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15 七英雄の1人 エリオス討伐戦①

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「お許しくださいエリオス様! どうか、どうか!」
「俺を誰だと思っていやがる。 七英雄のエリオス様だぞ! 俺に指図するんじゃねぇ」

 縋る兵士鎧を着た男に対して七英雄エリオスは苛立ったまま蹴飛ばした。

「お父さん! あぅ!」

 エリオスは側にいた女の髪を乱暴に引っ張った。

「てめぇ……娘がいるのに隠しやがって。只で済むと思うなよ!」
「申し訳ありません。ですが……、娘だけは娘だけはあああ!」
「全国民の処女権と初夜権は俺がもらうと法律で決まっているはずだ! 違反してんじゃねぇぞ雑魚がああ!」

 七英雄エリオス・カルバスに支配された国、カルバス王国。
 世界最大の強国アテナス王国に軍事的に支配された旧王国は今となって国としての機能が縮小していた。
 それは七英雄エリオスの統治能力の低さが物語っている。
 自分に都合の良い法律を決め、それに従わない者は罰する。

 エリオスのだらしなさは有名で国民達は限界を迎えていた。
 今日も娘がいたことを隠していた国の兵士に対して強烈な罰が与えられる。

 一時的に娘と父親を控室に送り込んだエリオスはいらだちを表しながら玉座へ座る。

「俺は国王なんだよ! どいつもこいつも……俺を敬えよ!」
「あ、あの……エリオス様」

「あァ!?」

 エリオスの側近でこの国の執務官の男であった。
 この国の面倒事は全て彼に投げられている。

「【覇王】イガルシュヴァラ様から……金銭の支援要請が」
「また戦争か……イガルシュヴァラの兄貴も暇だな」

 七英雄の1人、イガルシュヴァラ・オシロス。
 かつて英雄王のアレリウス率いる勇者パーティの1人であり、エリオスとの関係も深かった。
【覇王】という名が知れ渡っている。

「兄貴からの命は断れん。国庫から出せ」
「し、しかし国庫はもうからっぽで……これ以上捻出すれば国民の暮らしが」

「国民なんてどうでもいいんだよ! 兄貴にドヤされる方がよっぽどの危機だ。それに大きな見返りが来るんだからいいだろ」
「それはエリオス様への貢ぎ物になるだけで……国民には」

「うるせぇな! 文句あんのか!」
「いえっ!」

 エリオスの叱責が飛び込む形となる。

「アレリウスの野郎には連絡つかねーのか!」
「は、はい……。アテナスから何も」

「俺を無視しやがって……俺がどれほど勇者パーティに貢献したと思っている! あの野郎があの場にいるのは全部俺のおかげなんだぞ!」

 ガタッ。

 玉座の間での物音にエリオスは振り返った。

 そこには10歳頃の男の子が怯えた表情でエリオスを眺めていた。
 エリオスは立ち上がり、にたぁっと嫌らしい笑みを浮かべる。

「リータぁ……。どうしたぁ?」
「あ……あ……」

 エリオスはゆっくりとリータと呼ばれた男の子の元に近づく。

「あ……あ……じゃわからねぇだろうが!」
「おぐっ!?」

 エリオスはリータの腹部に拳をねじ込ませた。
 めききっと嫌な音が響き渡る。

「おえ……げほっ……」

 まだ幼いリータはその攻撃に耐えられるはずも無く、体液で地面を濡らしていく。
 エリオスはそんなリータの背中を強く踏みつけた。

「うぅ」
「痛いかぁ。痛いだろ? でもおまえが悪いんだぞ。そんな声を上げるからよぅ」
「ご……ごめんなさい」
「そうだぁ、もっと謝れぇ……」
「うぅ……」

 リータの両目から涙が溢れる。
 エリオスはその姿を見て……リータを強く蹴飛ばした。

「あがっ」

「泣けばいいと思ってんのかぁ! やっぱりてめぇはロードじゃねぇ! ロードはもっと反抗的に歯を食いしばって!」

 そこまで言ってエリオスは翻した。

「ちっ……死んだガキをいつまでも」

 エリオスは執政官の男に声をかける。

「おい、もっと新しい女を連れて来い。若くて綺麗な女だ。アレリウスの娘のフィーネ姫や世界一って言われるエクスリーゼレベルの女を連れて来い!」
「そ、そのような美女はこの王国にはおりませぬ!!」
「いつも通り他国から奪ってくればいいだろ! さび付いた王国の女よりも……」

「申し上げます!」

 玉座の間に兵士が入ってくる。

「お、王宮に侵入者が現れました!」

「あん?」

 エリオスは手元のリモコンを操作して、王宮の入口の様子を映像としてモニターに映し出す。
 監視という名目で某国から入手した魔導機器の1種を王宮の入口とエリオスの情事を行う部屋に備え付けている。

「蛮族の王、エリオス! 父の仇、許さぬ!」

 王宮の入口で大立ち回りをしている剣士がいた。

「ほぉ」

 それはエリオスが感嘆の息を吐くほど綺麗な女性であった。

 フィーネ姫やエクスリーゼ級ではないがエメラルドグリーンの髪をした若くて美しい女性が剣を振るっていたのだ。
 あれだけ良い容姿をした女はここ最近では見たことがなかった。エリオスの劣情が昂ぶっていく。
 だが多勢に無勢。女性はかなり押されていた。

「あの女を捕まえて俺の元へ連れて来い! 顔と体は傷つけるんなよ! 俺が犯しまくるんだからな! 全部の兵をあそこに送り込め!」

 エリオスはモニターの電源を消して玉座に座り込んだ。
 久しぶりの上物の予感にしまらない笑みを浮かべる。

 しかしエリオス・カルバスはまだ知らない。

 今日が彼の命日になることを……その時の彼は何も知らなかった。

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