愛されない王女は世界を壊す

夢花音

文字の大きさ
10 / 30
1章《赦されざる者たち》

10話 リリスSide後編「愛憎の芽吹き【凍りついた心】」

しおりを挟む
その後も毎日来ては、食事をさせようとする皇帝にリリスは鋭い視線をなげて

「離縁して国に返してくれるなら、それが一番。でも、それが叶わないのなら、せめて国元から侍女を呼び寄せて。そうでなければ……私は、もう食事を取らない」

「……そんなことをして、どうなる」

「死ぬわ。お姉様にした事と同じように。……それがこの国のやり方でしょう?」

静寂。皇帝の背後に控えていた侍従の顔が引きつる。その中の一人が思わず声をあげた。

「陛下、何卒――」

「黙れ」

皇帝の一喝が響く。リリスの瞳が揺れた。それは、恐れではなかった。かつて愛する姉が閉じ込められた塔で、最後に聞いたであろう声と同じ響きに――怒りが募った。

「今まで、誰もお姉様を救おうとしなかった。だから私は、誰も信用しない。何も、許さない」

リリスの言葉は明確だった。そこに、皇帝と"和解"の気配はない。皇帝はそんなリリスを痛ましげに見て、静かに話し始めた

「この話は お前には黙っていようと思ったが、結論から言わせるとお前の国から 侍女を連れてくることは絶対にない。信用できないからな。」

「私がお前を嫁に欲しいと言った時にお前の国はセレナをリリスだと言って送ってきたのだ。そんな小細工はすぐにばれる。私は一目見てすぐに分かったので送り返そうとしたのだ。」

「お前の国はセレナが勝手に一人でやったことだから好きなように処分してくれと言ってセレナを拒絶した。そしてお前をすぐに こちらに嫁に出したのだ。」

「だからと言って私を謀った罪は消えはしない。たとえ嘘だとわかっていても正式な書面でセレナが一人で行ったことで国に責任はないと言われればセレナを罰するしかなかった。家臣や国民の手前 それはどうしても必要なことだった。」

「しかし セレナが悪いわけではないこともよくわかっていた。そのためにイラついていたのも事実だ。セレナに対して八つ当たり とも言える対応をしてしまったことを今更に後悔し申し訳なく思う。」

「言い訳にはなるが決して殺そうと思ったわけでもしようとしたわけでもない。全ては私の態度が招いた結果ではあるが 害そうとしたのではない」

「だから、許せと?」

「確かに、わが国も対応は間違っていたのでしょう。私の代わりにお姉様を嫁に出すなんて………。」

「だけどお姉様自体には罪がないと分かっていらしたのですよね?やはりあなたの対応が悪かったとしか言えないのではありませんか!」

「あなたが誤解をするような対応をするから、それに半年も思い出さなかったなんて……ありえません。」

「あなたはもしもお姉様が亡くなっていても許せと言うのですか?逃げ出せたのは、たまたまお姉様が運が良かっただけです。」

「そもそも、何故、私を嫁に望んだのです?一度も会ったことが無いのに!」

その責めを黙って皇帝は受けていた。

偶然手に入れリリスの絵姿……。一目惚れだった。何としても嫁に欲しい。皇帝の我儘だ。

多少強引ではあったがリリスの国は小国。あがらえないと承知の上での申し込みをした。しかし、リリスは大事にするしリリスの祖国にもそれなりの便宜や見返りはするつもりではあった。

それが……セレナの身代わり事件で、結果としてリリスをただの人質のような状態で嫁入りさせてしまった。

国を挙げて歓迎し皇帝も惜しみなく愛情を伝えたつもりだった。なのに……それすら信じては貰えない状況に皇帝はただ誹りを受けるしかなかった。

何を言っても弁解にしかならない。



話は進まなかった。皇帝は祖国の侍女は駄目だと譲らない。


リリスは結局妥協案として、この国の人間で無いことと王宮に勤めていない事を条件に侍女を許した。皇帝は危険だと反対したが頑として受け付けなかった。誰一人味方がいないと思い、信じられない敵地の中でたった1人で、それでも――彼女は生きていた。怒り、憎み、拒絶しながらも、諦めてはいなかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

近すぎて見えない物

あんど もあ
ファンタジー
エルリック王子と一夜を共にした男爵令嬢。エルリックの婚約者シルビアが、優しく彼女に言った一言とは。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

処理中です...