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8話:救い
しおりを挟むどうしてこうなった。私は、何を間違えた。
日向さくらが、ここに来るまでの間に幾度となく反芻したが、答えは一つだった。
私が、どうしようもなく馬鹿だった。
ただそれだけだった。
さくらは、怯えと共に怒りがこみ上げてくるのが分かった。殴られた腹部の鈍痛すらも怒りに変わっていく。
悠人の部屋に行った数日後の今日。お昼頃に悠人から呼び出しがあった。ノコノコと学校が終わって向かった先にいたのは悠人だけではなかった。
「なあ味見していいか?」
「黙れ。俺がどんだけ苦労したと思ってる?」
悠人は、まるで別人のようだった。周りには、明らかに関わりを持ってはいけない雰囲気の男が数人いた。
「悠人……さん?」
「よおさくら。いやあほんと苦労したぜ。お前警戒しすぎ。まあいいや。ほれ、これ見てみ」
口調も変わった悠人がさくらに見せたのはこれまで彼がデート中に撮った写真と、さくらがトイレで排泄している動画だった。
それは複数の角度からさくらを映しており、一部の角度からはさくらの秘部が丸見えだった。
着ている服を見れば、それがあのデートの夜に撮られたのだと分かった。どう見ても悠人の部屋のトイレだった。
「! なにこれ! なんでこんなの!」
「さくらちゃーん。とりあえずこいつを、SNSで拡散されたくなけりゃ……分かるよね? だからさ、ちょっとやろうや、援交。あー君らの学校では“ハルウリ”だっけ?」
「嫌!」
「おい、やれ」
さくらは抵抗したが、無駄だった。気絶するまで殴られ、気付けばこの暗い部屋の中にいた。
逃げるしかない。でもどうやって?
部屋の出入り口には、見張りはいない。暗いからよく見えないが、部屋の中には大きなテーブルとソファが置いてあった。テーブルの上を見ると、シャンパンやグラスとは別におぞましい道具が無造作に放置されている。
私は、ここで何をされるんだ?
逃げないと。焦りで喉が渇く。
くそ、冷静になれ、冷静になれ!
さくらが冷静になろうとするほど、絶望的状況である事を理解してしまう。
突然扉が開き、暗闇に光が差し込む。
「おい、お前!」
男が低い声でさくらを指さした。その顔には欲望を丸出しにした表情が浮かんでいる。その男は先ほど悠人と一緒にいた男で、一番多くさくらを殴った男だ。
「リーダーはああいうがな。俺が数発ぐらいヤってもバレやしねえ」
怖い。先ほどの暴力がさくらの足を竦ませた。
動けず震えるさくらの手を男が掴んだ。
「大人しくしろよ!」
男がさくらをソファに押し倒す。その瞬間にスイッチが入ったようにさくらは暴れるが、体重差、筋力の差で男に圧倒される。
「おらあ!」
男が拳を上げてさくらへと振り下ろそうとした瞬間。
「ゲスが」
いつの間にか男の背後に立っていた影がそう呟き、持っていたシャンパンの瓶を思いっきり男のこめかみへと振り抜いた。
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