いつか夜明けをあなたと

ぎんげつ

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“娘”の物語

承前

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 その日は、とても寒かった。
 暗い空。今にも雪が降り出しそうな曇天の下、樹々も土も凍りついていた。
 吐き出す息は真っ白で――。

「お前のことだけが、わたしが今ここで生きている理由だよ」

 私を抱き締め、額を合わせた彼女は、そう言って笑った。
 同じ顔に同じ色の目。体格もほぼ同じ。
 けれど、髪の色だけが違う彼女。

「私も……私が生きている理由も、お前だけだ」

 私も彼女を抱きしめ返し、同じことを呟く。
 凍りつき、しんと静まり返った森には、生き物の気配すら感じられない。

 向き合った彼女の頬を撫でて、私は小さく吐息を漏らす。
 とても愛しい私の半身。
 私には彼女しかいないし、彼女には私しかいない。
 世界には、私と彼女のふたりだけ。



 ――なのに、彼女はもういない。この世界から、消えてしまった。
 生きる理由を無くしたはずの私は、何故、未だ生き続けているんだろう。



「一年だ」

 そう、“父”は言った。
 どうしても、どうしても時間が欲しいと懇願する私に、“父”は嗤う。

「一年、時間をあげよう。その間にできなかったら……わかっているね?」

 念を押す“父”に、わたしはただ頷く。
 笑みを深め……しかし、笑ってはいない“父”は、「なら、せいぜい好きにやってみればいい」と顎で扉を示す。
 頷いたわたしは踵を返し、“父”の元を立ち去った。



 一年……凍りついた森に再び若木が芽吹くまでが、私に与えられた時間だった。

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