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ここが私の土俵際。
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私が語る『恋☆どす』のストーリーが河童の心を激しく揺さぶったらしく、感動して話をもっと聞かせてほしいと言って来たが、とりあえず耳の針をどうにかして欲しいとの事なので、現在針を引っこ抜こうと奮闘中です。
—————
く!私とした事が『恋☆どす』に食い付いたから善良な河童だと思って油断したよ。
コイツのこの見た目を裏切らない生臭さ!海藻もしっかり絡まってるし、ヌルッとしてるし!
「うわあ! ヌルヌルが目に飛んできた! 朱里、前が見えないよ! 助けて」
「男だったら少し我慢してて! あと少しで針取れそうだから」
「や、優しくしてね」
だ、だまらっしゃい!河童頭!いや、河童なんだけど!このヌルヌルが邪魔をしてっ!
お前は鰻か!鰻科河童目か!鰻は美味いけど河童は上手くないだろ!河童巻きの胡瓜もお前の名前つけられてさぞかし大迷惑だわ!胡瓜に訴えられろ!
「あ、取れた。取れた」
「ふう。一時はどうなる事かと。これが河童界の大スターである『川流れのお銀』だったら耳の釣り針も流行ったかも知れないけど、俺が釣り針を耳にぶら下げてても只の奇抜な河童だよ」
河童の姿が既に奇抜だよ。そこに関しては安心して欲しいわ。
「良かった、良かった。河童さんここら辺で大きいイカ見なかった? ダイオウホウズキイカってイカなんだけど」
クリスの目、赤。痛かったんだろうな。笑
「あの馬鹿でかいイカ? あれだったら30分くらい前に勇者が討伐してたよ」
「そうなんだ、残念。でもそりゃそうか皆同じギルドで依頼受けるもんね。こういう事もあるか。ん? 勇者?」
「討伐? 勇者がいたのかい?」
「いたよ。まあ自称だけどな。手当たり次第に魔物を倒してて、いい迷惑だよ。あいつらに皿割られそうになって海まで逃げて来たんだから。それで逃げ込んだ先でお前らに釣り上げられたって訳さ」
だから海にいたんだ。それで耳に針刺さるとか災難な河童だな。
「勇者は魔物の街に入ってもギルドで依頼を受ける事は絶対にないよ。朱里、恐らく本物の勇者だ」
「じゃあそいつら倒せば帰れるじゃん! おい河童、勇者達どこ行った!?」
「教える事は出来ない。何故なら絶対に勝てないからだ。わざわざ死にに行くような真似はさせられない」
「え? 勇者ってそんなに強いの?」
「俺は牛を川にひきづり込む程度の河童力はあるし、魔物の相撲取りと勝負してもそうそう簡単には負けないよ。だけど勇者の連れの屈強な戦士に、いとも簡単に投げ飛ばされた。完敗だよ」
河童力もよく分からないし、比較対象がコイツ(河童)だとイマイチ凄さが分かんないなぁ。
「でもやってみなきゃわかんないじゃん」
「そこまでいうなら、俺とぶつかり稽古してみるかい? 俺に勝てなきゃあいつらに立ち向かうなんて、到底無理だぜ」
「……」
この世界に来てクリスのこんな顔初めてみた。河童も真剣な顔してるし。
「その『恋☆どす』とか言う相撲の話、正直感動したよ。あんなに情熱的に相撲を語るアンタはまるで純真無垢な子供の様だった」
相撲っていうか『恋☆どす』なんだけど、まあいいか。
「あんな目をして語るやつに悪い奴はいない。だからこそだ。大人しく引いたほうがいい。それが身の為ってもんだ」
てか、そもそも私は『恋☆どす』が好きであって相撲はそんなに詳しくないからね?
でも勝てない勝てないってこれだけ言われると段々悔しくもなってくるよ。
「いいよ。やろうよ」
「朱里」
「だって勇者に勝てないと帰れないし、ましてや挑戦もしないで諦めるなんて私は嫌だよ」
「分かった。そこまで言うなら胸を貸してやる。俺からは仕掛けない。それで諦めもつくだろう」
私は絶対に帰るんだ。
こんな所で諦めるわけにはいかない!
「お願いします!」
「さあ! 来い!」
……やるんだ。やってやる。
相撲は良く分からないけど、井太利亜の海様の、あの愚直な稽古の姿を思い出せ。
井太利亜の海様、お願い。私に……力を貸して!!
ドンッ!!!!!!!!!!
「ぐあああああああああああああ!!!」
バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!ドボン!ブクブクブクブクブク。
「すごい! 朱里が立ち合うと同時にその姿を消して気づいた時にはもう河童さんにに諸手付きが直撃してた! そして朱里が立っていた場所はありえない大きさのクレーターが!! その刹那、辺りにソニックブームが巻き起こり砂浜の砂が大量に舞い上がる! 諸手の跡をクッキリと、その胸に残した河童さんが不規則に乱回転しながら、まるで水切りの丸石の如く海面を跳ねて吹っ飛んでいったね!」
……ダメだ。やっぱり相撲の技だと上手く威力が出せない。
いや、それも言い訳ね。ただ私が未熟なだけ。師匠にこんな所、恥ずかしくて見せられないよ。
よし!もう一回、河童に胸貸してもらおっと!
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く!私とした事が『恋☆どす』に食い付いたから善良な河童だと思って油断したよ。
コイツのこの見た目を裏切らない生臭さ!海藻もしっかり絡まってるし、ヌルッとしてるし!
「うわあ! ヌルヌルが目に飛んできた! 朱里、前が見えないよ! 助けて」
「男だったら少し我慢してて! あと少しで針取れそうだから」
「や、優しくしてね」
だ、だまらっしゃい!河童頭!いや、河童なんだけど!このヌルヌルが邪魔をしてっ!
お前は鰻か!鰻科河童目か!鰻は美味いけど河童は上手くないだろ!河童巻きの胡瓜もお前の名前つけられてさぞかし大迷惑だわ!胡瓜に訴えられろ!
「あ、取れた。取れた」
「ふう。一時はどうなる事かと。これが河童界の大スターである『川流れのお銀』だったら耳の釣り針も流行ったかも知れないけど、俺が釣り針を耳にぶら下げてても只の奇抜な河童だよ」
河童の姿が既に奇抜だよ。そこに関しては安心して欲しいわ。
「良かった、良かった。河童さんここら辺で大きいイカ見なかった? ダイオウホウズキイカってイカなんだけど」
クリスの目、赤。痛かったんだろうな。笑
「あの馬鹿でかいイカ? あれだったら30分くらい前に勇者が討伐してたよ」
「そうなんだ、残念。でもそりゃそうか皆同じギルドで依頼受けるもんね。こういう事もあるか。ん? 勇者?」
「討伐? 勇者がいたのかい?」
「いたよ。まあ自称だけどな。手当たり次第に魔物を倒してて、いい迷惑だよ。あいつらに皿割られそうになって海まで逃げて来たんだから。それで逃げ込んだ先でお前らに釣り上げられたって訳さ」
だから海にいたんだ。それで耳に針刺さるとか災難な河童だな。
「勇者は魔物の街に入ってもギルドで依頼を受ける事は絶対にないよ。朱里、恐らく本物の勇者だ」
「じゃあそいつら倒せば帰れるじゃん! おい河童、勇者達どこ行った!?」
「教える事は出来ない。何故なら絶対に勝てないからだ。わざわざ死にに行くような真似はさせられない」
「え? 勇者ってそんなに強いの?」
「俺は牛を川にひきづり込む程度の河童力はあるし、魔物の相撲取りと勝負してもそうそう簡単には負けないよ。だけど勇者の連れの屈強な戦士に、いとも簡単に投げ飛ばされた。完敗だよ」
河童力もよく分からないし、比較対象がコイツ(河童)だとイマイチ凄さが分かんないなぁ。
「でもやってみなきゃわかんないじゃん」
「そこまでいうなら、俺とぶつかり稽古してみるかい? 俺に勝てなきゃあいつらに立ち向かうなんて、到底無理だぜ」
「……」
この世界に来てクリスのこんな顔初めてみた。河童も真剣な顔してるし。
「その『恋☆どす』とか言う相撲の話、正直感動したよ。あんなに情熱的に相撲を語るアンタはまるで純真無垢な子供の様だった」
相撲っていうか『恋☆どす』なんだけど、まあいいか。
「あんな目をして語るやつに悪い奴はいない。だからこそだ。大人しく引いたほうがいい。それが身の為ってもんだ」
てか、そもそも私は『恋☆どす』が好きであって相撲はそんなに詳しくないからね?
でも勝てない勝てないってこれだけ言われると段々悔しくもなってくるよ。
「いいよ。やろうよ」
「朱里」
「だって勇者に勝てないと帰れないし、ましてや挑戦もしないで諦めるなんて私は嫌だよ」
「分かった。そこまで言うなら胸を貸してやる。俺からは仕掛けない。それで諦めもつくだろう」
私は絶対に帰るんだ。
こんな所で諦めるわけにはいかない!
「お願いします!」
「さあ! 来い!」
……やるんだ。やってやる。
相撲は良く分からないけど、井太利亜の海様の、あの愚直な稽古の姿を思い出せ。
井太利亜の海様、お願い。私に……力を貸して!!
ドンッ!!!!!!!!!!
「ぐあああああああああああああ!!!」
バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!ドボン!ブクブクブクブクブク。
「すごい! 朱里が立ち合うと同時にその姿を消して気づいた時にはもう河童さんにに諸手付きが直撃してた! そして朱里が立っていた場所はありえない大きさのクレーターが!! その刹那、辺りにソニックブームが巻き起こり砂浜の砂が大量に舞い上がる! 諸手の跡をクッキリと、その胸に残した河童さんが不規則に乱回転しながら、まるで水切りの丸石の如く海面を跳ねて吹っ飛んでいったね!」
……ダメだ。やっぱり相撲の技だと上手く威力が出せない。
いや、それも言い訳ね。ただ私が未熟なだけ。師匠にこんな所、恥ずかしくて見せられないよ。
よし!もう一回、河童に胸貸してもらおっと!
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