前々前世オンライン 〜前世スピノサウルスだった私、ラスボス扱いされてて泣きたいけど鳴くしかできないから代わりに全プレイヤーを泣かしてやる

虎戸リア

文字の大きさ
61 / 73
【VerΑ編第3章〜大竜星祭】

61話「VSジュエリーフィッシュ戦」

しおりを挟む

 物陰から覗くと、さっきの四人組がいた。何やら揉めているようだ。

「ラノア、あの白ロリはユーナが倒すからそれ以外のキャラを倒して欲しいにゃん」
「でも、ユーナちゃん、あいつの光が……」
「大丈夫にゃん。トリックが分かれば……どうということはないにゃん。ラノアはいつも通り、戦えばいいにゃん。これを渡しておくにゃん」

 そういってユーナちゃんが渡してくれたのは……限りなく透明に近い緑色のサングラスだった。しかもなんか凄くオシャレだ。そういえばユーナちゃん着ている服もこだわっているようだしオシャレアイテムはいつも常備しているのだろう。

「サングラス?」
「結局、悪さをしているのは光にゃん。ならば、一部でもカット出来れば……効かないにゃん」
「なるほど!」
「援護は任せろにゃん。ラノアは思う存分後ろを気にせず戦えばいい。あいつらは、視覚毒さえ無ければ雑魚にゃん。ただ、一体毒持ちがいるから気を付けるにゃん。まあそいつは真っ先に狙撃してやるにゃん」

 ユーナちゃんが自信満々で日傘を構えた。

「分かった! ユーナちゃんは遠距離攻撃するってことだね?」
「そうにゃん、じゃあ行動開始にゃん」

 そう言って、ユーナちゃんが慣れた感じに、後ろにあった高台となっている鉄塊をするすると登っていく。
 でもユーナちゃん、武器持ってないんだよね。どうやって攻撃するんだろう?

 『準備おっけーにゃん^^』というメッセージが来たので、私は武器を構え直した。

 とにかく、ああ言うからにはきっと大丈夫だろう。現に一度助けられている。私はユーナちゃんを信じる!

 私はサングラスを装備すると、少しずつ速度をあげて、その四人組へと突撃する。

 あの白い少女が相変わらずピカピカ光りながら、何やら呆れたような表情を浮かべている。私の存在に気付いた、中性的な顔立ちの少年が慌てたように武器を構えた。

「敵襲だ!」
「はあ……こんな野蛮なゲームだなんて……知らなかったわ」
「パプリカさん! いつも通りお願いします!」
「……あなたたち、これが終わったらちゃんと説明していただきますからね」
「はい……」

 未だにのんびりとしている少女と、武器を構える3人。

 最初に目の前に飛び出てきたのは、肩幅が広めなこれまた中性的な青年だった。頭上にはカイリと表示されている。もっている武器は、銛のような形をした槍だった。

「っ! パプリカさん対策してる!」

 カイリさんがそう言いながら銛を突き出そうとした瞬間。背後で、空気が破裂したような音と、飛来音。

「きゃっ!」

 乙女っぽい悲鳴を上げるカイリさんの顔に、矢というより先端に返しがついたダーツのような物が刺さり、それと共に青黒いオーラに包まれた。彼女? のHPゲージが削れ、更にその横に盾と下向きの矢印が付いたアイコンが表示された。

「下がって! あれに当たると防御ダウンのデバフが付与さ——くっ!」

 次々と背後から聞こえるパンッ、という破裂音。それと共に、ダーツが私以外のプレイヤーへと刺さっていく。

 凄い、あれきっとユーナちゃんの攻撃だ!
 攻撃が止んだと同時に、私は地面を蹴った。

「とりゃああああ!」

 私は目の前に迫るカイリさんへと回転するように斧槍を薙ぎ払った。

「ええ?」

 一撃でHPが半分以上削れたカイリさんが驚愕の顔を浮かべたまま、もう一回転して襲いかかる私の斧槍をまともに受けて消失。

 回転の遠心力のまま、私は再び突撃。白ロリ少女を守るように、立つ2人。2人とも、頭にクラゲのかさを被っているが、それぞれ種類は違うようだ。

「くそ、チートだろ! 連射できる遠距離武器は実装されてないぞ!」

 中世的な少年——頭上に“破隕”と表示されているプレイヤーが、そう叫びながら、私と、ユーナちゃんの攻撃、どちらに注意を向ければいいか迷っている。

「あれはおそらく前世固有スキルでしょう。飛び道具の連射……見た目に反映されない前世……まさか」

 冷静にそういって、短剣を顔の前に構えているのは、K&Cと表示されているプレイヤーだ。

「なんでもいいけど、なんとか出来ないのか!」

 破隕——ぱいんと読むのかな? とにかく破隕君が叫ぶ。

「さっきはよくもおおお!!」

 私はそう言いながら斬り込む。2人の背後で相変わらずピカピカ光っている白ロリの少女がやれやれとばかりに首を振っているのが見えた。

「くそおおおここまで来て負けられるか!」

 私の斧槍を、破隕君が受けた。必死な形相で、私の一撃を受け流した。

 おお、結構強いねこの子。

「その通りです! 援護します!」

 K&Cさんがナイフ持って、横から斬りかかってくる。その動作に赤い光を纏っているところを見ると、スキルのようだ。

 ナイフが緑色のモヤを纏っているのが分かる。あれは、毒を付与しているのかな?

「っ! 邪魔ですね!!」

 しかし、迫るK&Cさんに再びダーツが飛来する。背後で連続する破裂音が頼もしい。動きが鈍ったK&Cさんへと私は受け流された斧槍を突き刺す。

「こっちががら空きだぞ!」

 私の横腹へと剣を薙ぐ破隕君だったが、私は気にせずそのままK&Cさんへと連撃を叩き込む。

「げっ! 全然ダメージ通らねえ!」
「まずいです! これ耐えられません!」

 一瞬でHPゲージが1割を切ったK&Cさんがバックステップ。
 しかし、それをユーナちゃんが予測していたのか、ダーツが飛来し、頭に命中。

「まさか微生物前世持ちにやられるとは……油断しました……すみません」

 ダーツによるとどめの一発が当たる瞬間にK&Cさんはそう言って、命中と同時に消失した。

 あと2人!

 というときに、あの白ロリ少女——みればパプリカと表示されている——が光るのを止めて手を打ち、こう言い放った。

「これまでです。双方武器を納めなさい。もう、止めましょう。見ていられません。そちらのお嬢さん方、わたくしと彼は降参します。ですので、どうか」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件

☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。 しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった! 辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。 飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。 「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!? 元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...