13 / 30
1章《赦されざる者たち》
13話 帝都が凍るとき
しおりを挟む
吹雪が止み、灰色の空にわずかな日差しが差し始めた。午後の鐘が遠くで鳴り響く中、セレナはかつての華やかなドレス姿とは似ても似つかぬ黒いローブをまとい、銀色の髪を風に靡かせて帝都の入り口に立っていた。町の門前に立つと、賑やかな帝都の様子が目に入った。人々の笑い声、行き交う馬車、焼き菓子の香りが風に乗って漂う。
セレナの肩がわずかに震え、握りしめた拳に力が入る。胸の奥から憎しみが噴き上がる。寒さに凍え、飢えと渇きの中で命が消えようとしたあの時も、こうして賑わっていたのだろう。
リリスの天真爛漫な笑顔が浮かんでは消えた。頭では分かってはいるのだ。リリスの真実を知らなければならないと冷静になれと心の中で何度も自身を叱責する。
軋む心に、閉ざされた空間での飢えた日々の光景が鮮明に心に焼き付いていた。
”ひとおもいに殺して!”
と自死する事もできずにただ苦しみだけがあった日々を思うと、湧き上がってくる憎しみを抑えられなかった。
「駄目……やっぱり許せない!許せるわけ無いのよ」セレナは静かに呟いた。その時、頭の中に精霊の声が響いた。
『セレナよ、怒りにまかせて力を使えば、お前も代償を支払うことになる。理性を保ち、冷静に判断することが大切だ。』
その警告に一瞬躊躇したが、彼女の決意は揺るがなかった。「今さら失うものなど何もない。私が選ぶのは復讐だけ。欲しければ何でも持って行けばいいわ!ただし復讐の後よ!」と叫びセレナは足を一歩踏み出そうとして、ぴたりと止まった。
胸の奥に、冷たい何かが広がっていく。
心の奥底で先ほどの精霊の声がこだまする。復讐の炎に身を任せた先に、自分は何を手にするのか。リリスの笑顔が再び脳裏をよぎり、セレナの視界がかすむ。
息が苦しくなり、指先にまで力が入らない。ふと、かつてリリスと手を取り合って笑い合った記憶がよみがえり、その温もりが幻のように心を揺らした。ほんの僅かな迷いだった。
しかし次の瞬間、飢えに苦しみ、助けを求めた自分の声が誰にも届かなかった日々が、鋭い刃のように胸を貫いた。
その痛みに、幻は砕け散る。
セレナは唇を噛みしめ、そっと目を閉じた。そして
「……私はもう、戻れない」その言葉は自分自身に言い聞かせるようだった。
瞬間、帝都の通りが凍りつき、彼女の足元には冷たい風が渦巻く。空中に無数の氷の刃が静かに浮かび上がり、帝都を無言で睨み下ろしていた。セレナの瞳には、一切の感情がなかった。
「私がこの国を壊す理由を、誰もが知っているはずよね。」彼女は手を広げ、空気が凍りつき、鋭い氷の刃が放たれる。刃は生き物のように帝都の建物を貫き、道を削り、逃げる人々すらも容赦なく凍りつかせていく。
帝都は瞬く間に氷の世界へと変わり、絶望と恐怖が広がっていった。やがて、衛兵たちが慌てて武器を手に取り、セレナの前に立ちはだかった。しかし、彼女は一歩も引かない。氷の鎖が地面を這い、衛兵たちの足元を絡め取る。指を鳴らすと、鎖は凍りつき、衛兵たちは動けなくなった。
「止まれ!これ以上進めば命はないぞ!」と叫ぶ衛兵長の声も虚しく、セレナは冷ややかな微笑みを浮かべる。「愚かね……この私を止められるとでも思ったの?」再び氷の刃が輝き、衛兵たちは次々と凍りつき、倒れていく。
帝都は静寂に包まれ、セレナの足音だけが響く。彼女はゆっくりと城門へと歩みを進め、城を守る最後の兵士たちが必死に門を閉ざそうとするが、無力だった。氷の鎖が門を打ち砕き、城内へと冷気が流れ込む。
「私は進むだけよ」と呟き、冷気はさらに冷たく鋭くなっていった。
セレナの肩がわずかに震え、握りしめた拳に力が入る。胸の奥から憎しみが噴き上がる。寒さに凍え、飢えと渇きの中で命が消えようとしたあの時も、こうして賑わっていたのだろう。
リリスの天真爛漫な笑顔が浮かんでは消えた。頭では分かってはいるのだ。リリスの真実を知らなければならないと冷静になれと心の中で何度も自身を叱責する。
軋む心に、閉ざされた空間での飢えた日々の光景が鮮明に心に焼き付いていた。
”ひとおもいに殺して!”
と自死する事もできずにただ苦しみだけがあった日々を思うと、湧き上がってくる憎しみを抑えられなかった。
「駄目……やっぱり許せない!許せるわけ無いのよ」セレナは静かに呟いた。その時、頭の中に精霊の声が響いた。
『セレナよ、怒りにまかせて力を使えば、お前も代償を支払うことになる。理性を保ち、冷静に判断することが大切だ。』
その警告に一瞬躊躇したが、彼女の決意は揺るがなかった。「今さら失うものなど何もない。私が選ぶのは復讐だけ。欲しければ何でも持って行けばいいわ!ただし復讐の後よ!」と叫びセレナは足を一歩踏み出そうとして、ぴたりと止まった。
胸の奥に、冷たい何かが広がっていく。
心の奥底で先ほどの精霊の声がこだまする。復讐の炎に身を任せた先に、自分は何を手にするのか。リリスの笑顔が再び脳裏をよぎり、セレナの視界がかすむ。
息が苦しくなり、指先にまで力が入らない。ふと、かつてリリスと手を取り合って笑い合った記憶がよみがえり、その温もりが幻のように心を揺らした。ほんの僅かな迷いだった。
しかし次の瞬間、飢えに苦しみ、助けを求めた自分の声が誰にも届かなかった日々が、鋭い刃のように胸を貫いた。
その痛みに、幻は砕け散る。
セレナは唇を噛みしめ、そっと目を閉じた。そして
「……私はもう、戻れない」その言葉は自分自身に言い聞かせるようだった。
瞬間、帝都の通りが凍りつき、彼女の足元には冷たい風が渦巻く。空中に無数の氷の刃が静かに浮かび上がり、帝都を無言で睨み下ろしていた。セレナの瞳には、一切の感情がなかった。
「私がこの国を壊す理由を、誰もが知っているはずよね。」彼女は手を広げ、空気が凍りつき、鋭い氷の刃が放たれる。刃は生き物のように帝都の建物を貫き、道を削り、逃げる人々すらも容赦なく凍りつかせていく。
帝都は瞬く間に氷の世界へと変わり、絶望と恐怖が広がっていった。やがて、衛兵たちが慌てて武器を手に取り、セレナの前に立ちはだかった。しかし、彼女は一歩も引かない。氷の鎖が地面を這い、衛兵たちの足元を絡め取る。指を鳴らすと、鎖は凍りつき、衛兵たちは動けなくなった。
「止まれ!これ以上進めば命はないぞ!」と叫ぶ衛兵長の声も虚しく、セレナは冷ややかな微笑みを浮かべる。「愚かね……この私を止められるとでも思ったの?」再び氷の刃が輝き、衛兵たちは次々と凍りつき、倒れていく。
帝都は静寂に包まれ、セレナの足音だけが響く。彼女はゆっくりと城門へと歩みを進め、城を守る最後の兵士たちが必死に門を閉ざそうとするが、無力だった。氷の鎖が門を打ち砕き、城内へと冷気が流れ込む。
「私は進むだけよ」と呟き、冷気はさらに冷たく鋭くなっていった。
12
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる