最初に好きになったのは…声

高宮碧稀

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第◯章**楽しいより楽でいたい

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篠原くんを意識してドキドキする胸。
篠原くんのことを考える以外では、ずっと胸を占める玉木くんのこと。
どうしても感じる罪悪感。
一人の生徒に対する、平等じゃない気持ちにはもちろん、そんなドキドキを玉木くんにも感じてしまうなんて。
私……欲求不満かもしれない!
そう思うと、恥ずかしくて、怖くて、なんだか悪いのは私のような気がする。
慣れない私をからかってる篠原くんの方が、絶対悪いに決まってるのに!!
でも、そんな篠原くんの、真っ赤な頬を見てしまった。
つい“好き”っていっちゃったから、照れたの?
だって、男の人にしては綺麗な指先で、大切そうに本に触れるの。前に、雨の日にあげた、水濡れ防止のビニールをちゃんと使ってくれてる。
最初に図書室に来たときに、本を放り投げて帰って以来 ……本を大切にしてくれるのが、すっごくうれしい。
いつも、そう思ってるから、言葉がスルリと口からでた。
玉木くんと、篠原くん。どっちの……キ、キスがよかったかって聞いたときは、怖いくらいだった。
嫉妬してるって、そう言ったときは、すごくまっすぐな瞳をしていた。
でも、水を飲みにいくと言った彼は、こっちを見てくれなくて。ドアに向き直るときに、チラリと見えた頬は、すごく赤かった。
篠原くんも、私にドキドキしたり、困ったり、するのかな?そう思うと、くすぐったくなった。

また、静寂が訪れる。
篠原くんは、たいてい他の生徒が帰る頃に現れる。
静かな図書室に、あんまりスルリとなじむから……篠原くんが図書室からいなくなると、いつもいっそう静かになる。
今日も、そう。
しばらく本棚を整理してたけど、静かすぎて、時間が長く感じられた。
手持ちぶさたで、用もないのに準備室に入ったくらい。
準備室のテーブルにふと目が止まる。
そこには、2冊の本。
昨日、玉木くんが表紙に口づけた本と、今日篠原くん貸す予定の本。
どっちも、恥ずかしくてみれない。
いたたまれなくなって、準備室の時計を見上げたけど、時間なんて全然見ないままにあちこち視線がさまよう。
玉木くんから指摘されてびっくりした。
その言葉を聞いて、もう、今まで通りに本を選べなかった。
どの本を選んでも、特別に好きな本で。
それがそのまま、篠原くんへの特別な感情を物語っていそうで。
違うって、言い切れない。

篠原くんと話すのは、いつも、特別に、楽しい。
しっかり、しなくちゃ。
立場を、考えなくちゃ。
わきまえて、行動しなくちゃ。
篠原くんが、一時の感情で動いてるのと一緒で、私もただ、免疫がないから……舞い上がってるだけだ。
キッ……キス、をされて、心拍数があがったり、優しくされて、ドキドキしたり。怒らせて、ただただ不安に感じたり。
そんなので、安易な気持ちを持つべきじゃない。
2冊の本の周りだけ、空気の密度が高いかのような気さえした。本を見ないように、あちこち視線をさまよわせながら、時間が過ぎるのを待った。

扉が開く音が聞こえた時には、やっと帰ってきたって思って……自然と“おかえり”って言葉がでたんだけど。
その姿を見てびっくり。
水を飲むのに、バケツでも使ったの!?
そう言いたくなるくらい、ずぶぬれだった。
タオルでふいてあげると、ふいに篠原くんが“ただいま”といった。
“ありがとう”じゃなくて?と思ったけど、そう、私が“おかえり”といったんだ。
なんだか、急に恥ずかしくなった。 だって……ずっと待ってたって、言ってるようなものだ。
その場を離れる私に、篠原くんは、追って“ありがとう”も告げた。
くすぐったくて、本を取りに行くといって、準備室に入るなり……なんだか“わあぁぁ”ってなって、その場にしゃがみ込む。
今から“今日のオススメ”を渡さなくちゃいけない。なにもつっこまずに、受け取って欲しい。
その願いは、あっさり却下されてしまった。

緊張して、前やすぐ隣にはいられなくて。イスを一つ空けて座った。
さんざん悩んで、勇気を出して本を渡したけど……篠原くんはすぐに気がついた。
私が大人の余裕でかわせば、絶対ばれなかったのに。
ウソ……苦手。
ごまかしきれずに、しかも玉木くんの名前を出しそうになって。篠原くんの目が、鋭くなる瞬間を見てしまった。
目の色が変わるっていうの?怒られると、そう思った。
でも、次に聞こえてきたのは大きなため息で……びっくりして何も言えないでいると、突然変なことを聞いてきた。

“触られても嫌じゃなくて、他の人が触ってないところ”だなんて。
教えたら、どうなるの?
さ…触るの?
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