すぎて、自分のほうが先に参りそうだとミーケルは考える。
「何があったか、聞いたよ」
ベッドの傍らでミーケルがそれだけを告げると、シーツの塊が震えた。
「君、ただの馬鹿じゃなかったんだね。本当の恋じゃないって言われたから“惚れ薬”飲むって、相当だよ? それだって本当じゃないってのに、何やってるの」
「うう……」
「ううじゃないよ。ほら、顔出してみな」
むりやりシーツを剥がしてみると、昨夜から洗ってない顔も、もつれた髪もぐちゃぐちゃのままだった。
「ああ、みっともない顔して」
呆れた声でそう言うと、やっぱりエルヴィラは怯えた顔でミーケルを見上げていた。
ふん、と鼻を鳴らして、ミーケルは傍らの水差しの水で布を濡らし、ごしごしとエルヴィラの顔を擦る。
擦りながら、ふと何かを思いついたようににいっと笑う。
「――“惚れ薬”の効果は絶対じゃないと、昨日話したよね」
いったい何を言い出すのだろうと、エルヴィラはこくりと不思議そうに頷いた。
「“解呪”なんかに頼らなくたって、無理やり効果を解く方法もあるにはあるんだ」
「え?」
ミーケルは目を細めて、じっとエルヴィラを見下ろす。
「魅了された相手の手で生命の危険にさらされれば一発だよ。当たり前だね。自分を殺そうとする相手を、好きでなんていられるわけがない」
そう言って、ミーケルはエルヴィラの首に手を伸ばした。喉を指で強く押すと、エルヴィラがげほっと咽せる。
「あとはまあ、生命の危険はなくても、とにかく嫌なことをし続けてやるのだっていい。
好意を向けることを疑問に思うくらい酷い目にあわされ続けて、対象を好きでいられるやつなんて普通いない」
ミーケルはエルヴィラの耳元に口を寄せて囁いた。
「生命を危険に曝すのは最終手段としてもさ、つまり、君が嫌だと思うことを僕がやり続ければ、三ヶ月なんて待たなくても薬の効果なんてすぐ消えるってことさ」
くっくっと笑いながら、ミーケルは続ける。
「君が嫌なことってなんだっけ?
あのキスはどう?
自分を好きでもないやつにされるなんて嫌だって言ってたよね。
それとも、犯して君の本当の初めてを奪ってあげようか。今度こそ、君のことを好きでもなんでもない相手に処女を奪われるのはどう?」
シーツごとベッドに押さえつけて、ミーケルは顔を近づけた。
「さ、どう? 君に耐えられるかな?」
目をいっぱいに見開いたまま、エルヴィラは動けない。声も出ない。
まるで“麻痺”の魔法にでもかかってしまったかのように、身動きひとつできない。
「ほら」
ミーケルはエルヴィラの口を塞いだ。ゆっくりと嬲るように舌を差し入れて、エルヴィラの口の中を犯していく。
「ん……っ」
くちゃくちゃと音を立てて舐られて、エルヴィラはぎゅっと目を瞑る。
結局、六回目もミーケルだった、と考える。
「以前、君は僕に汚されたって騒いだけど、そんなものじゃ済まないよ。君は僕に全部を穢されるんだからね」
少しだけ口を離して相変わらず笑んだままのミーケルが低く囁くと、固く瞑ったエルヴィラの目から涙が溢れる。
「……っふ」
「泣いたってだめだ。ここには君を助けるものはいない。逃げられないよ」
楽しそうに笑いながら、ミーケルは囁き続ける。
「そもそもさ、このまま僕のところにいて、まともな結婚相手が見つかるとか信じてた?
本当に、君ってお馬鹿さんだよね」
結婚相手……“地母神の町”やこの“聖女の町”であんなに世話を焼いてくれたのも、全部嘘だったというのだろうか。
自分は、その嘘を見抜けなかった、ただの調子に乗った間抜けで――。
怖いとか酷いとか、そういう気持ちよりも何よりも、ただひたすらエルヴィラは悲しかった。完全に信頼してたとは言わないけれど、それでもそこは信用はしてたんだと気付いて、もっと悲しくなった。
けれどここで泣いたりしたら、もっと嫌われる。
ぎゅっと歯を食いしばって、エルヴィラは必死で嗚咽を噛み殺す。
もう、何が最善で何をすればいいのか、何より自分はどうしたいのか、さっぱりわからなくて頭の中はぐちゃぐちゃだ。
何よりも、冷めきった、こんなこと完全に作業でしかないのだというミーケルの目が、悲しくて仕方ない。
「何を震えてるの。君、騎士のくせにこのくらい跳ね除けられないんだ? いつもみたいに、戦神の名を唱えて僕のこと叩きのめさないの?」
「う、だっ、て……」
何より嫌なのは、こうまでされて最初ほどどころか、あまり嫌だと感じてない自分自身だった。
ぺちゃ、ぴちゃ、と音を立てながら、ミーケルの顔が下に降りていく。
――初めてのキスは、好きになった人と、愛情と微笑みと一緒に。
それからふたりでだんだんと気持ちを育てていって、辿り着いた初めての夜は、一生を共にしたいと思う相手と、誓いと一緒に。
そう夢見ていたのに、何も叶わなかった。
全部エルヴィラが悪いのだろうか。
そんなに、エルヴィラは馬鹿で悪い人間だったんだろうか。
我慢していても、ひくひくと嗚咽が漏れる。
嫌じゃないのに、こんなのは嫌だ。
触られたいのに、こんな風に触られたくなんてない。
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