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10話:公園
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「はあ……はあ……逃げ切れた……かな?」
「多分」
歓楽街から少し離れた小さな公園。
二人は手を繋いだまま、ベンチに座っていた。
「なんで」
さくらがそれだけを小雪に向けて言った。
「たまたま、あんたが厄介な事に巻き込まれている事を知った。あのクラブは何度も行ったし、隠し扉の事も知っていた。それだけ」
「なんで……なんで私を助けたの?」
小雪がぎゅっとさくらの手を握った。
「あんたが嫌いだ。この世で一番嫌いだ。傲慢で、あたしの持っていない物をいっぱい持ってて」
「……」
「あたしはね、自分も嫌いなの。可愛くないし、スタイルも悪い。だけどね、だからこそあたしは綺麗な物や美しい物が好きなの」
小雪の声は震えていた。彼女が思い出すのは、初めてさくらと出会った時の事だ。
「あんたは、綺麗だ! 初めて会った時にあたしは感動したんだ! こんなに綺麗な人がいるんだって!」
小雪が叫ぶ。
「嫌なんだよ! あんたみたいな綺麗なのが、あたしのいる底辺に来るのが! しかもあたしのせいで! あんたはあたしと違ってもっと綺麗で高いところで留まっていればいいんだ! こっち来んなよ! 馬鹿! ブス!」
いつの間にか泣きながら小雪がさくらの胸を叩いた。
さくらは、自分を助けてくれた小雪の小ささに、今更気付いた。
「ごめん……助けてくれてありがとう。私馬鹿だった」
「馬鹿だよ……」
「うん」
さくらが優しく、小雪を抱きしめた。
空が白けるまで、いつまでも二人はそうしていた。
「多分」
歓楽街から少し離れた小さな公園。
二人は手を繋いだまま、ベンチに座っていた。
「なんで」
さくらがそれだけを小雪に向けて言った。
「たまたま、あんたが厄介な事に巻き込まれている事を知った。あのクラブは何度も行ったし、隠し扉の事も知っていた。それだけ」
「なんで……なんで私を助けたの?」
小雪がぎゅっとさくらの手を握った。
「あんたが嫌いだ。この世で一番嫌いだ。傲慢で、あたしの持っていない物をいっぱい持ってて」
「……」
「あたしはね、自分も嫌いなの。可愛くないし、スタイルも悪い。だけどね、だからこそあたしは綺麗な物や美しい物が好きなの」
小雪の声は震えていた。彼女が思い出すのは、初めてさくらと出会った時の事だ。
「あんたは、綺麗だ! 初めて会った時にあたしは感動したんだ! こんなに綺麗な人がいるんだって!」
小雪が叫ぶ。
「嫌なんだよ! あんたみたいな綺麗なのが、あたしのいる底辺に来るのが! しかもあたしのせいで! あんたはあたしと違ってもっと綺麗で高いところで留まっていればいいんだ! こっち来んなよ! 馬鹿! ブス!」
いつの間にか泣きながら小雪がさくらの胸を叩いた。
さくらは、自分を助けてくれた小雪の小ささに、今更気付いた。
「ごめん……助けてくれてありがとう。私馬鹿だった」
「馬鹿だよ……」
「うん」
さくらが優しく、小雪を抱きしめた。
空が白けるまで、いつまでも二人はそうしていた。
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