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第三章 僕の借金苦 (蒼side)
14.どうしよう……
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いつもなら金を受け取るとすぐに帰って行くのに、彼は僕の部屋の中でたばこに火をつけた。
四畳半一間の狭い部屋に煙が舞い、僕はコホッと咽た。
「……なあ、来月から月の返済額を10万円にしてもらいたいんだが」
「えっ、そんなっ!」
無理です! と言おうとして僕は言葉を飲み込んだ。お金に困っていた僕の両親に、叔父さんは善意で500万円を貸してくれたのだ。僕には叔父さんの言う通りに返済する義務がある……。
けれど、月5万ずつ返済している今でさえ限界まで切り詰めた生活で、僕には月10万円の返済なんて無理な話だ……。
「お前の両親が俺にしていた借金は500万円だと言ったが、よくよく計算してみたら1000万円だったんだ」
「えっ!?」
「月5万じゃ完済まで何年かかるって……。悪いが俺だってそんなにいつまでも待ってやれないぜ。親戚だから無利子でいいとは言ってるが、あんまり甘えられても困る」
叔父さんがそう思うのは当然のことだろう。僕だって人にお金を貸してなかなか返してもらえなかったら困るだろう。
「わかりました。来月から月10万お返しします」
「そうしてもらえると助かるよ」
彼は流しのシンクにたばこを押しつけて三角コーナーへ投げ入れ、帰って行った。
僕はたばこ臭さの残る部屋の中で頭を抱えた。
どうやってお金を工面すればいいか……。奨学金の返済額を減額してもらおうか。でも前に問い合わせたとき、これ以上の減額はできないと言われてしまっていたのだ。
こうなったら業者にお金を借りてとりあえず叔父さんに返すしかない……でもそんなことしたら利子がどんどん増えてしまうだろう。
じゃあ仕事以外にアルバイトを……なんてことできる時間なんてない。ただでさえ残業続きなんだから。
ああ、どうしよう……。
床にへたり込んでいると、再び玄関のチャイムが鳴った。年宏叔父さんだろうか?
ドアを開けると外には麗夜さんがいた。車で帰って行ったはずなのにどうしたんだろう。
「お、やっぱりここが蒼の部屋なんだね。隣の部屋には中国っぽい飾りがしてあるから、さっき言っていたお隣さんの部屋かなって思って」
彼はにっこりと僕に笑いかけ、紐のついたケースに入った社員証を差し出した。
「はい、これ。俺の車の中に落ちてたよ」
「あ、それ……」
名前も顔写真も間違いなく僕のものだった。
「これがないと次の仕事の日困るだろうと思って引き返してきたんだ」
わざわざ引き返して届けてくれるだなんて……、どうしてこの人ってこんなに優しいんだろう。
借金の件で不安に押しつぶされそうだった僕の心が一気に緩み、目尻からポロッと涙が零れ落ちた。
「え……、どうしたの!?」
「ごめんなさい、なんでもないです」
麗夜さんには関係のないことだから迷惑をかけたくなかったが、彼はとりあえず部屋の中に入ろうと僕の肩を抱いた。
四畳半一間の狭い部屋に煙が舞い、僕はコホッと咽た。
「……なあ、来月から月の返済額を10万円にしてもらいたいんだが」
「えっ、そんなっ!」
無理です! と言おうとして僕は言葉を飲み込んだ。お金に困っていた僕の両親に、叔父さんは善意で500万円を貸してくれたのだ。僕には叔父さんの言う通りに返済する義務がある……。
けれど、月5万ずつ返済している今でさえ限界まで切り詰めた生活で、僕には月10万円の返済なんて無理な話だ……。
「お前の両親が俺にしていた借金は500万円だと言ったが、よくよく計算してみたら1000万円だったんだ」
「えっ!?」
「月5万じゃ完済まで何年かかるって……。悪いが俺だってそんなにいつまでも待ってやれないぜ。親戚だから無利子でいいとは言ってるが、あんまり甘えられても困る」
叔父さんがそう思うのは当然のことだろう。僕だって人にお金を貸してなかなか返してもらえなかったら困るだろう。
「わかりました。来月から月10万お返しします」
「そうしてもらえると助かるよ」
彼は流しのシンクにたばこを押しつけて三角コーナーへ投げ入れ、帰って行った。
僕はたばこ臭さの残る部屋の中で頭を抱えた。
どうやってお金を工面すればいいか……。奨学金の返済額を減額してもらおうか。でも前に問い合わせたとき、これ以上の減額はできないと言われてしまっていたのだ。
こうなったら業者にお金を借りてとりあえず叔父さんに返すしかない……でもそんなことしたら利子がどんどん増えてしまうだろう。
じゃあ仕事以外にアルバイトを……なんてことできる時間なんてない。ただでさえ残業続きなんだから。
ああ、どうしよう……。
床にへたり込んでいると、再び玄関のチャイムが鳴った。年宏叔父さんだろうか?
ドアを開けると外には麗夜さんがいた。車で帰って行ったはずなのにどうしたんだろう。
「お、やっぱりここが蒼の部屋なんだね。隣の部屋には中国っぽい飾りがしてあるから、さっき言っていたお隣さんの部屋かなって思って」
彼はにっこりと僕に笑いかけ、紐のついたケースに入った社員証を差し出した。
「はい、これ。俺の車の中に落ちてたよ」
「あ、それ……」
名前も顔写真も間違いなく僕のものだった。
「これがないと次の仕事の日困るだろうと思って引き返してきたんだ」
わざわざ引き返して届けてくれるだなんて……、どうしてこの人ってこんなに優しいんだろう。
借金の件で不安に押しつぶされそうだった僕の心が一気に緩み、目尻からポロッと涙が零れ落ちた。
「え……、どうしたの!?」
「ごめんなさい、なんでもないです」
麗夜さんには関係のないことだから迷惑をかけたくなかったが、彼はとりあえず部屋の中に入ろうと僕の肩を抱いた。
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