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1章《赦されざる者たち》
10話 リリスSide後編「愛憎の芽吹き【凍りついた心】」
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その後も毎日来ては、食事をさせようとする皇帝にリリスは鋭い視線をなげて
「離縁して国に返してくれるなら、それが一番。でも、それが叶わないのなら、せめて国元から侍女を呼び寄せて。そうでなければ……私は、もう食事を取らない」
「……そんなことをして、どうなる」
「死ぬわ。お姉様にした事と同じように。……それがこの国のやり方でしょう?」
静寂。皇帝の背後に控えていた侍従の顔が引きつる。その中の一人が思わず声をあげた。
「陛下、何卒――」
「黙れ」
皇帝の一喝が響く。リリスの瞳が揺れた。それは、恐れではなかった。かつて愛する姉が閉じ込められた塔で、最後に聞いたであろう声と同じ響きに――怒りが募った。
「今まで、誰もお姉様を救おうとしなかった。だから私は、誰も信用しない。何も、許さない」
リリスの言葉は明確だった。そこに、皇帝と"和解"の気配はない。皇帝はそんなリリスを痛ましげに見て、静かに話し始めた
「この話は お前には黙っていようと思ったが、結論から言わせるとお前の国から 侍女を連れてくることは絶対にない。信用できないからな。」
「私がお前を嫁に欲しいと言った時にお前の国はセレナをリリスだと言って送ってきたのだ。そんな小細工はすぐにばれる。私は一目見てすぐに分かったので送り返そうとしたのだ。」
「お前の国はセレナが勝手に一人でやったことだから好きなように処分してくれと言ってセレナを拒絶した。そしてお前をすぐに こちらに嫁に出したのだ。」
「だからと言って私を謀った罪は消えはしない。たとえ嘘だとわかっていても正式な書面でセレナが一人で行ったことで国に責任はないと言われればセレナを罰するしかなかった。家臣や国民の手前 それはどうしても必要なことだった。」
「しかし セレナが悪いわけではないこともよくわかっていた。そのためにイラついていたのも事実だ。セレナに対して八つ当たり とも言える対応をしてしまったことを今更に後悔し申し訳なく思う。」
「言い訳にはなるが決して殺そうと思ったわけでもしようとしたわけでもない。全ては私の態度が招いた結果ではあるが 害そうとしたのではない」
「だから、許せと?」
「確かに、わが国も対応は間違っていたのでしょう。私の代わりにお姉様を嫁に出すなんて………。」
「だけどお姉様自体には罪がないと分かっていらしたのですよね?やはりあなたの対応が悪かったとしか言えないのではありませんか!」
「あなたが誤解をするような対応をするから、それに半年も思い出さなかったなんて……ありえません。」
「あなたはもしもお姉様が亡くなっていても許せと言うのですか?逃げ出せたのは、たまたまお姉様が運が良かっただけです。」
「そもそも、何故、私を嫁に望んだのです?一度も会ったことが無いのに!」
その責めを黙って皇帝は受けていた。
偶然手に入れリリスの絵姿……。一目惚れだった。何としても嫁に欲しい。皇帝の我儘だ。
多少強引ではあったがリリスの国は小国。あがらえないと承知の上での申し込みをした。しかし、リリスは大事にするしリリスの祖国にもそれなりの便宜や見返りはするつもりではあった。
それが……セレナの身代わり事件で、結果としてリリスをただの人質のような状態で嫁入りさせてしまった。
国を挙げて歓迎し皇帝も惜しみなく愛情を伝えたつもりだった。なのに……それすら信じては貰えない状況に皇帝はただ誹りを受けるしかなかった。
何を言っても弁解にしかならない。
話は進まなかった。皇帝は祖国の侍女は駄目だと譲らない。
リリスは結局妥協案として、この国の人間で無いことと王宮に勤めていない事を条件に侍女を許した。皇帝は危険だと反対したが頑として受け付けなかった。誰一人味方がいないと思い、信じられない敵地の中でたった1人で、それでも――彼女は生きていた。怒り、憎み、拒絶しながらも、諦めてはいなかった。
「離縁して国に返してくれるなら、それが一番。でも、それが叶わないのなら、せめて国元から侍女を呼び寄せて。そうでなければ……私は、もう食事を取らない」
「……そんなことをして、どうなる」
「死ぬわ。お姉様にした事と同じように。……それがこの国のやり方でしょう?」
静寂。皇帝の背後に控えていた侍従の顔が引きつる。その中の一人が思わず声をあげた。
「陛下、何卒――」
「黙れ」
皇帝の一喝が響く。リリスの瞳が揺れた。それは、恐れではなかった。かつて愛する姉が閉じ込められた塔で、最後に聞いたであろう声と同じ響きに――怒りが募った。
「今まで、誰もお姉様を救おうとしなかった。だから私は、誰も信用しない。何も、許さない」
リリスの言葉は明確だった。そこに、皇帝と"和解"の気配はない。皇帝はそんなリリスを痛ましげに見て、静かに話し始めた
「この話は お前には黙っていようと思ったが、結論から言わせるとお前の国から 侍女を連れてくることは絶対にない。信用できないからな。」
「私がお前を嫁に欲しいと言った時にお前の国はセレナをリリスだと言って送ってきたのだ。そんな小細工はすぐにばれる。私は一目見てすぐに分かったので送り返そうとしたのだ。」
「お前の国はセレナが勝手に一人でやったことだから好きなように処分してくれと言ってセレナを拒絶した。そしてお前をすぐに こちらに嫁に出したのだ。」
「だからと言って私を謀った罪は消えはしない。たとえ嘘だとわかっていても正式な書面でセレナが一人で行ったことで国に責任はないと言われればセレナを罰するしかなかった。家臣や国民の手前 それはどうしても必要なことだった。」
「しかし セレナが悪いわけではないこともよくわかっていた。そのためにイラついていたのも事実だ。セレナに対して八つ当たり とも言える対応をしてしまったことを今更に後悔し申し訳なく思う。」
「言い訳にはなるが決して殺そうと思ったわけでもしようとしたわけでもない。全ては私の態度が招いた結果ではあるが 害そうとしたのではない」
「だから、許せと?」
「確かに、わが国も対応は間違っていたのでしょう。私の代わりにお姉様を嫁に出すなんて………。」
「だけどお姉様自体には罪がないと分かっていらしたのですよね?やはりあなたの対応が悪かったとしか言えないのではありませんか!」
「あなたが誤解をするような対応をするから、それに半年も思い出さなかったなんて……ありえません。」
「あなたはもしもお姉様が亡くなっていても許せと言うのですか?逃げ出せたのは、たまたまお姉様が運が良かっただけです。」
「そもそも、何故、私を嫁に望んだのです?一度も会ったことが無いのに!」
その責めを黙って皇帝は受けていた。
偶然手に入れリリスの絵姿……。一目惚れだった。何としても嫁に欲しい。皇帝の我儘だ。
多少強引ではあったがリリスの国は小国。あがらえないと承知の上での申し込みをした。しかし、リリスは大事にするしリリスの祖国にもそれなりの便宜や見返りはするつもりではあった。
それが……セレナの身代わり事件で、結果としてリリスをただの人質のような状態で嫁入りさせてしまった。
国を挙げて歓迎し皇帝も惜しみなく愛情を伝えたつもりだった。なのに……それすら信じては貰えない状況に皇帝はただ誹りを受けるしかなかった。
何を言っても弁解にしかならない。
話は進まなかった。皇帝は祖国の侍女は駄目だと譲らない。
リリスは結局妥協案として、この国の人間で無いことと王宮に勤めていない事を条件に侍女を許した。皇帝は危険だと反対したが頑として受け付けなかった。誰一人味方がいないと思い、信じられない敵地の中でたった1人で、それでも――彼女は生きていた。怒り、憎み、拒絶しながらも、諦めてはいなかった。
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