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二人台本↓
「もしも、死んだら」(比率:男1・女1)約15分
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男:♂
女:♀
・所要時間:約15分
ーーーーー
3月下旬の夜。長く長く続く石段の先にポツンと立っている神社。男が賽銭箱の前に腰を下ろし、空を見上げている。空は雲ひとつなく、星々がキラキラと輝いている。
女「あっ、やっぱりここにいた!」
男「ん?」
女「おっす。」
男「おっす。どうしたんだよ?」
女「あんたこそ、なにしてんの?」
男「聞かなくてもわかるだろ?」
女「おう。今日も綺麗に輝いてますな、星たちは。」
男「なにしにきたの? 邪魔しにきたの?」
女「邪魔ってなんだ、邪魔って。私も見にきたんだよ。」
男「星を?」
女「おう。」
男「ふーん。」
女「なんだよ? なんか言いたげだな?」
男「別に。座れば?」
女「う、うん。」
女は、男の隣へと歩いていく。腰を下ろし、空を見上げる。
男「......。」
女「...綺麗だね。」
男「やっとお前にも、良さがわかったか?」
女「やっとってなんだ? やっとって?」
男「「星なんて見ても、つまんない。ジッと見て、なにが面白いの?」って言ってたの、忘れねぇぞ。」
女「わ、忘れろ! あの時は、まだ子どもだったの!」
男「今も、子どもじゃん。」
女「もう、大人だわ! 少し前に高校卒業したし、もう大人だわ!」
男「んじゃ、俺も大人だな。酒、飲むか。」
女「やめろ、飲むな。お前はまだ子どもだ。」
男「俺も、つい最近高校卒業しましたけど?」
女「はいはい、そうですねー。おめでとうございまーす。」
男「お前は、相変わらずだな。」
女「はぁ?」
男「全然変わんないな。」
女「んなっ!? そ、そんなことないでしょうが! 私だって、前に比べたら変わってるだろうが! 大人っぽくなったし、可愛く綺麗になったでしょうが!」
男「ほぉ? どこら辺が?」
女「あームカつく! めちゃくちゃにムカつく!」
男「あのさ、少し静かにしてくれない?」
女「あんたが喧嘩売ってきたんでしょうが!」
男「あーはいはい、そうですねー。ごめなさいねー。」
女「ったく...。」
二人は、空を見上げる。
男「んで、なにしにきたの?」
女「だから、星見にきたんだっての。話聞け。」
男「嘘つき。」
女「嘘じゃない。」
男「よくやるよな、お前も。」
女「嘘じゃないっての! ホントに星を見にきたんだってば! ほら、その証拠に...これ、見ろ! 双眼鏡持ってきてるでしょ!」
男「そこは、望遠鏡じゃないのかよ。」
女「あんなデカイもん、持って来れるか!」
男「貸して。」
女「はいはい。」
男は、女から双眼鏡を借り、空を眺める。
男「...なんも見えないわ。」
女「見える見える。お前の心が汚いから見えないだけだわ。」
男「お前よりは綺麗だわ。」
女「いや、私の方が綺麗だね。あんたのこと、心配して探しにきたんだよ? ほら、綺麗じゃん。こんな綺麗な心の持ち主は、そういないぞ。」
男「ほら、星見にきたんじゃないじゃん。」
女「あっ...お前、やりやがったな...!」
男「なんもしてねぇよ。自爆しただけだろ。」
女「うるさい、バカ。」
女「...心配してたよ。」
男「わかってる。」
女「わかってるなら、一言言ってから来なよ。」
男「わかってる。」
女「わかってないから言ってんの。」
男「......。」
女「私たちさ、もう大人になるんだよ? 大人の仲間入りするんだよ? いつまでもいつまでも、子どものままじゃいられないんだよ? だからさ、もっと色々と考えなって。周りのことも、自分のことも。」
男「......。」
女「まだ、夜は寒いんだからさ。身体、壊しちゃうよ?」
男「......なぁ。」
女「なに?」
男「お前はさ...死んだらどうなるんだろう?って、考えたこと...ある?」
女「......。」
男「...最近さ、電気消して、布団に入って、目を閉じて...真っ暗で、無音で、誰もいなくて...。もし、死んだら...ずっとこんな感じなのかなぁってさ。」
女「...そういうことは、考えなくていい。」
男「さっき、色々考えろって言ったの誰だよ?」
女「知らん。」
男「大人だろ? 自分の言葉に責任持てよ。」
女「うるせぇ。」
男「うるさくない。」
女「......考えたことないわ。」
男「はい?」
女「死んだ後のことなんて、考えたこともないわ。そんなこと考える時間があるなら、楽しいこと考えろ。」
男「たとえば?」
女「美味しいご飯を食べる。映画館に行く。ショッピングする。テレビ見る。漫画読む。電話する。メールする。」
男「それ、楽しい?」
女「めちゃくちゃに楽しい。好きな人となら、もっともっと楽しくなる。好きな人と一緒に、美味しいご飯食べて、一緒に映画館行って、一緒にショッピングして、テレビ見て、漫画読んで、電話して、メールして......一緒に星、見たりしてさ...。」
女「好きな人と一緒だったら、楽しいことは、もっともっと楽しくなる。つまらないことも、楽しくなる。次はどうしよう、なにしようって、考えることがいっぱいだから...死んだらなんて、考えてる時間なんてないわ、ボケ。」
男「......。」
女「だから、だからさ...死んだら、とか...言わないでよ...。言わないでよ...。あんたがいなくなったらって、考えちゃうじゃん...バカ...。」
男「...お前、ほんと頑固だよな。」
女「お前の方が頑固だわ!! バーカ!!」
男「...何度も言わせんなよ。」
女「お前こそ、何度も言わせんなよ。私は、あんたのこと...大好きだよ。」
男「...俺も、お前のこと大好きだよ。だからこそ、迷惑かけたくない。こんなデカイ荷物、背負わせたくない。」
女「荷物じゃない。」
男「まだまだ若いんだからさ、しっかりちゃんとこれからのこと考えろよ。」
女「ジジイみたいなこと言うな。これから先、なにがあっても支えてあげる。」
男「絶対、大変だぞ? 辛いぞ? 投げ出したくなるぞ?」
女「わかってる。んなこと、言われなくてもわかってる。この先、絶対大変だって...しんどいって、辛いって...。でもさ、私は大人だから、これから先のこと、考えて...しっかり考えて、言ってんの。」
女「私は、あんたと離れ離れになった方が、絶対に辛くて、しんどいから。」
男「...ホント、バカだよな。」
女「バカはお前だ。」
男「...絶対だな?」
女「絶対だ。あの星に誓ってやる。」
男「どれだよ?」
女「あれ! あと、あれとあれと...あれ! あそこのやつも! 今見えてるやつ、ぜーんぶ!!」
男「なんだ、それ? バカみたい。」
女「うるせぇ。私の好き、伝わったか?」
男「...おう。嫌ってほど伝わった。」
女「やっとかよ。」
女「ほら、帰ろ。あんたのお父さんとお母さん、心配してるよ。」
男「はぁ...帰ったら怒られるかな...?」
女「黙って出てったんだから、当たり前だろ。仕方ないから、私も一緒に謝ってやる。これから息子さんを精一杯支えていきますって挨拶もしなきゃだしね。」
男「やめろ。」
女「やめません。決めましたので。絶対に言います。」
男「ホント、バカだなお前。」
女「バカじゃない、かわいいだろ。」
男「...なぁ。」
女「なに?」
男「...ありがと。」
女「そんな言葉はいらん。生きてくれれば、それでいい。私よりも、長生きしてくれればね。」
男「それは、無理だな。」
女「無理じゃねぇ。」
男「無理。」
女「無理じゃない!」
男・女「(笑う)」
数年後、夜。長く長く続く石段の先にポツンと立っている神社。男が賽銭箱の前に腰を下ろし、空を見上げている。空は雲ひとつなく、星々がキラキラと輝いている。
女「...やっぱり、ここだよね。あんたは。」
男「ん?」
女「夜はまだ冷えるってのに...バカだよね。」
女は、男の隣に腰を下ろす。
男「バカって言うな、バカって。なにしにきたんだよ?」
女「...星、綺麗だね。」
男「おう。綺麗だな。」
女「...あのさ、「星よりもお前の方が綺麗だよ。」って、気の利いた言葉、言えないの?」
男「言うか、バカ。」
女「せっかく化粧して、気合入れてきたってのにさ。」
男「あーはいはい、綺麗だよ。これで満足ですか?」
女「......。」
男「おい、怒んなよ。ごめんって。」
女「...どれだっけ?」
男「なにが?」
女「どの星に、誓ったんだっけ?」
男「...あぁ、あれね。」
女「どれだっけ? 多すぎて忘れちゃったわ。」
男「全部だ、全部。今見えてるもん、全部だよ。」
女「......。」
男「...だから、言ったじゃん。辛いって、投げ出したくなるって、大変だって。」
女「後悔なんて、してないよ。バカ。」
男「...バカはお前だろ、バカ。」
女「あと、勘違いすんなよ。星を見に来ただけで、お前に会いにきたわけじゃないから。」
男「嘘つけ。」
女「ほら、双眼鏡持ってきてるでしょ。」
男「でた、双眼鏡。」
女は、双眼鏡で空を見上げる。
女「...見えるじゃん、星。なにが見えないだ。やっぱり、あんたの心は汚れていたんだな。」
女は双眼鏡を覗いたまま、隣を見つめる。
女「...やっぱり、見えないか。いくら心が綺麗でも、見えるわけないか...。なんも、見えないわ。」
女「...あぁ、そうだよ。辛いよ、しんどいよ...。言ったじゃん、私... 「私は、あんたと離れ離れになった方が、絶対に辛くて、しんどいから。」って...。」
女「はぁ......しんど。」
女「......おい、なんとか言えよ。最愛の女が、凹んでるぞ? 大丈夫かって言いにこいよ...。早くこいよ...。」
女「...ねぇ、もしも...もしも、死んだらさ......あんたに、もう一度会えるかな...?」
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