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第四章 再びの満月
30.狼人のシャン
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シャンが無事に帰って来てくれたことは嬉しいけど、大事な満月の夜が過ぎてしまった。彼が狼化して僕を抱いてくれるであろう次の満月は、29日先だ。
な、長い……。
カレンダーの満月の表記がずっと先で、僕は思わずため息が出てしまった。
それにまた次の満月の夜も、シャンがどこかへ行ってしまう可能性だってあるのだ。
僕は今、シャンに乱暴に抱かれたい欲求で爆発しそうだ。
でもそれを正直にシャンに伝えるのはドン引きされそうで怖い。シャンには嫌われたくないのだ。
その夜、シャンはいつもよりずっと早く寝る支度を始めた。どこでどう過ごしていたのか聞かなかったが、前日の夜は外にいたこともあり、疲れていたのだろう。
「電気消すよ」
僕も同じく前の夜はよく眠れなかったから、ベッドのシャンの隣の空間へ入った。
最初の頃こそ長椅子で寝ていたシャンだが、僕が痩せてきたこともあり、最近はこうして一緒にベッドで寝ている。
シャンがランタンの明かりを消した。窓にかかったカーテンの隙間から月明かりが入ってくる。空には満月を一日過ぎた大きな月が出ているのだろう。
どうしてそう思ったのか思い出せないけど、このとき僕は無性に今何時だろうと気になって、前の世界から転生してきた際に身につけていた腕時計へ手を伸ばした。ベッドサイドの棚の上にいつも置いていたのだ。
そして暗がりの中で時計のバックライトのスイッチを押した。丸い文字盤全体が黄色く光り、デジタル表示の時刻が浮かび上がる。
まだ20時か……。
「タ、タクヤ……、何してっ……」
突然、シャンが叫んだ。
「え、どうしたの、シャン?」
「に、にげっ……、ううぅ……」
明らかに様子がおかしい。ベッドへ頭を突っ伏して、苦しそうに呻いている。
「ぐああああ……っ」
シャンは普段は出さないような、太くて低い叫び声を上げた。
これってもしかして、あのときと同じ……?
でもどうして、今日は満月じゃないのに……。
そうか、僕が腕時計の文字盤を点灯させたからだ。本物の満月でなくても、暗がりでまん丸の黄色い光を見るとシャンは狼化してしまうらしい。
「シャン、大丈夫!?」
苦しそうに呼吸する彼の背中に触れた。
はあはあ呼吸するばかりで、返事はない。
部屋は真っ暗だから、僕は慌ててランタンの明かりをつけた。
少しの沈黙の後、むくりと顔を上げたシャンはあの狼のシャンだった。
「……あっ……」
あれだけ恋焦がれていたのに、いざ狼人のシャンを目の前にすると、いかにも肉食獣の鋭い目つきと尖った牙に背筋がゾッと震える。
豚人の僕は彼を本能的に怖いと思ってしまうのだろう。
な、長い……。
カレンダーの満月の表記がずっと先で、僕は思わずため息が出てしまった。
それにまた次の満月の夜も、シャンがどこかへ行ってしまう可能性だってあるのだ。
僕は今、シャンに乱暴に抱かれたい欲求で爆発しそうだ。
でもそれを正直にシャンに伝えるのはドン引きされそうで怖い。シャンには嫌われたくないのだ。
その夜、シャンはいつもよりずっと早く寝る支度を始めた。どこでどう過ごしていたのか聞かなかったが、前日の夜は外にいたこともあり、疲れていたのだろう。
「電気消すよ」
僕も同じく前の夜はよく眠れなかったから、ベッドのシャンの隣の空間へ入った。
最初の頃こそ長椅子で寝ていたシャンだが、僕が痩せてきたこともあり、最近はこうして一緒にベッドで寝ている。
シャンがランタンの明かりを消した。窓にかかったカーテンの隙間から月明かりが入ってくる。空には満月を一日過ぎた大きな月が出ているのだろう。
どうしてそう思ったのか思い出せないけど、このとき僕は無性に今何時だろうと気になって、前の世界から転生してきた際に身につけていた腕時計へ手を伸ばした。ベッドサイドの棚の上にいつも置いていたのだ。
そして暗がりの中で時計のバックライトのスイッチを押した。丸い文字盤全体が黄色く光り、デジタル表示の時刻が浮かび上がる。
まだ20時か……。
「タ、タクヤ……、何してっ……」
突然、シャンが叫んだ。
「え、どうしたの、シャン?」
「に、にげっ……、ううぅ……」
明らかに様子がおかしい。ベッドへ頭を突っ伏して、苦しそうに呻いている。
「ぐああああ……っ」
シャンは普段は出さないような、太くて低い叫び声を上げた。
これってもしかして、あのときと同じ……?
でもどうして、今日は満月じゃないのに……。
そうか、僕が腕時計の文字盤を点灯させたからだ。本物の満月でなくても、暗がりでまん丸の黄色い光を見るとシャンは狼化してしまうらしい。
「シャン、大丈夫!?」
苦しそうに呼吸する彼の背中に触れた。
はあはあ呼吸するばかりで、返事はない。
部屋は真っ暗だから、僕は慌ててランタンの明かりをつけた。
少しの沈黙の後、むくりと顔を上げたシャンはあの狼のシャンだった。
「……あっ……」
あれだけ恋焦がれていたのに、いざ狼人のシャンを目の前にすると、いかにも肉食獣の鋭い目つきと尖った牙に背筋がゾッと震える。
豚人の僕は彼を本能的に怖いと思ってしまうのだろう。
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