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1章:グラスフェアリー編
4話:光る羽
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「へーこんなところあったんだ」
私は細い路地の少し開けた場所で立ち止まった。木屋町と先斗町の間にあるこの路地の両側には飲食店やよく分からないお店の看板が並んでいたが、まだ時間が早いのか、それとも営業を自粛しているのか、お店は全て閉まっていた。
「ここがどうも匂うんだよねえ。あ!」
前を行くルナがキョロキョロとその広場を見渡すと、南側にある階段へと向かった。
「どうしたの?」
「ツグミ、これ見て」
ルナが階段の下の床を指差した。そこは、他の地面と比べ黒く変色した跡があった。まるで水たまりのような、何か。そしてそこから少し離れた場所にも点々と黒い跡が付いていた。
ルナが地面を眺めながら声をかけてきた。
「これ、もしかして血の跡か?」
「どうかな?元々あった汚れかもしれないよ」
ルナが視線を上げた。そして階段の方をじっと見ていた。
「ルナ?」
「なんか見られているような」
「? そう? 誰もいないと思うけど」
「気のせいか……あれ? そこの壁」
ルナが指差した壁。そこは埃や油汚れで汚れていたが、一部分だけ、角の辺りが長方形の形に跡が付いていた。ルナが近付き、その跡に触れる。
「ここだけ埃が取れてる」
「ほんとだね。何か貼ってあったのかな?」
「きっとテープか何かだ」
ルナは、その跡の直線上を見つめた。その角の路地を挟んだ反対側の同じ高さの壁面。そこにも同じように何かが貼ってあった跡があった。
「ツグミはどう思う? もしかしてここが殺人現場で、あのテープの跡はほら、よくある立ち入り禁止のテープを貼った跡」
ドラマとかでよく見る黄色のテープだろうか? でも実際そんなものを見たことがないし確証はなかった。でももしここがその現場であったのならば、そうであってもおかしくはない。
「言われて見れば確かにそうかも。でも、もう警察が調査した後でしょ? 何も見つからないと思うけど」
「そりゃあそうだけど。でも、なんか、ある気がする」
「ルナって霊感とかそんなんあったっけ?」
「ないよ。幽霊も見たことないし。ただ、そうじゃないのはなんとなく分かる」
ルナが、首からぶら下げている石を両手で包み、目を閉じた。まるで、何かに祈りを捧げるかのように。
するとどこからかパリンという何かが割れる音が聞こえた。まるで薄いガラスが割れるような、そんな音。
「え?」
私は辺りを見渡した。頭上から微かに、何かが羽ばたく音が聞こえる。
私は上を見上げた。暗くなった空が遠くに見え、その下に何かキラキラ光る物がたくさん飛んでいた。虫のような何かが群れているかのようだ。それは、ビルの間に差し込む夕陽を受け、まるで万華鏡を覗き込んだ時のように、光が蠢いていた。
「ルナ、何あれ」
私はルナに思わず声をかけ、上を指差した。ルナは既に目を開けており、同じく頭上を見上げていた。もう一度私も視線を上げる。
しかし先ほどまでいたはずの透明なキラキラは、もう消えていた。
「今のは……?」
「ルナも見えた? なんかキラキラした物が飛んでいたよ」
「一瞬だけど見えた。なんだろ、あれ。虫か?」
そして――突如、第三者の声が響いた。それは低い、男性の声だった。
「虫か、言い得て妙だな」
あまりに上に夢中だった。私は視線を並行に戻した。そしてようやく、ビルの階段のところに一人の男性が座っていることに気付いた。
「いやいや、まさかまさか、結界を破られるとはな。お前、なにもんだ?」
私は細い路地の少し開けた場所で立ち止まった。木屋町と先斗町の間にあるこの路地の両側には飲食店やよく分からないお店の看板が並んでいたが、まだ時間が早いのか、それとも営業を自粛しているのか、お店は全て閉まっていた。
「ここがどうも匂うんだよねえ。あ!」
前を行くルナがキョロキョロとその広場を見渡すと、南側にある階段へと向かった。
「どうしたの?」
「ツグミ、これ見て」
ルナが階段の下の床を指差した。そこは、他の地面と比べ黒く変色した跡があった。まるで水たまりのような、何か。そしてそこから少し離れた場所にも点々と黒い跡が付いていた。
ルナが地面を眺めながら声をかけてきた。
「これ、もしかして血の跡か?」
「どうかな?元々あった汚れかもしれないよ」
ルナが視線を上げた。そして階段の方をじっと見ていた。
「ルナ?」
「なんか見られているような」
「? そう? 誰もいないと思うけど」
「気のせいか……あれ? そこの壁」
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「ここだけ埃が取れてる」
「ほんとだね。何か貼ってあったのかな?」
「きっとテープか何かだ」
ルナは、その跡の直線上を見つめた。その角の路地を挟んだ反対側の同じ高さの壁面。そこにも同じように何かが貼ってあった跡があった。
「ツグミはどう思う? もしかしてここが殺人現場で、あのテープの跡はほら、よくある立ち入り禁止のテープを貼った跡」
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「言われて見れば確かにそうかも。でも、もう警察が調査した後でしょ? 何も見つからないと思うけど」
「そりゃあそうだけど。でも、なんか、ある気がする」
「ルナって霊感とかそんなんあったっけ?」
「ないよ。幽霊も見たことないし。ただ、そうじゃないのはなんとなく分かる」
ルナが、首からぶら下げている石を両手で包み、目を閉じた。まるで、何かに祈りを捧げるかのように。
するとどこからかパリンという何かが割れる音が聞こえた。まるで薄いガラスが割れるような、そんな音。
「え?」
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「一瞬だけど見えた。なんだろ、あれ。虫か?」
そして――突如、第三者の声が響いた。それは低い、男性の声だった。
「虫か、言い得て妙だな」
あまりに上に夢中だった。私は視線を並行に戻した。そしてようやく、ビルの階段のところに一人の男性が座っていることに気付いた。
「いやいや、まさかまさか、結界を破られるとはな。お前、なにもんだ?」
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