なんでも探偵部!

きとまるまる

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215話「夏と恋と祭りと花火④」

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 関のいる屋台から離れ、数十分が経過した頃ーーー頬に青のりを少量つけた張間は、獲物を探す飢えた肉食獣のような視線で辺りの屋台を物色している。


張間「次はどいつを食ってやろうか...!? がるるる...!!」

狗山「お前、めちゃ食うっすね。俺の焼きそばも食いやがるし...。」

張間「食べるのが遅い羽和ちゃんが悪い!!」

北台「ねぇ、私そろそろ食べ物以外の屋台回りたいんだけど。」

張間「えぇ、私はもうちょっと食べたい~!」

北台「どんな胃袋してんのよ、あんたは...。ってか、あんだけ食べてその体型って、おかしいでしょ...。」

狗山「ほんとっすよ。どうなってんすか、お前の身体は?」

張間「食べたら食べた分、動いてますから!」

西田「たしかに。張間さんはずっと動いてるイメージだよね。」

狗山「常日頃からうるさいっすから、しっかりちゃんとエネルギー消費してるんすね。」

張間「うるさいとはなんだ、うるさいとは!」

狗山「そういうところっすよ。」

西田「だね。」

北台「とにかく、私はこれ以上胃に入んないわよ。」

張間「えぇ~。じゃあ、どうする?」

北台「二手に分かれる? 遊ぶ組と食べる組で。」

張間「おっ、ナイスアイデア! そうしましょう!」

西田(二手に分かれる...こ、これは絶好のチャンスだ!)

狗山(...西田からめちゃ視線が...。仕方ねぇ、手伝ってやるっすか。)

狗山「んじゃ、俺は遊ぶ組に行くっすよ。腹減ってないし。それでいいっすーーー」


 ぐぅぅぅ...!という大きな音が、狗山の言葉を遮る。


狗山「......。」

張間「羽和ちゃん...腹が...なんだって?」

狗山「だ、だから、俺は別に腹減ってーーー」


 狗山の腹の虫が、空気を読まずにまた音を奏でる。顔がみるみる赤く染まっていく。


張間「口ではそう言ってるけど、身体は正直だね、羽和ちゃん...!」

狗山「そ、その言い方やめろっす!」

張間「それではでは~羽和ちゃんは私と一緒にお腹を満たそうね~~!」

狗山「へ? あっ、ちょっ、ま、待てっす! 待ってってーーー」

張間「んじゃ、北台ちゃんと西田くんは、二人っきりで楽しんでねぇ~! ばいば~い!!」

北台「食べ過ぎないようにねー。」

狗山(すまねぇ、西田...! 俺に恋のキューピッドは、早かったみたいっす...!)

西田「......。」

北台「聖也くん。」

西田「な、なに?」

北台「私、張間になんかしてほしいとか何も言ってないからね。」

西田「なんか言ってた方が、まだ嬉しかったかなぁ...。」

北台「まぁまぁ、今日はこういう運命だったってことで。切り替えていこ。切り替え、大事だよ。」

西田「そ、そうだね...。」

北台「安心して、聖也くん。私が張間といる時以上に、楽しませてあげるから。」


 北台は西田の袖を軽くつまむと、早く行こうと言わんばかりに軽く袖を何度も引いた。
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