グラビトンの魔女 ~無能の魔女と言われ追放されたので、気ままに冒険者やりたいと思います。あれ? 何もしていないのにみんなが頭を垂れ、跪く~

虎戸リア

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13話:ミラルダさんはもうおしまいです(ざまぁ完了)

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「パーティ!?」
「そう。ルーケちゃん、その様子だと誰とも組んでないでしょ? 私もそうだし、それに私って目標がこう、なんかふわふわしてたんだ」

 短剣を取り戻そうとしたり、母親を超えようとちょっと空回り気味ではあるものの一生懸命なルーケの姿を見て、ヘカティは刺激されたのだ。
 
 自分も何か、頑張ろうと思った。ただ、漫然と冒険者をしていたけど……せっかくやるなら目標が欲しい。その結果――パーティを組むという言葉が出たのだ。

「そりゃあ組んでないけどよ……でも良いのかよ。あたしに付き合わせちまう形になるぞ?」
「第四階層を突破できた冒険者はまだいない。【踏破者】と呼ばれる冒険者のトップ連中ですら、そこで足踏みをしているのが現状だ」

 キースの言葉に、しかし二人の少女は不敵な笑みを浮かべたのだった。

「――上等です! だったら私達で初の突破者になりましょう!」
「ははは、ヘカティ、あんたとならやれそうな気がしてくるな。その魔術、相当に強いだろ」
「まあね~」

 笑い合う二人を視て、キースが鳥肌が立つような感覚に襲われた。

 まるで、伝説のワンシーンに出会ったような……そんな気持ちにキースはなっていた。

「君らなら……あるいはいけるかもしれないな」

 そう呟くのが精一杯だった。

「じゃあ、一旦報告に戻ろうか」
「一応言っておくが、あの変な仮面の奴らは殺してないぞ。ちとビリッとしてやったがな」
「じゃあ、レビテーションでまとめて浮かせて持って帰ろう。それでいいかなキースさん」

 二人の言葉にキースが頷いた。

「もちろんだ。さ、帰ろう」

 冒険者狩りについての調査は終わった。

 そして後に最強と呼ばれ、伝説となった二人の魔女が手を組んだのだった。


☆☆☆


 王都内、冒険者ギルド。

「はあ……まさか冒険者狩りはFランクの小娘一人とはな……」
「反省している」

 ベアルの前でルーケが頭を下げた。

「馬鹿野郎。謝る相手は俺じゃねえよ。ほら、お前が襲った連中を今日は集めてるから謝罪してこい」
「……分かった」

 気合いを入れ直したルーケが、奥の酒場に集まっている冒険者達の方へと向かっていく。

「大丈夫かな?」
「ま、怪我をしたわけでも、装備を取られたわけでもないからな。多少は怒られるだろうが……みんな一階層を突破した冒険者だ。すぐにルーケの強さに興味を惹かれて、許してくれるさ。冒険者はそういう生き物だよ」
「そっか。あ、ベアルさん! そういえばルーケと組んで第四階層を突破するつもりですなのでよろしくです!」
「……はあ!?」

 ヘカティの眩しい笑顔を見て、ベアルが額に手を当てた。

「いや……まあ、お前らならやれるかもしれんな……。ソロで一階層突破できる冒険者同士が組むなんて前代未聞だぞ」
「ふふふ~見ててくださいよ、私とルーケの伝説の幕開けを!」
「分かった分かった。まあまずは第二階層を突破することだな。言っとくがそう簡単にはいかねえぞ」
「まあ何とかなりますよ」

 ヘカティがルーケの方を見ると、既にもう何かで盛り上がっており、ルーケの音頭で乾杯をしている。

「だな。ああ、そういえばヘカティが捕まえた連中について色々分かったぞ」

 ヘカティ達によって兵士に突き出された白仮面達は、取り調べによって闇ギルド【白面の獣】の手の者と分かった。そして、その闇ギルドの資金源を調べると――とある大物の名前が出てきたのだ。

「大物ですか?」
「ああ。ヘカティもよく知っている人物だ。今頃、王都の騎士達が捕らえに向かっているはずだがな」
「私の知っている人……?」
「そう、それが聞いて驚け――なんと魔術学……ん?」

 それは一体誰の事だろうとヘカティが首を傾げていると――冒険者ギルドの扉が開き、幼い男の子が入ってきた。

「ぎるどますたー! きょうこそ、ぼくもぼうけんしゃになるぞ!!」
「お、来たな未来の冒険者。お前にはまだ早いって言っているだろ」

 木の棒を持った男の子を見て、ベアルが嬉しそうにそう言った。どうやら近所の子のようで、よくこうして遊びに来ているようだ。

「可愛い冒険者ですね」

 ヘカティもその微笑ましい姿を見て和んでいると、その男の子の後ろにあった扉が――

「なんだ!?」
「っ! 危ない!!」

 ヘカティは素早く右手をそちらへと差し出して【レビテーション】を発動。

 男の子の背後にバリアを張りつつ、吹き飛んできた扉の破片が勢いをなくし、宙にぷかぷかと浮かせる。

「アアアア!! 見付けたぞおおお!! 魔女がああ!!」

 破砕された扉から、巨体が現れた。まるでヒキガエルのような醜い姿のそれは――魔術学院の学長であるミラルダだった。

 その顔は、心労のせいか頬がこけて、目の下には隈が出来ていた。太い手には、折れんばかりの力で短杖が握られていた。

「お前のせいで私はああああ!! 私はあああ!! ここでお前を殺して私が正しい事を証明してやる!!」

 吼えるミラルダをよそに、ヘカティは頭から血を流しつつ宙に浮いている男の子を見つめていた。

「間に合わなかった……!」

 悲痛そうなヘカティの呟きが響く。

「お、お前は!! 何をしやがる!! 冒険者ギルドへと敵対行為がどういう意味か分かっているのか!? ヘカティに暗殺者をけしかけたのもお前なんだってな!!」

 ベアルが怒鳴りながら、ギルドのカウンターから飛び出す。奥で騒いでいた冒険者達も、殺気を放ちながら立ち上がっていた。

 だが、誰よりも早く動いたのは――ヘカティだった。

 加重を解放したヘカティが一瞬でミラルダの懐に入る。

「はへ?」
「貴女に恨みはありませんが――

 静かな怒りが籠もったヘカティの声と共に、加重の魔術がミラルダを巻き込んで再び周囲に発動。

「ア……! がっ……!」

 ミラルダが立っていられず、地面へとひれ伏した。

「ががが……なんだ……これは……!」
「彼に謝ってください。マスターにも謝ってください。貴女のせいで、彼は怪我をしたんですよ!」

 ヘカティは浮いていた男の子をそっと抱きしめると、魔術を解除しそのまま地面へと寝かせた。幸い、頭からの血は微量で命に別状はなさそうだ。

「だ……ま……れ!! お前は殺す……そのガキ……もろとも……殺してやる!!――【メギドフレイム】!!」

 ミラルダが意地で顔を上げ、杖を使って魔術を発動。

 それは自分以外の周囲を爆炎で吹き飛ばす、炎の上位魔法だった。その爆炎は、ギルドごと吹き飛ばすほどの威力を秘めている。

 しかし、その破壊の炎は、それを覆う半透明の黒い膜によって閉じ込められた。

 炎が消えると、そこには無傷のヘカティと男の子がいた。そして二人を覆っていた半透明の黒い膜も消える。ヘカティはまず重力バリアで全体を覆い、破壊がギルドへと及ぶのを阻むと同時に、自分達にも掛けて防いでいたのだ。

「ば……かな! 私の……最高の……魔術が!!」
「貴女は……どうしようもない人ですね」

 更なる重力が掛かり、ミラルダは顔を上げていられず、頭を地面へと押し付ける。

 まるで、許しを乞うような――そんな姿だ。

 その屈辱に、ミラルダは耐えられなかった。

「アアアアアアア!!」

 発狂したような声を出すミラルダを見下すヘカティの視線は冷たかった。

「さようなら、学院長」

 ヘカティが【重力】魔術の中でもとびっきり魔力を使う物を発動。

「あっ」

 ミラルダの真下に、黒い穴が出現。ミラルダの巨体がそこへと吸いこまれていき――そして穴が閉じられた。

 周囲に、静寂が戻る。

「……ヘカティ、殺したのか」

 ベアルの言葉に、ヘカティが笑いながら振り返った。

「ふふふ、まさか。でも、どうでしょう、死ぬかもしれませんね。なんせ……私にも分かりません」

 ヘカティは【重力】の力で時空間の壁に穴を開けたのだ。そこに吸いこまれたミラルダは、おそらくこの星のどこか、過去か未来かも分からない場所へと飛ばされたのだ。

「生きるか死ぬかは彼女の運次第です」

 そう言い切ったヘカティの姿を見た、ベアル含め他の冒険者達は――決して彼女を怒らせてはいけないという事を嫌というほど理解した。

 こうして魔術学院の学院長であった、ミラルダはヘカティによって時空すら超えたどこかへ飛ばされ、二度とヘカティ達の前に出てくることはなかった。

 そうして、いよいよ――ヘカティとルーケによる塔の攻略が始まる。
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