恋日記

にゅーす

「またこの話題かあ」


ある夜、今でニュース番組をを見ていると妻が独り言ちる。

どうやら、最近世間を賑わしている某ホテルの料理長がお金を受け取ったか受け取っていないかという話らしい。

朝早く家を出てしまい、寝るのも早い僕は時事に関して疎い方だが、これだけ世間を賑わしていると流石に僕も知っていた。


「このホテルはなんなんだろうね」


「えっ、あの世界的に有名な門松ホテルでしょ？」


「うん、知ってる」


「…」


「この人もなんなんだろうね」


「えっ、そのホテルの料理長じゃないの？」


「だから、知ってるよ」


ええええええええーーーーーーーっ!?

なに？なにが言いたいの？

なんで知ってることをわざわざ聞くの？

もしかして、普段ニュースを見ない僕を試しているのか？

それなら、僕は知ってることを精一杯妻にプレゼンしないといけないのか？

妻はなにも話さずテレビを見ている。

その様子に妙な威圧感というかオーラといったものを感じ僕の口はなけなしの情報を吐き出していた。


「なんかここって、お金を受け取ったか受け取っていないかで揉めてるんだよね」


「うん、知ってる。今やってるし。そういうことが言いたいんじゃなくて、この人たちは何がしたいんだろうねってこと！」


「……」


何も言えない僕……

脆弱すぎる情報は時として自分を窮地に追いやるということを身に染みて味わった夜であった。