なんでも探偵部!

きとまるまる

文字の大きさ
上 下
295 / 330

295話「相手にしたことは、いつか自分に返ってくるからね⑥」

しおりを挟む

 相手のミスもあり、2対1という有利な戦況を作り上げた遊部チーム。
生き残っている不知火と立花は、固まって行動している。


立花「...夏帆先輩、こっちにはいません。」

不知火「よし。地味男、あと何分?」

立花「あと...10分切りました!」

不知火「よし。このまま逃げ切れば、人数差で私たちの勝ち。あのうるさいのを見つけたら、全力で逃げなさい。わかった?」

立花「僕は最初から逃げですよ!了解です!」

立花「でも、まさかここまで張間ちゃんと一度も会わないなんて...張間ちゃん、動き回ってそうだし、奇跡的に僕らとすれ違い起こしまくってるのかな?」

不知火「......。」

立花「夏帆先輩、どうしました?」

不知火「地味男、グラウンドの中央に向かうわよ。急いで。」

立花「え? あ、はい! でも、なんでグラウンドの中央に?」

不知火「この遊びの勝利条件は「時間内に敵全てを倒す」か「タイムアップ後の生存者の数」で決まる。今は、2対1...このままいけば、私たちの勝ち。だから、あのバカは何がなんでも私たちを倒さないといけない。」

立花「そうですけど...それならば、グラウンドなんてバレバレなところ行かず、どこかに身を隠してた方がーーー」

不知火「地味男はほんとバカね。いい?向こうは「戦う」という選択肢しかできないのに対して、私たちは「戦う」と「逃げる」を選択できる。グラウンドという広い場所のが、そのどちらも選択しやすいでしょうが。」

不知火「それに、グラウンドだと隠れるところがないから、あのバカは正面から来る以外の方法がない。私たちがあのバカを挟む形をとれれば、どちらかが攻撃されてる間に片方が安全にバカの頭上を攻撃できるでしょ。」

立花「確かにまぁ、へたに校舎とかにいたら奇襲される可能性もあるかもだし。遠距離からの攻撃がない以上、見通しの良いグラウンドにいた方が安全ですね。さすが、夏帆先輩。」

不知火「そうと決まれば、さっさと移動するわよ。」

立花「は、はい!」

不知火(勝負は最後まで何が起こるかわかったもんじゃないけど...今現状、どう考えてもあのバカの勝率は限りなく低い。今どこで何してんのかわかんないけど、グラウンドにさえ出れば私たちのーーー)

張間「隙ありぃぃぃぃ!!」

不知火「んなっ!?」
立花「えぇ!?」


 突然聞こえた張間の声に、二人は慌てて背後へと振り返る。
頭上や肩、腹部やらに葉っぱをつけた張間が、プニプニバットを振りかざしながら不知火めがけ突っ込んでいく。


立花「夏帆先輩!!」


 不知火を守るように前に立ち、バットを構える。が、張間は止まることなく勢いそのままに立花の頭上へとバットを振り抜く。

突然の出来事で慌てて構えられたバットに力はなく、張間の力いっぱい振り抜かれたバットに何も抵抗することは出来ず、紙風船が割れる音と共に宙へと飛び上がっていく。


立花「嘘ぉぉぉ!?」

張間「まずは、一人...! はーーっはっはっは~!!」

不知火「ちぃ...!!」

張間「まんまと私たちの作戦に引っかかりおって、このバカどもめ! 貴様たちがグラウンドに行くことなんて、最初からわかっておったわ!!」

立花「え、なんで!? なんでバレて...というか、もしかして張間ちゃん、ずっとここに隠れてたの!?」

不知火「そんなわけないでしょ、バカクソ地味男! あのバカに、そんなことできるわけないでしょうが! クソ役立たず!!」

立花「めちゃくちゃな言われよう!! 僕、身体張ってあなたを守ったんですけど!?」

不知火「あれくらい、避けられるわ!!」

立花「それはマジですいませんでしたぁぁぁ!!」

張間「おいこら、夏帆先輩!! 私のこと、バカって言いましたね!? 私、見逃しませんよ! 見逃しませんからね! 許しませんからね!」

不知火「うっさい、バカ!!」

張間「バカって言う方がバカなんですぅぅ! バーカ!バーーカ!!」

不知火「あんたも言ってんじゃないの! バカ!アホ!バカ!」


 プニプニバットを振り回すことなく、バカという言葉を投げつけ合う二人。
そんな醜い争いをする二人を、柱の影からひょっこりと顔を出して見守る、脱落した面々たち。


関「ね、私の言った通りでしょ?」

暁「マジでグラウンド行こうとして、やられてんじゃん。行動読まれすぎかよ。」

笹原「すごっ...! よくわかりましたね、関先輩!」

百瀬「張間ちゃんがじっと静かに待てるかが不安点でしたけど、上手く作戦が決まってよかったですね!」

間宮「隙ありとか叫んで、隠れてた意味なくしましたけどね...。あれがなければ二人とも倒せてたかもしれないのに、何やってんだか...。」

五十嵐「まぁでも、これで両チーム一対一で逃げも隠れもできなくなった。面白くなってきたなぁ~! お前ら、どっちが勝つと思う? 俺は、張間ちゃんだなぁ~!」

暁「俺も。流れ的には探偵部チームですよね。」

笹原「いやいや、何言ってんのよ! 遊部チームが勝つに決まってんでしょ! 夏帆一択!!」

百瀬「私は、自チームの探偵部チームを応援しま~す。」

関「私も。頑張れ、張間くん!」

間宮「張間さんがなんかやらかして、夏帆ちゃんが勝つに一票。」

五十嵐「張間ちゃん四票、夏帆に二票か。さてさて、どうなるのやら...楽しみだなぁ~!」



張間「さぁ...そろそろ決着をつけましょうか、夏帆先輩...!」

不知火「あんたをぶっ倒して、コスプレ回避してソフトを手に入れる...!」

張間「夏帆先輩にコスプレさせて、なんでも探偵部の株をあげる...!」

張間「いざ...!」

不知火「真剣に...!」

張間・不知火「勝負ぅぅぅぅ!!」


 互いに地を強く蹴り上げ、目の前の敵へと距離を縮めていく。真っ直ぐに敵だけを見つめ、一撃で仕留めるためにーーー


張間「んおぉぉ!?」


 真っ直ぐに不知火だけを見つめて駆けていた張間は、立花が落としたプニプニバットが足元にあることに気づくことなく、力任せに踏みつける。

バットは張間の踏みつけに屈することなく、圧を分散させようと地を少し転がっていく。張間は突如崩れたバランスを整えることはできず、勢いそのままに体勢を崩すと、背中から地面へと叩きつけられる。


暁「は、張間ちゃぁぁぁぁん!!」

笹原「あ、あれは、痛い...!」

間宮「ほら、言った通りじゃん...。」

百瀬「さすが間宮くん、すごいですね!」

関「これだから、猪突猛進ガールは...。」

五十嵐「エンターテイナーだな、張間ちゃんは~! あっははは~!」



不知火「ざまーみろ、バカ!! このまま一気に、ぶっ叩ーーー」

張間「させるかぁぁぁぁぁ!!」


 張間の頭めがけて振り下ろされるバットーーー張間は体勢を立て直すことなく、両足を振り上げ迫り来るバットを両側から挟み受け止める。


不知火「んなっ!?」

笹原「なんてこったぁぁぁぁ!? 張間ちゃん、まさかまさかの足で真剣白刃取りを!!」

百瀬「すごいですね、張間ちゃん。」

間宮「さすがの運動神経...。」

関「しかし、あのままでは反撃もできないしパンツが丸見えだ! このままではーーー」

暁「な、なにぃぃぃ!? パ、パパパパパンツゥゥ!?」

五十嵐「くそっ! 先ほどから凪たちが邪魔してくるのは、そういうことだったのか! えぇい、そこを退けぇぇい! 早く見せんか!熱き戦いを...少女たちの熱きバトルをぉぉぉぉ!!」


不知火「この...くそ...!!」

張間「ふぬぬぬぬ...!」

不知火「いいから...さっさと、楽に...なれぇぇぇ...!!」

張間「なって...たまるかぁぁ...!! ぬぐおぉぉぉぉぉぉ!!」


 張間は、勢いよく身体に捻りを加える。

突如として横方向へ大きく力が加わったプニプニバットーーー


不知火「しまっ...!?」


 不知火は横の力に対応することができず、大きくバランスを崩し地に膝をつく。


張間「もらったぁぁぁぁ!!」

不知火「させるかぁぁぁぁ!!」


 互いに崩れた体勢を即座に立て直し、お互いの頭上めがけてバットを振り抜く。

 紙風船が勢いよく破裂する音が、校内に一つだけ響き渡った。
しおりを挟む

処理中です...