グラビトンの魔女 ~無能の魔女と言われ追放されたので、気ままに冒険者やりたいと思います。あれ? 何もしていないのにみんなが頭を垂れ、跪く~

虎戸リア

文字の大きさ
17 / 20

17話:新技いっぱい試します!

しおりを挟む
「気を付けてください。【竜鉄兵】には多彩な攻撃方法があります」
「了解!」

 そう言って重力バリアをサレーナと、既に観戦する気満々で武器をしまっているルーケの周囲に掛ける。

「ギガガガガ」

 【竜鉄兵】が金属が擦れ合う、悲鳴のような音を上げながら、立ち上がった。同時に左手のボーガンをヘカティへと向け、発射。

 一本一本がまるで槍のような鉄の矢が豪速でヘカティへと迫るが――ヘカティは右手を向ける途端、矢が空中でピタリと停止すると、今度は撃った本人である【竜鉄兵】の方へと同じ速度で飛んでいく。

 【竜鉄兵】が大剣で振り払い、迫る矢を防ぐものの、何本かが身体へと突き刺さった。

「なんじゃあれ」
「おそらく、矢に掛かる重力の方向を【竜鉄兵】へと変更したのでしょう。物が上から下に落ちるように、あの矢は【竜鉄兵】へとのですわ」
「相変わらず、わけが分からん」

 【竜鉄兵】が前進。大剣を振り上げ、地面へと叩き付ける。すると衝撃波がヘカティへと向かって放たれた。

 同時にヘカティが自身に掛かっている加重を解除し、地面を蹴って跳躍。

 そのまま重力を操作して宙に浮くと、【竜鉄兵】へと右手を向けた。

「浮いてるな。まあそりゃあできるわな……」
「はい……」

 すると、【竜鉄兵】の身体が突如浮き始め、足が地面から離れて、ヘカティの方へと引き寄せられていく。もがきつつボーガンを放つも、明後日の方向に飛んでいくだけだった。

 闘技場の上空まで浮き上がったヘカティとそこへと引き寄せられる【竜鉄兵】。

「そんなに降りたい? じゃあ――落としてあげる」

 ヘカティの言葉と共に、【竜鉄兵】に掛かっていた重力が解除、更に超重量が掛けられる。

 地面へと激突した【竜鉄兵】によって轟音が鳴り響き、闘技場全体が揺れた。

 砂塵が消えると、そこにクレーターが出来ており、【竜鉄兵】だったであろう鉄の残骸が積み重なっているだけだった。

「んー、余裕だなあ」

 優雅に地面に降り立ったヘカティが残骸へと背を向けて、そうルーケ達の方へと歩き始めた。

「ん? なんだあれ」
「っ!! 気を付けてください!」

 【竜鉄兵】の残骸から、何かが飛び出してきた。それは鉄で出来た、子供ほどの背丈がある人形で、両手に剣を装備していた。
 【竜鉄兵】の外側はただの鎧に過ぎず、その人形こそが本体だ。倒したと勘違いし油断した冒険者達が幾人もこの人形にやられていた。
 
 人形が、ルーケの雷速に匹敵するほどの速さでヘカティに迫ると、剣をその背へと突き立てる。

「ん? あれ、まだ生きているんだ」

 しかし、剣がヘカティに触れた瞬間に消失。

「ギガガ!?」

 人形が大きくバックステップ。ヘカティの範囲魔術を恐れて、更に後退していく。

 実は奥には同じ鎧が何個もあり、本体を倒さない限り、無限に復活するのだ。

 しかしその行動は――ヘカティの前では無意味だった。

「逃げても無駄だよ――【ブラックバースト】」

 ヘカティが上空へと手を向けて、特大の魔力を込めると上空に小さな黒い穴が空いていく。それは豆粒のほどの小さな穴だが、それ閉じると同時に暴力的なまでの量の光が放射され――

 

「……は?」
「……えっと」

 絶句するルーケとサレーナ。

 重力バリアで守られていた二人とヘカティの周囲以外の全てが、吹き飛んで更地になっていた。

 かろうじて、奥できらめく魔法陣の上にある第三階層へと続く転送装置だけが、ここがかつて闘技場であったことを物語っていた。

「あはは……ちょっとやりすぎちゃったかも」

 そう言って笑うヘカティを見て、ルーケとサレーナは顔を合わせて、同時に溜息をついた。

「これだけやって、ちょっと、とか言いだしたぞ」
「冒険者を恐れるという他国の気持ちが良く分かりましたわ……」
「え、なんの話?」
「なんでもねえよ。さ、三階層へ行こうぜ」

 こうして、あっけなく、第二階層の階層主である【竜鉄兵】はヘカティに敗れたのであった。


☆☆☆


「うわああ! 素敵~」
「綺麗ですわ」
「……あたしはちょっと恐いかな……」

 転送装置の先――つまり第三階層に足を踏み入れた三人は思わず、その絶景に足を止めて見蕩れてしまっていた。

 地面は細かい砂になっており、周囲には色とりどりのが生えていた。

 上を見上げれば、海面のように揺れる天井があり、そこから光が差し込んでいる。まるで海の底から太陽を見ているような、そんな感覚だ。

 まるで重力などないとばかりに、小魚の群れや極彩色の魚が宙を泳いでいる。

「ここが――第三階層……通称【冥海の砂底】ですわ。綺麗な場所ですが……厄介な魔物も多いですし……何より――」

 サレーナの言葉の途中で、ルーケが前へと出た。

「お、早速来たぜ。うっし、ここはあたしにやらせてもらおう」

 ルーケの視線の先には、妙な色に輝く巨大な蟹が現れた。右手のハサミだけ巨大でそれを盾のように構えている。

「――【雷極化】」

 ルーケが魔力を込め、雷へと変化しようとするが――。

「あれ?――【雷極化】!!……なんで発動しねえんだよ!!」

 ルーケが何やら手間取っている間に巨大蟹が近付いてくる。

「じゃあ、私がやるね!……あれ?」

 ヘカティは違和感を覚えた。なぜか、自分に掛かっていたはずの加重魔術が解除されている。
 
 更にどれだけ魔力を込めても、なぜか魔力がまとまらずに、拡散されていくような感覚。

「あれ? あれれ!?」
「おい、なんで!」

 魔術が発動しないという初めての出来事によって慌てふためく二人へと、迫る巨大蟹が迫る。

「やれやれですわ。話は最後まで聞いてください」

 そう言って、二人の前へと出たのはサレーナだった。彼女は巨大蟹へと、ここに来て初めてメイスを抜いた。

「ば、ばか、そんな武器じゃ無理に決まってい――へ?」

 ルーケの言葉と同時に、サレーナが無造作に振ったメイスが巨大蟹のハサミへと命中――

 轟音と共に、巨大蟹が弾け飛んだ。肉辺と甲殻の破片が辺りに散らばっている

「えっと……え?」

 今度はヘカティがあっけにとられる番だった。

「魔術は使えませんが――戦えないとは一言も言っていませんよ?」

 そう言って――サレーナは優雅に笑ったのだった。


☆☆☆

新作投稿しました!
文字数少なめサクサクテンポのゆるーい店舗経営のファンタジーものです。マテリアの力で成り上がれ!

良ければ是非、ご一読を!


勇者に追放された特級宝石師、モフモフと共に使用者を超強化する加工魔石<マテリア>屋を始める ~王家御用達になったのでそちらには戻りませんよ?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蒼炎の公爵令嬢 〜追放された私は、最強冒険者と共に真実の力に目覚める〜

雛月 らん
ファンタジー
「お前は出来損ないだ」——家族に見捨てられた令嬢が、最強の冒険者と出会い、真の力に目覚める異世界ファンタジー! 公爵家に生まれたエリアナは、幼い頃から魔法の制御ができず、家族から冷遇されてきた。 唯一の味方は執事のポールだけ。 人前で魔法を使わなくなった彼女に、いつしか「出来損ない」の烙印が押される。 そして運命の夜会—— 婚約者レオンハルトから、容赦ない言葉を告げられる。 「魔法も使えないお前とは、婚約を続けられない」 婚約破棄され、家からも追放されたエリアナ。 だが彼女に未練はなかった。 「ようやく、自由になれる」 新天地を求め隣国へ向かう途中、魔物に襲われた乗り合い馬車。 人々を守るため、封印していた魔法を解き放つ——! だが放たれた炎は、常識を超えた威力で魔物を一掃。 その光景を目撃していたのは、フードの男。 彼の正体は、孤高のS級冒険者・レイヴン。 「お前は出来損ないなんかじゃない。ただ、正しい指導を受けなかっただけだ」 レイヴンに才能を見出されたエリアナは、彼とパーティーを組むことに。 冒険者ギルドでの魔力測定で判明した驚愕の事実。 そして迎えた、古代竜との死闘。 母の形見「蒼氷の涙」が覚醒を促し、エリアナは真の力を解放する。 隠された出生の秘密、母の遺した力、そして待ち受ける新たな試練。 追放された令嬢の、真の冒険が今、始まる!

聖女を追放した国で地獄の門が開きました。すべてはもう手遅れです

小平ニコ
ファンタジー
貧民街出身というだけで周囲から蔑まれてきた聖女エリシア。十年もの間、自らの身を犠牲にしてバロンディーレ王国の『魔』を封じ続けたが、新たな聖女が見つかったことで『もう用済み』とばかりに国を追放される。 全てを失ったエリシアだったが、隣国の若き王フェルディナントと出会い、彼にこれまでの苦労を認められて救われた気持ちになる。その頃、新しい聖女の力では『魔』を封じきれないことに気づいたバロンディーレ王国の者たちが、大慌てでエリシアを連れ戻そうとしていた。 窮地に陥ってなお、傲慢な態度を見せるバロンディーレの者たちにエリシアは短く言い放つ。 「もう手遅れですわ」

追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を

タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。 だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。 雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。 血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、 “最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。

『農業スキルはいらない』と追放されたが、魔境の開拓ライフが勝手に世界配信されていた件。聖女や竜が集まり、元仲間は完全に詰みました

たまごころ
ファンタジー
「悪いがクビだ。魔王討伐に『農業』スキルなんて役に立たないからな」 幼馴染の勇者からそう告げられ、俺、アレンはパーティを追放された。 あてがわれたのは、人が住めないと言われるS級危険地帯『死の荒野』。 しかし、彼らは知らなかった。俺の農業スキルが、レベルアップによって神の領域(ギフト)に達していたことを。 俺が耕せば荒野は豊潤な大地に変わり、植えた野菜はステータスを爆上げする神話級の食材になり、手にしたクワは聖剣すら凌駕する最強武器になる! 「ここなら誰にも邪魔されず、最高の野菜が作れそうだ」 俺は荒野で拾ったフェンリル(美少女化)や、野菜の匂いにつられた聖女様、逃げてきたエルフの姫君たちと、にぎやかで楽しいスローライフを送ることにした。 その一方で、俺の生活が、荒野に落ちていた古代のアーティファクトによって、勝手に世界中に『生配信』されていることには全く気づいていなかった。 「え、この野菜食べただけで瀕死の重傷が治った!?」 「主様、強すぎます! ドラゴンを大根で叩き落とすなんて!」 『コメント:なんだこの配信……神か?』 『コメント:勇者パーティが苦戦してるダンジョン、この人の家の庭じゃね?』 これは、無自覚に最強の農園を作り上げた男が、世界中から崇拝され、一方で彼を追放した勇者パーティが没落していく様子を、リスナーと共にほのぼのと見守る物語。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました

藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、 騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。 だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、 騎士団の解体と婚約破棄。 理由はただ一つ―― 「武力を持つ者は危険だから」。 平和ボケした王子は、 非力で可愛い令嬢を侍らせ、 彼女を“国の火種”として国外追放する。 しかし王国が攻められなかった本当の理由は、 騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。 追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、 軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。 ――そして一週間後。 守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。 これは、 「守る力」を理解しなかった国の末路と、 追放された騎士団長令嬢のその後の物語。

​「役立たず」と捨てられた仮面聖女、隣国の冷徹皇帝に拾われて真の力が目醒める〜今さら戻ってこいと言われても溺愛されすぎて忙しいので無理です

まさき
恋愛
​「役立たずの偽聖女め、その不気味な仮面ごと消えてしまえ!」 ​十年もの間、仮面で素顔を隠し、身代わり聖女として国を支えてきたリゼット。 しかし、異母妹が聖女として目醒めたことで、婚約者の第一王子から婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。 ​捨てられた先は、凶悪な魔獣が跋扈する『死の森』。 死を覚悟したリゼットだったが、仮面の下の本音は違った。 ​(……あー、やっとあのブラック職場からおさらばですわ! さっさと滅びればいいんですわ、あんな国!) ​清々した気持ちで毒を吐くリゼットの前に現れたのは、隣国の冷徹皇帝・ガイウス。 彼はリゼットの仮面の下に隠された「強大すぎる魔力」と、表の顔とは裏腹な「苛烈な本性」を瞬時に見抜き、強引に連れ去ってしまう。 ​「気に入った。貴様は今日から、私のものだ」 ​バルディア帝国へと連行されたリゼットを待っていたのは、冷徹なはずの皇帝からの、逃げ場のない過保護な溺愛だった……。 ​一方、真の聖女(リゼット)を失った王国は、守護の結界が崩壊し絶体絶命の危機に陥る。 「戻ってきてくれ」と泣きつく王子たちに対し、皇帝の腕の中に収まったリゼットは、極上のスイーツを頬張りながら優雅に言い放つ。 ​「お断りいたしますわ。私、今とっても忙しい(溺愛されている)んですもの」 ​仮面の下で毒を吐くリアリスト聖女と、彼女を離さない執着皇帝の、大逆転溺愛ファンタジーが開幕!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...