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2章凍てつく断罪----慈悲の導き
4話 眠れる慈悲のもとへ
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ひんやりとした夜の風が、石畳の街道を静かに吹き抜ける。
セレナは、古書に書かれていた、荒れた山道を抜けた先に佇む一つの教会へと足を運んでいた。
その教会は信者こそ少ないものの、女神信仰の巡礼地として細々と存在を保っていた。
セレナの目当ては、奥の祭壇の横にひっそりと置かれている一体の銅像――。
女性の姿を模したその像は、両手を広げ、見る者すべてを包み込むような柔和な表情を浮かべ夕暮れの淡い光に照らされていた。
誰に気づかれるでもなく、誰にも祈られることもなく、ただそこに在る――けれど、セレナは感じていた。
その像から、穏やかで温かな波が広がっていることを。
彼女が像に近づいた瞬間、教会内に鈍い電流が走った。断罪の精霊が再びうごめき、鋭い声が頭の中に響く。
『そこに眠るものは、裁きを歪める。罪に目をつぶり、悪を甘やかす存在だ』
セレナは、目を閉じて落ち着いた声で
「いいえ……私には必要な存在よ。あなたを……私自身を制御するために」
セレナはそう言うと、そっと像に手を触れ
「あなたが……慈悲の精霊……?」
問いかける声に応えるように、教会内の空気がふわりと揺らぎ、光の粒が舞い始める。そして、彼女の目の前に、柔らかな光をまとう女性の姿が現れ、ゆらりと陽炎のように揺れた。
『……ようこそ、セレナ。あなたが来るのを待っていました』
その声は、音ではなく心に直接届く囁き。
責めることも、問いただすこともない。
ただ、包み込むような優しさと共に。
セレナは思わず口をつぐむ。
長い旅路の中で、こんなにも無防備に話しかけられたのは初めてだった。
『苦しかったでしょう。寂しかったでしょう。あなたの歩みは、ずっと見ていました』
「……私は、そんな風に……慰められる資格なんて……」
『資格なんて、いりません。あなたが、あなたであること。それだけで充分です』
その瞬間、セレナの中にひび割れていたものが、ふっと緩んだ気がした。
声も涙も出なかった。ただ、胸の奥で何かが少しだけほどけた。
『あなたの中に、断罪の精霊がいるのでしょう?ならば私は、あなたと共に在りましょう』
銅像がまばゆい光を放ち教会内の空間が歪んだ。セレナの心の奥底にあった鋭いナイフのようなトゲトゲしさがまるで溶けて流れるように消えていく。
セレナの意識は遠のき、気づけば、どこか現実とは異なる静謐な空間に立っていた――
白く柔らかな光に包まれた静謐な空間。水面のような床にセレナと慈悲の精霊が向かい合って立っいて、穏やかにセレナに問いかけた。
『あなたの選択は、本当に揺るがないものなのですね。断罪という行いも、あなたの誇りとしっかりとした信念があるからなのでしょう。』
「迷いはありません。過去も未来も、自分の意志で選び、進んでいきます。」
『その強さこそ、あなたの大切な力ですね。でも、断罪の力があまりにも大きくなれば、ときに世界を傷つけてしまうこともあるかもしれません。』
『だからこそ、私はあなたの隣で、本当に望む未来のために力を貸したいと思うのです。』
「……私は、ただ壊すだけの存在では終わりたくない。断罪と許し、その両方があってこそ、私の選択に意味が生まれる。だから、あなたの力が必要なのです。」
『喜んで力になりましょう。あなたの断罪が破壊ではなく、新たな始まりになるように――共に歩みましょう、セレナ。』
優しげに微笑みをたたえた、慈悲の精霊がそっと手を差し出す。
セレナがその手に触れると、暖かい光が凍りついた泉に広がるように胸の奥にと広がって行った。
冷たい裁きの力と、暖かな赦しの力が、ひとつのバランスとなって彼女の中で共鳴する。
『あなたが望むなら、私はいつでもそばにいます。あなたがあなたを否定しそうな時こそ、私を呼んでください。私はあなたを愛していますよ』
セレナは、小さく頷いた。
「……ありがとう」
その一言は、誰かに対して心からこぼれた、彼女の人生で初めての“感謝”だったかもしれない。
セレナは、古書に書かれていた、荒れた山道を抜けた先に佇む一つの教会へと足を運んでいた。
その教会は信者こそ少ないものの、女神信仰の巡礼地として細々と存在を保っていた。
セレナの目当ては、奥の祭壇の横にひっそりと置かれている一体の銅像――。
女性の姿を模したその像は、両手を広げ、見る者すべてを包み込むような柔和な表情を浮かべ夕暮れの淡い光に照らされていた。
誰に気づかれるでもなく、誰にも祈られることもなく、ただそこに在る――けれど、セレナは感じていた。
その像から、穏やかで温かな波が広がっていることを。
彼女が像に近づいた瞬間、教会内に鈍い電流が走った。断罪の精霊が再びうごめき、鋭い声が頭の中に響く。
『そこに眠るものは、裁きを歪める。罪に目をつぶり、悪を甘やかす存在だ』
セレナは、目を閉じて落ち着いた声で
「いいえ……私には必要な存在よ。あなたを……私自身を制御するために」
セレナはそう言うと、そっと像に手を触れ
「あなたが……慈悲の精霊……?」
問いかける声に応えるように、教会内の空気がふわりと揺らぎ、光の粒が舞い始める。そして、彼女の目の前に、柔らかな光をまとう女性の姿が現れ、ゆらりと陽炎のように揺れた。
『……ようこそ、セレナ。あなたが来るのを待っていました』
その声は、音ではなく心に直接届く囁き。
責めることも、問いただすこともない。
ただ、包み込むような優しさと共に。
セレナは思わず口をつぐむ。
長い旅路の中で、こんなにも無防備に話しかけられたのは初めてだった。
『苦しかったでしょう。寂しかったでしょう。あなたの歩みは、ずっと見ていました』
「……私は、そんな風に……慰められる資格なんて……」
『資格なんて、いりません。あなたが、あなたであること。それだけで充分です』
その瞬間、セレナの中にひび割れていたものが、ふっと緩んだ気がした。
声も涙も出なかった。ただ、胸の奥で何かが少しだけほどけた。
『あなたの中に、断罪の精霊がいるのでしょう?ならば私は、あなたと共に在りましょう』
銅像がまばゆい光を放ち教会内の空間が歪んだ。セレナの心の奥底にあった鋭いナイフのようなトゲトゲしさがまるで溶けて流れるように消えていく。
セレナの意識は遠のき、気づけば、どこか現実とは異なる静謐な空間に立っていた――
白く柔らかな光に包まれた静謐な空間。水面のような床にセレナと慈悲の精霊が向かい合って立っいて、穏やかにセレナに問いかけた。
『あなたの選択は、本当に揺るがないものなのですね。断罪という行いも、あなたの誇りとしっかりとした信念があるからなのでしょう。』
「迷いはありません。過去も未来も、自分の意志で選び、進んでいきます。」
『その強さこそ、あなたの大切な力ですね。でも、断罪の力があまりにも大きくなれば、ときに世界を傷つけてしまうこともあるかもしれません。』
『だからこそ、私はあなたの隣で、本当に望む未来のために力を貸したいと思うのです。』
「……私は、ただ壊すだけの存在では終わりたくない。断罪と許し、その両方があってこそ、私の選択に意味が生まれる。だから、あなたの力が必要なのです。」
『喜んで力になりましょう。あなたの断罪が破壊ではなく、新たな始まりになるように――共に歩みましょう、セレナ。』
優しげに微笑みをたたえた、慈悲の精霊がそっと手を差し出す。
セレナがその手に触れると、暖かい光が凍りついた泉に広がるように胸の奥にと広がって行った。
冷たい裁きの力と、暖かな赦しの力が、ひとつのバランスとなって彼女の中で共鳴する。
『あなたが望むなら、私はいつでもそばにいます。あなたがあなたを否定しそうな時こそ、私を呼んでください。私はあなたを愛していますよ』
セレナは、小さく頷いた。
「……ありがとう」
その一言は、誰かに対して心からこぼれた、彼女の人生で初めての“感謝”だったかもしれない。
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