グラビトンの魔女 ~無能の魔女と言われ追放されたので、気ままに冒険者やりたいと思います。あれ? 何もしていないのにみんなが頭を垂れ、跪く~

虎戸リア

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19話:新武器お披露目です!

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 第三階層【冥海の砂底】――十一階。

「私は帰ってきたぞお!」

 ヘカティがラッセンが作った武器である、タイラントハンマーを肩に担ぎ上げた。大きさ的に言えば、ヘカティでもギリギリ持てる程度だが、柄の先にある槌と斧部分の重量は異常だった。

 なんせ普通の台座に置くと、もれなくその超重量に耐えられずに、潰れてしまうほどだ。

 だがヘカティはそれをまるで枝のように担いでいた。

「今度こそ、あたしらの力を見せる時が来たようだな」

 ルーケがいつも通り、曲剣を構えるが、なぜかその腰の左右と背中には矢筒があり、それぞれに無数の矢が詰められていた。

「期待していますよお二人さん」

 サレーナがメイスを腰に差したままそう言って、にこりと微笑む。

「お、早速きたね!」

 ヘカティの声を聞き付けたのか、タイラントクラブがこちらへと向かってきている。

「――とりゃあ!」

 それを見て、ヘカティがハンマーを地面を擦るように、まだ離れた位置にいるタイラントクラブへと振り払った。

 異常なヘカティの膂力によって振られた超重量のハンマーによって、地面が抉られ、同時に前方へと衝撃が伝わり、爆発。
  
 砂や石、珊瑚の欠片を含んだ衝撃波がタイラントクラブを襲う。

 舞いあがった砂塵が消えると、そこにはズタズタに引き裂かれた、タイラントクラブの死体があった。

「……当ててすらいないのにあれかよ」
「異常ですわ……今さらですけど」
「ふふーん、流石は私とラッセンさんの合作武器!」

 ヘカティは重力魔術を使い、ラッセンの鍛冶を手伝った結果、出来たのがこのタイラントハンマーだった。

 金属とタイラントクラブの素材を超重力で融合させ、超々高密度にすることでそのサイズからは想像できないほどの重量が実現出来たのだ。

 作成過程で魔術を使っただけであり、武器自体には何の魔術も掛かっていないので、当然【魔術阻害】の効果は受けない。

 これがヘカティが出した結論だった。

「ルーケさん。新武器におあつらえ向きの魔物が来ましたわ」

 サレーナが上空を指差した。

 そこには、巨大な魚の群れがこちらへと向かっていた。その頭にはまるで剣のような角が生えており、キラキラと上から降り注ぐ光を反射している

「ソードフィッシュですわ。超高速の突きが厄介で、魔術が使えない以上はカウンターでしか攻撃を加えられません」
「なら、あたしがやろう!」

 ルーケが曲剣を振ると金属音が鳴り響いた。曲剣の刃が縦に裂け、変形。刃と刃の間には細い弦が通っており、それはまるで弓のような形になった。

 ルーケが矢筒から矢を抜いて、番えると引き絞る。

「――【スパーク・ボルト】」

 ルーケの弓から放たれた矢が、ソードフィッシュの群れに到達した瞬間に、やじりが弾け飛ぶ。

 同時に、電撃が周囲へとまき散らされ、ソードフィッシュ達を襲う。

 ボトボトと、こんがりと焼け焦げたソードフィッシュの死体が空から降ってきた。

「上手くいきましたわね」
「読み通りだぜ」

 ルーケは、予め雷撃の魔術を込めた魔石の欠片を鏃に仕込み、これをタイラントクラブの甲殻で覆った。この特殊な矢に込められた魔術は、三階層に上がる前に使われた魔術である為に、魔術阻害の効果を受けなかったのだ。更に、魔術阻害を和らげるタイラントクラブの素材で覆う事で、発動時の魔術阻害の影響を最低限にしていた。

 魔術が使えないなら、先に使って、ストックしておけばいい。そうルーケは考えて、ラッセンに矢を作成させたのだ。

「ずっと使ってなかった弓機能がこうして約に立つとはな」
「面白い武器ですわね」
「母さんの形見なんだ」
「なるほど……」

 三人の快進撃が続く。

 サレーナとヘカティが前衛で、迫り来る敵を叩き潰し、上空や遠方から襲ってくる敵にはルーケが弓で対処する。

 塔の最大の難所と言われる三階層すらも、三人で突破していく。

 もはや三人を止められる者はいなかった。


☆☆☆

 十五階。

「もう少しで階層主だね!」
「しかし、ちと矢を使い過ぎたな。もう矢筒があと一つしかねえ」
「少し残しておきましょうか」

 ヘカティ達の前には、巨大な巻き貝がまるで何かの建造物のようにそびえて立っている。あの中に階層主と、四階層へと続く転送装置がある。

 しかし、その前に、何やら対立している集団があった。

「どけ!! 早くグラント様を助けねば!」
「馬鹿野郎! こっちはトファース様に命が掛かっているんだぞ!!」
「言い争っている場合じゃないだろ!! 早く助けにいかないと!」
「じゃあお前があいつ倒せよ!!」

 見れば、それは騎士と冒険者が入り交じった集団だった。

「あれは……うちの兄達の護衛ですわ」
「え? サレーナのお兄さんってことは」
「王子まで塔に来てるのかよ! しかもなんかやばそうな雰囲気だぞ?」

 急いで駆け寄ると、サレーナが声を発した。

「何があったか説明しなさい!!」
「サレーナ王女!」

 その後騎士達が矢継ぎ早に説明を始めた。

「トファース様が、俺一人で十分だと、階層主に挑まんと、あの貝の中に入っていきまして!」
「グラント様も対抗して、俺も一人で行くと」
「お止めしたのですが」
「なぜ後を追わないのです!? 第一王子と第二王子が何かあったらどうするつもりです!」
「それが……あれが立ち塞がっていまして」

 騎士がそういって、巻き貝のような建物の入口を指差した。

 そこには二体の魔物が立っていた。

 見た目を言えば、タコだが……それぞれの腕に武器を装備しており、身体にも鎧を纏っている。

「オクトナイトですわ。かなりの強敵ですわね」
「我々では対処できなくて……」

 オクトナイトはこの三階層で最も手強い魔物だ。

 それが二体、守るように配置されている。

「――サレーナ、どうする?」

 ヘカティの言葉に、サレーナがそう言いながらメイスを構えて、前へと一歩踏み出す。

「馬鹿兄を助けに行きますわ!」

 ヘカティとルーケが顔を見合わせて、笑うとそれぞれの武器を握り直して、サレーナの横に並んだ。

「了解だよ!」
「やってやるぜ!」

 こうして王子救出作戦が開始された。
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