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番外編②
1 エヴァンシュカとアデルート
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――わたくしはエヴァンシュカ・リアイス・トゥルーデル・フォン・ハイドランジア。
ハイドランジア現国王28人目の子供で、末の王女ですわ。明日はわたくしの3歳のお誕生日パーティですのよ! とっても楽しみ。
お父さまのお名前はテオフィリュス・ガウリー・ヴェンデルベルト・フォン・ハイドランジア。
お兄さまやお姉さまからは陛下と呼ぶように注意されますけれど、お父さまはまだ「お父さま」って呼ばれたいのですって。
だから人前では「陛下」と呼んで、2人きりの時は「お父さま」と呼ぶことにいたしましたの。
お母さまのお名前はユーフォリア・リリー・ローゼス・フォン・ハイドランジア、お父さまの第七妃ですわ。
お父さまからは愛を込めてロゼと呼ばれているみたい。お母さまはとっても綺麗なお姫様です。絹のようにサラサラな金髪は波打っていて、瞳は空のように澄んでいますのよ。
わたくしどちらかと言えばお母さまに似たので金髪なのです。青い瞳はお父さま譲りですわ。まだまだ小さい赤ちゃんですけれど、きっと大人になれば見られる顔になるのではないかしら。
お父さまもお母さまもとってもお優しいから大好きよ。でもわたくしが世界で一番好きなのは、別の人ですわ。
「――こらルディ、歩けるようになったからと言って高いところへ登るのはおやめなさい。落ちたらケガをしますよ」
「……アデルお姉さま!! もう見つかってしまいましたわ、さすがお姉さまです!」
「齢3つにも満たない幼児が1人で木登りだなんて……ルディはターザンの子か何かですか」
「たーざんとは何ですの? お姉さまの話すことは知らないことだらけで大好きですわ!」
「いいから早く降りなさい」
そう、この方こそわたくしが世界で一番大好きなお姉さま!
ハイディマリー・ラムベア・アデルート・フォン・ハイドランジアことアデルお姉さまですわよ!
アデルお姉さまはわたくしのすぐ上のお姉さま。10歳上の今年13歳ですけれど、大人よりも賢いのですわ。
皆が知らないことをたくさんご存じで、本当に凄い方なのです。それに何故だかお父さまよりも落ち着いていらっしゃるのが格好いい……とても不思議な方だわ。
「……ルディ、危ないと言っているのが分からないのですか。君は賢いのだから分かるでしょう、その高さから落ちたら死んでしまうよ」
「うぅん……その、お姉さま、実は怖くて降りられなくなりましたの……」
「……………………ああ なるほど、ターザンではなく猫でしたか……」
アデルお姉さまは呆れたようなお顔でわたくしを見上げていますわ。
お姉さまとはお母さまが違うので、残念ながらあまり似ておりませんの。
わたくしは金髪だけれどお姉さまの髪はグレーと言うか……灰銀色とでも言うのかしら。日を浴びるとキラキラ光るけれど、陰ではくすんだ灰色に。波打つ癖っ毛のわたくしと違って、お姉さまの髪は真っ直ぐ。
でもやっぱりお父さまが同じだからかしら? 目の色だけは同じ青色。何から何までお姉さまと一緒だったら良かったのに……ああ、本当に素敵だわ。ずっとずっと一緒に居たい。
「あら……? 何だかお姉さまがそこに居て下されば、わたくし急に飛べるような気がして参りましたわ」
「――は? ちょ……お待ちなさいルディ、わたくしが迎えに行きますからそのまま待――」
「行きますわお姉さま! 受け止めてくださいませ!!」
わたくしは一方的に会話を打ち切って、アデルお姉さまに向かって飛び降りました。
わたくしがこうして少々無茶なことをした時や、素っ頓狂なことを言った時……いつも冷静沈着なお姉さまが目を丸めて焦る顔を見るのが、堪らなく好き。
お姉さまはきっと、わたくしが可愛くて仕方がないのだわ。だってこんなにもわたくしの相手をしてくださる方は、他に居ないもの。
お父さまもお母さまも、今でこそわたくしを愛してくださるようになったけれど……産まれて1年半ぐらいは少しだけ冷たかったのよ。
わたくしには違いがよく分からなかったけれど、喋ったり動いたりするのが他の子よりも随分と早くて、少し恐ろしかったみたい。
普通赤子は目もあまりハッキリ見えないらしいし、産まれてすぐの記憶も曖昧らしいのだけれど……わたくしはよく見えたし、全部よく覚えているの。
わたくしが喋ったり動いたりするたびに乳母も侍女も、お父さまもお母さまも距離を取ったわ。「この子はおかしいかも知れない」「もしかすると赤子の姿をした別の何かかも知れない」という言葉もよく覚えている。
でもアデルお姉さまだけは違った。
わたくしが何か喋れば「面白い子だね」と言って綺麗に笑いながら言葉を教えてくれて、床を這いずり回るようになれば――距離をとるどころか、「早くこちらまでおいで」と手を叩いて呼んでくださったわ。
つかまり立ちが出来るようになってからは毎日手を引いて歩いてくれて……今日は「かくれんぼ」という遊びを教えてくれていたの。
まあすぐに見つかってしまったけれど。
そうしてお姉さまがわたくしを可愛がるものだから、段々と周りの人達までわたくしを「可愛い」なんて言ってくれるようになって……きっとお姉さまが居なければ、こうはならなかったでしょうね。
「――ルディは本当に悪い子だな。すごく悪い子だ、反省するまで蔵に閉じ込めてやりたいよ」
アデルお姉さまは突然飛び降りたわたくしを軽々と受け止めて、女神と見紛う優しい笑顔とは裏腹に怖いことを仰っているわ。
お姉さまはこうしてたまに口調が砕ける事があるの。
見た目はこんなにも麗しいのに、なんだか男性みたいな時があって……他のお姉さまとは全然違うところも大好きですわ。
お姉さまは演劇が好きで、役者の真似事が得意なんですのよ――だから男性のような時があるのだわ。
「こんなに危ないことをしてへらへらしているような子には、誕生日プレゼントなんて渡せませんね……明日のパーティは期待しないでください」
「ええ!! 嫌ですわ、ごめんなさい、わたくし蔵に入ります! アデルお姉さまのプレゼント、絶対に欲しいですわ!!」
「人間、口では何とでも言えるのですよ。契約書でも用意なさい、二度と危険な真似はしないと書いて判を押すんです」
「け、契約書……わたくしまだ読み書きには不安がありますの……」
わたくしが肩を落とせば、アデルお姉さまは小さく笑いましたわ。そうしてわたくしを抱いたまま、優しく囁いてくださいました。
「ルディは賢いからすぐに覚えてしまいますよ。……わたくしのプレゼントが少しでも役立てば良いのですが」
お姉さまの言葉に、わたくしは思わずにっこりと笑ってしまいましたわ。
だってお姉さま、やっぱりわたくしのことが大好きなのね……脅すようなことを言っておいて、ちゃんとプレゼントをくれるつもりなんだもの。
だからわたくしもアデルお姉さまが大好き! 世界で一番大好きだわ。
ハイドランジア現国王28人目の子供で、末の王女ですわ。明日はわたくしの3歳のお誕生日パーティですのよ! とっても楽しみ。
お父さまのお名前はテオフィリュス・ガウリー・ヴェンデルベルト・フォン・ハイドランジア。
お兄さまやお姉さまからは陛下と呼ぶように注意されますけれど、お父さまはまだ「お父さま」って呼ばれたいのですって。
だから人前では「陛下」と呼んで、2人きりの時は「お父さま」と呼ぶことにいたしましたの。
お母さまのお名前はユーフォリア・リリー・ローゼス・フォン・ハイドランジア、お父さまの第七妃ですわ。
お父さまからは愛を込めてロゼと呼ばれているみたい。お母さまはとっても綺麗なお姫様です。絹のようにサラサラな金髪は波打っていて、瞳は空のように澄んでいますのよ。
わたくしどちらかと言えばお母さまに似たので金髪なのです。青い瞳はお父さま譲りですわ。まだまだ小さい赤ちゃんですけれど、きっと大人になれば見られる顔になるのではないかしら。
お父さまもお母さまもとってもお優しいから大好きよ。でもわたくしが世界で一番好きなのは、別の人ですわ。
「――こらルディ、歩けるようになったからと言って高いところへ登るのはおやめなさい。落ちたらケガをしますよ」
「……アデルお姉さま!! もう見つかってしまいましたわ、さすがお姉さまです!」
「齢3つにも満たない幼児が1人で木登りだなんて……ルディはターザンの子か何かですか」
「たーざんとは何ですの? お姉さまの話すことは知らないことだらけで大好きですわ!」
「いいから早く降りなさい」
そう、この方こそわたくしが世界で一番大好きなお姉さま!
ハイディマリー・ラムベア・アデルート・フォン・ハイドランジアことアデルお姉さまですわよ!
アデルお姉さまはわたくしのすぐ上のお姉さま。10歳上の今年13歳ですけれど、大人よりも賢いのですわ。
皆が知らないことをたくさんご存じで、本当に凄い方なのです。それに何故だかお父さまよりも落ち着いていらっしゃるのが格好いい……とても不思議な方だわ。
「……ルディ、危ないと言っているのが分からないのですか。君は賢いのだから分かるでしょう、その高さから落ちたら死んでしまうよ」
「うぅん……その、お姉さま、実は怖くて降りられなくなりましたの……」
「……………………ああ なるほど、ターザンではなく猫でしたか……」
アデルお姉さまは呆れたようなお顔でわたくしを見上げていますわ。
お姉さまとはお母さまが違うので、残念ながらあまり似ておりませんの。
わたくしは金髪だけれどお姉さまの髪はグレーと言うか……灰銀色とでも言うのかしら。日を浴びるとキラキラ光るけれど、陰ではくすんだ灰色に。波打つ癖っ毛のわたくしと違って、お姉さまの髪は真っ直ぐ。
でもやっぱりお父さまが同じだからかしら? 目の色だけは同じ青色。何から何までお姉さまと一緒だったら良かったのに……ああ、本当に素敵だわ。ずっとずっと一緒に居たい。
「あら……? 何だかお姉さまがそこに居て下されば、わたくし急に飛べるような気がして参りましたわ」
「――は? ちょ……お待ちなさいルディ、わたくしが迎えに行きますからそのまま待――」
「行きますわお姉さま! 受け止めてくださいませ!!」
わたくしは一方的に会話を打ち切って、アデルお姉さまに向かって飛び降りました。
わたくしがこうして少々無茶なことをした時や、素っ頓狂なことを言った時……いつも冷静沈着なお姉さまが目を丸めて焦る顔を見るのが、堪らなく好き。
お姉さまはきっと、わたくしが可愛くて仕方がないのだわ。だってこんなにもわたくしの相手をしてくださる方は、他に居ないもの。
お父さまもお母さまも、今でこそわたくしを愛してくださるようになったけれど……産まれて1年半ぐらいは少しだけ冷たかったのよ。
わたくしには違いがよく分からなかったけれど、喋ったり動いたりするのが他の子よりも随分と早くて、少し恐ろしかったみたい。
普通赤子は目もあまりハッキリ見えないらしいし、産まれてすぐの記憶も曖昧らしいのだけれど……わたくしはよく見えたし、全部よく覚えているの。
わたくしが喋ったり動いたりするたびに乳母も侍女も、お父さまもお母さまも距離を取ったわ。「この子はおかしいかも知れない」「もしかすると赤子の姿をした別の何かかも知れない」という言葉もよく覚えている。
でもアデルお姉さまだけは違った。
わたくしが何か喋れば「面白い子だね」と言って綺麗に笑いながら言葉を教えてくれて、床を這いずり回るようになれば――距離をとるどころか、「早くこちらまでおいで」と手を叩いて呼んでくださったわ。
つかまり立ちが出来るようになってからは毎日手を引いて歩いてくれて……今日は「かくれんぼ」という遊びを教えてくれていたの。
まあすぐに見つかってしまったけれど。
そうしてお姉さまがわたくしを可愛がるものだから、段々と周りの人達までわたくしを「可愛い」なんて言ってくれるようになって……きっとお姉さまが居なければ、こうはならなかったでしょうね。
「――ルディは本当に悪い子だな。すごく悪い子だ、反省するまで蔵に閉じ込めてやりたいよ」
アデルお姉さまは突然飛び降りたわたくしを軽々と受け止めて、女神と見紛う優しい笑顔とは裏腹に怖いことを仰っているわ。
お姉さまはこうしてたまに口調が砕ける事があるの。
見た目はこんなにも麗しいのに、なんだか男性みたいな時があって……他のお姉さまとは全然違うところも大好きですわ。
お姉さまは演劇が好きで、役者の真似事が得意なんですのよ――だから男性のような時があるのだわ。
「こんなに危ないことをしてへらへらしているような子には、誕生日プレゼントなんて渡せませんね……明日のパーティは期待しないでください」
「ええ!! 嫌ですわ、ごめんなさい、わたくし蔵に入ります! アデルお姉さまのプレゼント、絶対に欲しいですわ!!」
「人間、口では何とでも言えるのですよ。契約書でも用意なさい、二度と危険な真似はしないと書いて判を押すんです」
「け、契約書……わたくしまだ読み書きには不安がありますの……」
わたくしが肩を落とせば、アデルお姉さまは小さく笑いましたわ。そうしてわたくしを抱いたまま、優しく囁いてくださいました。
「ルディは賢いからすぐに覚えてしまいますよ。……わたくしのプレゼントが少しでも役立てば良いのですが」
お姉さまの言葉に、わたくしは思わずにっこりと笑ってしまいましたわ。
だってお姉さま、やっぱりわたくしのことが大好きなのね……脅すようなことを言っておいて、ちゃんとプレゼントをくれるつもりなんだもの。
だからわたくしもアデルお姉さまが大好き! 世界で一番大好きだわ。
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