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17.我の用心棒
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リヒトは精鋭部隊長のブライアンをも負かすほどの剣の腕を持っていたので、
「こやつを我の用心棒にする」
と側近たちに説明した。
そして我の寝室のある塔の物置部屋にベッドを運ばせて奴の寝室を作った。
これなら我の部屋で寝食を共にしても怪しまれることはないので都合が良かった。
「魔王様、あれほど憎き敵だとしてきた人間を用心棒として迎えて、本当によろしいのですか?」
側近のラピスは真意を探ろうと瑠璃色の瞳で我を見つめた。
「確かに奴は人間ではあるが王国軍の者ではない。その証拠に最初にこの城へ攻めてきた時も奴の盾には何の紋章も入っていなかったであろう」
「ですが。……万が一、奴が王国側のスパイであった場合や突然我らを裏切って攻撃してきた場合、あの者が強いがゆえ太刀打ちできません」
「大丈夫だ。それとも我が信用できないか?」
問い返すとラピスは肩を落とし、それ以上何も言わなかった。
「式典の前に用がある。我は先に行くぞ」
ラピスにそう言い、我は魔王の間を出た。
体の芯がキュンっと疼き、じわじわと後孔が潤う感覚がした。我の体は未だ発情が続いている状態だ。
リハーサルの時間だがそんなものはサボって、式典の本番前にトイレで欲を発散しておこうと思っていた。
物知りのミラージュが言うには個人差があるものの、発情期は一週間から十日程度だという。
初日に比べればだるさやムラムラがだいぶマシになってきたものの、あと数日は発情が続くと思うとうんざりする。
「俺と恋仲だって正直に言っちゃえばいいのに。ルシファーったら素直じゃないんだから」
リヒトが気配を消して廊下の隅に立っていた。
さっきの会話を盗み聞きしていたのだろう。ふっと笑っている。
「誰が人間である貴様と恋仲だというのだっ! 我のことはルシファー様と呼べっ!」
我はイラっとして睨みつけたが、奴は腕を掴んで我を廊下の脇の狭い資料庫へ連れ込んだ。
発情中の体では力が入らず抵抗出来ない。
古い資料と備品で埋め尽くされたそこはガタイのいい男二人が入ると身動きが取れなかった。
リヒトはさっと扉を閉めた。
「貴様、何をっ!」
我はリヒトの肩口に顔をうずめるような体勢で、じっとしているほかなかった。
奴の強烈な匂いに頭がくらくらする。
「ルシファーの発情がつらそうだからちょっと癒してあげようと思って。つらいなら仕事なんて休んじゃえばいいのに」
我のズボンの股間に手を触れ、耳へ熱い吐息を吹き込んみながら奴は言った。
耳のふちを舐められ、ゾクッと背筋が震える。
「魔王である我がこの程度のことで休めるかっ!」
「そう? 魔王だって一応は人なんだから、つらいときは無理する必要ないよ」
今までこんなふうに気遣われたり心配されたりすることなどなかった。
だから我も魔王である自分は魔族のために犠牲を払うのが当然だと考えていたのだが……。
「……貴様、人間の分際で偉そうにっ!」
やはりこいつといると調子が狂う、と我はイライラして怒鳴った。
「しーっ、大きい声出さないで」
資料庫の前を誰かが通って行く足音が聞こえた。
「こやつを我の用心棒にする」
と側近たちに説明した。
そして我の寝室のある塔の物置部屋にベッドを運ばせて奴の寝室を作った。
これなら我の部屋で寝食を共にしても怪しまれることはないので都合が良かった。
「魔王様、あれほど憎き敵だとしてきた人間を用心棒として迎えて、本当によろしいのですか?」
側近のラピスは真意を探ろうと瑠璃色の瞳で我を見つめた。
「確かに奴は人間ではあるが王国軍の者ではない。その証拠に最初にこの城へ攻めてきた時も奴の盾には何の紋章も入っていなかったであろう」
「ですが。……万が一、奴が王国側のスパイであった場合や突然我らを裏切って攻撃してきた場合、あの者が強いがゆえ太刀打ちできません」
「大丈夫だ。それとも我が信用できないか?」
問い返すとラピスは肩を落とし、それ以上何も言わなかった。
「式典の前に用がある。我は先に行くぞ」
ラピスにそう言い、我は魔王の間を出た。
体の芯がキュンっと疼き、じわじわと後孔が潤う感覚がした。我の体は未だ発情が続いている状態だ。
リハーサルの時間だがそんなものはサボって、式典の本番前にトイレで欲を発散しておこうと思っていた。
物知りのミラージュが言うには個人差があるものの、発情期は一週間から十日程度だという。
初日に比べればだるさやムラムラがだいぶマシになってきたものの、あと数日は発情が続くと思うとうんざりする。
「俺と恋仲だって正直に言っちゃえばいいのに。ルシファーったら素直じゃないんだから」
リヒトが気配を消して廊下の隅に立っていた。
さっきの会話を盗み聞きしていたのだろう。ふっと笑っている。
「誰が人間である貴様と恋仲だというのだっ! 我のことはルシファー様と呼べっ!」
我はイラっとして睨みつけたが、奴は腕を掴んで我を廊下の脇の狭い資料庫へ連れ込んだ。
発情中の体では力が入らず抵抗出来ない。
古い資料と備品で埋め尽くされたそこはガタイのいい男二人が入ると身動きが取れなかった。
リヒトはさっと扉を閉めた。
「貴様、何をっ!」
我はリヒトの肩口に顔をうずめるような体勢で、じっとしているほかなかった。
奴の強烈な匂いに頭がくらくらする。
「ルシファーの発情がつらそうだからちょっと癒してあげようと思って。つらいなら仕事なんて休んじゃえばいいのに」
我のズボンの股間に手を触れ、耳へ熱い吐息を吹き込んみながら奴は言った。
耳のふちを舐められ、ゾクッと背筋が震える。
「魔王である我がこの程度のことで休めるかっ!」
「そう? 魔王だって一応は人なんだから、つらいときは無理する必要ないよ」
今までこんなふうに気遣われたり心配されたりすることなどなかった。
だから我も魔王である自分は魔族のために犠牲を払うのが当然だと考えていたのだが……。
「……貴様、人間の分際で偉そうにっ!」
やはりこいつといると調子が狂う、と我はイライラして怒鳴った。
「しーっ、大きい声出さないで」
資料庫の前を誰かが通って行く足音が聞こえた。
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