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岩小人の町
好きにするさ
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屈託のない笑顔に、ミーケルはなんとなく気勢を削がれたような気分になる。
は、と小さく溜息が漏れる。
「まあ、そういう脳筋だからトゥーロが気に入ったんだろうな」
「そういう変な言い方をするな」
エルヴィラは咎めるように口を尖らせて……けれど、その表情はすぐに満面の輝くような笑顔に変わった。
「都を出て初めてまともに、ミケについてきてよかったと思ったんだぞ。嬉しくて頭がおかしくなりそうなくらいだ」
声を弾ませるエルヴィラに、ミーケルは眉を顰めた。
「君って、結構失礼なことを平気で言うよね」
「だってそうなんだから仕方ない。今ならお前にキスされたって許せるぞ」
「――へえ? じゃあやってみる?」
ふふんと鼻で笑いながら見返すミーケルに、エルヴィラは笑顔で応戦する。
「おう!」
その顔がなんとなく面白くない。ミーケルはエルヴィラの身体に腕を回し引き寄せると、くいっと顎を上向かせ、笑う。
「それじゃ、本当かどうか試してみよう」
そう囁いて、エルヴィラの返事を待たずに唇を塞いだ。
頭の後ろに手を当てて、角度を変えて、じっくりと嬲るように舌を絡めて――
「ん……んっ……」
エルヴィラは驚いたように見開いた目を、観念したのか伏せてしまう。九回目もやっぱりミーケルだった、と考えながら。
差し入れられた舌の動きに応えるように自分の舌を絡みつける。
最初はただただ気持ち悪いだけでどうしていいかわからなかったのに、今じゃ全然そんなことはない。
気持ち悪いどころか、とても良いもののようで……ロマンス小説のヒロインたちが恍惚とする理由がが少しわかったと思う。
ドキドキするのだ。
「驚いた。本当に上手くなったね」
唇を離して笑むように目を細めるミーケルに、エルヴィラの唇も弧を描く。
「お前を使って修練を積んだと言ったじゃないか」
「言うね。なら、もっと練習させてあげようか」
ミーケルはさらに目を細めて笑うと、もう一度エルヴィラと唇を重ねた。
十回目……もういいや。
数えるのは、もうおしまいにしよう。
きっと、これだけじゃ終わらない。
それに、これだけじゃ終われない。
エルヴィラはミーケルの身体に腕を回す。
ミーケルはかすかに瞠目し、より口付けを深くする。
アンジェ神官の言葉を思い出す。
誰でもいいのか、それとも誰かでなければいけないのかという問いを。
ここにきてやっとわかった。やっと理解できた。
私は、誰かでないと嫌なんだ。
これはやっぱり責任取ってもらわなきゃ。
エルヴィラは、ミーケルの身体に回した腕に力を込めて、ぎゅっと抱き締めた。
「君、もしかして雰囲気に酔っちゃった?」
唇を離して笑うミーケルに、エルヴィラは抱きついたままうっとりと幸せそうな微笑みを返した。
「違う。ちゃんとわかっただけだ」
「ちゃんと?」
微笑んで、きっぱりと告げるエルヴィラに、ミーケルは怪訝な顔になる。いったい何がわかったというのか。
「そう……私はどうやら、ミケのことが好きなんだ。好ましく思っている」
ミーケルは驚いたように目を瞠り……それから何を馬鹿なことをと笑う。
「悪い冗談だ。今まで散々酷い目にあったの忘れたの? 君、相当ちょろいって言われたことない? 虐められて悦ぶタイプなの?
たぶんそれ錯覚だよ。ふたりで危険な目にあったりしたから、錯覚したんだ」
「なんとでも言え。事実は変わらないんだから。アンジェ神官だって、私が恋だと思ったらそれは恋なんだと太鼓判を押してくれているんだからな」
エルヴィラはどこか誇らしげに、きっぱり言い切ってみせる。
鼻白んだミーケルが目を細める。
「だから、もう夫探しはしない。でも、お前にはついて行くからな」
「冗談だろう? 僕は君の夫探しに協力するって約束で君の同行を許可したんだ。夫探しをしないなら、君が同行する必要はなくなるはずだ」
「必要だ。だって、私はミケじゃないと嫌なんだからな。夫候補は見つけたけど、まだ夫になってくれるかわからないから、なってくれるまでついて行く」
瞠目し、黙り込んだミーケルの眉間に、小さな皺が寄る。
「私はお前について行く。どうにかしてお前が首を縦に振る方法を考えながらな」
「そこには僕の意思の入る余地がないように聞こえるんだけど?」
不機嫌そうに呟くミーケルを、エルヴィラはじっと見つめて首を傾げた。
「ミケは私が嫌いか? 顔も見たくない?」
「見たくないって言ったら、実家に帰ってくれるのか?」
ぼそりと尋ねられても、エルヴィラは笑顔のままだった。
「そしたら、ミケに見えないようについていく」
「なんだ、ついてくることには変わりないんじゃないか」
エルヴィラの答えにミーケルは思わず呆れて空を仰いでしまう。
はあ、と溜息を吐いて歩き出すと、エルヴィラも、その後を追うように歩く……ミーケルの上着の端を掴んだまま。
「別にミケが行きたい場所へ行くのは構わないよ。お前はどこかひと処に留まったままなのは嫌なんだろう? ミケがあちこち行く後ろを、私が勝手にくっついていくだけなんだ。ミケは気にするな」
「気にするよ!」
にこにことそんなことを言ってのけるエルヴィラに思わず言い返したけれど、それ以上返すべき言葉が見つからない。
どうしてこんなことになっているんだろうか。
エルヴィラがこんなことを言い出すなんて、思わなかった。
「それじゃ結局、君がついてくるのを了承したほうが面倒が少ないってことじゃないか」
「そうかもしれないな」
くすくす笑いながらついてくるエルヴィラをちらりと振り返って、ミーケルは何がそんなに楽しいのかと考える。
自分は楽しくない。
これまで以上の面倒ごとに足を突っ込んでしまったとしか思えない。どこで間違えたのかといえば、やはりエルヴィラの煽りに乗ってしまったことだろうか。
これはもしかしなくても自業自得なのか。
「ああもう、勝手にすればいいじゃないか」
「わかった、勝手にする!」
嬉しそうに頷くエルヴィラの姿に、やっぱり何かを決定的に間違えてしまった気がしてならなかった。
は、と小さく溜息が漏れる。
「まあ、そういう脳筋だからトゥーロが気に入ったんだろうな」
「そういう変な言い方をするな」
エルヴィラは咎めるように口を尖らせて……けれど、その表情はすぐに満面の輝くような笑顔に変わった。
「都を出て初めてまともに、ミケについてきてよかったと思ったんだぞ。嬉しくて頭がおかしくなりそうなくらいだ」
声を弾ませるエルヴィラに、ミーケルは眉を顰めた。
「君って、結構失礼なことを平気で言うよね」
「だってそうなんだから仕方ない。今ならお前にキスされたって許せるぞ」
「――へえ? じゃあやってみる?」
ふふんと鼻で笑いながら見返すミーケルに、エルヴィラは笑顔で応戦する。
「おう!」
その顔がなんとなく面白くない。ミーケルはエルヴィラの身体に腕を回し引き寄せると、くいっと顎を上向かせ、笑う。
「それじゃ、本当かどうか試してみよう」
そう囁いて、エルヴィラの返事を待たずに唇を塞いだ。
頭の後ろに手を当てて、角度を変えて、じっくりと嬲るように舌を絡めて――
「ん……んっ……」
エルヴィラは驚いたように見開いた目を、観念したのか伏せてしまう。九回目もやっぱりミーケルだった、と考えながら。
差し入れられた舌の動きに応えるように自分の舌を絡みつける。
最初はただただ気持ち悪いだけでどうしていいかわからなかったのに、今じゃ全然そんなことはない。
気持ち悪いどころか、とても良いもののようで……ロマンス小説のヒロインたちが恍惚とする理由がが少しわかったと思う。
ドキドキするのだ。
「驚いた。本当に上手くなったね」
唇を離して笑むように目を細めるミーケルに、エルヴィラの唇も弧を描く。
「お前を使って修練を積んだと言ったじゃないか」
「言うね。なら、もっと練習させてあげようか」
ミーケルはさらに目を細めて笑うと、もう一度エルヴィラと唇を重ねた。
十回目……もういいや。
数えるのは、もうおしまいにしよう。
きっと、これだけじゃ終わらない。
それに、これだけじゃ終われない。
エルヴィラはミーケルの身体に腕を回す。
ミーケルはかすかに瞠目し、より口付けを深くする。
アンジェ神官の言葉を思い出す。
誰でもいいのか、それとも誰かでなければいけないのかという問いを。
ここにきてやっとわかった。やっと理解できた。
私は、誰かでないと嫌なんだ。
これはやっぱり責任取ってもらわなきゃ。
エルヴィラは、ミーケルの身体に回した腕に力を込めて、ぎゅっと抱き締めた。
「君、もしかして雰囲気に酔っちゃった?」
唇を離して笑うミーケルに、エルヴィラは抱きついたままうっとりと幸せそうな微笑みを返した。
「違う。ちゃんとわかっただけだ」
「ちゃんと?」
微笑んで、きっぱりと告げるエルヴィラに、ミーケルは怪訝な顔になる。いったい何がわかったというのか。
「そう……私はどうやら、ミケのことが好きなんだ。好ましく思っている」
ミーケルは驚いたように目を瞠り……それから何を馬鹿なことをと笑う。
「悪い冗談だ。今まで散々酷い目にあったの忘れたの? 君、相当ちょろいって言われたことない? 虐められて悦ぶタイプなの?
たぶんそれ錯覚だよ。ふたりで危険な目にあったりしたから、錯覚したんだ」
「なんとでも言え。事実は変わらないんだから。アンジェ神官だって、私が恋だと思ったらそれは恋なんだと太鼓判を押してくれているんだからな」
エルヴィラはどこか誇らしげに、きっぱり言い切ってみせる。
鼻白んだミーケルが目を細める。
「だから、もう夫探しはしない。でも、お前にはついて行くからな」
「冗談だろう? 僕は君の夫探しに協力するって約束で君の同行を許可したんだ。夫探しをしないなら、君が同行する必要はなくなるはずだ」
「必要だ。だって、私はミケじゃないと嫌なんだからな。夫候補は見つけたけど、まだ夫になってくれるかわからないから、なってくれるまでついて行く」
瞠目し、黙り込んだミーケルの眉間に、小さな皺が寄る。
「私はお前について行く。どうにかしてお前が首を縦に振る方法を考えながらな」
「そこには僕の意思の入る余地がないように聞こえるんだけど?」
不機嫌そうに呟くミーケルを、エルヴィラはじっと見つめて首を傾げた。
「ミケは私が嫌いか? 顔も見たくない?」
「見たくないって言ったら、実家に帰ってくれるのか?」
ぼそりと尋ねられても、エルヴィラは笑顔のままだった。
「そしたら、ミケに見えないようについていく」
「なんだ、ついてくることには変わりないんじゃないか」
エルヴィラの答えにミーケルは思わず呆れて空を仰いでしまう。
はあ、と溜息を吐いて歩き出すと、エルヴィラも、その後を追うように歩く……ミーケルの上着の端を掴んだまま。
「別にミケが行きたい場所へ行くのは構わないよ。お前はどこかひと処に留まったままなのは嫌なんだろう? ミケがあちこち行く後ろを、私が勝手にくっついていくだけなんだ。ミケは気にするな」
「気にするよ!」
にこにことそんなことを言ってのけるエルヴィラに思わず言い返したけれど、それ以上返すべき言葉が見つからない。
どうしてこんなことになっているんだろうか。
エルヴィラがこんなことを言い出すなんて、思わなかった。
「それじゃ結局、君がついてくるのを了承したほうが面倒が少ないってことじゃないか」
「そうかもしれないな」
くすくす笑いながらついてくるエルヴィラをちらりと振り返って、ミーケルは何がそんなに楽しいのかと考える。
自分は楽しくない。
これまで以上の面倒ごとに足を突っ込んでしまったとしか思えない。どこで間違えたのかといえば、やはりエルヴィラの煽りに乗ってしまったことだろうか。
これはもしかしなくても自業自得なのか。
「ああもう、勝手にすればいいじゃないか」
「わかった、勝手にする!」
嬉しそうに頷くエルヴィラの姿に、やっぱり何かを決定的に間違えてしまった気がしてならなかった。
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