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会談当日。
私とレオンは、それぞれ「光姫」と「戦鬼」として、玉座の左右やや後方――
本来ならば、臣下でさえ立つことを許されぬ位置に、静かに立っていた。
帝国内においても、私たちの素顔を知る者はごく限られている。
そのため、深くフードを被り、顔はもちろん、気配すら極力抑えている。
やがて重厚な扉が開き、ミドガルド王国の一行が姿を現した。
先頭に立つのは、第一王女アイリス・フォン・ミドガルド。
その背後には、三人の勇者が控えている。
アイリスは一歩進み、静かに一礼した。
「お久しぶりです、アウグスト皇帝。
ミドガルド王国第一王女、アイリス・フォン・ミドガルドです。
本日は、両国に関わる重大な件について、直接お話しする機会を賜り、心より感謝いたします」
それに応え、アウグストはゆっくりと頷いた。
「久しいな、アイリス王女。
こうして顔を合わせるのは久方ぶりだが……見違えるほど美しく、そして立派に成長された」
一拍置き、彼の視線が王女の背後へと移る。
「そして――そちらが、ミドガルド王国が召喚した勇者たちか」
アイリスはわずかに表情を曇らせ、静かに答える。
「ええ。本来は四人おりましたが……訓練中に、一人を失いました」
「そのことは、我の耳にも入っておる」
「……残念だったな」
その言葉に、三人の勇者は揃って顔を伏せた。
重苦しい沈黙が、一瞬、場を包み込む。
その空気の中で、私はふと、レオンの視線を感じた気がした。
一方、勇者の一人――恭介は、
アイリスの挨拶を聞きながらも、無意識のうちに皇帝の左右へと視線を走らせていた。
玉座の傍らに立つ、二つの影。
(……あれが、五百年間、帝国最強と謳われる「戦鬼」)
(そして、帰還した英雄――「光姫」)
深くフードに顔を隠しているにもかかわらず、なお隠しきれない圧がある。
恭介は、知らず喉を鳴らした。
(……確かに、只者じゃない)
こうして――
会談の幕は、静かに上がった。
会談の中、アイリスは静かに、しかし明確な声で切り出した。
「今回の件――邪神封印の建造物は」
「単なる魔物被害や、局地的な異変ではありません」
その言葉に、場の空気がわずかに張りつめる。
「それは、国家の存立そのものに関わる問題です」
重みのある断言だった。
「勇者を派遣するだけでは、“王国としての意思決定”を示したことにはなりません」
「もし判断を誤れば――その責任は、現場ではなく王族に帰します」
アイリスは一歩、前へと進み出る。
「ゆえに、私は王女として、現地へ赴きます」
「建造物の状態、封印の在り方を――この目で確認する必要があります」
そこに私情はなかった。
それは、政治家として、そして王族としての、冷静で合理的な判断だった。
「これは、勇者個人の任務ではありません」
「王国が、世界に対して下す“判断”です」
「その判断に、王族が立ち会わぬ理由はありません」
勇者たちも、列席する家臣たちも、言葉を失う。
反論の余地は、どこにもなかった。
アウグストは腕を組み、しばし沈黙する。
「……なるほど」
低く呟くと、ゆっくりと頷いた。
「王女としての責務」
「そして、国家としての意思表示、か」
「確かに、それを勇者任せにするのは――政治としては甘いな」
そう言って、彼は玉座から立ち上がる。
その威圧だけで、場の空気が一段引き締まった。
「ならば、帝国も同じ立場を取ろう」
視線は、はっきりと場を射抜いている。
「王族が現地に赴くというなら」
「その責任は、国の頂点に立つ者が負うべきだ」
「――我も同行する」
ざわ、と会談の場が揺れた。
こうして急遽、現地へ赴く人選が進められる。
王国側からは、三人の勇者。
帝国側からは――
帰還した英雄「光姫」と、
五百年の間、帝国最強と恐れられてきた「戦鬼」。
もはやこれは、単なる調査ではない。
国家と国家が、世界の命運を背負って下す決断の場となったのだった。
私とレオンは、それぞれ「光姫」と「戦鬼」として、玉座の左右やや後方――
本来ならば、臣下でさえ立つことを許されぬ位置に、静かに立っていた。
帝国内においても、私たちの素顔を知る者はごく限られている。
そのため、深くフードを被り、顔はもちろん、気配すら極力抑えている。
やがて重厚な扉が開き、ミドガルド王国の一行が姿を現した。
先頭に立つのは、第一王女アイリス・フォン・ミドガルド。
その背後には、三人の勇者が控えている。
アイリスは一歩進み、静かに一礼した。
「お久しぶりです、アウグスト皇帝。
ミドガルド王国第一王女、アイリス・フォン・ミドガルドです。
本日は、両国に関わる重大な件について、直接お話しする機会を賜り、心より感謝いたします」
それに応え、アウグストはゆっくりと頷いた。
「久しいな、アイリス王女。
こうして顔を合わせるのは久方ぶりだが……見違えるほど美しく、そして立派に成長された」
一拍置き、彼の視線が王女の背後へと移る。
「そして――そちらが、ミドガルド王国が召喚した勇者たちか」
アイリスはわずかに表情を曇らせ、静かに答える。
「ええ。本来は四人おりましたが……訓練中に、一人を失いました」
「そのことは、我の耳にも入っておる」
「……残念だったな」
その言葉に、三人の勇者は揃って顔を伏せた。
重苦しい沈黙が、一瞬、場を包み込む。
その空気の中で、私はふと、レオンの視線を感じた気がした。
一方、勇者の一人――恭介は、
アイリスの挨拶を聞きながらも、無意識のうちに皇帝の左右へと視線を走らせていた。
玉座の傍らに立つ、二つの影。
(……あれが、五百年間、帝国最強と謳われる「戦鬼」)
(そして、帰還した英雄――「光姫」)
深くフードに顔を隠しているにもかかわらず、なお隠しきれない圧がある。
恭介は、知らず喉を鳴らした。
(……確かに、只者じゃない)
こうして――
会談の幕は、静かに上がった。
会談の中、アイリスは静かに、しかし明確な声で切り出した。
「今回の件――邪神封印の建造物は」
「単なる魔物被害や、局地的な異変ではありません」
その言葉に、場の空気がわずかに張りつめる。
「それは、国家の存立そのものに関わる問題です」
重みのある断言だった。
「勇者を派遣するだけでは、“王国としての意思決定”を示したことにはなりません」
「もし判断を誤れば――その責任は、現場ではなく王族に帰します」
アイリスは一歩、前へと進み出る。
「ゆえに、私は王女として、現地へ赴きます」
「建造物の状態、封印の在り方を――この目で確認する必要があります」
そこに私情はなかった。
それは、政治家として、そして王族としての、冷静で合理的な判断だった。
「これは、勇者個人の任務ではありません」
「王国が、世界に対して下す“判断”です」
「その判断に、王族が立ち会わぬ理由はありません」
勇者たちも、列席する家臣たちも、言葉を失う。
反論の余地は、どこにもなかった。
アウグストは腕を組み、しばし沈黙する。
「……なるほど」
低く呟くと、ゆっくりと頷いた。
「王女としての責務」
「そして、国家としての意思表示、か」
「確かに、それを勇者任せにするのは――政治としては甘いな」
そう言って、彼は玉座から立ち上がる。
その威圧だけで、場の空気が一段引き締まった。
「ならば、帝国も同じ立場を取ろう」
視線は、はっきりと場を射抜いている。
「王族が現地に赴くというなら」
「その責任は、国の頂点に立つ者が負うべきだ」
「――我も同行する」
ざわ、と会談の場が揺れた。
こうして急遽、現地へ赴く人選が進められる。
王国側からは、三人の勇者。
帝国側からは――
帰還した英雄「光姫」と、
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もはやこれは、単なる調査ではない。
国家と国家が、世界の命運を背負って下す決断の場となったのだった。
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