クソイケメンな吟遊詩人にはじめてを奪われて無職になったので、全力で追いかけて責任取らせます

ぎんげつ

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歌う竜の町

その顔は反則だ

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「ほら、こっち向いて」

 宿に戻るなり顔を上向けられて、キスを落とされる。ミーケルがすごく優しく思えて、エルヴィラは嬉しくなってしまう。
 思わずにひゃっと笑うエルヴィラに、ミーケルも「やっと機嫌が直った」と笑った。

「むう、機嫌取りなのか?」
「それも兼ねてるだけって話だよ」

 くすくす笑いながらキスをされて、エルヴィラはどうも納得いかないような気がした。けれど、それでもやっぱりへにゃりと笑ってしまう。
 いちゃいちゃすると、どうしても顔が緩んでしまうんだからしかたない。
 ぎゅうっと抱き付いて、すーはーと大きく息をする。

「どうでもいいけど、そうやってるとほんとうに動物みたいだよ」
「だって、ミケの匂いがするんだからしかたない」

 すんすんと鼻を鳴らしながら、なおも顔を埋めるエルヴィラをよいしょと持ち上げて、ベッドの端に座らせる。
 ん、と上げた顔の鼻を摘んで、ミーケルは、ふ、と笑った。

「じゃあ、今日は僕が君の匂いを嗅ぎ倒してあげようか」
「え?」
「たまにはいいだろう?」

 目を見開くエルヴィラの髪に顔を埋めて、すう、と息を吸う。

「う、私は、ミケみたいにいい匂いじゃないから」
「いい匂いだよ」

 ふんふんと嗅ぎながらうなじのあたりをぺろりと舐められて、思わず首を竦める。

「あ、う、か、身体、身体、まだ、きれいにしてない……」
「大丈夫だよ。毎日きれいにしてるんだから」

 くすくす笑いながら襟元を緩められ、前をはだけられ、どんどん服も脱がされていく。匂いを嗅がれていると思うととてつもなく恥ずかしい。

「う、あ……」

 瞬く間に下着姿にされてしまったが、どうもミーケルを正視できない。

「どうしたの、いつにも増して、恥ずかしがっちゃって」
「だって、匂い……」
「そんなの気にしてるの? 大丈夫だって言ったろ?」

 ちゅ、と唇を啄ばみながら言われるが、どうにも気になってしまうのだ。
 下着も取られ、乳房を柔らかく掬い上げられて、先をゆるゆると弄られても、やっぱり気になってしまうのだ。

 だってまんいち臭かったら目も当てられない。

「ん……うぅ……」
「まったく、そういう変なところばかり女の子みたいなんだね」
「わ、私だって、いちおう、女の子、なんだぞ」
「……いちおう、なんだ?」

 くつくつとミーケルが笑って、真っ赤なエルヴィラをもう一度抱き上げる。

「あ……何を」
「しょうがないからきれいにしてあげるよ」
「え」

 横抱きにされたまま、またキスをされてへにゃりと笑ってしまった。きれいにしてもらえるなら、もう大丈夫なんじゃないか。

「ああもう、またそんな油断しきった顔をして」

 だって、ミーケルに求められてると思うだけで幸せなのだ。
 昼間にあったことなんか全部きれいに忘れて、エルヴィラはにひゃにひゃと笑った。



「ん、んん……」

 ミーケルの膝の上に跨ってぴったりと身体に張り付くのは、至福の時だとエルヴィラは思う。隙間なくぴったり張り付いたまま、キスまでできるのだ。

 ゆらゆら揺すられれば中も気持ちいいし、声も近いところに聞こえるし、少し上を向くだけですぐそばに顔があるし、伏せると匂いも存分に嗅げるし頭を擦り付けてもいい。
 もう最高なのだ。
 欲を言えば、もうちょっと胸板は厚くてもいいかもしれない。
 だが、ミーケルがあまりムキムキなのは何かが違う。
 あちらを立てればこちらが立たずとはこういうことか、なかなか難しいものだな――とエルヴィラはにやにやしながら考えた。

「そんな緩んだ顔で、何を考えてるの」

 胸に頭を押し当てて、さっきから変な顔で笑ったままのエルヴィラに、ミーケルは呆れて息を吐く。

「ほんとう、君ってこの体勢好きだけど、いつも何を考えてるのさ」

 そう訊きながら背中を撫でて、最近生えた尻尾を軽く引っ張った。とたんに「んう」と悶えてきゅっと締まることに、つい笑ってしまう。

 その尻尾の先は、まるでヘチマか何かの巻きひげのように、胡座をかいたミーケルの足に絡み付いたままだ。
 普段はエルヴィラ自身の脚に巻きついているところをみると、何か触ったものに巻きつきたくなる性質でもあるのだろうか。
 ただ、あまり力はないようで、ものを持ち上げたりなどはできないのだが。

「ミケがすごく近いなって」
「うん、これだけ張り付いてたらね」

 締まりのない笑顔で上向くエルヴィラに、口付けを落とす。
 ますます顔から締まりがなくなって面白い。
 ぐ、と突き上げてやると「あ」と短く声を漏らし、ぱくぱく口を開閉しながらやっぱり中が締まる。

「ここがいいのかな?」

 何度も擦り、突いていると、たちまち真っ赤になって身悶えしながら小さく「気持ちいい」と呟いて蕩けそうな顔になる。

「その顔は、反則だろう」
「ん、だって」

 半分口を開けたまま、何度も何度も吐息を漏らすエルヴィラは、年相応の色気がだだ漏れになっている。
 剣を片手に魔物へと突進していく姿からはとても想像できない表情だ。

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