神は奇跡を選ばない ――英雄たちの帰還譚―

えええ

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私と勇者たちは、迫り来るアポストルを蹴散らしながら前進していた。
剣閃と魔法が交錯し、異形の身体が次々と地に伏していく。

だが――
《ライト・レイ》を放ってなお、地平線の向こうまで続くアポストルの群れを前に、私は小さく息を吐いた。

「……少し、キリがないわね」

そう呟き、足を止める。

「来なさい。フェンリル、ルシファー」

呼びかけに応じて魔力が空間を裂き、二つの存在が顕現する。

私は前方の群れを指し示し、淡々と命じた。

「あいつら……いえ、アポストルの数を減らしてきてちょうだい」

「了解した」
「うい」

二人は即座に駆け出し、凄まじい勢いでアポストルの群れへと突っ込んでいく。
その通過した跡には、もはや敵の姿は残っていなかった。

その光景を見て、恭介が不思議そうに尋ねる。

「あれは?」

「私の使い魔よ」

それだけ答え、私は再び歩き出した。

やがて――
進路の先に、異様な存在感が立ちはだかる。

魔王を守るかのように、
他とは明らかに格の違う、巨大なアポストルが鎮座していた。

圧倒的な魔力を纏ったその巨体が、私たちを排除せんと動き出す。

「――っ!」

恭介が即座に前へ出て、防御魔法を展開する。
激突の衝撃が、大地を大きく揺らした。

「稟、ここは任せろ!」

結界越しに、恭介が叫ぶ。

「魔王のところに行ってこい!」
「そして……全部終わらせて来い!」

俊は苦笑しながらも、次々と魔法を放つ。

「それって、完全に死亡フラグじゃね?」

私は一瞬だけ振り返り、三人を見る。

「ありがとう」
「でも――死なないでね」

そう言い残し、私は奥へと進んでいった。

――――――――――

稟が去った後、
恭介たちは巨大なアポストルと正面から対峙していた。

一人が近接で斬り込み、敵の注意を引き付ける。
残る二人が、その隙を逃さず魔法で削っていく。

息の合った連携。
何度も攻撃を重ねるうちに、アポストルの動きは次第に鈍っていった。

そして――

「これで終わりだぁ!!」

恭介の渾身の一閃。
刃は確かに急所を捉え、巨大なアポストルは地響きを立てて崩れ落ちた。

戦いが終わり、
恭介はその場に寝転がる。

「はぁ~……終わった」
「疲れたから、ちょっと休憩しようぜ」

その言葉に、直哉が少し迷いながら言う。

「本当にいいのか?
 稟さんの手伝いをしなくても」

俊は肩をすくめて答えた。

「こんなにボロボロじゃ、逆に足手まといだろ」

「……まあ、そうだな」

直哉も納得し、腰を下ろす。

恭介は空を見上げ、心の中で呟いた。

(頑張れよ、稟)

そう願いながら、束の間の休息に身を委ねた。

――――――――――

砦の前線では、レオンが陣頭に立っていた。

「一人で戦おうとするな!」
「一人が注意を引け!」
「その隙に、複数で魔法を当てろ――いいな!」

鋭い号令が、戦場の喧騒を切り裂く。

次の瞬間、襲い掛かってきたアポストルが、レオンの一太刀によって両断された。
無駄のない踏み込み、最短距離の剣閃。
血飛沫を上げる間もなく、異形は地に伏す。

だが、それで終わりではない。
すぐさま次のアポストルが殺到する。

レオンは間合いを崩さず、
剣戟と魔法を織り交ぜながら、確実に一体ずつ仕留めていく。

前に出る者。
牽制する者。
詠唱を重ね、魔法を叩き込む者。

彼の指示通りに動くことで、兵士たちの動きは明らかに変わっていた。

その光景を見つめ、若い兵士の一人が息を呑む。

「……あれが」
「帝国最強の戦鬼の、実力……」

称号に違わぬ戦いぶり。
派手な力の誇示はない。
ただ、敵を確実に仕留めるための動きだけがそこにあった。

それでも――
砦の外には、なおも尽きることのないアポストルの軍勢が押し寄せてくる。

レオンは剣を振るいながら、低く言い放つ。

「あいつほど派手ではないが――」

次の瞬間、迫ったアポストルの首を刎ねる。

「ここから先は、通さないと思え」

その言葉通り、
彼が立つその場所は、決して突破されることのない壁となっていた。
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