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気配。
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「ムポポペサ大陸の魔物の皆様、おはようございます。今日から朝の新番組『おはムポ』が始まります」
パチパチパチパチ。
「おはムポのメインMCを務めさせて頂く朱里です。皆様に真実をお届けして参ります。宜しくお願い致します。そしてゲストのご紹介です」
「魔物の皆様おはようございます! クリス・田中・ステファンだよ! よろしくお願いしまーす!」
「よろしくお願いします。田中さん。ここで、現場のリルリルさんに中継を繋ぎます。リルリルさーん」
「はーい! 現場にいち早く駆けつけて真実をお届けします。ムポTV新人アナウンサーのリルです。よろしくお願いしまーす!」
「リルリルさん。今日はどちらに?」
「今日はムポポペサの大人気スポット『モルティプ』のりんご農園に来てまーす! わあ、見てください。この所々が禍々しい紫色のリンゴ達! なんか見た目やばそうだけど、頂いてみますね」
「とても禍々しいですね。リルリルさんは大丈夫なのでしょうか?」
「シャリ……うん。まぁ普通かな? 私は梨の方が好き。別に糖度が高い訳でもないし。観光客の皆様はリゾート地に訪れて、浮かれ気分で高いリンゴを食べて優越感に浸っているだけかも知れませんね……はい。ではスタジオにお返ししまーす!」
「リルリルさん、ありがとうございました。端的で分かり易い批判でしたね、歯に布着せないっぷりが堂に入ってます。しかし初々しくて愛らしい。ね、田中さん」
「彼女の可愛らしい笑顔と痛烈な批判のギャップ。これは嵐の予感がします」
「よく分からないコメントありがとうございます。もう喋らなくて結構ですよ。では明日、またこのお時間にお会いしましょう。皆さま心穏やかな良い一日をお過ごし下さい」
—————————
「河童さんも帰ったし、一度オーディション会場の下見でも行ってみるかい? 屋台とかも出てたり盛り上がっているみたいだよ」
「嬉しい! 私ずっと気まぐれ穴に住んでたから屋台は初めてだよ」
「本当に? じゃあ、そうしようか」
人の集まる所に行けば勇者達の情報も入るかもしれないよね?リルちゃんも楽しめるなら行くしかない!
会場に着くまでの間、沢山の魔物や魔獣とすれ違った。家族連れも多く、流石はリゾート地といった所だろうか。
元々観光客で賑わっている場所だが、オーディション観戦の為に通常よりも賑わいを見せているとの事だ。
この賑やかな光景や景色を眺めていると、私は少し不思議な感覚を覚えた。
ムポポペサなんてゲームは全く知らなかったけど何故かこの景色には見覚えがある。
違うな。懐かしい、という方が正しいのかも知れない。そんな事を考えていると、いつの間にか私達は会場に到着していた。
「ねえ見て、屋台がたくさん出てる! かき氷食べたーい」
ふふ。リルちゃんったら、はしゃいじゃって。ん?
「焼いたイカがあるよ! いえーい! やっほーい! クリスお小遣いちょーだい!」
(ふふ。朱里ちゃんったら、はしゃいじゃって子供みたいだね)
「はいはい。屋台は他にもあるからよく選んで買おうね」
イカおいし!かき氷おいし!あ、頭痛え!かき氷かきこみすぎた!
おや?
人が集まってる。あ、テレビだ。やっぱり注目のイベントなんだな。
……ちょっと待て。テレビ、だと?
ひえー!や、やーだー!私ったらお化粧も何もしてない!このぬかるんだ地面の土でフェイスペイントすればいいか。
「ちょっと、朱里ちゃん! なんで顔に泥塗ってるの!?」
「いきなり傭兵みたいなペイントしてどうしたの? 出撃要請でも出たのかい!? 捕虜を救いに密林に潜入している人みたいだよ」
「え? だってテレビの人いるからさ。身だしなみって大事じゃん? おじさーん! イカ串あと10本下さいな! タレをたっぷり塗って下さいな」
(一体どんな世界を生き抜いてくるとアレを身だしなみという感覚が身につくのだろうか)
「あ、ある意味注目の的だよね」
「痛っ、泥が目に入った! イカ串大量に持ってるから拭けないよ! スクラブが目に! い、いたーい!」
(絵面が面白いから少し見てようかな。おや?リルちゃんに取材陣が集まってるぞ)
「え? インタビュー?」
(うわあ、取材来ちゃった。朱里ちゃんを取材した方が絶対いいよ。あれ?なんでイカのタレ撒き散らして悶えるの?)
ザワザワザワ
「あ、あれ? 良かった。テレビの人達向こうに行ってくれたよ……え、なにあれ? あの人すごい魔力だよ!」
「この力は!? 人だかりで見えない!」
「……行っちゃった。もしかしてあの人もオーディションに?」
「只者じゃないよね? どんな人だった?」
「朱里ちゃんと同じ雰囲気してた。まさか、転移者?」
「少し楽しみになってきたよ。オーディション」
「びっくりした! 泥が目に入ってるのに瞬き一つしないなんて大丈夫なのかい?」
(朱里ちゃん、すごい真面目な顔してる。やっぱりあの人すごい実力者なんじゃ?)
ムポポペサに来てから一番の強い気配。
その時、私は確かに感じたんだ。
泥が大量に付いて真っ赤に充血した瞳の先に強大な力を。
パチパチパチパチ。
「おはムポのメインMCを務めさせて頂く朱里です。皆様に真実をお届けして参ります。宜しくお願い致します。そしてゲストのご紹介です」
「魔物の皆様おはようございます! クリス・田中・ステファンだよ! よろしくお願いしまーす!」
「よろしくお願いします。田中さん。ここで、現場のリルリルさんに中継を繋ぎます。リルリルさーん」
「はーい! 現場にいち早く駆けつけて真実をお届けします。ムポTV新人アナウンサーのリルです。よろしくお願いしまーす!」
「リルリルさん。今日はどちらに?」
「今日はムポポペサの大人気スポット『モルティプ』のりんご農園に来てまーす! わあ、見てください。この所々が禍々しい紫色のリンゴ達! なんか見た目やばそうだけど、頂いてみますね」
「とても禍々しいですね。リルリルさんは大丈夫なのでしょうか?」
「シャリ……うん。まぁ普通かな? 私は梨の方が好き。別に糖度が高い訳でもないし。観光客の皆様はリゾート地に訪れて、浮かれ気分で高いリンゴを食べて優越感に浸っているだけかも知れませんね……はい。ではスタジオにお返ししまーす!」
「リルリルさん、ありがとうございました。端的で分かり易い批判でしたね、歯に布着せないっぷりが堂に入ってます。しかし初々しくて愛らしい。ね、田中さん」
「彼女の可愛らしい笑顔と痛烈な批判のギャップ。これは嵐の予感がします」
「よく分からないコメントありがとうございます。もう喋らなくて結構ですよ。では明日、またこのお時間にお会いしましょう。皆さま心穏やかな良い一日をお過ごし下さい」
—————————
「河童さんも帰ったし、一度オーディション会場の下見でも行ってみるかい? 屋台とかも出てたり盛り上がっているみたいだよ」
「嬉しい! 私ずっと気まぐれ穴に住んでたから屋台は初めてだよ」
「本当に? じゃあ、そうしようか」
人の集まる所に行けば勇者達の情報も入るかもしれないよね?リルちゃんも楽しめるなら行くしかない!
会場に着くまでの間、沢山の魔物や魔獣とすれ違った。家族連れも多く、流石はリゾート地といった所だろうか。
元々観光客で賑わっている場所だが、オーディション観戦の為に通常よりも賑わいを見せているとの事だ。
この賑やかな光景や景色を眺めていると、私は少し不思議な感覚を覚えた。
ムポポペサなんてゲームは全く知らなかったけど何故かこの景色には見覚えがある。
違うな。懐かしい、という方が正しいのかも知れない。そんな事を考えていると、いつの間にか私達は会場に到着していた。
「ねえ見て、屋台がたくさん出てる! かき氷食べたーい」
ふふ。リルちゃんったら、はしゃいじゃって。ん?
「焼いたイカがあるよ! いえーい! やっほーい! クリスお小遣いちょーだい!」
(ふふ。朱里ちゃんったら、はしゃいじゃって子供みたいだね)
「はいはい。屋台は他にもあるからよく選んで買おうね」
イカおいし!かき氷おいし!あ、頭痛え!かき氷かきこみすぎた!
おや?
人が集まってる。あ、テレビだ。やっぱり注目のイベントなんだな。
……ちょっと待て。テレビ、だと?
ひえー!や、やーだー!私ったらお化粧も何もしてない!このぬかるんだ地面の土でフェイスペイントすればいいか。
「ちょっと、朱里ちゃん! なんで顔に泥塗ってるの!?」
「いきなり傭兵みたいなペイントしてどうしたの? 出撃要請でも出たのかい!? 捕虜を救いに密林に潜入している人みたいだよ」
「え? だってテレビの人いるからさ。身だしなみって大事じゃん? おじさーん! イカ串あと10本下さいな! タレをたっぷり塗って下さいな」
(一体どんな世界を生き抜いてくるとアレを身だしなみという感覚が身につくのだろうか)
「あ、ある意味注目の的だよね」
「痛っ、泥が目に入った! イカ串大量に持ってるから拭けないよ! スクラブが目に! い、いたーい!」
(絵面が面白いから少し見てようかな。おや?リルちゃんに取材陣が集まってるぞ)
「え? インタビュー?」
(うわあ、取材来ちゃった。朱里ちゃんを取材した方が絶対いいよ。あれ?なんでイカのタレ撒き散らして悶えるの?)
ザワザワザワ
「あ、あれ? 良かった。テレビの人達向こうに行ってくれたよ……え、なにあれ? あの人すごい魔力だよ!」
「この力は!? 人だかりで見えない!」
「……行っちゃった。もしかしてあの人もオーディションに?」
「只者じゃないよね? どんな人だった?」
「朱里ちゃんと同じ雰囲気してた。まさか、転移者?」
「少し楽しみになってきたよ。オーディション」
「びっくりした! 泥が目に入ってるのに瞬き一つしないなんて大丈夫なのかい?」
(朱里ちゃん、すごい真面目な顔してる。やっぱりあの人すごい実力者なんじゃ?)
ムポポペサに来てから一番の強い気配。
その時、私は確かに感じたんだ。
泥が大量に付いて真っ赤に充血した瞳の先に強大な力を。
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