クソイケメンな吟遊詩人にはじめてを奪われて無職になったので、全力で追いかけて責任取らせます

ぎんげつ

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聖女の町

そうだ、初志貫徹だ!

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 翌朝、宿に戻ると、既にミーケルがいた。

「戻ってきたんだ? もう帰ってこないと思ったのに」

 扉を開けたエルヴィラを、ミーケルはちらりと見た。
 エルヴィラは大きく深呼吸をする。

「――薬、もう、切れてるって」
「ふうん?」
「神官様にちゃんと見てもらったから、間違いない」
「そう。じゃ、どうするの?」

 ミーケルは興味がなさそうだったけれど、エルヴィラは顔を上げてしっかりとした視線をミーケルへと向ける。

「初志貫徹する」

 ミーケルが軽く眉を上げて振り向いた。

「へえ? じゃあ、まだ僕に付いてくるっていうこと?」
「そう。最初の約束通りだ」

 きっぱりと言い切るエルヴィラが、昨日までとは違って見えた。

「――もう奥の手ラブ・ポーションはないから、自分でがんばるしかないよ」
「わかってる。それに、もう薬はいらない」
「あ、そ」

 ミーケルは、ふん、と鼻で笑って目を眇めてみせる。

「それにしても、また僕と一緒で本当にいいの? 僕が散々何をして何を言ったか、忘れたわけじゃないんだろう?」
「もちろんだ」

 小馬鹿にしたようなミーケルをエルヴィラはじっと正面から見据えた。

「私だって、もう黙ってされるがままになんかならない。昨日はびっくりしただけで、本当はちゃんと体術も使えるんだ。
 そっちこそ、二度目や三度目はないからな!」
「なら、いいけどね」

 ミーケルは一瞬鼻白んだような表情を浮かべたものの、小馬鹿にした態度は崩さなかった。エルヴィラも、そんなのまったく意に介さないぞと不敵に目を細めてみせる。

「お前に付いてくのは、お前と一緒なら、この町の領主家みたいによい家に出入りできる機会があるからだ。私の夫探しのためには必要なことだからな。
 私に酷いことをした分、利用してやるんだ。お前こそ覚悟しろ」

 ミーケルは一瞬だけ目を丸くして、それからくくっと笑う。
 エルヴィラもにやりと笑い返す。

「そんな大きな口を叩けるようになったんだ? いったい何があればそこまで自信満々になれるのさ。昨日は小鼠みたいに震えてたのに」
「うるさいな。私だってちゃんと考えてるし、大人になってるんだ!」

 わずかに頰を膨らませつつ、けれど笑いは浮かべたまま、エルヴィラは胸を張る。ミーケルは呆れたような表情で肩を竦め、ぷいと視線を外した。

「どうでもいいよ。ついてくるのは構わない。けど、だったらまた、僕の護衛役くらいはちゃんとこなしてもらうから。もともとそういう約束だしね」
「ああ、任せろ。
 ──戦いと勝利の神の名と輝ける太陽に掛けて、このエルヴィラ・カーリスがしっかり守ってやるぞ、ヘタレ色男め」
「ヘタレ……?」

 眉を顰めて振り返るミーケルを、エルヴィラは思い切り鼻で笑い飛ばしてやった。





*****


聖女の町
名物料理のステーキはフィレンツェ名物のビステッカがベース。
注文時の最低サイズが1kgという、日本人には団体でないと厳しい量が来るけどマジでうまい。
大人五人でギリ食べ切れる量だった。
本当にうまくて、赤身肉の旨さに開眼するレベル。和牛の脂が厳しい民には赤身肉が味方してくれるんだ。
行った店のテーブルには「飲んだ量だけ課金される」赤ワインが置いてあって、これも美味かった。
あと、生ハムメロンは正義だと思います。

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