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庭園から三人が帰った後。
心の中の亮に話しかけようとした――その瞬間だった。
「姐さん」
「……話して、よかったんだな」
不意に、ルシファーが声をかけてきた。
私は少しだけ笑い、肩の力を抜く。
「ええ」
「もしかしたら――」
夜空を見上げながら、続ける。
「あの事を」
「まだ知らない誰かに、聞いてほしかったのかも」
少し間を置いて、私は尋ねた。
「……彼らは、強くなった?」
「ああ、少しはな」
「けど――」
彼は肩をすくめる。
「あれを相手にするとなると」
「全然、ダメだな」
「……そう」
私は短く息を吐き、話題を変えた。
「ルシファー」
「護衛の件なんだけど」
彼が顔を上げる。
「もう、しなくてもいいわ」
次の瞬間、彼の目が輝いた。
「本当か!?」
勢いよく近づいてくるルシファーに、
私は思わず一歩引く。
「ええ、本当よ」
その言葉を聞いた瞬間――
「やっふー!!」
叫び声とともに、
ルシファーは風のように姿を消した。
(……本当に、彼は)
内心で呆れつつ、私は気を取り直す。
今度こそ――
心の中で、亮に話しかけた。
(ねえ、亮)
(邪神の復活、近いじゃない?)
(ああ、そうだな)
(“例外事項”って)
(まだ、満たしていない?)
(邪神が復活しないと)
(満たさんな)
胸の奥が、わずかに重くなる。
(……今のまま)
(全力を出すとしたら?)
(もって――)
(二分ってところだろうな)
そこで、会話は終わった。
――“例外事項”。
それは、
私たちが全力を出しても問題ないと判断される、
ごく限られた事案にのみ適用されるもの。
それがない状態で力を解放するというのは、
一つの水風船に、地球上のすべての水を詰め込むようなものだ。
だから私は、
普段は力を抑え、この地に顕現している。
今の私の力であれば、
魔王程度なら――
先日のように王族がいるなどの特殊な事態を除けば、
どうとでもなる。
だが――
邪神相手となると、少し心許ない。
夜空の星は、
答えを与えることなく、ただ静かに瞬いていた。
翌日。
私と三人の勇者は、城の訓練場で向かい合っていた。
朝の空気は澄んでいるが、
場の緊張はそれとは正反対だ。
私は三人の前に歩み寄り、
それぞれに小さなペンダントを手渡す。
中央には、淡く光る宝石が嵌め込まれていた。
恭介がそれを手の中で転がしながら聞く。
「……これ、何だ?」
「ダメージを肩代わりするペンダントよ」
私は簡潔に答える。
「致死量のダメージを受けると」
「真ん中の宝石が砕ける仕組みになってる」
三人は顔を見合わせたあと、無言でそれを身につけた。
――模擬戦開始。
俊が、少し挑発するように笑う。
「本当にさ」
「三人相手でいいの?」
「ええ」
私は即答し、同時に身体強化の魔法を発動する。
「貴方たち三人くらいなら――問題ないわ」
次の瞬間、私は地面を蹴った。
一直線に、恭介へ斬りかかる。
「っ!」
恭介は反射的に剣を構え、
私の一撃を受け止める。
金属音が訓練場に響いた。
その隙を逃さず、後方の二人が動く。
直哉と俊が魔道具に魔力を籠め、同時に詠唱。
「――ファイアーランス!」
炎属性の魔法が、二本の槍となって迫る。
「甘いわ」
私は同じ魔法を、無詠唱で発動する。
二つの炎が正面からぶつかり合い――
押し負けたのは、彼らの方だった。
魔法は相殺されず、直哉と俊を直撃する。
「くっ……!」
二人が後退した。
恭介が振り返り、叫ぶ。
「直哉! 俊! 大丈夫か!?」
その瞬間――
「仲間の心配をしてる場合じゃないでしょ」
私は、低く言う。
次の一撃で、恭介の剣を叩き折った。
金属が弾け、剣が宙を舞う。
間髪入れず、私は剣先を彼の首元へ運ぶ。
ぴたり、と止めた。
「――そこまで」
模擬戦は、私の勝利で終わった。
沈黙の中、
三人は荒い息を整えている。
その後、
私とレオンで三人の訓練を見ることになった。
まず最初に取り組ませたのは――
魔法を使う以前の、基礎中の基礎。
「魔力操作からよ」
そう告げると、
三人は揃って顔を引き締めた。
ここからが――
本当の訓練だ。
心の中の亮に話しかけようとした――その瞬間だった。
「姐さん」
「……話して、よかったんだな」
不意に、ルシファーが声をかけてきた。
私は少しだけ笑い、肩の力を抜く。
「ええ」
「もしかしたら――」
夜空を見上げながら、続ける。
「あの事を」
「まだ知らない誰かに、聞いてほしかったのかも」
少し間を置いて、私は尋ねた。
「……彼らは、強くなった?」
「ああ、少しはな」
「けど――」
彼は肩をすくめる。
「あれを相手にするとなると」
「全然、ダメだな」
「……そう」
私は短く息を吐き、話題を変えた。
「ルシファー」
「護衛の件なんだけど」
彼が顔を上げる。
「もう、しなくてもいいわ」
次の瞬間、彼の目が輝いた。
「本当か!?」
勢いよく近づいてくるルシファーに、
私は思わず一歩引く。
「ええ、本当よ」
その言葉を聞いた瞬間――
「やっふー!!」
叫び声とともに、
ルシファーは風のように姿を消した。
(……本当に、彼は)
内心で呆れつつ、私は気を取り直す。
今度こそ――
心の中で、亮に話しかけた。
(ねえ、亮)
(邪神の復活、近いじゃない?)
(ああ、そうだな)
(“例外事項”って)
(まだ、満たしていない?)
(邪神が復活しないと)
(満たさんな)
胸の奥が、わずかに重くなる。
(……今のまま)
(全力を出すとしたら?)
(もって――)
(二分ってところだろうな)
そこで、会話は終わった。
――“例外事項”。
それは、
私たちが全力を出しても問題ないと判断される、
ごく限られた事案にのみ適用されるもの。
それがない状態で力を解放するというのは、
一つの水風船に、地球上のすべての水を詰め込むようなものだ。
だから私は、
普段は力を抑え、この地に顕現している。
今の私の力であれば、
魔王程度なら――
先日のように王族がいるなどの特殊な事態を除けば、
どうとでもなる。
だが――
邪神相手となると、少し心許ない。
夜空の星は、
答えを与えることなく、ただ静かに瞬いていた。
翌日。
私と三人の勇者は、城の訓練場で向かい合っていた。
朝の空気は澄んでいるが、
場の緊張はそれとは正反対だ。
私は三人の前に歩み寄り、
それぞれに小さなペンダントを手渡す。
中央には、淡く光る宝石が嵌め込まれていた。
恭介がそれを手の中で転がしながら聞く。
「……これ、何だ?」
「ダメージを肩代わりするペンダントよ」
私は簡潔に答える。
「致死量のダメージを受けると」
「真ん中の宝石が砕ける仕組みになってる」
三人は顔を見合わせたあと、無言でそれを身につけた。
――模擬戦開始。
俊が、少し挑発するように笑う。
「本当にさ」
「三人相手でいいの?」
「ええ」
私は即答し、同時に身体強化の魔法を発動する。
「貴方たち三人くらいなら――問題ないわ」
次の瞬間、私は地面を蹴った。
一直線に、恭介へ斬りかかる。
「っ!」
恭介は反射的に剣を構え、
私の一撃を受け止める。
金属音が訓練場に響いた。
その隙を逃さず、後方の二人が動く。
直哉と俊が魔道具に魔力を籠め、同時に詠唱。
「――ファイアーランス!」
炎属性の魔法が、二本の槍となって迫る。
「甘いわ」
私は同じ魔法を、無詠唱で発動する。
二つの炎が正面からぶつかり合い――
押し負けたのは、彼らの方だった。
魔法は相殺されず、直哉と俊を直撃する。
「くっ……!」
二人が後退した。
恭介が振り返り、叫ぶ。
「直哉! 俊! 大丈夫か!?」
その瞬間――
「仲間の心配をしてる場合じゃないでしょ」
私は、低く言う。
次の一撃で、恭介の剣を叩き折った。
金属が弾け、剣が宙を舞う。
間髪入れず、私は剣先を彼の首元へ運ぶ。
ぴたり、と止めた。
「――そこまで」
模擬戦は、私の勝利で終わった。
沈黙の中、
三人は荒い息を整えている。
その後、
私とレオンで三人の訓練を見ることになった。
まず最初に取り組ませたのは――
魔法を使う以前の、基礎中の基礎。
「魔力操作からよ」
そう告げると、
三人は揃って顔を引き締めた。
ここからが――
本当の訓練だ。
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