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倒れ伏した異形を見下ろしながら、私は亮に意識を向けた。
(……やっぱり、これって)
(ああ)
(邪神が復活し、生物を抹殺するために作り出された尖兵だろう)
短いやり取りで、答えは一致した。
それ以上、言葉を交わす必要はない。
私は視線を伏せ、胸の奥で静かに思う。
――もう、あまり時間が残されていない。
そう悟り、私は戦場を後にして城へと帰還した。
帰還後すぐに、レオンと皇帝を呼び集め、今回の一件を余すことなく報告する。
異形の姿、挙動、魔物とは異なる感触、そして――その危険性。
話を聞き終えた皇帝は、しばし沈黙した後、低く口を開いた。
「この存在を、邪神の尖兵――アポストルと呼ぶ」
邪神の意思を地上に運ぶもの。
破壊の先触れ。
皇帝はそう定義し、その名と情報を国内外へ即座に発信させた。
それは警告であり、同時に――
迫り来る終焉の、最初の鐘でもあった。
この件を受け、
勇者たちの強化は――もはや、避けては通れない急務となった。
夜が明けると同時に、私は決断する。
この世界とは切り離された、異なる時間の流れを持つ異空間。
外界で一日が過ぎる間に、内側では何十日もの時が流れる場所。
私は魔力を編み上げ、空間を展開した。
「……ここ、どこだ?」
最初に口を開いたのは、恭介だった。
足元を踏みしめるようにしながら、周囲を見渡している。
「訓練用の異空間よ」
「時間の進み方が、外とは違う」
「時間が違うって……どういうことだ?」
俊が眉をひそめる。
「外で一日経つ間に、ここでは何日も過ごせる」
「だから――」
私は三人を見回す。
「あなたたちを、集中的に鍛える」
直哉が、少し緊張した様子で口を開いた。
「……そんなに急ぐ必要があるんですか?」
その問いに、私は一瞬だけ言葉を選ぶ。
「……あるわ」
短く、はっきりと。
「私が国境で見たこと、全部話す」
私は、屍の山のこと。
そして――異形の存在について語った。
「そいつは、ただの魔物じゃない」
「邪神が復活した後」
「生物を抹殺するために作られた、尖兵」
「……尖兵、か」
恭介が低く呟く。
「皇帝が仮称として、“アポストル”って名付けたわ」
その名が落ちた瞬間、空気が一段重くなる。
「そんなのが……これからも出てくるってことか?」
俊の声が、わずかに掠れる。
「ええ」
「今回のは、始まりに過ぎない」
沈黙。
直哉が、拳を強く握りしめた。
「……今の俺たちじゃ」
「勝てない」
私は即座に言い切る。
「だから、ここに連れてきた」
三人の視線が、まっすぐ私に向く。
「正直に言うわ」
「あなたたちを、ゆっくり育てる時間はない」
「これからの訓練は、かなりきつい」
「命のやり取りに近いことも、させる」
恭介が一歩、前に出る。
「それでも――」
「やらなきゃ、守れないんだよな」
私は、小さく頷く。
俊が歯を食いしばる。
「……逃げ道は、なしってことだな」
「ええ」
「でも」
私は、三人を順に見つめる。
「見捨てるつもりはない」
「潰す気もない」
「生き残らせるために、鍛える」
しばらくの沈黙のあと、直哉が静かに言った。
「……教えてください」
「俺たちは、どこまで強くなればいいんですか」
その問いに、私は一度だけ息を吸う。
「魔王――」
「いや、少なくともアポストルに、届くところまで」
空間が、静まり返る。
それでも、誰一人として目を逸らさなかった。
私は、その姿を見て確信する。
この三人なら――
まだ、間に合う。
(……やっぱり、これって)
(ああ)
(邪神が復活し、生物を抹殺するために作り出された尖兵だろう)
短いやり取りで、答えは一致した。
それ以上、言葉を交わす必要はない。
私は視線を伏せ、胸の奥で静かに思う。
――もう、あまり時間が残されていない。
そう悟り、私は戦場を後にして城へと帰還した。
帰還後すぐに、レオンと皇帝を呼び集め、今回の一件を余すことなく報告する。
異形の姿、挙動、魔物とは異なる感触、そして――その危険性。
話を聞き終えた皇帝は、しばし沈黙した後、低く口を開いた。
「この存在を、邪神の尖兵――アポストルと呼ぶ」
邪神の意思を地上に運ぶもの。
破壊の先触れ。
皇帝はそう定義し、その名と情報を国内外へ即座に発信させた。
それは警告であり、同時に――
迫り来る終焉の、最初の鐘でもあった。
この件を受け、
勇者たちの強化は――もはや、避けては通れない急務となった。
夜が明けると同時に、私は決断する。
この世界とは切り離された、異なる時間の流れを持つ異空間。
外界で一日が過ぎる間に、内側では何十日もの時が流れる場所。
私は魔力を編み上げ、空間を展開した。
「……ここ、どこだ?」
最初に口を開いたのは、恭介だった。
足元を踏みしめるようにしながら、周囲を見渡している。
「訓練用の異空間よ」
「時間の進み方が、外とは違う」
「時間が違うって……どういうことだ?」
俊が眉をひそめる。
「外で一日経つ間に、ここでは何日も過ごせる」
「だから――」
私は三人を見回す。
「あなたたちを、集中的に鍛える」
直哉が、少し緊張した様子で口を開いた。
「……そんなに急ぐ必要があるんですか?」
その問いに、私は一瞬だけ言葉を選ぶ。
「……あるわ」
短く、はっきりと。
「私が国境で見たこと、全部話す」
私は、屍の山のこと。
そして――異形の存在について語った。
「そいつは、ただの魔物じゃない」
「邪神が復活した後」
「生物を抹殺するために作られた、尖兵」
「……尖兵、か」
恭介が低く呟く。
「皇帝が仮称として、“アポストル”って名付けたわ」
その名が落ちた瞬間、空気が一段重くなる。
「そんなのが……これからも出てくるってことか?」
俊の声が、わずかに掠れる。
「ええ」
「今回のは、始まりに過ぎない」
沈黙。
直哉が、拳を強く握りしめた。
「……今の俺たちじゃ」
「勝てない」
私は即座に言い切る。
「だから、ここに連れてきた」
三人の視線が、まっすぐ私に向く。
「正直に言うわ」
「あなたたちを、ゆっくり育てる時間はない」
「これからの訓練は、かなりきつい」
「命のやり取りに近いことも、させる」
恭介が一歩、前に出る。
「それでも――」
「やらなきゃ、守れないんだよな」
私は、小さく頷く。
俊が歯を食いしばる。
「……逃げ道は、なしってことだな」
「ええ」
「でも」
私は、三人を順に見つめる。
「見捨てるつもりはない」
「潰す気もない」
「生き残らせるために、鍛える」
しばらくの沈黙のあと、直哉が静かに言った。
「……教えてください」
「俺たちは、どこまで強くなればいいんですか」
その問いに、私は一度だけ息を吸う。
「魔王――」
「いや、少なくともアポストルに、届くところまで」
空間が、静まり返る。
それでも、誰一人として目を逸らさなかった。
私は、その姿を見て確信する。
この三人なら――
まだ、間に合う。
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