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第五章 俺の気持ちは重すぎて(麗夜side)

22.俺の気持ちはもしかして重い?

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 出張から帰る新幹線の窓越しの景色を俺はぼんやりと眺めていた。

 ふとした瞬間、蒼のことばかり考えてしまう。
 控えめな表情や仕草、遠慮がちに俺を見つめる視線を思い出すたびドクンと胸が甘くときめく。
 そして彼のことを想ってにやにやしたり、あれこれ考えたりしている時間がすごく幸せだ。

「ずっと俺のそばにいて欲しい……。君の抱えている借金は俺が全額返済してあげるから、一緒に暮らそう……」
 もしそう言ったら、蒼はどんな反応をするだろうか。

 新幹線がトンネルに入って窓ガラスに自分の顔が映り込んだ。昔からチャラいとかやりチンとか言われてきた俺の顔……。
 でも、そう言われて当然だった。俺は今まで遊んでばかりで、本気の恋なんてしたことがなかったのだから。

 パーティーとか風俗で知り合ったお気に入りの男の子に「好きだよ」とか「愛してる」なんてノリで言ったことはあるけど、そんなの全部その場の雰囲気を盛り上げるためのリップサービスだった。俺にとってセックスなんてただのエクササイズみたいなもんだったし、気持ちよく射精できればそれでよかった。

 一人の人間に夢中になって執着するなんてバカバカしいとすら思っていたんだ。だって俺たち同性愛者って相思相愛になったところでその後何があるわけじゃない。死ぬまで一緒にいようって口約束して、すぐに別れてしまうゲイカップルを今までどれほど見てきたことか。

 ワンナイトラブもしくはセックスを商売にしているゲイ風俗の男を抱くのが後腐れなくていい。俺にはそれが合っているって……ずっとそう思っていたのに。
 蒼を本気で好きになった今ならわかる。そういう気持ちのこもっていないセックスに俺はうんざりしていたんだ。だからEDになってしまったんだ。

 俺って軽くてチャラい人間のように振舞いながらも、心の奥では本気で愛し合える存在を渇望していたんだ。
 だから今まで出会ったことがないほど純情で麗しい蒼を見た瞬間、心奪われてしまったんだ……。
 蒼のためなら俺は何でもしたい。役に立ちたいし、そばにいたい。そんなことを思ったのって初めてだ。


「はー、彼女がまた死ぬ死ぬ言ってる。サークルの合宿だって散々説明したのに、本当は女と一緒で浮気旅行でしょ、一緒に行くメンバー男しかいない証拠見せてって、もうマジめんどくせぇ……」
 斜め前の席で青年が隣の友人にスマホの画面を見せていた。
「うわ、重っ……。お前の彼女って見た目はギャルみたいで軽そうなのにな」
 友人は長文のメッセージを読んで、同情した顔で呟いた。
「そうなんだよ。悪い意味で見た目と中身にギャップあるんだわ。都合よく付き合えると思ったのに参っちゃうよ……」


 重いかぁ……。
 蒼は俺のことをどう思っているだろうか。
 俺のことをチャラい社長だと思っているなら俺が本気で愛していると告白したら「うわ、重っ……」と思って引くんじゃないだろうか……。蒼にとって俺はお金をくれる都合のいい人間でしかないかもしれないのだから。
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