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17話:新技いっぱい試します!
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「気を付けてください。【竜鉄兵】には多彩な攻撃方法があります」
「了解!」
そう言って重力バリアをサレーナと、既に観戦する気満々で武器をしまっているルーケの周囲に掛ける。
「ギガガガガ」
【竜鉄兵】が金属が擦れ合う、悲鳴のような音を上げながら、立ち上がった。同時に左手のボーガンをヘカティへと向け、発射。
一本一本がまるで槍のような鉄の矢が豪速でヘカティへと迫るが――ヘカティは右手を向ける途端、矢が空中でピタリと停止すると、今度は撃った本人である【竜鉄兵】の方へと同じ速度で飛んでいく。
【竜鉄兵】が大剣で振り払い、迫る矢を防ぐものの、何本かが身体へと突き刺さった。
「なんじゃあれ」
「おそらく、矢に掛かる重力の方向を【竜鉄兵】へと変更したのでしょう。物が上から下に落ちるように、あの矢は【竜鉄兵】へと落ちていったのですわ」
「相変わらず、わけが分からん」
【竜鉄兵】が前進。大剣を振り上げ、地面へと叩き付ける。すると衝撃波がヘカティへと向かって放たれた。
同時にヘカティが自身に掛かっている加重を解除し、地面を蹴って跳躍。
そのまま重力を操作して宙に浮くと、【竜鉄兵】へと右手を向けた。
「浮いてるな。まあそりゃあできるわな……」
「はい……」
すると、【竜鉄兵】の身体が突如浮き始め、足が地面から離れて、ヘカティの方へと引き寄せられていく。もがきつつボーガンを放つも、明後日の方向に飛んでいくだけだった。
闘技場の上空まで浮き上がったヘカティとそこへと引き寄せられる【竜鉄兵】。
「そんなに降りたい? じゃあ――落としてあげる」
ヘカティの言葉と共に、【竜鉄兵】に掛かっていた重力が解除、更に超重量が掛けられる。
地面へと激突した【竜鉄兵】によって轟音が鳴り響き、闘技場全体が揺れた。
砂塵が消えると、そこにクレーターが出来ており、【竜鉄兵】だったであろう鉄の残骸が積み重なっているだけだった。
「んー、余裕だなあ」
優雅に地面に降り立ったヘカティが残骸へと背を向けて、そうルーケ達の方へと歩き始めた。
「ん? なんだあれ」
「っ!! 気を付けてください!」
【竜鉄兵】の残骸から、何かが飛び出してきた。それは鉄で出来た、子供ほどの背丈がある人形で、両手に剣を装備していた。
【竜鉄兵】の外側はただの鎧に過ぎず、その人形こそが本体だ。倒したと勘違いし油断した冒険者達が幾人もこの人形にやられていた。
人形が、ルーケの雷速に匹敵するほどの速さでヘカティに迫ると、剣をその背へと突き立てる。
「ん? あれ、まだ生きているんだ」
しかし、剣がヘカティに触れた瞬間に消失。
「ギガガ!?」
人形が大きくバックステップ。ヘカティの範囲魔術を恐れて、更に後退していく。
実は奥には同じ鎧が何個もあり、本体を倒さない限り、無限に復活するのだ。
しかしその行動は――ヘカティの前では無意味だった。
「逃げても無駄だよ――【ブラックバースト】」
ヘカティが上空へと手を向けて、特大の魔力を込めると上空に小さな黒い穴が空いていく。それは豆粒のほどの小さな穴だが、それ閉じると同時に暴力的なまでの量の光が放射され――
闘技場が吹き飛んだ。
「……は?」
「……えっと」
絶句するルーケとサレーナ。
重力バリアで守られていた二人とヘカティの周囲以外の全てが、吹き飛んで更地になっていた。
かろうじて、奥できらめく魔法陣の上にある第三階層へと続く転送装置だけが、ここがかつて闘技場であったことを物語っていた。
「あはは……ちょっとやりすぎちゃったかも」
そう言って笑うヘカティを見て、ルーケとサレーナは顔を合わせて、同時に溜息をついた。
「これだけやって、ちょっと、とか言いだしたぞ」
「冒険者を恐れるという他国の気持ちが良く分かりましたわ……」
「え、なんの話?」
「なんでもねえよ。さ、三階層へ行こうぜ」
こうして、あっけなく、第二階層の階層主である【竜鉄兵】はヘカティに敗れたのであった。
☆☆☆
「うわああ! 素敵~」
「綺麗ですわ」
「……あたしはちょっと恐いかな……」
転送装置の先――つまり第三階層に足を踏み入れた三人は思わず、その絶景に足を止めて見蕩れてしまっていた。
地面は細かい砂になっており、周囲には色とりどりの巨大な珊瑚が生えていた。
上を見上げれば、海面のように揺れる天井があり、そこから光が差し込んでいる。まるで海の底から太陽を見ているような、そんな感覚だ。
まるで重力などないとばかりに、小魚の群れや極彩色の魚が宙を泳いでいる。
「ここが――第三階層……通称【冥海の砂底】ですわ。綺麗な場所ですが……厄介な魔物も多いですし……何より――」
サレーナの言葉の途中で、ルーケが前へと出た。
「お、早速来たぜ。うっし、ここはあたしにやらせてもらおう」
ルーケの視線の先には、妙な色に輝く巨大な蟹が現れた。右手のハサミだけ巨大でそれを盾のように構えている。
「――【雷極化】」
ルーケが魔力を込め、雷へと変化しようとするが――。
「あれ?――【雷極化】!!……なんで発動しねえんだよ!!」
ルーケが何やら手間取っている間に巨大蟹が近付いてくる。
「じゃあ、私がやるね!……あれ?」
ヘカティは違和感を覚えた。なぜか、自分に掛かっていたはずの加重魔術が解除されている。
更にどれだけ魔力を込めても、なぜか魔力がまとまらずに、拡散されていくような感覚。
「あれ? あれれ!?」
「おい、なんで魔術が発動しねえんだよ!」
魔術が発動しないという初めての出来事によって慌てふためく二人へと、迫る巨大蟹が迫る。
「やれやれですわ。話は最後まで聞いてください」
そう言って、二人の前へと出たのはサレーナだった。彼女は巨大蟹へと、ここに来て初めてメイスを抜いた。
「ば、ばか、そんな武器じゃ無理に決まってい――へ?」
ルーケの言葉と同時に、サレーナが無造作に振ったメイスが巨大蟹のハサミへと命中――
轟音と共に、巨大蟹が弾け飛んだ。肉辺と甲殻の破片が辺りに散らばっている
「えっと……え?」
今度はヘカティがあっけにとられる番だった。
「魔術は使えませんが――戦えないとは一言も言っていませんよ?」
そう言って――サレーナは優雅に笑ったのだった。
☆☆☆
新作投稿しました!
文字数少なめサクサクテンポのゆるーい店舗経営のファンタジーものです。マテリアの力で成り上がれ!
良ければ是非、ご一読を!
勇者に追放された特級宝石師、モフモフと共に使用者を超強化する加工魔石<マテリア>屋を始める ~王家御用達になったのでそちらには戻りませんよ?
「了解!」
そう言って重力バリアをサレーナと、既に観戦する気満々で武器をしまっているルーケの周囲に掛ける。
「ギガガガガ」
【竜鉄兵】が金属が擦れ合う、悲鳴のような音を上げながら、立ち上がった。同時に左手のボーガンをヘカティへと向け、発射。
一本一本がまるで槍のような鉄の矢が豪速でヘカティへと迫るが――ヘカティは右手を向ける途端、矢が空中でピタリと停止すると、今度は撃った本人である【竜鉄兵】の方へと同じ速度で飛んでいく。
【竜鉄兵】が大剣で振り払い、迫る矢を防ぐものの、何本かが身体へと突き刺さった。
「なんじゃあれ」
「おそらく、矢に掛かる重力の方向を【竜鉄兵】へと変更したのでしょう。物が上から下に落ちるように、あの矢は【竜鉄兵】へと落ちていったのですわ」
「相変わらず、わけが分からん」
【竜鉄兵】が前進。大剣を振り上げ、地面へと叩き付ける。すると衝撃波がヘカティへと向かって放たれた。
同時にヘカティが自身に掛かっている加重を解除し、地面を蹴って跳躍。
そのまま重力を操作して宙に浮くと、【竜鉄兵】へと右手を向けた。
「浮いてるな。まあそりゃあできるわな……」
「はい……」
すると、【竜鉄兵】の身体が突如浮き始め、足が地面から離れて、ヘカティの方へと引き寄せられていく。もがきつつボーガンを放つも、明後日の方向に飛んでいくだけだった。
闘技場の上空まで浮き上がったヘカティとそこへと引き寄せられる【竜鉄兵】。
「そんなに降りたい? じゃあ――落としてあげる」
ヘカティの言葉と共に、【竜鉄兵】に掛かっていた重力が解除、更に超重量が掛けられる。
地面へと激突した【竜鉄兵】によって轟音が鳴り響き、闘技場全体が揺れた。
砂塵が消えると、そこにクレーターが出来ており、【竜鉄兵】だったであろう鉄の残骸が積み重なっているだけだった。
「んー、余裕だなあ」
優雅に地面に降り立ったヘカティが残骸へと背を向けて、そうルーケ達の方へと歩き始めた。
「ん? なんだあれ」
「っ!! 気を付けてください!」
【竜鉄兵】の残骸から、何かが飛び出してきた。それは鉄で出来た、子供ほどの背丈がある人形で、両手に剣を装備していた。
【竜鉄兵】の外側はただの鎧に過ぎず、その人形こそが本体だ。倒したと勘違いし油断した冒険者達が幾人もこの人形にやられていた。
人形が、ルーケの雷速に匹敵するほどの速さでヘカティに迫ると、剣をその背へと突き立てる。
「ん? あれ、まだ生きているんだ」
しかし、剣がヘカティに触れた瞬間に消失。
「ギガガ!?」
人形が大きくバックステップ。ヘカティの範囲魔術を恐れて、更に後退していく。
実は奥には同じ鎧が何個もあり、本体を倒さない限り、無限に復活するのだ。
しかしその行動は――ヘカティの前では無意味だった。
「逃げても無駄だよ――【ブラックバースト】」
ヘカティが上空へと手を向けて、特大の魔力を込めると上空に小さな黒い穴が空いていく。それは豆粒のほどの小さな穴だが、それ閉じると同時に暴力的なまでの量の光が放射され――
闘技場が吹き飛んだ。
「……は?」
「……えっと」
絶句するルーケとサレーナ。
重力バリアで守られていた二人とヘカティの周囲以外の全てが、吹き飛んで更地になっていた。
かろうじて、奥できらめく魔法陣の上にある第三階層へと続く転送装置だけが、ここがかつて闘技場であったことを物語っていた。
「あはは……ちょっとやりすぎちゃったかも」
そう言って笑うヘカティを見て、ルーケとサレーナは顔を合わせて、同時に溜息をついた。
「これだけやって、ちょっと、とか言いだしたぞ」
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「え、なんの話?」
「なんでもねえよ。さ、三階層へ行こうぜ」
こうして、あっけなく、第二階層の階層主である【竜鉄兵】はヘカティに敗れたのであった。
☆☆☆
「うわああ! 素敵~」
「綺麗ですわ」
「……あたしはちょっと恐いかな……」
転送装置の先――つまり第三階層に足を踏み入れた三人は思わず、その絶景に足を止めて見蕩れてしまっていた。
地面は細かい砂になっており、周囲には色とりどりの巨大な珊瑚が生えていた。
上を見上げれば、海面のように揺れる天井があり、そこから光が差し込んでいる。まるで海の底から太陽を見ているような、そんな感覚だ。
まるで重力などないとばかりに、小魚の群れや極彩色の魚が宙を泳いでいる。
「ここが――第三階層……通称【冥海の砂底】ですわ。綺麗な場所ですが……厄介な魔物も多いですし……何より――」
サレーナの言葉の途中で、ルーケが前へと出た。
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ルーケの視線の先には、妙な色に輝く巨大な蟹が現れた。右手のハサミだけ巨大でそれを盾のように構えている。
「――【雷極化】」
ルーケが魔力を込め、雷へと変化しようとするが――。
「あれ?――【雷極化】!!……なんで発動しねえんだよ!!」
ルーケが何やら手間取っている間に巨大蟹が近付いてくる。
「じゃあ、私がやるね!……あれ?」
ヘカティは違和感を覚えた。なぜか、自分に掛かっていたはずの加重魔術が解除されている。
更にどれだけ魔力を込めても、なぜか魔力がまとまらずに、拡散されていくような感覚。
「あれ? あれれ!?」
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魔術が発動しないという初めての出来事によって慌てふためく二人へと、迫る巨大蟹が迫る。
「やれやれですわ。話は最後まで聞いてください」
そう言って、二人の前へと出たのはサレーナだった。彼女は巨大蟹へと、ここに来て初めてメイスを抜いた。
「ば、ばか、そんな武器じゃ無理に決まってい――へ?」
ルーケの言葉と同時に、サレーナが無造作に振ったメイスが巨大蟹のハサミへと命中――
轟音と共に、巨大蟹が弾け飛んだ。肉辺と甲殻の破片が辺りに散らばっている
「えっと……え?」
今度はヘカティがあっけにとられる番だった。
「魔術は使えませんが――戦えないとは一言も言っていませんよ?」
そう言って――サレーナは優雅に笑ったのだった。
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