紅き女帝には怠惰な従者を ~お飾り君主にさせられたけど、私だって民を助けたい!~

虎戸リア

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8話:中央大通りはお祭り騒ぎです

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  裏通りから中央大通りに出た途端に私達は音の洪水に襲われた。流石、明日天覧試合が開かれるだけあって各国からの旅行者や帝国領土全土から人が集まってきている。

 通りの左右には店が並んでおり、帝国名物の屋台もたくさん出ていた。賑やかな音楽と、屋台から漂う良い匂いに、私もなんだかお祭り気分になってしまう。

「お、あの屋台の肉美味そうだ! どうだビーチェ!」
「お金ないんでしょ! というかお城!」

 子供みたいなはしゃぎかたをするレンザを見て、私は一瞬で冷静になりため息を付いた。ちなみにベルフェは既に私にもたれかかって寝ている。こいつは本当にすぐ寝る。

 私はベルフェを叩き起こしながら、レンザさんの視線を無理矢理屋台から剥がし、城の方へと向かう。

「ほら、行きますよ! とはいえ、大通りは人が多くて歩きにくいので路地に一旦抜けます」

 ふふふ、帝都の地図は既に頭に叩き込んである。地元民しか知らないような抜け道も網羅しているぐらいだ。

「そういうところで無駄に努力して、しかもそれが身に付いちゃうのがビーチェの良い所であり僕的には悪い所だね~」
「良いじゃない! 万が一ここが攻められたらどうせ把握しないといけないんだし」
「ビーチェがする仕事ではないないと思うな~」
「何の話だ?」

 私とベルフェの会話にレンザさんが首を捻った。そういえばレンザさん一緒に歩く分かるけど、背が高い。私も高い方なので、自分より高い人と歩くのはなんだか新鮮だ。

 というかこれって……デートじゃない?

「な訳ないじゃん」

 ベルフェの無情なツッコミに私は落胆した。仰る通りです。

「なあビーチェ、こっちか?」
「え、うん。ここを通ったら城門まで近道なんだけど――」

 その路地は狭く、人二人がぎりぎり横に並べるほどの幅しかない。少し薄暗いそこから、何かを嗅ぎ付けたのか、レンザさんが眼光を鋭くした。

 そして私も異変に気付いた。

「……血の匂いがするな」
「うん。誰かが怪我しているのかもしれない、私見てきます」
「あ、おい、待て!」
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