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まだ私が現人神だった頃。
当時の世界を管理している神に呼ばれた。
「お主にお願いしたいことがある。この世界に、やがて魔王が現れ、世界を混乱と恐怖に陥れるじゃろう。故に――魔王を倒してほしいのじゃ」
「わかりました」
そう答えると、神は少し困ったように目を細めた。
「じゃがの……わしはいきなり主を世界に降り立たせることができぬ。して、使い魔として召喚されてはくれんかのう」
「それと、異世界の現人神ではなく、“光の属性神”として名乗ってほしいのじゃが」
私は一瞬考え、そして頷いた。
「……わかりました」
そうして数人の候補者を見せられ、私は一人の少女を選んだ。
ソフィア・フォン・ルクスリアール。
当時の帝国に名を連ねる七大貴族の一つ、光属性の名門の娘だった。
だが、魔法が使えて当たり前という価値観の中で、彼女は魔法を満足に扱えない“落ちこぼれ”として、周囲から蔑まれていた。
学校の授業で使い魔召喚が行われ、教師に名前を呼ばれた時も、
「本当に呼べるの?」
そんな嘲笑が、あちこちから聞こえていた。
召喚陣が光を放ち、その中心から一人の少女が現れる。
「……貴女が、私を呼んだんですか?」
その瞬間、教室がざわめいた。
召喚されたのが、人間だったからだ。
「はい、私が貴女を呼びました。貴女は……?」
「私は光の属性神、稟です。契約しましょう」
そう告げて手を差し出すと、ソフィアは戸惑いながらも、その手を握った。
契約は成立した。
周囲が「属性神を呼べるはずがない」などと口々に言うのを無視し、私はソフィアを見つめた。
彼女の中には、膨大な魔力があった。
だがそれは、分厚い殻に覆われ、眠るように閉じ込められている。
夜。
ソフィアの自室で二人きりになった時、私は静かに告げた。
「貴女の中には、膨大な魔力があります」
「……私に、そんな力があるわけ……」
自嘲するように呟く彼女に、私は続ける。
「おそらく、まだ母体にいた頃……無意識のうちに、自分と母親を傷つけないため、その力を封じたのでしょう」
「……私、魔法が使えるんですか?」
涙を浮かべて問いかける彼女に、私は微笑みながら頷いた。
私は彼女の魔力を覆っていた殻に手を伸ばし、それを解き放つ。
次の瞬間、部屋中に魔力の渦が巻き起こった。
「落ち着いて。魔力を、自分の中に戻すよう意識して」
私の声に導かれるように、やがて魔力は静まり、元に戻った。
「……しばらくは、魔力の扱いからですね」
そう言うと、ソフィアは涙を拭い、笑顔で答えた。
「はい!」
次の日から魔力制御の訓練が始まった。
幼い頃から必死に努力してきた積み重ねもあり、彼女の才能は一気に開花する。
気がつけば、当時の皇帝から
――「光姫」
の称号を授けられていた。
やがて魔王が現れ、世界に覇を唱える。
帝国は勇者召喚を行い、タケルが呼ばれた。
人類と魔族の激しい戦いの末、魔王の本拠地へ向かう精鋭として選ばれたのは――
「戦鬼」レオン
「光姫」ソフィア
「勇者」タケル
「炎王」エドガー
「氷精」レイナ
五人だった。
激闘の末、ついに魔王を討ち滅ぼした。
――その時だった。
ソフィアが苦悶の表情を浮かべ、呻く。
「……ちっ、我も力を使いすぎたか」
それは、彼女の声ではなかった。
「まさか……魔王!?」
驚愕する私に、ソフィアは必死に言葉を絞り出す。
「お願い……私が、私であるうちに……殺して……」
「そんなこと……できるわけないじゃない!」
だが彼女は、震える声で続けた。
「みんな……もうボロボロで……貴女しかいないの……」
「主人である私の……最初で、最後の命令……」
彼女を殺さず、魔王として世界を混乱と恐怖に陥れるか。
それとも、彼女が彼女であるうちに終わらせてあげるか。
当時の私には、彼女を救い、魔王を滅ぼすほどの力はなかった。
だから――
私は、彼女の胸に剣を突き立てた。
「……そんなに、泣かないで……」
「貴女は……私の命令を……聞いただけなんだから……」
「いや……死なないで……!」
泣きながら回復魔法を重ねる。
だが、命の灯は戻らなかった。
ソフィアは、そのまま息を引き取った。
魔王は魂だけの存在となり、新たな依り代を求めて動こうとする。
私は憎悪を込めた視線でそれを睨みつけ、
「今は無理でも……必ず殺す‼」
そう叫び、封印した。
そして私は、失意のまま元の世界へ帰還した。
―――
「……どう?」
「これが、私の失意と後悔の過去」
そう言って三人を見ると、
彼らは衝撃に、言葉を失って黙り込んでいた。
当時の世界を管理している神に呼ばれた。
「お主にお願いしたいことがある。この世界に、やがて魔王が現れ、世界を混乱と恐怖に陥れるじゃろう。故に――魔王を倒してほしいのじゃ」
「わかりました」
そう答えると、神は少し困ったように目を細めた。
「じゃがの……わしはいきなり主を世界に降り立たせることができぬ。して、使い魔として召喚されてはくれんかのう」
「それと、異世界の現人神ではなく、“光の属性神”として名乗ってほしいのじゃが」
私は一瞬考え、そして頷いた。
「……わかりました」
そうして数人の候補者を見せられ、私は一人の少女を選んだ。
ソフィア・フォン・ルクスリアール。
当時の帝国に名を連ねる七大貴族の一つ、光属性の名門の娘だった。
だが、魔法が使えて当たり前という価値観の中で、彼女は魔法を満足に扱えない“落ちこぼれ”として、周囲から蔑まれていた。
学校の授業で使い魔召喚が行われ、教師に名前を呼ばれた時も、
「本当に呼べるの?」
そんな嘲笑が、あちこちから聞こえていた。
召喚陣が光を放ち、その中心から一人の少女が現れる。
「……貴女が、私を呼んだんですか?」
その瞬間、教室がざわめいた。
召喚されたのが、人間だったからだ。
「はい、私が貴女を呼びました。貴女は……?」
「私は光の属性神、稟です。契約しましょう」
そう告げて手を差し出すと、ソフィアは戸惑いながらも、その手を握った。
契約は成立した。
周囲が「属性神を呼べるはずがない」などと口々に言うのを無視し、私はソフィアを見つめた。
彼女の中には、膨大な魔力があった。
だがそれは、分厚い殻に覆われ、眠るように閉じ込められている。
夜。
ソフィアの自室で二人きりになった時、私は静かに告げた。
「貴女の中には、膨大な魔力があります」
「……私に、そんな力があるわけ……」
自嘲するように呟く彼女に、私は続ける。
「おそらく、まだ母体にいた頃……無意識のうちに、自分と母親を傷つけないため、その力を封じたのでしょう」
「……私、魔法が使えるんですか?」
涙を浮かべて問いかける彼女に、私は微笑みながら頷いた。
私は彼女の魔力を覆っていた殻に手を伸ばし、それを解き放つ。
次の瞬間、部屋中に魔力の渦が巻き起こった。
「落ち着いて。魔力を、自分の中に戻すよう意識して」
私の声に導かれるように、やがて魔力は静まり、元に戻った。
「……しばらくは、魔力の扱いからですね」
そう言うと、ソフィアは涙を拭い、笑顔で答えた。
「はい!」
次の日から魔力制御の訓練が始まった。
幼い頃から必死に努力してきた積み重ねもあり、彼女の才能は一気に開花する。
気がつけば、当時の皇帝から
――「光姫」
の称号を授けられていた。
やがて魔王が現れ、世界に覇を唱える。
帝国は勇者召喚を行い、タケルが呼ばれた。
人類と魔族の激しい戦いの末、魔王の本拠地へ向かう精鋭として選ばれたのは――
「戦鬼」レオン
「光姫」ソフィア
「勇者」タケル
「炎王」エドガー
「氷精」レイナ
五人だった。
激闘の末、ついに魔王を討ち滅ぼした。
――その時だった。
ソフィアが苦悶の表情を浮かべ、呻く。
「……ちっ、我も力を使いすぎたか」
それは、彼女の声ではなかった。
「まさか……魔王!?」
驚愕する私に、ソフィアは必死に言葉を絞り出す。
「お願い……私が、私であるうちに……殺して……」
「そんなこと……できるわけないじゃない!」
だが彼女は、震える声で続けた。
「みんな……もうボロボロで……貴女しかいないの……」
「主人である私の……最初で、最後の命令……」
彼女を殺さず、魔王として世界を混乱と恐怖に陥れるか。
それとも、彼女が彼女であるうちに終わらせてあげるか。
当時の私には、彼女を救い、魔王を滅ぼすほどの力はなかった。
だから――
私は、彼女の胸に剣を突き立てた。
「……そんなに、泣かないで……」
「貴女は……私の命令を……聞いただけなんだから……」
「いや……死なないで……!」
泣きながら回復魔法を重ねる。
だが、命の灯は戻らなかった。
ソフィアは、そのまま息を引き取った。
魔王は魂だけの存在となり、新たな依り代を求めて動こうとする。
私は憎悪を込めた視線でそれを睨みつけ、
「今は無理でも……必ず殺す‼」
そう叫び、封印した。
そして私は、失意のまま元の世界へ帰還した。
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