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1話:日向さくら
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私立セントリリィ女子高等学園。
全国から優秀な生徒が集う、女子校の中でも頂点と呼ばれる学園。そこは、蝶よ花よと手塩にかけて育てられた女子達が咲き誇る花園だ。
「知ってる? 三組の灰川小雪って“ハルウリ”らしいよ」
三人の女生徒が教室の扉の前で笑い合っていると、近付く影が一つ。
「どいてくれる? 外、出られないんだけど」
その影を見た、三人が凍り付く。
「あ、あ、日向さん」
「どいて?」
「ごめんなさい!」
三人が一斉に頭を下げながら道を空けた。
「ありがと」
まるで心の籠もっていない礼を言いながら扉を出たのは、背の高い女生徒だった。
女の嫉妬と妬みが渦巻くこの学園の頂点。
ヒエラルキーのトップオブトップ
それが、日向さくら。彼女の名だ。
少しウェーブの掛かった栗色のロングヘアーに、白人の血が少し入っているのか、日本人離れした目鼻立ち。すらりと伸びた長い手足に細いウエスト。男性の目を釘付けにする豊満な乳房と、ヒップライン。女子が羨む全てを持っているといっても過言ではなかった。何より彼女は決して見た目だけではない。勉学もスポーツも人並み以上にこなせる才女だった。
彼女は、天は二物を与えないという言葉が大嫌いだった。出来ない奴の、底辺を這いつくばるゴミ共の嫉妬だ。そう彼女は確信していた。世間一般で言えばこの学校の生徒は優秀だと褒められているらしいが、それすらも彼女にとっては苛立ちの元だった。
優秀? こいつらが?
男に媚びる事と、女を貶める事しか考えてないこいつらが? 馬鹿馬鹿しい、一緒にするな。
さくらは群れず、馴染まず、孤高の存在としてトップに君臨していた。勿論、彼女は自身の才能だけに驕って努力を怠るような無様な真似はしない。勉学に、体型を維持する為の運動、食事制限、上げればキリがないほどの努力の積み重ねの上に彼女の美しさは成り立っていた。
だからこそ、彼女は傲慢だった。
誰であろうと自分より上は認めないし、自分を上と認めない者には容赦をしなかった。お前如きが私と同じステージに立てると思うな。そう言い放ち、彼女はあらゆる手段を使って相手を屈服させてきた。
さくらが、校舎の三階へと上がる。すれ違う女生徒は皆、道を譲り頭を下げた。そうしないと、どうなるかを良く知っているからだ。彼女達は、そうしなかった者の末路を知っている。
職員室から一番遠い三階の端のトイレ。そこにさくらが入ると、二人の女生徒が一つの個室の前に佇んでいた。
「あ、さくらさん、やっとここに追い詰めたんですけど」
「どいて。もういいから。出てって」
「はい」
二人の女生徒がすごすごとトイレから出て行った。さくらはゆっくりと息を吸い、吐くと同時に個室の扉を足蹴した。
「灰川ぁ! 出てきなさい!」
全国から優秀な生徒が集う、女子校の中でも頂点と呼ばれる学園。そこは、蝶よ花よと手塩にかけて育てられた女子達が咲き誇る花園だ。
「知ってる? 三組の灰川小雪って“ハルウリ”らしいよ」
三人の女生徒が教室の扉の前で笑い合っていると、近付く影が一つ。
「どいてくれる? 外、出られないんだけど」
その影を見た、三人が凍り付く。
「あ、あ、日向さん」
「どいて?」
「ごめんなさい!」
三人が一斉に頭を下げながら道を空けた。
「ありがと」
まるで心の籠もっていない礼を言いながら扉を出たのは、背の高い女生徒だった。
女の嫉妬と妬みが渦巻くこの学園の頂点。
ヒエラルキーのトップオブトップ
それが、日向さくら。彼女の名だ。
少しウェーブの掛かった栗色のロングヘアーに、白人の血が少し入っているのか、日本人離れした目鼻立ち。すらりと伸びた長い手足に細いウエスト。男性の目を釘付けにする豊満な乳房と、ヒップライン。女子が羨む全てを持っているといっても過言ではなかった。何より彼女は決して見た目だけではない。勉学もスポーツも人並み以上にこなせる才女だった。
彼女は、天は二物を与えないという言葉が大嫌いだった。出来ない奴の、底辺を這いつくばるゴミ共の嫉妬だ。そう彼女は確信していた。世間一般で言えばこの学校の生徒は優秀だと褒められているらしいが、それすらも彼女にとっては苛立ちの元だった。
優秀? こいつらが?
男に媚びる事と、女を貶める事しか考えてないこいつらが? 馬鹿馬鹿しい、一緒にするな。
さくらは群れず、馴染まず、孤高の存在としてトップに君臨していた。勿論、彼女は自身の才能だけに驕って努力を怠るような無様な真似はしない。勉学に、体型を維持する為の運動、食事制限、上げればキリがないほどの努力の積み重ねの上に彼女の美しさは成り立っていた。
だからこそ、彼女は傲慢だった。
誰であろうと自分より上は認めないし、自分を上と認めない者には容赦をしなかった。お前如きが私と同じステージに立てると思うな。そう言い放ち、彼女はあらゆる手段を使って相手を屈服させてきた。
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「あ、さくらさん、やっとここに追い詰めたんですけど」
「どいて。もういいから。出てって」
「はい」
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「灰川ぁ! 出てきなさい!」
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